交流
交流(こうりゅう)とは物理学、電気工学において、電流の向きが周期的に変わる電流をいう。交流電流ともいう。
概要[編集]
常に一定の向きに流れる直流電流に対し、交流電流は向きも大きさも周期的に変化する。日常に使われている電力のほとんどは交流である。その理由は次の通りである。
- 直流は変圧器が使えないが、交流は変圧器を用いて電圧を容易に上げ下げできるため、遠距離を低損失で送電できる。
- 安価、堅牢で構造の簡単な誘導電動機が使える。
- 直流が必要なときは半導体を用いて容易に変換できる[1]
- 非常時の回路遮断が容易。
交流の発生[編集]
- 交流発電機で発生させる。
- 直流をインバータで逆変換させる(半導体、パワーエレクトロニクスを参照)。
正弦波交流[編集]
交流を発生させると、その電流、電圧は時間に対して正弦波状に変化し、例えば、電流の時間tに対する変化(瞬時値)iを数式に表すと次のようになる。
- Im:最大値[A]。電流値が最大になった瞬間の値。
- ω:角周波数(角速度)[rad/s]
- θ:位相角(位相)[rad](一般に-180°<θ°<180°)
ここで、位相とはt=0のときのiの値を決めるもので、他の電流あるいは電圧との関係を考えるとき重要な値である。
交流の周期[編集]
交流を表す式ではω[rad/s]を角周波数という。周波数は交流が1秒間に大きさと向きの変化を繰り返す数をいう。この1往復に要する時間を交流の周期といい、T[s]で表される。
- 波動の基本式
波長λ[m]、周期T[s]の波動はT[s]間に1波長の距離を進むから、波の速さv[m/s]は次の式で表される。
- …①
また、1振動の時間がT[s]であるから、1秒間の振動の数fは1/Tとなる。すなわち、
- …②
となる。例えば、1振動の時間が0.02秒ならば周波数は50Hzである。さて、これを①に代入すると
- …③
以上より
- …④
- 波長が長い-周波数は低い
- 波長が短い-周波数は高い
周波数をf[Hz]、周期をT[s]とすると、等速円運動の場合の式と同じように、次の式が成り立つ。
波高値、平均値、実効値[編集]
交流の電圧や電流は変化をするのでそれらの強さを表示する。
- 1.波高値
- 1周期中の最大の瞬時値。ある方向の波高値と反対方向の波高値とは必ずしも等しいとは限らない。一般的な正弦波交流は正の波高値と負の波高値とは等しい。このように正負対称の波形の波高値を最大値という。
- 2.平均値
- 半周期ごとに向きが逆転するのでそれらを単に平均すると0になる(マイナスの値がある)から、瞬時値の向きに無関係な量(絶対値)として1周期に渡って平均した値をいう。正弦波交流は正負の変化が対称的だから正の半周期の間の平均値を求めれば良い。上式にてθ=0として平均値を求める。これを式で表すと、
のように表される。これを計算すると、
この平均値は交流を整流して直流に変換したときに必要となる値である。
- 3.実効値
- 瞬時値を2乗して1周期に渡って平均した値の平方根をとったものをいう。これは交流の大きさを表すのに普通に使われる値で、一つの抵抗に同じ値の直流を流したときに等しい電力の値となるような物理的意味を持っている。
のように表される。これを計算すると、
一般の家庭に電力会社から供給されている電圧は、単に100Vと呼んでいるが、この値は実効値を意味している。
位相差[編集]
いま角速度ωが等しい二つの正弦波交流電流
があったとする。i1、i2は位相角が異なっており、θ1ーθ2の位相差(または相差)がある。θ1=θ2のとき、i1とi2は同相であるといい、θ1>θ2のときi1はi2より位相が進む、またはi2はi1より位相が遅れるという。位相角θは電流または電圧が一つしかないときはあまり重要ではないが、二つ以上の正弦波を扱うときは重要である。位相角θは単に位相ともいう。 位相は一般にー180°≦θ°<180°で表現され、正は進み、負は遅れを意味する。
複素数計算法[編集]
回路が複雑になった場合、複素数を用いて計算をしたほうが簡単で便利である。これはx軸に実数、y軸に虚数を置いた複素数平面(ガウス平面)上で計算するものである[2]。「三相交流電動機に流れる電流の和の求め方」で、三角関数を用いた計算方法と複素数を用いた計算方法の両方を比較する。
三相交流電動機に流れる電流の和[編集]
