国鉄117系電車
国鉄117系電車(こくてつ117けいでんしゃ)は、日本国有鉄道が設計・製造した直流近郊型電車の1形式。
登場の経緯[編集]
京阪神地区の新快速には1972年から新幹線岡山開業で余剰となった153系が投入されていたが、経年が15年以上経過した車両があることや、転換クロス装備の阪急6300系電車や京阪3000系電車 (初代)と比べるとボックスシートの車内設備は見劣りをしていた。
そこでこれらの課題点をもとに本系列が1979年より登場。同じく、153系や155系が快速運用されていた名古屋地区にも1982年から登場した。
構造[編集]
キハ66系に準じた、20m級の両開き2扉の車体を備え、車内も転換クロスシート装備と、当時の急行型を超越した装備をもつ。
冷房装置は集中式のAU75系を搭載した。
主要機器については417系で実績のあるMT54系主電動機に、CS43系制御装置とされ、画期的な車内設備に対し保守的な機器類となった。
台車はDT32系空気ばね台車を採用。485系にも採用されており、乗り心地は特急レベルと言って良い。100・200番台は211系で実績のあるDT50系ボルスタレス台車が採用された。
なお、185系電車の開発元となった形式でもある。
形式別概説[編集]
- クハ117・クハ116
- 編成両端に構成される制御車。クハ116にはCPを搭載。
- クハ117の100番台とクハ116の200番台はトイレを持たない他、200番台自体もクハ116のみの設定である。
- モハ117・モハ116
- 互いにユニットを組む中間電動車。
上記のことからわかる通り、サハは存在しないため、後年登場した8両固定編成では6M2Tを組んでいる。
- クロ117・クロ116
- クハ117とクハ116から改造された夜行列車用車両。7000番台のみの在籍。
運用[編集]
まず京阪神地区、次いで名古屋地区に投入された。地区別に解説する。
京阪神地区→JR西日本[編集]
新快速向けに6連24本の計144両が増備され、うち3本は100番台であった。0番台増備により同数の153系が代替され、状態不良車64両が廃車された以外は他地区に転属した。また、これらはJR西日本にすべて継承された。
JR化後は221系の増備により普通運用に回されるようになり、1990年に入ると最高速度115km/hに引き上げ、かつ福知山線での運用も開始された。
1991年には新快速の最高速度120km/hへの引き上げに伴い6連10本を8連、4連各5本に組み替え、奈良線や北陸本線への運用拡大も行った。
1992年には115系非冷房車置き換えのために一部が岡山地区へ転属。これに伴い一部が4連化され、抜かれた中間車22両は115系3500番台へと転用改造されている。これと同時にセミクロス化を行った300番台も54両登場した。
そして1999年には新快速の最高速度を130km/hに引き上げたため、新快速運用から完全撤退。2001年には6両が追加で115系3500番台に改造されている。
2000年以降は221系の運用拡大により福知山線や奈良線からの撤退が始まり、逆に和歌山地区や下関地区にも運用を拡大した。2006年以降は湖西線や草津線での運用も始まった。同年には福知山線からの運用も、脱線事故の影響もあり撤退している。
長らくの間廃車が出ていなかったが、2015年より廃車が始まり、2023年4月1日をもって京都地区からは全滅。7月には最後の砦となる岡山地区からも全滅し、11月までに一般車は全廃となり、2023年12月現在は115系化された車両を除くとWEST EXPRESS銀河に改造された6両のみが在籍する。
しかし、この6両についても特急型に余剰が発生する2024年の北陸新幹線延伸開業以降動きがある可能性があり、今後に要注目である。
名古屋地区→JR東海[編集]
1982年に6連9本を投入。当初は165系との併用で快速列車などに運用された。1986年には運用の柔軟化と短編成化のため先頭車18両が登場し、計72両体制となり、165系に替え211系との併用となった。これらはすべてJR東海に継承された。
1989年からは311系が投入されたが、ともに新快速にて運用されるも、1999年の313系投入で新快速運用のほぼすべてからは撤退、これに伴い起動加速度も鈍く、関西と違い最高速度が110km/hに据え置かれた本系列は日中の出番がなくなり、ほとんど朝夕のみの仕業となった。豊橋 - 浜松間や大垣 - 米原間での運用も見られたがほとんどは大垣車両区か熱田駅か大府駅などに留置され続けた。
1992年には一部座席のロング化を先頭車4両にのみ施工。2009年には5本を除いてATS-PTの設置も行われた。
2010年にはトレイン117として4両が改造された。これと同時に廃車も始まり、2013年のダイヤ改正で定期運用を終了。同年度内に残存車もすべて廃車となり、JR東海では形式消滅となった。
廃車後、クハ117-30, モハ117-59, クハ116-209の3両がリニア・鉄道館に静態保存されていたが、N700系X0編成と入れ替わる形でクハ117-30を残して解体、クハ117-30はクロ381-11(同時に解体)と入れ替わる形で引き続き静態保存されている。
愛称[編集]
登場時には京阪神地区で「シティライナー」、中京地区で「東海ライナー」の愛称があったが定着しなかった。
改造[編集]
113系や115系に対してなされた体質改善工事は一切なされていない。
115系3500番台化[編集]
一部のモハは115系3500番台に改造され、中国地方の115系に組み込まれた。115系3000番台などの既存車とは裾絞りが異なる。
セミクロスシート化[編集]
福知山線の117系はセミクロスシート化され、300番台に改番された。
WEST EXPRESS 銀河[編集]
モハ116-106、モハ117-106を脱車した京キトT2編成が改造され、寝台列車とされた。改造内容はライトLED化、一部ドア撤去、ドアチャイム設置、ベッドや座席の設置など。改造後は原番+7000され、クハ117、116はクロ117、116に変更された。寝台列車なのに「ネ」つかないんだ…
保存車[編集]
リニア・鉄道館にクハ117-30が静態保存されている。また、京都鉄道博物館にクハ117-1が保存される予定である。
近い世代の車両[編集]
関連項目[編集]
JR東海の鉄道車両 |
JR西日本の鉄道車両 |