ディーゼルエンジン
ディーゼルエンジン (Diesel engine) とは、点火装置のない往復運動を行う内燃機関である。
概要[編集]
ピストンが往復動するレシプロエンジンの一種で、ドイツの技術者ディーゼルが発明した。
トルクが太く、低速でも大きな力が出やすく、物を動かすことに長ける。また、アメリカ英語ではディーゼル機関車のこともいう。
仕組み[編集]
ディーゼルエンジンはまず外気をエンジン内部に吸い込み(吸入)、ピストンで圧縮させる(圧縮)。気体は圧縮されると高熱になるため、ここに燃料を噴射すると燃料が自然発火し(爆発)、エンジンが作動する(ピストンにリンクしたクランクで回転運動)(排気)。自然発火するほどの圧力を加える必要があるため、アイドリング時・作動中の騒音は大きい(DMH17Hエンジン)。低温で火が着くので、押し縮められた空気の熱で着火する。ディーゼルエンジンは、混合気が自然に発火するので、プラグは無い。
一方ガソリンエンジンの場合、外気と気化させた燃料の混合気を圧縮させ、ここに点火プラグで起こした火花が爆発的に燃焼することで作動する。
以上の特性からディーゼルエンジンは頑丈に作ることが必要で小型化が難しく、大きく、重くなり、軽自動車にディーゼルエンジンを搭載することは難しい。
予備燃焼式と直接噴射式[編集]
点火装置がなく、圧縮によって燃料を点火させるので、燃料の温度が低いと点火しないことがある。そのため、ガソリンエンジンと比べて始動、停止が容易ではなく、このため、船舶や鉄道車両では長時間にわたってエンジンを動かしている。特に、冬期の高地の鉄道では列車の運行終了から翌日の運行開始にわたってアイドリングをしていることもある。
燃料の温度を上げる方法には、副燃焼室を設ける方法がある。これが予備燃焼式である。昨今は、副燃焼室を設けず直接噴射で燃料の温度を上げる直接噴射式のエンジンも普及している。
燃料[編集]
ディーゼルエンジンに使われる燃料は一般的に軽油、A重油、C重油の3種類である。しかし燃料噴射が電子制御化されていない旧式のエンジンであればある一定の発火点を満たした可燃性の液体であれば何でも使用できる。軽油やA重油に性状の近い灯油や使用済みの天ぷら油だとか植物油でも動かそうと思えば動かせる。最近ではエーテルを燃料にしようという研究も進んでいる。
ただしガソリンを入れると壊れる。これはガソリンにディーゼルエンジンのための十分な潤滑性がないためである。
一方、自動車用ディーゼルエンジンに性状の近い灯油やA重油を入れた状態で公道を走らせると、脱税の疑いで警察よりも怖い組織がやって来る。これは自動車用ディーゼル燃料(軽油)には軽油引取税が含まれており、軽油引取税を何らかの形で納税することで公道の走行が可能になるからである。当然灯油やA重油には軽油引取税はかけられていない。だから脱税になるのである。
なお、ディーゼルエンジンに天ぷら油を用いた際、本来のパワーが出なかったり、糖分を含むためパッキンから出てくる油がベトついたりというデメリットから本格採用に至らなかった例も存在する。
沿革[編集]
使用目的[編集]
その他[編集]
- 鉄道では、気動車のほぼ全てでディーゼルエンジンが用いられている(自動車転用の保守機械を除く)。高速かつ高トルクの性能を得やすくするのが理由だが、国鉄の場合、1940年に西成線でガソリンカーキハ42000系気動車が脱線転覆して、引火点の低いガソリンに引火し、多数の死傷者が出たことで、火災に対してのリスク管理が必要なことも理由としている。