国鉄キハ20系気動車
国鉄キハ20系 (こくてつキハ20けい)とは日本国有鉄道が開発、製造した、内燃動車である。「キハ20系」は現場や鉄道ファンがつけた通称であって正式名称ではない。
概要[編集]
1953年から製造された10系気動車は閑散線区での近代化、合理化を可能にしたが、ディーゼルエンジンの質量が大きく、出力も小さいので、車体幅を狭く、室内も簡素化せざるを得なかった。1956年に登場したキハ55系気動車は、車体を10系客車と同様、軽量構造として車体幅を2800mmに広げたために、一般型の車体幅も広げて接客設備を向上しようと登場したのが本系列である。
仕様[編集]
車体長20000mm(ただしキハ52は21000mm)、車体幅2800mmである。客用扉は中央寄りに2か所あり、ステップがついている。客用窓は初期の車両は上段はHゴムの固定窓、下段は一段上昇窓の「バス窓」だが、後期に製造された車両は二段上昇窓になった。ただし、キハ52、キハユニ26は一段上昇窓のみである。室内灯も前期の車両は白熱灯だったが、後期の車両は蛍光灯となった。
新製した形式[編集]
キハ20[編集]
両側に運転台を持ち、床下にDMH17Cディーゼルエンジン1台を持つ気動車である。運転台と客用扉の間に便所を設けてある。本系列では最も多く製造された。国鉄分割民営化後も北海道旅客鉄道と東海旅客鉄道以外の新会社に引き継がれたが、1994年までに廃車された。
キハ21[編集]
北海道用に開発された酷寒地用気動車。キハ20初期車と同様な車体構造だが、客用窓は二重となっている。耐寒耐雪装備が不十分なため、増備は一度だけで終わった。国鉄分割民営化までにすべて廃車となり、新会社に引き継がれなかった。
キハ22[編集]
キハ21の耐雪装備が不十分なため、新たに開発された気動車。通常の気動車はエンジンの廃熱を利用して暖房を行うが、この車両はエンジンそのものを温めるために対策を行った。暖房効率を上げるためと、冬期のスパイク対策のために床は板張りとなった。客用窓は二重窓になった。客用扉は車体端に寄せられ、出入口と客室に仕切が設けられ、仕切扉を設けられた。便所の出入口は出入り台にある。北海道と東北地方北部で使用され、国鉄分割民営化では北海道旅客鉄道と東日本旅客鉄道に引き継がれたが、1995年までにすべて廃車された。
キハ25[編集]
片側に運転台を持ち、床下にディーゼルエンジン1台を持つ気動車である。運転台の反対側に便所を設けてある。国鉄分割民営化までにすべて廃車されて新会社に引き継がれなかった。
キハユニ25[編集]
北海道用の郵便荷物3等合造車。客用窓はバス窓の二重窓で客用扉は中央寄りで仕切扉はない。便所の装備はない。後に増備された1両は車体後部がキハ22のように客用扉は端に移って仕切扉が設けられ、客用窓は一段上昇窓の二重窓となった。国鉄分割民営化までにすべて廃車されて新会社に引き継がれなかった。
キハユニ26[編集]
本州以南用の郵便荷物3等合造車。客用窓は二段上昇窓で客用扉は中央寄りである。便所の装備はない。国鉄分割民営化までにすべて廃車されて新会社に引き継がれなかった。
キハ52[編集]
両側に運転台を持ち、床下にDMH17Cディーゼルエンジン(100番台はDMH17Hエンジン)2台を持つ気動車である。運転台と客用扉の間に便所を設けてある。床下に水タンクを置くスペースがないので、便所と通路を挟んで反対側の室内に水タンクを置く。本系列に限り車体長は21000mmであった。0番台は縦型エンジンだが100番台は横型エンジンとなり、客室内からエンジン点検蓋と車内中央にあった排気口が消えた。国鉄分割民営化後も北海道旅客鉄道と東海旅客鉄道以外の新会社に引き継がれ、本系列ではもっとも長く活躍し、西日本旅客鉄道大糸線および東日本旅客鉄道新潟地区での運用を最後に2011年までに廃車された。
改造によって登場した形式[編集]
キユニ21[編集]
キハ21を改造して2両が登場した。郵便室は客用扉をそのまま使い、荷物室は新しく大型の荷物扉を設けた。北海道内で活躍し、国鉄分割民営化までに廃止された。
簡易荷物車[編集]
専用の荷物車として使うほどの需用がない、少量の荷物輸送を行えるように車内にアコーディオンカーテンを設け、荷物室として使う区画がロングシートとなった。荷物輸送を行わないときはアコーディオンカーテンを開けて全車を旅客輸送を行う。車番に600番台の形式が与えられた。荷物輸送が廃止された後はアコーディオンカーテンだけを撤去して使用された。
運用[編集]
日本国有鉄道時代[編集]
キハ10系気動車と同様、閑散線区に投入され、近代化、合理化を行った。両運転台車が多かったので、重宝された。室内設備が向上したので準急行列車を含む急行列車にも運用され、特に会津線の「いなわしろ」は昭和57年11月15日日本国有鉄道ダイヤ改正までキハ52で運行された。北海道ではキハ22が急行列車の運用に就いた例が多かった。幹線電化とキハ40系気動車の登場、特定地方交通線の廃止により活躍の場が狭まり、廃車も進行した。
