鉄道ファン
鉄道ファン(てつどうふぁん)とは、鉄道が好きな人全般を指す。
概要[編集]
日本は人口密度が高く、大都市への人口が集中していることもあり、さらに狭い国土に多くの人口を抱えているために鉄道が世界でトップクラスに発達している。鉄道を日常的に利用する機会も多々あるため、他国に比べて鉄道趣味者が多いと言われている。我が国における鉄道ファンの人数は150万人ほどとされているが、自分が鉄道ファンであることを隠す人が少なからずいる事情を考慮すると実際はさらに多いと思われる。
日本で最初の鉄道が開業したのは1872年のことであるが、当時の鉄道は大日本帝国陸軍の移動や商人の商用が主であり、趣味の対象とはほど遠いものであった。ヨーロッパには、アントニーン・ドヴォジャークの様な熱烈な鉄道ファンが19世紀に登場していたが、日本でも大正時代から少しずつ広がり始めた。太平洋戦争中は重要な輸送手段である鉄道は兵器としての扱いを受け、鉄道趣味が弾圧を受けたこともあり、それでも車両形式を数学のノートに書いて警察官の目を誤魔化すという者もいた。長い間鉄道趣味はあまり目立たないものであったが、1948年に「鉄道模型趣味」さらに1950年代に「鉄道ピクトリアル」1960年代に「鉄道ファン」、「鉄道ジャーナル」といった雑誌が創刊された。1960年代に入り旅客機や高速道路の発達によって鉄道が衰退し始めるとそれまでの「文明的、先進的な移動手段」から「旅情がある文化的な移動手段」へと鉄道の価値が見直され、当時のSLブームもあって鉄道趣味は一般的なものとなった。さらに、種村直樹、宮脇俊三といった知識人によって書籍が出版されていった。1970年代後半からはブルートレインブーム、電車特急ブームが起き、「いい日旅立ち」「津軽海峡冬景色」といった鉄道の旅情を歌った曲が大ヒットしたのもこの頃である。さらに、旧型客車の引退が決まった1986年には旧客ブームが起きた。
国鉄分割民営化によりJRグループが誕生し、翌年、
その後もスマートフォンの登場等に押されて鉄道趣味は拡大を続けたが、ネットの普及によって罵声大会を初めとする迷惑行為も取り上げられるようになった。勿論、迷惑をかけない範囲で趣味を楽しんでいるファンも大勢いるため頭ごなしに「鉄道ファン=迷惑」と決めつけることはあってはならない。
分類[編集]
詳細は「鉄道ファンの種類の一覧」を参照
撮り鉄[編集]
鉄道ファンの中でもっとも知名度が高く、広く知られている派閥だと思われる。その名の通り列車の撮影を主な活動内容としており、とりわけ国鉄型の古い車両や貨物列車、臨時列車、最後の○○シリーズ(EF66 27など)は人気が高い。通勤型電車の撮影を主としている者も少なからず存在するが、撮り鉄界では異端と見なされている。近年はカメラ価格の下落によって人口は増加傾向にあるが、それにともない場所取りをめぐる罵声大会や駅での暴力行為、精神的に未発達な小中学生による公共マナー違反も深刻化している。なお、一般人であっても「カッコいい特急列車が来てとっさにスマホで撮影する」ようなこともあるため電車を撮影している人=撮り鉄ではないことに注意が必要。
また、分派として列車の種別・行先表示の収集を趣味とする「幕鉄」[注 1]や駅舎の写真をコレクションする「駅舎鉄」も存在する。他にも真の撮り鉄というものも存在する。
乗り鉄[編集]
撮り鉄と並んでもっともポピュラーな派閥のひとつである。鉄道に乗ることを趣味としている。ただ乗るだけではなく、車窓を眺めたり、その路線の過去について思いを巡らせたりすることで楽しみを見いだしている者が多い。上級者の中には青春18きっぷで日本を縦断したり、最長片道切符の旅に出る猛者もいる。そんな彼らが特に愛するのが「寝台列車」や「ローカル線」といった旅情あふれる列車たちである。しかし、寝台列車は収益性の悪さから次々に廃止され、2023年現在残っているのはサンライズ出雲・サンライズ瀬戸だけとなってしまった。ローカル線に関しても、赤字経営からJR各社で切り捨ての動きが進んでおり、存廃議論が盛んとなりつつある。ムーンライトながら廃止や新幹線開業による第三セクター転換などにより青春18きっぷの旅も難易度が年々増している。こうしたことから彼ら「乗り鉄」の肩身は狭くなる一方である。ただし海外には、観光シーズンにしか列車の走らない路線や、年に数日しか旅客列車の走らない路線も多く、乗り鉄の挑戦欲求を満たせる鉄道は数多くある。
音鉄[編集]
詳細は「音鉄」を参照
鉄道の「音」を趣味の対象ととらえる人々である。大きく分けて2つの派閥が存在する。