三相交流電動機のコイルに流れる電流は角速度ωで回転し、2π/3ずつ位相が異なるので、これを式にする
①.三角関数で計算する場合
(第一コイル)
(第二コイル)
(第三コイル)
これらの和は、
より、
これを加法定理 (三角関数)を用いて計算すると、
整理して
このように、いかなる時間tにおいても電流の和は0である。
②.複素数で計算する場合
*このように、複素数を用いたら簡単に計算ができる。これは電圧でも同様の結果が出る。
抵抗・インダクタンス・キャパシタンス[編集]
抵抗[編集]
係数Rで示される。直流、交流ともに電気の流れにくさを示す物理量で、熱、光、仕事などの形でエネルギーを消費する。
インダクタンス[編集]
エネルギーを磁界のかたちで蓄える(電磁石)。直流電流に対しては端子間に電圧を生じないので単なる導線として短絡していると考える。例えば、電球とコイルを直列に接続した場合、直流電圧では電球の明るさは変わらない。しかし、それに大きさの等しい交流電圧(実効値)を加えると交流電圧の場合の方が暗くなる。これは、コイルに交流電流を流すと交流電流の大きさ、向きが時間とともに変化するので、コイルに電流の変化を打ち消す向きの自己誘導起電力が生じ、電流を流れにくくするためである。(抵抗のように働く)
①抵抗の無視できる自己インダクタンスL[H]のコイルを周波数f[Hz](角周波数ω=2πf)で電圧の実効値Ve[V]の交流電源に接続する回路を考える。このとき流れる電流の実効値Ie[A]は次の式のようになる。
ωL=2πfL[Ω]は交流に対して抵抗の働きをする量となり、これをコイルのリアクタンス(誘導リアクタンス)という。前式からわかるように、自己インダクタンスLが大きいほど、周波数fが大きい交流ほど、リアクタンスが大きくなり、電流が流れにくくなる。
②抵抗の無視できる自己インダクタンスL[H]のコイルを電源電圧V[V]の交流電源に接続する回路を考える。このとき流れる電流I[A]は、電源電圧Vよりも位相がπ/2だけ遅れる。これは、電流の変化を妨げる向きの誘導起電力V'がコイルに生じるからである。その向きと大きさは電源電圧Vと反対向きで、キルヒホッフの法則からV+V'=0(R=0)となり、VとV'の大きさは等しくなる。このとき、電流Iは電圧Vより位相がπ/2遅れるので、コイルに流れる電流Iは次の式で表される。
ただし、
キャパシタンス[編集]
エネルギーを電界のかたちで蓄える(蓄電池)。直流の場合、コンデンサーについては単なる絶縁体[3]で開放していると考える。例えば、コンデンサーと電球を直列に接続し、これに直流電圧を加えると、直流はコンデンサーを充電するときだけ電流が流れ、その後は流れないため、電球は一瞬点灯するだけである。一方、交流は電圧の向きや大きさが周期的に変わるので、コンデンサーは充電と放電を繰り返すので、絶えず交流電流は流れる。
①電気容量C[F]のコンデンサーに周波数f[Hz]で、実効値Ve[V]の交流電圧を加えると、流れる電流の実効値Ie[A]は次の式のようになる。
ただし ω=2πf
[Ω]
上式は交流に対して抵抗の働きをする量となり、これをコンデンサーのリアクタンス(容量リアクタンス)という。上式からわかるように、電気容量Cが大きいほど、周波数fが大きい交流ほど、電流が流れやすくなる。これはコイルのときと反対の働きをすることになる。
②コンデンサを電源電圧V[V]の交流電源に接続する回路を考える。このとき流れる電流I[A]は、電源電圧Vよりも位相がπ/2だけ進む。コンデンサーに蓄えられる電気量Q[C]がQ=CVで、コンデンサーの両端の電圧は電源電圧Vと等しく、QはVと同じ位相で変化する。Qが増加するとき電流は正、減少するとき負の向きに流れる。このとき、電流Iは電圧Vより位相がπ/2進むので、コイルに流れる電流Iは次の式で表される。
ただし、
交流回路[編集]
直列回路[編集]
抵抗値R[Ω]の抵抗、自己インダクタンスL[H]のコイル、電気容量C[F]のコンデンサーの直列回路に、周波数f[Hz]の交流電源を入れると、回路を流れる電流の最大値Io[A]はオームの法則より
ただし、
上の式で、抵抗R、コイルC、コンデンサCの中でないものがあれば、インピーダンスZの式の中から不要なものを除去すればいい。すなわち
①抵抗RとコンデンサーCのみの回路の場合
②抵抗RとコイルLのみの回路の場合