国鉄分割民営化以後[編集]
キハ21、キハ25、キハユニ25、キハユニ26、キユニ21は新会社に引き継がれずに廃車となった。
その他の形式もキハ52型を中心にJR九州、JR西日本で21世紀まで残ったが、先述の通り新潟地区で最後まで残った7両が2011年に廃車されJRからは系列消滅となった。
形式の変更を行わない改造[編集]
- 四国旅客鉄道のキハ20は窓のユニットサッシ化を行った。
- 東日本旅客鉄道のキハ52はDMH17系エンジンから新型エンジンへの機関の換装、出入口と客室との間に仕切を設置。
- 西日本旅客鉄道のキハ52はワンマン化と冷房化改造、便所撤去。
地方民鉄のキハ20系[編集]
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- 留萠鉄道キハ1100形気動車
- キハ21をベースに前面を湘南型としたもの。1959年に1103の1両だけ製造された。廃止後は茨城交通に譲渡されたが、1991年に廃車された。
- 留萠鉄道キハ2000形気動車
- 1966年に2004と2005の2両を製造。キハ22と同型で、前面も貫通型とされた。廃止後は茨城交通へ譲渡され、2両ともひたちなか海浜鉄道移管後の2015年まで使用された。
- さらに2004は平成筑豊鉄道に再譲渡、動態保存されている。
- 羽幌炭鉱鉄道キハ22形気動車
- 1960年から66年までに3両を製造したキハ22の同型車。廃止後は茨城交通へ譲渡された。うち2両がひたちなか海浜鉄道に継承されたが、2015年までに全車引退。
- 雄別鉄道キハ49200Y形気動車
- 1957年に3両が登場したキハ21の同型車。廃止後は関東鉄道に譲渡され、同社のキハ760形となり、廃止まで筑波線での運用に就いた。
- 雄別鉄道キハ100形気動車
- 1962年に104と105の2両、1969年に106の1両が製造された、キハ21をベースとして窓をキハ22と同じタイプにしたもの。106のみ片運転台であった。廃止後は全車が関東鉄道に譲渡され、104と105はキハ810形の811, 812として筑波線で、106はキハ813形の813として常総線で使用された。1989年までに全車引退。
- 小湊鐡道キハ200形気動車
- 1961年から77年まで14両を製造し既存車をほぼすべて置き換えた。12両が冷房化を受けているが、2021年以降、キハ40への置き換えにより廃車が進んでいる。
- 定山渓鉄道キハ7000形気動車
- 国鉄との直通運転のために1957年に3両が製造された。非貫通型で、湘南スタイルの2枚窓が特徴。翌年には増備車のキハ7500形も製造されているが、1969年の廃止により廃車解体されて全滅。
- 島原鉄道キハ20形気動車
- 後述の譲渡車以外に1958年に3両が登場している。全てキハ20系をベースにトイレを持たない構造となっていた。2008年の島原外港 - 加津佐間廃止までに全て廃車されている。
- 津軽鉄道キハ24000形気動車
- 後述のキハ22の譲受車以外に1962年から67年にかけて4両が登場。先述の雄別鉄道キハ100形と同じ仕様であった。2000年全廃。
地方民鉄に売却されたキハ20系[編集]
- ※太字は2022年現在も一部または全部が在籍。
- 津軽鉄道-キハ22
- 下北交通-キハ22(キハ85に形式変更)
- 弘南鉄道黒石線-キハ22
- 鹿島臨海鉄道-キハ20(2000形に形式変更)
- 茨城交通/ひたちなか海浜鉄道-キハ20(鹿島臨海鉄道からの譲渡車はキハ200に形式変更)
- いすみ鉄道-キハ52
- 水島臨海鉄道-キハ20
- 島原鉄道-キハ20
- 南阿蘇鉄道-キハ52(MT-2100形に形式変更)
ひたちなか海浜鉄道のキハ205は2024年10月の廃車が決まり、いすみ鉄道のキハ52 125も2024年3月のダイヤ改正以降は臨時列車のみに充当される。
ひたちなか海浜鉄道のキハ205が現役を退くと、20系気動車の現役車両は地球上から姿を消すことになる。
海外譲渡されたキハ20系[編集]
フィリピン国鉄にキハ52が7両譲渡され、うち6両が3連2本を組み通勤列車に使用されていたが、2020年までにすべて現役を退いている。
その他[編集]
関東鉄道ではキハ20系の機器を流用して1982年から84年までにキハ0形を8両、1981年にキハ532形を1両製造した。その後、2013年までにDMF13系エンジンに換装されたものの、台車と変速機はそのままであったが2021年6月より運用離脱車が発生している。
また、いすみ鉄道には本系列の前面を模したいすみ350形とキハ20形が登場しているが、いずれもコマツ製のエンジンを搭載したNDCであり、構造上の互換性は全くない。
関連項目[編集]
参考文献[編集]
脚注[編集]
JR JR東日本の鉄道車両 |
JR西日本の鉄道車両 |