名古屋市
名古屋市(なごやし)は、愛知県西部にある市で、尾張地方に含まれる。愛知県の県庁所在地であり、政令指定都市に指定されている。16の行政区を有する。
地理[編集]
西は蟹江町・大治町・あま市、南西は飛島村、北西は清須市、北は北名古屋市・豊山町、北東は春日井市・瀬戸市・尾張旭市、東は長久手市・日進市・東郷町、南東は豊明市、南は東海市・大府市と接している。
名古屋市の中心地点は、中区千代田5丁目である。
名古屋市役所・愛知県庁は、中区北部、名古屋の中心部の北寄り、名古屋中北部に位置する。
名古屋市とその周辺は、東京都と大阪府の中間に位置することから中京(ちゅうきょう)と呼ばれ、名古屋市は中京工業地帯の核として発展した。東京都と大阪府を結ぶ一番広い道路である国道1号線がある。2019年時点の人口は約232万人であり、自治体別では横浜市と大阪市に次いで日本第3位である。
行政区分[編集]
名古屋市の行政区分は熱田区、北区、昭和区、千種区、天白区、中川区、中区、中村区、西区、東区、瑞穂区、緑区、港区、南区、名東区、守山区の16の行政区に分けられている。
なお、同じく県名と異なる県庁所在地市である横浜市や神戸市と違い、県名の行政区は無い。
歴史[編集]
古代〜近代[編集]
名古屋市は先史時代から人が住んで集落が形成されていたことが、市域に残る縄文時代・弥生時代の遺跡から明らかになっている。ただ、奈良時代に国府国分寺、国分尼寺が設けられたのは北西の稲沢市である[注 1]ため、当時の名古屋市の地域は尾張国の中心地ではなく、むしろ開発の遅れた後進地域だった可能性が指摘されている。
名古屋に現在のような市街地の碁盤目状の町割りができたのは清洲越しが行われた江戸時代の初期である。
下之一色では明治30年頃には西洋野菜の栽培が始まっており、アスパラガス、オクラなどが栽培されていた。
名古屋の地名の発祥[編集]
12世紀後半に源平合戦(治承・寿永の乱)が発生した際、小野法印という高僧の荘園として「那古野荘」(なごやのしょう)として歴史上の記録に見えるのが、名古屋の名前が確認できる最初とされている。なお、明治3年(1871年)に現在の「名古屋」表記で統一されるまで、「那古屋」「那古野」「名護屋」などと表記されていたことが記録上から明らかになっている。
現代[編集]
21世紀に入ってからは、名古屋駅周辺を中心に大規模な再開発事業が進み、超高層ビルが建ち並ぶ地区となり、海外資本の有名ブランド店も進出している。2010年代に入ってからは、リニア中央新幹線の「東京-名古屋間」建設工事着工が実現し、「リニア版名古屋駅」ビル完成に向けて工事が進んでおり、駅前周辺ではそれと歩調を合わせてさらなる大規模再開発事業が次々と進行している。複数の超高層ビルが建設中であり、これらが完成すれば名駅地区は10棟前後の超高層ビルが立ち並ぶ日本国有数の超高層ビル群になる。
2006年(平成18年)3月20日、名古屋市との合併を検討していた師勝町と西春町が、合併した場合「名北区」となる案が出されていたが、最終的に単独での新自治体創設で合意し、名古屋市北西部に隣接する新たな自治体北名古屋市として合併成立した。明治時代以降名古屋市以外の自治体で「名古屋」との名称を含む名を持つ市町村名は史上初となる。
2015年4月には世界8番目かつ国内では初となる大規模テーマパーク型レゴランドジャパン名古屋が正式に着工し、名古屋市港区金城ふ頭にホテルなどの関連施設と共に2017年オープンした。しかし、関連施設共々不振が続いている。
最近では邦画の撮影の舞台として名古屋市内の街並みが登場する事が増えてきた(AMV限定生産作品終わりのセラフやたけし映画『龍三と七人の子分たち』などが該当する。)。
また街中で東海圏テレビ放送局が番組を収録している平日午後などは、全国区で活躍しているタレントに出会える可能性が高い地区も市内に複数ある。
他地域から見た印象[編集]