となる。z[Ω]は交流回路で全体の抵抗の働きをする量として複素数で表せる。これを複素インピーダンス、もしくは単にインピーダンスといい、この逆数をアドミタンスという。このアドミタンスはYで表される。また、
[Ω]
はインピーダンスの虚数部であり、回路全体の(抵抗に対して)リアクタンスと呼ばれ、一般にXで表される。
名称 | 意味 | 記号 |
---|---|---|
インピーダンス | 交流回路の抵抗を複素数で表した | Z |
アドミタンス | インピーダンスの逆数 | Y |
リアクタンス | インピーダンスの虚数部 | X |
並列回路[編集]
- ①.抵抗とコイルの並列回路
- 抵抗値R[Ω]の抵抗と自己インダクタンスL[H]のコイルを並列に接続し、電圧V[V]、周波数f[Hz]の交流電源につなぐ。回路全体を流れる電流をI[A](実効値)とし、抵抗及びコイルに流れる電流をそれぞれIR、IL[A](実効値)とする。
抵抗とコイルの両端に加わる電圧はいつでも等しく、電圧Vに対する抵抗を流れる電流ILはπ/2だけ遅れる。したがって、全電流IはIRとILのベクトル和になる(このとき、IRは平面上x軸プラス(実数軸)に、ILはy軸マイナス(虚数軸)となり、Iはこの二つの合成する絶対値であるベクトルとなる。)。三平方の定理より
ここに、V=RIR=ωLIL ゆえに(並列に接続したコイルとコンデンサーにかかる電圧Vは同じ値)
ただし
- ②.コイルとコンデンサーの並列回路
- 自己インダクタンスL[H]のコイルと電気容量C[F]のコンデンサーを並列に接続し、電圧V[V]、周波数f[Hz]の交流電源につなぐ回路。電圧Vに対するコイルを流れる電流ILの位相はπ/2遅れるが、コンデンサーを流れる電流ICは位相はπ/2進む。したがって回路全体を流れる電流Iはベクトル和で表される。(このとき、ICは平面上y軸プラスに(虚数軸)、ILはy軸マイナスとなり(虚数軸)、Iはこの二つの合成する絶対値であるベクトルとなる。この場合、抵抗Rはないので実数軸はない)
電流Iは電圧Vに対して位相がπ/2進む(IC>IL)か、または遅れる(IC<IL)。
共振[編集]
抵抗値R[Ω]の抵抗、自己インダクタンスL[H]のコイル、電気容量C[F]にコンデンサーの直列回路に、周波数f[Hz]の交流電源を入れると、回路を流れる電流I[A]は
ただし、
で与えられる。したがって、R=一定のときは回路のリアクタンス(インピーダンスの虚数部)
のとき、Iは最大となる。このような現象を回路の共振という。すなわちR、L、Cの直列回路でL、Cの間に上式を変形して、
またはω=2πfより
の関係があると、この回路は周波数fの交流電源に共振するといい、このような回路を共振回路という。LとCの値を調節してこのような状態にすることを「同調をとる」といい、そのための共振回路を同調回路ともいう。また、このときの周波数f=f0と周期T[s]は上式を変形して次の式になる。
このときの周波数f0を共振周波数という。この共振回路でRが小さいとき共振すると流れる電流は非常に大きくなるから、これを利用してコイル、またはコンデンサーの両端に大きな電圧を作ることができる。(=ωLI=I/ωC)
送電[編集]
電気を輸送するときは高電圧にすると低電圧のときに比べて送電線で熱となって失われる電力が少ない。そのため、発電所では交流発電機で交流を作り、変圧器で高電圧にして消費地に送り、消費地では再び低電圧に変えて消費者に配電する。直流では変圧器が使えず、また、直流発電機はその構造上、高電圧の発電が出来ないので送電が経済的に不利となる。
交流発電機[編集]
静止した界磁部分の中でコイルを含む電機子を回転させ(回転電機子形)、あるいはコイルを含む電機子を静止させてその中で界磁部分を回転させることによって(回転界磁形)、コイルの導線が磁束線を切るときの誘導起電力を利用して(フレミングの右手の法則)、力学的エネルギーを電気的エネルギーに変える装置である。いずれの場合でも回転部分を回転子、固定部分を固定子という。
- ①.起電力を発生する導体(コイル)は円筒形の鉄心に収められ、これを電機子という。
- ②.回転電機子形の発電機について、コイルが二個一組ならば単相交流、六個三組ならば三相交流が発生する。
- ③.回転界磁形の発電機について、二個一組の磁極が一回転するとコイルには1サイクルの交流電圧が発生する。もし磁極を6個、つまり3対設けて円周上にN-S-N-S-N-Sとなるようにすれば、磁極の1回転に対して3サイクルの交流電圧が発生する。
