グリーン車

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淡緑6号(慣用色名称「若葉色」)
16進数表記#97bc94
RGB (151, 188, 148)
HSV (116°, 21%, 74%)
HSL (116°, 21%, 74%)
HWB (116°, 58%, 27%)
XYZ (36, 45, 35)
Lab L:72.68 a:-20.19 b:16.25
黄緑7号(慣用色名称「黄緑色」)
16進数表記#57b544
RGB (87, 181, 68)
HSV (110°, 62%, 71%)
HSL (110°, 62%, 71%)
HWB (110°, 27%, 29%)
XYZ (21, 35, 11)
Lab L:66.13 a:-49.37 b:47.94

グリーン車(グリーンしゃ)とは、日本国有鉄道及びその後継会社の特別車である。ただし、いくつかの私鉄第三セクター鉄道にも同様な車両が存在する。

概要[編集]

旅客車両は特別料金の不要な普通車が基本だが、豪華な室内設備を欲する旅客のために特別料金を徴収し、提供する車両のことである。ヨーロッパの鉄道における1等車に相当する。
現在、四国以外のJRのグリーン車の車番は二文字目が「ロ」である。これは、国鉄のかつての車両番号の二文字目は一等、二等、三等に対応した、イ、ロ、ハの3種類で、グリーン車の前身が二等車であることの名残である。

JR東日本の東北新幹線、JR北海道の北海道新幹線などには、さらに上のグランクラスが連結されている。

料金体系[編集]

グリーン車に乗車するときは乗車券[注 1]のほか、グリーン券などの特別車両券が必要で、急行列車に乗車する時はさらに急行券特別急行券が必要である。
普通列車のグリーン料金と急行列車のグリーン料金は異なっている。いずれも距離が長くなるにつれて料金が上昇し、急行列車のグリーン料金はB寝台料金よりも高くなる。また、寝台料金同様、小児用の設定はない。特急列車のグリーン料金は急行列車と同額であるが、特別急行券は、通常期の特急料金から自由席分が割り引かれる。
グリーン定期券も発売されている。大人用のみで小児用は発売されていない。
いずれも1989年消費税導入以前は通行税10%を徴収していた。
グリーン券は一列車に一枚必要である[注 2]。ただし、東京近郊の普通列車のグリーン券はこの限りでなく、途中下車や逆方向乗車をしない限り、一枚で済む。

満員の場合[編集]

グリーン車は指定席のことが多いがJR東日本の中距離列車のグリーン席は自由席であり、豪華さよりも着席できることが重要視されている。しかし満席の場合は座れず、グリーン車のデッキにいるだけでも料金が取られる。

歴史[編集]

前史[編集]

鉄道が誕生する以前から、高額な運賃を旅客から徴収して豪華な室内設備を提供する公共交通機関として馬車旅客船があり、鉄道もこれに習って同様な営業を始めた。

沿革[編集]

日本に鉄道が開通した1872年、旅客車の等級制度として、上等、中等、下等と設けられ、それぞれの運賃も定めた。現在のグリーン車は中等、普通車は下等に該当する。「下等車に乗る客は『下等』の客か」という意見に押され、1900年に上等は一等、中等は二等、下等は三等と改称された。これは1960年まで続く。
1960年東海道本線に最後まで連結されていた特別急行列車の一等展望車が二等展望車に格下げされて一等が事実上廃止され、翌1961年に二等を一等、三等を二等に改編した。
さらに1969年5月9日運賃等級制度を廃止して一本化し、従来の一等に乗車するときは特別料金を徴収することにした。この制度変更で二等は普通車となり、一等はグリーン車(一等寝台車はA寝台車)と名付けて乗車する場合は運賃のほかにグリーン料金を徴収することとし、現在に至る。

登場に至った経緯[編集]

昭和36年10月1日日本国有鉄道ダイヤ改正によって日本国有鉄道等級制度は三等を二等に、二等を一等に格上げして、他の先進国と同様、二等級制度になった。しかし、時代を経るごとに二等の室内設備は良くなっていった。特別急行列車はすべて冷房化され、座席は回転クロスシートになった。急行列車も冷房化されつつあった。また、二等が満席であってもわざわざ二等の2倍の値段の一等にするくらいなら一等との値段の差が縮まりつつある飛行機にする例も増えてきた。さらに発券面でいえば、二等乗車区間と一等乗車区間が混在する場合、電子計算機の普及していないこの時代には繁雑なものであった。このほか、当時の世相として江戸時代から続く階級制度が、学生運動労働運動の影響で希薄になりつつあり、一般庶民が一等車に乗車できるのは新婚旅行の時だけ、という考え方もなくなりつつあった。