愛知県の県庁所在地である名古屋市は、東京、大阪と並ぶ大都市である。名古屋市を中心とする中京圏は日本の3大都市圏の一つではあるが、「その割には田舎」という印象で語られる。高層ビル群があったりするのは、名駅エリアとそこから地下鉄東山線で2駅の栄エリア周辺のみで、他には市内でも田園があるなど自然豊かな地域もある。ただ、名古屋は東京や大阪より面積が狭く、住宅地の割合も高い。
市民は車を基本的な交通手段としているが、駐車場は狭くて高い。地下鉄は発達しているが料金が高い。平日朝には家族で喫茶店に大挙するのが名古屋市民の定番と他地方民からは思われている。
市長の河村たかしがコスプレして名古屋弁を操るイメージを定着させているなどメディア露出が多いが、市民からは不評のようだ。河村たかしが喋る名古屋弁はいわゆる下町ことばで、名古屋弁の中でも下品なほうに位置する。ただし、他地方民にはこのイメージが定着してしまっているため、イメージを変えるのはもはや不可能であろう。
地味な都市[編集]
名古屋市は2016年では、都市的地域の人口は約1004万人であり、世界第36位の都市である[1]。また、アメリカのシンクタンクが公表したビジネス・人材・文化・政治などを対象とした総合的な世界都市ランキングにおいて、世界第69位の都市と評価された[2]。
しかし国内では、同市は2016年6月に東京23区と札幌、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡の7市に住む20~60代の人間を対象にインターネット調査を実施しており、各都市から418人ずつ回答を得られている。それによると、「最も魅力に欠ける都市」では、2位の大阪(17.2%)を引き離して30.1%に上り、「最も魅力的に感じる都市」に名古屋を選んだのは全体の3%で最下位となっている。そして「どの程度行きたいか」を尋ねて指数化したところ、名古屋は「1.4」となり、首位京都(37.6)の27分の1という結果となっていたことが明らかとなった[3][4]。このような結果を踏まえて、名古屋の情報・魅力を如何にして国内外に対して発信・宣伝していくのか、戦略を大きく考えていくことが課題であるとされている。
なお、この原因として名古屋市の広報が上手くないといった理由がある。
産業[編集]
現代において、名古屋は日本を代表する企業であるトヨタ自動車をはじめとした自動車製造業の本拠地として有名であるが、第二次大戦前は名古屋航空機製作所において国際的に有名な零戦(零式艦上戦闘機)など多数の航空機を製造した三菱重工業の拠点となっている。また、市内にある名古屋航空宇宙システム製作所では国産H2Aロケットなどを製造しており、現在でも日本における航空宇宙産業の中心地である。
航空機製造産業に関しては日本の中枢を占めており、国産ジェット旅客機MRJ関連産業の他に、ボーイング社の次世代機B787型機の胴体や主翼などを市内各所及び周辺地域で製造している。名古屋市で製造されたB787の大型部品は中部国際空港まで陸送された後、特別貨物輸送機にてボーイング社の組み立て工場がある米国シアトルまで運ばれている。
その他には、自動車製造大手トヨタ関連グループ企業、日本特殊陶業やパロマなど製造業関連の大企業が拠点を構える。
また、東海道新幹線を擁するJR東海が名古屋に本社をおいており、同社の子会社となってしまった日車が豊川市に事業所を有し[注 2]、大量に新幹線車両を量産しているが、これに関してはあまり有名ではない。
文化[編集]
何かと誇張される名古屋文化全般だが、本来の城下町としての上町言葉や料理などは、京都のそれに限りなく近いものであったが、戦後の一部マスコミや芸人などがテレビで名古屋の下町言葉や食文化を過剰に強調して全国に伝えた為に、本来の京都風上町文化は影に隠れてしまい、現在ではその経緯すら知らない地元民も多い。
このように名古屋の文化に対して、戦後マスコミからの大きな風評被害が発生した事は言語学者も指摘している。現在では近代まで長らく「名古屋弁」であった上町方言を話せる人物は旧市街に暮らす一部の高齢者のみとなっているが、それらの本来の上品な名古屋弁を後世に残そうと、東区に住む高齢の上町方言ネィティブスピーカーの元に出向き、地道な録音活動を行っているNPOも存在している。研究者の中には近代までの本来の名古屋方言は、現在のように必要以上にデフォルメされたものではなく、地理的にも非常に近い平安京(京の都)で発展した関西風アクセントを持つ「京ことば」に近いものであったとの指摘も多い。
