JR東日本E231系電車
E231系電車(E231けいでんしゃ)は、東日本旅客鉄道が開発・設計した直流電車である。デビューは2000年で、0・500・800・900番台からなる「通勤タイプ」と1000番台の「近郊タイプ」が存在する。
概要[編集]
JR東日本は209系の製造の後、拡幅車体を用いた車両の開発に取り組んでいった。JRはこれに先駆け1998年に拡幅車体の209系500番台の製造を開始し、同年にはIGBT-VVVFを装備し6ドア車を連結した209系950番台を開発、中央・総武緩行線に投入した。その後量産車が登場。量産車も老朽化が進んで行った103系、301系、201系や205系など国鉄型車両の置き換え用として首都圏の主要線区に次々と投入された。
新技術として、伝送技術を採用したTIMS(列車情報管理システム)を導入し、車内電線の数を削減することが可能となり、209系に比べると1編成辺り1.4tもの軽量化が可能となるなど、『21世紀型ハイブリット車両』としても親しまれている。
2015年には、E235系がデビューしたことにより大転属が発生した。山手線の500番台が中央・総武緩行線に転出し、玉突きで209系500番台全編成とE231系0番台一部編成が八高線・武蔵野線に転属した。
車内設備[編集]
車内案内設備としてLED式車内案内表示器(500番台は液晶ディスプレイを用いたトレインチャンネル)によって各種情報を表示している。LED式の場合、1段タイプと2段タイプの2タイプが存在するが、共通点として次駅案内が表示され、漢字→ローマ字→カタカナの順に表示される。一部の車両では旅客への案内向上のため、VIS と称する情報提供装置を搭載している。
2段タイプのものは上段に行先・次駅案内・出口案内などを表示し、下段は所要時間表示・乗り換え案内・ニュース・運行情報などを表示する。また新たな列車運行情報が入電した時はアラート音が鳴る。非常ブレーキ取扱時にはディスプレイに「急停車します」と赤字で表示される。
- 例:「次は上野」→「Next Ueno」→「次はウエノ」→「上野行」→「For Ueno」
なお、初期に落成した小山所属車両は「上野行」や「For Ueno」ではなく、「行先は上野」と表示され、英語表示はない。また、中央・総武緩行線用車両は行先表示を行わない。
一部の1段式LEDの車両では、E217系などで表示される運行情報表示が行先表示の後にテロップで流されるようになった。この表示は駅到着前まで繰り返し表示される。なお、駅出発直後は2回次駅・行先表示をしてから表示される。これはE217系などでも同様である。また、2段式とは違い、1段式LEDではアラート音は鳴らない。
- 例:「次は上野」→「Next Ueno」→「次はウエノ」→「上野行」→「For Ueno」→〔運行情報表示〕
近郊形と一部の通勤形の車両で、駅到着前「まもなく○○」と「○○行」(小山前期車は「行先は○○」)を交互に表示するようになった。また、2段式LEDの車両はドア開閉方向と「まもなく○○」を交互表示する(0番台はドア開閉方向のみ表示する)。三鷹区に所属する0番台は行先表示を行わないため、「まもなく○○」の固定表示となる。
- 例:「次は上野」→「まもなく上野」⇔「上野行」〔「行先は上野」〕
- (三鷹区の0番台の場合)「次は水道橋」→「まもなく水道橋」
500番台は液晶ディスプレイのため若干異なり(カタカナではなくひらがなで表示される点など)、以下のような表示となっている。
- 例:「次は上野です。」→「Next Ueno」→「つぎはうえのです。」
また、常磐線快速・成田線では、停車時に主な駅の所要時間がテロップで流される。
- 例:「我孫子まで○○分」→・・・
通勤型[編集]
0番台[編集]
中央・総武緩行線は殆どが他線に転出したが、一部編成が残存している。残存編成では2016年頃から機器更新及び編成組み換えを施工、VVVFを三菱3レベルIGBT(お化けインバーター)から2レベルに変更したほか、500番台と合わせる形で6ドア車を取り外し、モーター車の比率を上げた。常磐快速線向けは10両編成の基本編成と5両編成の付属編成が存在し、全車松戸車両センターに所属している。2016年から2020年にかけて機器更新を実施し、VVVFインバーターが交換された。2021年には成田線120周年に合わせて付属1編成がスカ色に変更されている(マトスカ)。2023年3月頃からは前照灯のLED化が進んでいる。
武蔵野線向けは8両編成で、2017年に登場した。209系と共通運用を組み、京葉線にも乗り入れる。
500番台[編集]
2002年より山手線向けに11両編成で製造された。JR東日本の看板路線・山手線の車両ということで顔つきが他のE231系と異なっており、どちらかというとE331系に近い。2017年から2020年にかけて機器更新を行い、10両編成で中央・総武線で使用された。[1]山手線では撮り鉄が線路に立ち入るトラブルを起こしたためラストランが中止になる悲劇も起こった。余談であるが、最初に転属した500番台1本はしばらく機器未更新のまま営業運転についていた。
2024年より総武・中央緩行線向けのワンマン運転対応改造を実施中。
800番台[編集]
