国鉄キハ30系気動車
国鉄キハ30系気動車(こくてつきは30けいきどうしゃ)とは日本国有鉄道が開発、製造した内燃動車である。
登場の経緯[編集]
キハ10系気動車、キハ20系気動車によって閑散線区の無煙化が実施され、近代化と合理化が進んだが、電化が実施されていない大都市近郊の旅客列車は蒸気機関車が牽引する客車で運転され、効率が悪く、混雑時に対応できない上に手動扉で危険な状態だった。これを解決するため、通勤型電車と同一な車体構造を持つ気動車として開発されたのが本形式である。
概要[編集]
切妻車体3扉ロングシートである。前面は貫通扉が付けられ、前照灯は頭部に一か所、尾灯は腰部に左右2か所ついた。客用扉は両開き扉だが、片側3か所にステップを設けて戸袋窓を設けると車体強度が不足するので外吊式となった。機関はDMH17Hディーゼルエンジンを床下に1台装備する。室内には蛍光灯、扇風機が設置された。通風器はグローブ型である。寒地型は、客用扉は隙間風対策をして、運転台窓にデフロスターを装備した。通風器は押込式となった。
新製された車両[編集]
キハ35[編集]
片運転台、便所付の車両である。最も多く製造された。900番台は車体がステンレス製となった。
キハ36[編集]
片運転台、便所なしの車両である。増備はされず、代わってキハ30が増備された。国鉄分割民営化以前に廃車されたが、国鉄清算事業団に引き継がれたあと、関東鉄道に譲渡された。
キハ30[編集]
両運転台、便所なしの車両である。
改造[編集]
改番を経ない改造[編集]
キハ35 300番台[編集]
西日本旅客鉄道が山陽本線和田岬支線用にキハ35から改造した気動車。ホームのない側の側扉を埋め込みにした。
キクハ35 300番台[編集]
西日本旅客鉄道が山陽本線和田岬支線用にキハ35から改造した制御車。DMH17Hディーゼルエンジンを撤去。このため、機関予熱器を備えて暖房源とした。ホームのない側の側扉はキハ35 300番台と同様に改造。
運用[編集]
国鉄時代[編集]
関西本線、総武本線、筑肥線に投入された。大都市近郊の直流1500V電化が進むと越後線、武豊線など地方都市に転属して旧型客車や初期の気動車を淘汰し、混雑時の安全性の向上とスピードアップ、車両運用の効率化に貢献した。しかし、閑散時間帯の運用には適さず、他形式との混結で運用されることも多かった。
国鉄分割民営化以後[編集]
民営化直前には電化の進展・他形式への置き換えのほか、特定地方交通線の廃止により廃車が進み新会社に引き継がれたのは全体の4割程度だった。また、後述のように地方民鉄への譲渡も行われた。この傾向は以後も進み、JRでの稼働車は東日本旅客鉄道の八高線、相模線など、東海旅客鉄道の紀勢線や参宮線、西日本旅客鉄道の和田岬支線などで若干残ったが、電化の進展とJR化以降に新造された他形式への置き換えにより、最後まで残った久留里線の3両(62, 98, 100)が2013年に廃車され、形式消滅した。
地方民鉄への譲渡[編集]
1986年にキハ30 16の1両が筑波鉄道に譲渡され、キハ301となった。筑波鉄道廃止後、同車は関東鉄道に譲渡された。関東鉄道はこの他に、国鉄清算事業団、東日本旅客鉄道、九州旅客鉄道からキハ35、キハ36、キハ30を計40両購入した。 うち元筑波鉄道の車両を含めた39両が整備され、キハ300形(元キハ30)およびキハ350形(元キハ35・キハ36)となり、さらにキハ300形のうち4両がワンマン仕様のキハ100形に改造されたが、2017年までにすべて引退している。
この他、会津鉄道にキハ30 18が、水島臨海鉄道にキハ30 98およびキハ30 100の2両が譲渡された。会津鉄道ではトロッコ気動車に改造されてAT-301となり、2009年まで使用された。水島臨海鉄道では100のみが整備され、非冷房車であるがために原則秋冬の平日朝ラッシュ時間帯にのみ使用される。
海外譲渡[編集]
上記のキハ350形のうち、6両は整備の上でフィリピン国鉄に再譲渡された。当初は客車代用となっていたが、2017年現在では一部が自走する運用につく。
類型車[編集]
常総筑波鉄道キハ900形気動車は細部が異なるが本系列がベースとなっていた。キハ2100形の投入で1995年に廃車。
静態保存[編集]
近い世代の車両[編集]
- 国鉄103系電車 - 通勤用電車
- 国鉄キハ20系気動車 - 一般形気動車
その他[編集]
- 1986年から1987年にかけて本系列の台車や変速機を流用して国鉄キハ38系気動車が7両製造されている。
- 相模線の車両については1両が廃車後に鉄道総研へ譲渡され、湘南色に塗り替えてエンジンや台車を換装し、現在においても実験に使われている。
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