- ④.電流を取り出す部分の円い輪をすべり環といい、これと接触する金属片をブラシという。2個のすべり環は、回転コイルの半回転ごとに電流の流れ出す部分と流入する部分との役割を交替し、交流を送り出す。
磁極数をP、回転子の回転数をnsとすると
で示される周波数の交流を発生させる。周波数をfにするためには磁極数Pの発電機の回転数は上式を変形して、
[rps](毎秒の速度)
に保つ必要がある。この回転速度nsを同期速度という。なお、同期速度は毎分の速度rpmで表すことが多く、この場合、上式の値を60倍にする。同期速度で回転する交流発電機を同期発電機という。
小型の同期機の界磁に永久磁石を使ったものがあるが、通常は直流で励磁しており、そのために直流発電機を備えている。この直流発電機を励磁機という。
2つの周波数[編集]
日本国内では電力会社から供給される交流電圧は100Vであるが、商用電源周波数は、富士川両岸、群馬・山梨と長野県境、姫川両岸を境に東日本が50Hz、西日本が60Hzである[4]。両方の周波数の電流が流れている電線を直接接続することは出来ず、互いに電力を融通するときは一旦周波数変換所で、直流に変換する[5]。また、北陸新幹線では両方の周波数に対応できる車両を使用し、架線を接続するときはデッドセクションを設けている。日本国内で50Hzと60Hzが直接架線で繋がれているのはここだけである。
変圧器(トランス)[編集]
電磁誘導を利用して交流の電圧を変える静止機械である。これは共通の鉄心、または絶縁体の筒のまわりに2つ以上のコイルを巻いたものである。電源に接続するコイルを一次コイル、他を二次コイルという。これらの電圧と巻き数は次の関係がある。一次コイルの巻き数をn1、電圧をV1、電流をI1、 二次コイルの巻き数をn2、電圧をV2、電流をI2とすると、
V1/V2=n1/n2=a
となる。ここにaは巻数比である。種々の電力損失のない理想的な変圧器の場合には 一次コイルに供給される電流と電圧の積は、二次コイルに誘起される電流と電圧の積に等しい。このとき力率をcosφで表すと、次の式が成立する。
I1V1cosφ=I2V2cosφ[W]
出力が力率によって変化する交流機器の能力を示すには次の皮相電力を使う。
I1V1=I2V2[VA]
送電線[編集]
電力P=IVを輸送する場合に電圧Vを高くすると、電流Iは小さくなり、送電線で熱(ジュール熱)となって失われる電力P=I2R(Rは送電線の抵抗)を小さくすることが出来る。また、使用する電線も細くできる。電圧をn倍に高くすると、同じ電力を送電するときの電流は1/n倍になり、送電線における電力の損失は1/n2倍に減少する。高電圧の交流は、消費地の変電所で変圧器を用い、適当に電圧を下げて使用者に供給している。
交流電動機[編集]
交流発電機とほぼ同じ構造だが、交流電流を運動エネルギーに変換する機械が交流電動機である。
- ①.誘導電動機
- 三相交流で使われる。安価、軽量で構造の簡単なのが特徴である。コイルに流された三相交流で作られた回転磁界の磁場の中で導体が引っぱられて回転する。コイルは一つよりも複数あった方がより多くの磁場を発生させるので糸車のような形になる。これをかご形回転子という。
- ②.単相誘導電動機
- 家庭内で使われる電化製品に使われる単相交流で回転する誘導電動機である。
- ③.同期電動機
- 誘導電動機と同じ回転子を持ち、三相巻線を施して回転磁界が作られる。回転子は直流励磁で電磁石となっており、磁界の回転に伴って回転する。回転する速度が常に一定である。
- ④.交流整流子電動機
三相交流[編集]
三相交流が電力系統に用いられる理由[編集]
今日の日本では、家庭や事業所に送電される電気は単相交流100Vないし200Vである。しかし、電力会社は、最寄りの変電所まで高電圧の三相交流で送電し、電気エネルギーの損失を抑えている。また発電所から伸びる幹線では更に高電圧で送電しているものもあり、高い送電効率を達成している。
三相交流回路[編集]
三相交流では三つの電源(発電機のコイルと考えても、変圧器のコイルと考えてもよい)から3本の導線を使って負荷に電力を供給するものである。三相の接続は二つの方式がある。Yの形に接続したものをY接続または星形接続といい、Yの中心部である点Nを中性点という。この場合、それぞれ一つの電源が一つの負荷に電力を供給し、電流I1、I2、I3は3つの電源を出ていずれも中性点N同士を結ぶ導線を通って帰ると考える。