老朽化した301系を置き換えるために2003年より営業運転を開始、10両編成7本が製造された、東京メトロ東西線直通用の車両。東西線の車両限界のため拡幅車体が用いられていないが、そうかと言って、別系列とはならなかった。貫通扉も装備され、帯色を除けば209系1000番台に外観は近い。編成数に対する運用数が極端に少なく、走行距離の観点から長らく機器更新が見送られてきた。このため鉄道ファンからはJR最後の幽霊インバーターということで注目度が高かったが、2022年9月のK3編成を皮切りに新しいVVVFインバーターへの換装が始まった。
900番台[編集]
1998年10月に209系950番台としてミツ24編成の10両×1本が登場。1 - 5号車は東急車輛製で日立製のVVVFを搭載し、6 - 10号車は新津工場製で三菱製のVVVFを備えていた。列車情報管理システムTIMSなどの新技術も取り入れており、1999年3月より中央・総武線で定期運行を開始した。2000年6月には「E231系900番台」に改番され、編成番号もミツB901に変更となった。2020年7月に更新工事を行い、サハ2両を廃車のうえで京葉車両センターへ転属、現在はケヨMU1編成として主に武蔵野線を走行している。
なお、量産車との違いは以下の通りである。
- ATS-SNも装備している(0番台はATS-Pのみ)。
- 登場時は宇都宮線・高崎線の行先表示も収録していた(現在は削除)。
- JRロゴマークの位置。
- パンタグラフがPS33形(0番台はPS33B形を採用)。
- 吊り革の形状。
- 窓ガラスの種類。
3000番台[編集]
八高線・川越線で使用されている4両編成。元は0番台であったが、2017年より改造のうえ205系・209系の置き換え用に転入された。内装はほぼそのままであり、トイレやボックスシートも設置されていない。2020年頃よりワンマン化工事が開始され、2022年3月のJR東日本ダイヤ改正よりワンマン運転が開始された。なお、サハE231形3000番台も存在するが、こちらは1000番台の区分であり、この区分と関係はなく、番号の重複もない。
近郊型(1000番台)[編集]
詳細は「JR東日本E231系電車1000番台」を参照
2000年代から、老朽化した113系・115系を更新するために宇都宮線や高崎線・東海道線、伊東線や上越線などに投入された。湘南新宿ライン系統で活躍することを想定して、全編成が寒冷化対応している[2]。E231系唯一の近郊型車両で、トイレ、グリーン車(10両編成のみ)がある。10両編成の基本編成と5両編成の付属編成が存在し、E233系3000番台と併結運転を行っている。VVVFインバーターは日立製のIGBT素子を採用した。このVVVFは加速すると音程が下がり、減速すると音程が上がるため、鉄道ファンからは墜落インバーターと呼ばれている。2015年頃から小山車両センター所属車から機器更新が始まり、2020年には国府津車両センター所属車にも波及した。
なお、この区分の先頭車は6000番台と8000番台のみで、1000番台自体は存在しない。
今後[編集]
通勤型も大半の部類では機器更新や車体修繕を済ませておりほぼ安泰と考えて良いが、総武・中央緩行線向けE231系0番台6編成のみは車齢25年を経過していることに加えて、車外スピーカー未設置・準備工事すら未施工な上に線内で唯一LED車内案内表示器を残しているため、高経年車にこのレベルの大改造をするくらいであれば、E235系山手線向けの余剰転用で追い出すという見方もできる。
なお、代替後も武蔵野線か、羽田アクセス線開業を見据えて常磐線あたりへの転用が考えられるため、編成単位での廃車が出る可能性は薄い。
車両番号[編集]
- モハE230
- 1-84:0番台10両編成のうち4,9号車。三鷹、習志野に配属
- 85-105:0番台10,15両編成のうち2,7,12号車。松戸に配属
- 106-107:0番台10両編成のうち4,9号車。三鷹に配属。301系代替用
- 108-139:0番台10両編成のうち2,7号車。松戸に配属
- 140-145:0番台10両編成のうち4,9号車。三鷹に配属。
- 501-656:500番台11両編成のうち2,5,8号車。山手に配属。
- 801-821:800番台10両編成のうち3,6,9号車。三鷹に配属。
近い世代の車両[編集]
- JR西日本321系電車 - JR西日本車
- JR東日本E257系電車 - 特急用
交直流車だと、JR東日本E501系電車が少し前、JR東日本E531系電車が少し後の世代になる。
脚注[編集]
- ↑ 抜かれた1両はサハE231-4600(元10号車)であり、52両中廃車された4両を除く48両がE235系0番台の10号車になった。
- ↑ 東海道線の113系は寒冷化対応されなかったので、宇都宮線・高崎線に乗り入れることができなかった。
関連項目[編集]
- 鉄道総研R291形電車(足回りは本系列をベースにしている)
- 本系列の設計思想を採り入れた私鉄電車
- 相鉄10000系電車
- 東急5000系電車 (2代)
- 東京都交通局10-300形電車
- 東京都交通局10-300R形電車
- 南海8000系電車 (2代)(本系列の部品を一部取り入れている)
- 通勤・近郊電車の標準仕様ガイドライン
- トレインチャンネル
- E231系の編成一覧
外部リンク[編集]
- JR東日本:車両図鑑>在来線 E231系 - 東日本旅客鉄道
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