1969年登場時のグリーン車とその後[編集]

特急形
国鉄181系電車-モロ181-クロ180-クロハ181-サロ180-サロ181-クロ481-サロ481-サロ581-キロ80-キロ180-ナロ20
急行形
サロ152-サロ163-サロ165-サロ169-サロ451-サロ455-キロ26-キロ27-国鉄キロ28形気動車-キロ58
旧型客車
スロ51-スロフ51-スロ52-スロフ52-スロフ53-国鉄スロ54形客車-オロ11-スロ62-スロフ62
近郊形
サロ111-サロ110

格下げ[編集]

上記の車両は2023年にすべて廃車となったが、これまでに、モロ180、モロ181、クロ481、サロ481、キロ80、キロ180、サロ165、サロ455、キロ28、スロ51、スロフ51、スロ52、スロフ52、スロフ53は普通車に格下げされた車両がある。

室内設備[編集]

定期列車について述べる。

中央通路の両側に座席間隔が広い、深く倒れる2人掛けのリクライニングシートが並んでいる。これは戦後間もなく製造されたスロ60から始まった。座席間隔は1250mmとし、従来の二等車とはあまりにも室内設備の格差が大きかったために、当初は一等車スイ60として落成する予定だったが、結局、特別急行列車を除いて二等運賃以外に「特別二等料金」を徴収することにした。座席間隔はスロ53から1160mmとなって現在に至る。

これ以外の室内設備として回転クロスシート座敷がある。前者はサロ111サロ110[注 3]国鉄キロ25形気動車、サロ111とサロ110は1990年代までに廃車、後者はサロ481 500で、客室部分が再びリクライニングシートに置き換えられた。

席の配置は国鉄時代は通路を挟んで2列と2列の4列配置が標準であった。民営化後はシートピッチが広くても横方向が狭いのでは競争力に劣るということで2+1配置の3列配置が一時広まった。しかしJR東日本は定員確保の名目で3列配置を90年代半ば前には取りやめ、自社線内完結の距離300㎞以内のグリーン料金をJR他社に比べてやや割安としている。

便所[編集]

国鉄時代の車両の便所和式便所だが、客車グリーン車と特急型グリーン車は原則として客用出入口の近くにある和式便所の反対側の車端部に洋式便所があった。スロ60は2か所の便所はいずれも洋式便所だったが、日本人利用客が不慣れだったために和式便所も設けられた。 (→列車便所

合造車[編集]

グリーン車登場以前は2・3等合造車、1・2等合造車は存在したが、グリーン車登場時には廃車や格下げによりクロハ181を除きほとんど姿を消した。1975年キロハ28が1両改造された後、1985年3月14日ダイヤ改正クロハ481が改造によって多数が登場した。

国鉄分民化直後、JR九州の783系でロハ合造車が新規投入され、JR四国でもキロハ186形が登場している。

JRでの現況[編集]

首都圏の普通列車[編集]

グリーン車はその性質上、中長距離を走る優等列車に連結されることが多いが、長距離通勤客が非常に多い首都圏では、JR東日本(一部JR東海)の以下の路線の普通列車・快速列車にもグリーン車が連結されている。

国鉄時代から設定があったのは東海道線と横須賀・総武快速線のみで、JR発足後に上野駅に発着し上野東京ラインへ乗り入れる高崎線、常磐線[注 5]、宇都宮線で連結が始まり、計画中の中央快速線共々、通勤客がラッシュを避けたり、日中にクロスシートに確実に座れるために設定されている。料金は特急列車の普通車と大差無い。自由席であり、着席の保証はない。多くは、2扉の二階建車両を充当していて、料金不要の京阪8000系ダブルデッカー車と乗車感覚が近いが、京阪8000系に負けるという意見もある。

また、JR東日本では最近の車両、中央線特急のE353系や常磐線特急のE657系などでは普通車のグレードが大幅に上がったにも関わらず、グリーン車は4列シートで、普通車とグリーン車の座席の質がたいして変わらないともよく言われる。これらの車両ではグリーン車は豪華な座席より静かな空間を提供してると言える。