これに対して正三角形に接続したものをΔ接続または環状接続という。電力関係では、両方の接続方式ともよく用いられるが、、Y接続は主に送電線で用いられ、Δ接続は主に配電線で用いられる。
対称3相交流電圧のY-Δ変換[編集]
- Y接続の中性点からa相、b相、c相へ向かう電圧Va、Vb、Vcを相電圧または星形電圧という。
- Δ接続の正三角形の頂点a、b、cとの間の各相間(例えばa-b相間など)の電圧を線間電圧という。またY接続の各相間の電圧も線間電圧という。これをVab、Vbc、Vcaとする。
- 相電圧と線間電圧の関係は
とすると、三平方の定理より、
となる。つまり、相電圧√3VY=線間電圧VΔとなる。
また、対称3相交流電圧のフェーザ図からは、
=√3V∠30°=V1∠30°
=√3V∠-90°=V1∠-90°
=√3V∠150°=V1∠150°
となる。
対称3相交流電流のY-Δ変換[編集]
Δ接続の正三角形の頂点a、b、cから外部へ向かう電流
, ,
を線電流もしくは相電流という。また、Δ上を流れる電流
を環状電流という。
今、Iabを基準としてIab =Ir∠0°とすると両者間の関係を示すフェーザ図を作成する。
中点Nから0°、-120°、120°からのベクトルを
とすると、キルヒホッフの第1則から、
となるので、次の式が得られる。
以上より次の関係が得られる。
線電流(相電流)I=環状電流Ir×√3
交流電化[編集]
「交流電化」も参照
電気鉄道のうち、架線に流れる電流を交流にすることである。日本国有鉄道は在来線の鉄道を電圧20000V、新幹線は25000Vとし、周波数はその地域に普及している値(50Hzもしくは60Hz)としていた。国鉄を引き継いだ新会社も同様にした。ただし、外国では別の値になっていることもある。
誕生の背景[編集]
電気機関車や電車に使用される電動機は直流直巻電動機が適していたため、鉄道の電化は当初、直流電化を行った。しかし、直流での高電圧送電は直流発電機の構造上不可能だった。大電力を輸送するために電流を大きくすると架線を太くする必要があり[6]、これは経済的ではない。また、電圧を高くして送電すると電圧降下が少ないので変電所を短区間に設けてそこまでは三相交流での送電を行い、電圧降下を防止した。(送電を参照)
長所[編集]
- 変電所の数の抑制
短所[編集]
関連項目[編集]
参考文献[編集]
- 堀孝正『パワーエレクトロニクス』オーム社出版局2002年2月25日第1版第7刷発行
- 酒井善雄『電気電子工学概論』丸善株式会社
- 力武常次、都築嘉弘『チャート式シリーズ新物理ⅠB・Ⅱ』数研出版株式会社新制第11刷1998年4月1日発行
- 矢野隆、大石隼人『発変電工学入門』森北出版株式会社2000年9月13日第1版第4刷発行
- 西巻正郎・森武昭・荒井俊彦『電気回路の基礎』森北出版株式会社1998年3月18日第1版第12刷発行
- 電気学会「電気学会大学講座電気機器工学Ⅰ」社団法人電気学会2002年1月31日14刷発行
- 電気学会『電気施設管理と電気法規解説9版改訂』電気学会
脚注[編集]
- ↑ 直流→交流は電動発電機を用いれば容易だが、効率が悪く、半導体を用いた方式ではやや複雑な回路が必要。パワーエレクトロニクスを参照。
- ↑ この場合、虚数単位は「j」として虚数の数値の前に置く。これは、数学で用いる「i」は電気工学では電流の意味に該当するからである。
- ↑ 蓄電すると特性では誘電体
- ↑ これは電気事業開始の頃、東日本がドイツから、西日本がアメリカから輸入し、統一しないまま現在に至ったためである太平洋戦争直前と戦後間もなく、周波数の統一が計画されたが、莫大な資金が必要とされたので中止された。なお、佐渡島は西日本同様60Hzである。
- ↑ 現在、新信濃周波数変換所と佐久間周波数変換所(いずれも30万kVA)が稼動中。
- ↑ 北陸本線、湖西線の直流電化の際、交流20000Vから直流1500Vにすると、電流は約13.3倍となる架線を際限なく太くするわけにはいかず、き電線を設けた結果、架線柱を新しく建て直すことになった。
- ↑ 日本では直流1500V、外国の例では3000V。