軌間
軌間とは、鉄道におけるレールの幅のことである。
概要[編集]
列車などの物体が、安定して立つ・走るためには、最低でも左右に2本、前後に2本ずつの足が必要である。列車は車輪をレールに乗せて走るが、左右に2個ある車輪それぞれがレールの上に乗る必要がある。この2本のレールの間隔のことを、軌間と呼ぶ。
特徴[編集]
軌間は、広い方が、安定して高速走行しやすく、乗り心地も良い。列車の車体を広くすることができ、その分乗車人数や積載量を増やしやすい。そのため、一般的には軌間が広い方が好まれる。
一方で、軌道敷設のコストや占有面積を削減するために、軌間を狭くすることもある。山岳地帯や軽便鉄道で、狭い軌間を採用するケースが多い。狭い軌間の方が急カーブを曲がりやすいとも言われるが、これについては諸説ある。
また、軌間の異なる線路同士を直通する列車を走らせる場合、境界駅で台車交換の作業が必要となる。台車交換は手間・コストとも大きくかかる作業なので、通常は直通運転の可能性のあるエリア内は軌間を揃えるか、複数軌間乗り入れ可能な三線軌道[1]にするかして、台車交換不要にするのが一般的である。なお、軌間の異なる線路同士を直通可能な軌間可変列車も存在し、スペインで実用化されている。
軌間の種類[編集]
広軌[編集]
標準軌(1435mm)より広い軌間。インド、モンゴル、旧ソ連、フィンランド、スペインで標準的な軌間となっている。これを採用した理由はナポレオン戦争であった。第一次世界大戦、第二次世界大戦でドイツ軍がロシア、ソ連に速やかに侵攻できず、軌間の違いによって国を守られた例である。なおスペインでは、在来線が広軌である一方、新幹線がフランスと共通にするため標準軌になっており、本来の軌間の特性とは逆の関係になっている。
- 1676mm(5 ft 6 in) - インドで使用。2024年時点では世界最広軌。
- 1668mm(6 pc[2][3]) - イベリア軌間。スペイン、ポルトガルで使用。
- 1524mm(5 ft) - 旧ソ連、モンゴル、フィンランドで使用。
- 過去・ボツ事例
- 2140mm(7 ft 1/4 in) - イギリスのグレート・ウェスタン鉄道にて使用されていたが1892年までに標準軌化されて全滅。
- 3000mm - 戦時中のドイツにて計画されていたブライトシュプールバーンにおける採用予定があったが終戦でボツになった。
標準軌[編集]
世界で一番一般的な軌間。蒸気機関車の実用化に成功したスチーブンソンの出身地、イギリス北東部の馬車が使用していた軌間である。
日本では狭軌が一般的だが、旧国鉄との競合路線が地方鉄道法を回避するため、軌道条例準拠で標準軌を採用し、その後国鉄との直通運転を行わない鉄道会社や第三軌条方式の地下鉄が採用した。高速性重視の新幹線も標準軌を採用した。使用地域は以下の通り。
- 1435mm(4 ft 8.5 in) - 日本の一部と、韓国、中国、西ヨーロッパなどで使用。日本での使用路線詳細は以下を参照。
狭軌[編集]
本来は山岳鉄道・軽便鉄道向きの軌間。主な種類と使用地域は以下の通り。
- 1372mm(4 ft 6 in) - スコットランド軌間。かつてはスコットランドで使用していた様だが、今は日本ガラパゴスの軌間である。都電が標準軌間としていた名残で、京王電鉄(井の頭線以外)、都営新宿線、東急世田谷線、函館市電が使用している。
- 1067mm(3 ft 6 in) - ケープ軌間。ノルウェーの山岳地帯発祥で、南アフリカから世界のイギリス植民地に広がった。日本では草創期の国鉄が採用し、地方鉄道法などで法規定したことから、今でも一番一般的な軌間となっている。詳細を以下に示す。
- 1000mm - メーターゲージ。ヨーロッパの山岳鉄道の他、ベトナムなどで使用している。
- 914mm(3 ft) - 青函トンネル竜飛斜坑線で採用。過去には、明治期の阪堺鉄道や、岡山の西大寺鉄道、朝倉軌道など九州北部の軌道線で採用していた。
- 762mm(2 ft 6 in) - かつては日本国内の軽便鉄道、森林鉄道に使用されていた。四日市あすなろう鉄道、三岐鉄道北勢線、黒部峡谷鉄道や台湾の阿里山森林鉄路で使用している。