電車

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電車(でんしゃ)とは、外部から電流を取り入れて自走出来る客車、もしくは貨車のことをいうが、通俗的には気動車なども含めた鉄道車両全てを指すことが多い。また、鉄道という交通機関そのものを指して使うこともある。

概要[編集]

機関車客車を牽引するよりも電車の方が加速力が大きく、方向転換も容易である。また、電車は1両単位の軽量化が容易で、ワンマン運転も容易である。日本で非電化区間で気動車が発達したのも同様の理由である。
また、電車が機関車牽引の客車列車を駆逐したのはこのような理由に加え、日本では軸重の関係で重い機関車が進入できない路線があるのと、機関車1両分が有効長で損をしているからである。

構造[編集]

線路の上に設けられた架線や線路際の第三軌条から車両の屋根にあるパンタグラフ(第三軌条の場合は車両の下にある集電靴)を経て車両に電流(直流交流)を取り入れ、制御機器を介して電動機を回転させて走行する。なお、一般的に普及している鉄輪式車両では、電動機へ流れた電流は車輪を通じてレールに還る電気回路となっており、レール側が低電位となっている。

速度制御[編集]

(パワーエレクトロニクス枯れた技術も参照)

抵抗制御[編集]

電車の電動機は長年直流電動機が使用された。これは抵抗器で電動機に流れる電流を制御(抵抗制御)することで、低速高トルク、高速低トルクの走行性能を出しやすいからであるが、高速から低速にするとき、発電ブレーキに使われる抵抗器を通る電気エネルギーは熱として排出せざるを得ず、また整流子等の部品保守も欠かせなかった。そこで回生ブレーキの開発(国鉄EF16電気機関車)、国鉄711系電車によるサイリスタ使用によって抵抗器を使わない速度制御が行われるようになった。

サイリスタチョッパ制御[編集]

直流電車からの抵抗器追放として1960年代後半から外部に排出する熱エネルギーを低減し、電力を有効活用する目的で、チョッパ制御が開発された。チョッパ(chopper)とは「切り刻む」等の意味で、サイリスタ等の半導体素子などを利用して、惰行を活用して電流の導通を一時offして、onの時間とoffの時間の間隔を調整して直流電動機に流れる電流を制御する方法を取る。しかし、国鉄が201系電車で採用した電機子チョッパ制御はコストが高めについた[1]ため、国鉄は205系で新たに界磁添加励磁制御を用いて、電力の有効活用を図った。

インバータ制御[編集]

直流電動機は前述のように保守に手間がかかるため、三相交流電動機を用いる車両が増加している。三相交流電動機(同期電動機または回転電動機)で低速高トルク、高速低トルクの性能を出すには速度に応じて周波数を変えるだけでなく、電圧も変える必要があり、直流から三相交流に変換するための回路のオンオフを高速で行うスイッチング半導体デバイス(GTOサイリスタ)[2]を使用するVVVFインバータ制御技術が確立した1980年代後半から1990年前半にかけ直流電動機からの移行が進んだ。

反面、交流電化区間では、一旦、ダイオードを組み込んだコンバータで単相交流を整流してからスイッチング半導体デバイスを組み込んだインバータ三相交流に変換して[3]、三相交流電動機を駆動する二度手間の電力変換をするため、車輌が高価になり、輸送量の少ない線区では普通列車を気動車運行する架線下DCの区間が生じている。

駆動方式[編集]

以前はモーターの歯車と車軸側の歯車が直接かみ合った吊り掛け駆動方式を採用していたが、騒音、振動が大きいため、カルダン駆動方式を採用するようになった。これにより、小型、軽量のモーターを採用できるようになった。
なお、電気機関車やモーターを動力とする電気式ディーゼル機関車については、引き続き吊り掛け駆動方式を採用している。

歴史[編集]

日本で初めて路面電車が姿を見せたのは、明治23年(1890年5月上野公園で博覧会が開催され、アメリカ製の電車2台が出展され一般入場者を試乗させて、大変な人気を呼んだ。そして、路面電車が市街を最初に走ったのは、明治28年(1895年1月31日京都府京都市七条駅から伏見油掛通りの間で、電気は琵琶湖疎水を使って発電していたとされる。この電車の運転席には窓ガラスが無く、雨の日は菅笠をかぶって運転していた。また、出発の合図に車掌が「チンチン」と鳴る鐘を鳴らし、走行中に運転手が歩行者や大八車などに鳴らした警鐘が「チンチン」という音がしていたことから、「チンチン電車」と呼ばれるようになったという。また、運転席の横に「電車告知人」と呼ばれる子供が立って、電車の走る前を昼は赤い旗、夜は提灯を持って「電車が来まっせー」と走りながら呼び知らせていた。

その後、京都に続いて明治31年(1898年)に名古屋、明治32年(1899年)に京浜電鉄、明治35年(1902年)に江島電鉄が運転を開始。明治36年(1903年)に東京大阪で電車が開始された。

特殊な電車[編集]

  • 蓄電池電車
    • 非電化区間でも走れる電車。ブレーキ時に発電機となるモーターや電化区間や駅構内での架線から得た電力を蓄電池充電しておけば、非電化区間でもその電力で走行できる。なお、JR東日本のEV-E301系電車は、烏山線全区間を無架線で走行できる蓄電量を持っている。
  • バイモード車両
    • JR東日本のE001系は架線集電とディーゼルエンジンを搭載した電気式ディーゼル発電を併用するEDC方式を採用して、架線の制約を無くしている。
  • レールを備えない無軌条電車、いわゆるトロリーバス。鉄輪式の電車と違って、電流を帰線できるように架線を2本張っている。
  • 札幌市営地下鉄で採用のゴムタイヤ式案内軌条式電車。鉄輪式の電車と違ってレール側に電流を還すために、案内軌条に接触させる負集電器がある。
  • ケーブルカー
    • パンタグラフは付いているが、走行用としては使わず、照明の電気などを取り込む為に使われている。

法令[編集]

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 堀孝正『パワーエレクトロニクス』オーム社出版局2002年2月25日第1版第7刷発行
  • 酒井善雄『電気電子工学概論』丸善株式会社
  • 力武常次、都築嘉弘『チャート式シリーズ新物理ⅠB・Ⅱ』数研出版株式会社新制第11刷1998年4月1日発行
  • 矢野隆、大石隼人『発変電工学入門』森北出版株式会社2000年9月13日第1版第4刷発行
  • 西巻正郎・森武昭・荒井俊彦『電気回路の基礎』森北出版株式会社1998年3月18日第1版第12刷発行
  • 電気学会『電気施設管理と電気法規解説9版改訂』電気学会

脚注[編集]

  1. 大手私鉄では、電機子チョッパのよりコスト安で、複巻電動機を用いてブレーキ時のみチョッパ制御を行う界磁チョッパ制御が普及したが、国鉄は複巻電動機採用が保守現場から嫌われて単巻電動機に固執したため、普及しなかった。
  2. ゲートターンオフサイリスタ、ターンオフが可能な半導体素子。
  3. 直接、単相交流から三相交流に変換できる装置は実用化されていない。但し、三相交流同士の直接変換であれば、産業向けにマトリックスコンバータサイクロコンバータの一種)が実用化されており、国鉄でもクモヤ791系電車で、同期電動機とサイクロコンバータを用いて試験が行われた。