市内の街歩きの中心スポットとして人気がある栄地区や大須地区から熱田神宮のある熱田区までは、車で10分程の距離であり、名古屋城や徳川園などの観光スポットが市北部にある為、街が放射状に広がる東京・大阪とは違い、主要な観光地が市街の南北方向に連なっている事も特徴のひとつである。
戦国三英傑(織田信長、豊臣秀吉、徳川家康)から、江戸時代にこの地で独自の文化を発展させた尾張徳川家所縁の徳川園日本庭園や名古屋城など日本史に関連した観光資産はとても豊富な土地柄である。
名古屋の旧国名である尾張藩の「尾張」とは、古代奈良盆地にあった大和朝廷の影響力が及ぶ前に、この地を治めていた古代の豪族「尾張氏」に由来する地名が残ったものであり、島根県の出雲と共に、後の平城京を中心とした大和朝廷が勢力圏を日本中に拡大する以前から独自の豪族政権が成立していた数少ない地域のひとつだといわれている。
江戸の町すなわち現在の東京都を創り上げた徳川家康も、愛知県岡崎市出身であるため、大阪城と近代大阪の市街区を建造した「太閤はん」こと豊臣秀吉(現在の名古屋駅周辺出身)と共に、東西の文化の基礎を造った人物が愛知県及び名古屋市出身であることは、前述の古代豪族尾張氏の存在も含めて、現在の名古屋市民の日本史に対する歴史観に、他の地域ではみられない一種独特のアイデンティティを形成する要因となったと指摘する研究者もいる。
食べ物[編集]
詳細は「名古屋メシ」を参照
中心部の栄地区から名古屋駅周辺地区、金山地区にかけては大規模な百貨店街や、繁華街が存在し、飲食業やサービス業・小売業も盛んである。最近の名古屋メシブームも追い風となり、国内外からの観光客は増加傾向にある。一方、名古屋メシは名古屋で日常的に食べられないものも多い。
地理的には京都や奈良など近畿に近いが、大河である木曽三川が間に流れていた為、その地理的な特異性が西と東をミックスした独特の方言や食文化を生んだといわれており、中でも日本三大地鶏のひとつである名古屋コーチン発祥の地らしく、鳥肉の味には特にこだわりを持つ人が多いといわれている。
フキの生産量が全国一位である愛知県東海市をはじめとして、名古屋市西部を中心に食用フキの栽培が盛んである。醤油と砂糖で煮込み佃煮にした郷土料理の「きゃらぶき(伽羅蕗)」や、早春の時期には新鮮な「ふきのとう」が市内のスーパーマーケットで気軽に手に入るため、天ぷらにして食べる家庭も多い。
市立中学校の昼食は、一般的な学校給食のある県下の他の自治体と異なり、「スクールランチ」と呼ばれるランチボックス形式の希望者のみの弁当購入のかたちを採っている。
交通[編集]
高速道路[編集]
自動車専用道路[編集]
鉄道[編集]
東海旅客鉄道 (JR東海)[編集]
名古屋鉄道[編集]
近畿日本鉄道[編集]
拠点駅 - 近鉄名古屋駅
名古屋市交通局 (名古屋市営地下鉄)[編集]
東海交通事業[編集]
名古屋臨海高速鉄道[編集]
愛知高速交通 (リニモ)[編集]
名古屋ガイドウェイバス (ゆとりーとライン)[編集]
なお、JR東海・名鉄・名古屋市交通局・近鉄の4社局により、鉄道利用時のマナーなどが呼びかけられることがある。
路線バス[編集]
水運[編集]
東京の水上バスのような市街地を内航する大規模の交通機関はない。
関連項目[編集]
脚注[編集]
- 注
- 出典
- ↑ Demographia: World Urban Areas & Population Projections (英語)
- ↑ Global Cities 2016AT Kearney 2016年6月25日閲覧。
- ↑ “都市ブランド・イメージ調査”. 名古屋市観光文化交流局 (2016年7月8日). 2016年9月15日確認。
- ↑ “「行きたくない街」は名古屋 市自ら調査、つらい結果に”. 朝日新聞デジタル (2016年8月30日). 2016年9月5日確認。
外部リンク[編集]