首都圏以外[編集]

国鉄時代の阪神地区、JR発足以降の静岡地区(沼津 - 静岡 - 島田間)にも首都圏同様に普通列車グリーン車の設定があったが、利用率が低く阪神地区は1980年9月、静岡地区は2004年10月を以て廃止されている。

なお、瀬戸大橋線では快速マリンライナーにもグリーン席の設定がある。こちらは指定席扱いで、着席サービスを提供するという役割が強い。

また、JR西日本にも同様のコンセプトの車両「Aシート」があるが、こちらは座席定員制の普通車である。他の車両が転換クロスシートということもあり、実際に他の座席との質の差は小さい。実際にグリーン車扱いはしておらず、車両記号の2文字目も普通車を表す「ハ」である。

ちなみに1969年に比べて、グリーン車を連結している列車が運行されるJR(国鉄)路線は大幅に減少。国鉄時代に多かった間合い運用時のグリーン車連結もほぼ消滅した。
特急、急行では天北線大社線のように路線そのものが廃止の区間や並行在来線第三セクター化された路線もある。現存の区間でも北上線草津線奈良線和歌山線木次線姫新線芸備線吉都線のように急行列車の廃止により普通列車だけになった路線、信越本線直江津以東、山陰本線出雲市以西、山口線豊肥本線特急列車宇野線快速列車のように連結を止めた区間がある。
背景には、高速バスなど他の交通機関への転移、利用率の減少から、普通車指定席の室内設備の向上に充てたことが挙げられる。

JR以外[編集]

私鉄第三セクター鉄道のグリーン車[編集]

2024年4月時点で料金を設け、車両が在籍する事業者。
伊豆急行
智頭急行
土佐くろしお鉄道
2024年4月時点で料金を設けている事業者。
京都丹後鉄道
かつて料金を設け、車両も在籍した事業者。
小田急電鉄
北越急行 - JR線に直通していた特急列車に組み込まれていた。
名古屋鉄道 - 国鉄線に直通していた準急→急行に組み込まれていたが、輸送力増強で1970年代前半に普通車に格下げされた。
過去に運行はしていたが、料金は設定していなかった事業者。
伊勢鉄道
グリーン車に相当の特別車を所有している事業者
東武鉄道
黒部峡谷鉄道
名古屋鉄道(特別車)
京阪電気鉄道(プレミアムカー)
近畿日本鉄道(デラックスシート)
南海電気鉄道(スーパーシート、指定席[注 8])
富士急行(車号に「ロ」のつく車両は必ず特別車)

鉄道車両以外[編集]

船舶
日本の船舶の旅客運賃は現在でも等級制度を採用している。長距離フェリーではエコノミー、ファーストと呼ばれる用になったが、佐渡汽船では2022年現在でも2等、1等、特等と分けている。南海フェリーは普通のほかにグリーンがある。以前には青函航路 (鉄道連絡船)宇高航路 (鉄道連絡船)にもグリーン室があった。
夜行バス
1990年代は、4列シートを3列シートにする全体の居住性改善を行うのが主流だったが、2000年代に、東阪間などで「青春ドリーム号」と銘打って、4列シートの格安廉価版を運行するようになってから、車両に格差をつけることが主な流れとなり、シートピッチを拡大したデラックス版の運行が開始された。

その他[編集]

前述のように旅客車両は特別料金の不要な普通車が基本だが、普通車でロングシート地獄が発生したり、座席撤去車も登場し、かつての一等と三等の格差に匹敵するくらいの設備格差が生じている。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

[編集]

  1. 普通列車については青春18きっぷも該当する。
  2. 但し、1974年9月まで全国的に一列車以上でも、グリーン料金は乗車区間通算で支払う制度だった。
  3. ここではサロ153改造車。
  4. 東海道線からの直通列車のみ
  5. a b 常磐線快速には連結されていない。
  6. a b 総武快速線からの直通列車のみ
  7. a b 総武快速線からの直通列車のみ。房総夏ダイヤ実施の頃は、臨時に館山以北や安房鴨川以北で運行されていた。
  8. 特急サザンにおいてJRの普通列車グリーン席相当。