- 列車のブロワー音やエンジン音、VVVFインバーターが発する磁界音を愛する人々。国鉄型の吊りかけ式モーター音、DMH17エンジン音やGTO素子の喧しいサウンドを発する車両の人気が高い。しかし、両車とも音鉄以外の一般人にはただの騒音でしかなく、次々と数を減らしている。JR西日本に至ってはうるさい国鉄型車両を取り替えるよう国土交通省から名指しで批判される有様である。GTO素子のVVVFインバーターも既に国内での生産が終了しており、2レベルIGBTやSiCといった静かなものに置き換わりつつある。とはいえオールドファンには発車時のちょっと音程のズレたドレミファ音がなくなって寂しい気持はあるのだが。
- 駅メロの収集を目当てとする派閥。数ある鉄道会社のなかでも、とりわけJR東日本や東京メトロが駅メロに力を入れており、彼らの信仰対象である。北千住駅のJR常磐線発車メロディーや仙台駅の旧メロディー、JR京葉線東京駅の発車メロディーなどは「神曲」として彼らの中で不動の地位を築いている。一方で、国鉄時代の駅のアラームベルや電鐘踏切警報機の音を収集する人もいるが、北陸鉄道でも少なくなった。
とはいえ二大派閥以外にも音鉄はおり、知人に視覚障害者の鉄がおり、居眠りをしていて目を覚ましたときに、揺れと走行音と踏切音で「いま、どこを走っているか」がほぼピンポイントで分かるという人がいる。
妄想鉄[編集]
自分だけの鉄道路線などを妄想したり、Chakuwikiに代表されるような勝手にダイヤ改正シリーズ的な事をしている。
収集派[編集]
入場券、乗車券などの収集を趣味としている。実際に自分が使った乗車券や急行券、今では手に入らない周遊券や通過連絡運輸の乗車券を所持している。変わったところでは鉄道郵便局の消印の押された葉書や信書に貼り付けられた切手がある。これらは使用済みであることが重要である。
配線鉄[編集]
鉄道路線の配線(線路の繋がり)を見に行ったり調べたりしている。土木工学専攻の学生、生徒が多い。また、こっている模型鉄にもいる。いわゆる土木マニア。当然、分岐器が好きである。総本山はこのサイト。
廃線鉄[編集]
同じ「はいせん」でも廃止された鉄道路線めぐりが活動内容である。彼らの聖地は北海道や九州が多いが、森林鉄道に興味を持つ猛者もいる。やはり土木マニアが多い。関連サイトは次の通り。 山さ行がねが - 平沼義之のサイト
時刻表鉄[編集]
時刻表を見たり、調べたり、頭の中で架空鉄道旅行をしたりするのが好きな鉄道ファン。JTB時刻表やJR時刻表を毎月購入するヘビーなファンもいる。古い時刻表の収集をしている者が多い。元祖は「レイルウェイライター」で知られる種村直樹。
ダイヤ(「ダイヤグラム」「ダイアグラム」の略であり、図表のこと)を見て「ふつくしい」と感じてしまったりする。
海外鉄[編集]
日本で、海外の鉄道に興味を持つ鉄道ファン。こちらは比較的少数派だが、朝日放送において「世界の車窓から」という長寿番組がある。
傾向[編集]
日本国内に限れば、様々な年齢層で親しまれる趣味である。ジャンルも様々で、文字通り、土木構造物である線路のほか、その上を走行する車両や運行システムを調査することが圧倒的多数を占める。この中にはさらに細分化され、装甲列車や列車砲といった軍事機材や、鉄道防風林の植生といった他の分野の趣味に食い込んでいるものもある。また、鉄道の歴史や文化、経営に関してはそれぞれの鉄道事業者や地元の新聞社が書籍を発行するなど、調査しやすくなっている。鉄道の発達した都市部にファンが多いが、閑散地域でのファンも決して少なくはなく、廃止されたローカル鉄道の資料や写真を所有しているファンも多い。また、同じく閑散地域であっても幹線鉄道沿いに住んでいるファンは列車の歴史のほか、路線改良の歴史を目の当たりにしていることもある。これらのファンのクラブは鉄道友の会以外にも全国各地にあり、大学、高等専門学校、高等学校には鉄道研究会があるところもある。また、性別では男性の方が多いという傾向があるという偏見もあるが、女性の場合はなかなか大っぴらにしづらいという事情もあるという。
「学生の場合、得意な教科はバラバラだが、大抵地理が得意という傾向にある」とされる。とはいえ鉄道車輛や鉄道施設の設計などには工学・物理(各種の力学)や数学の習熟が必須であるというのに、これらが苦手であるという学生も多いという現状もある。航空宇宙工学科でも、飛行機マニアであってもこれらの学科についてゆけずに道をあきらめる学生も少なからずいたが、近年では女子であってもフツーに馴染んでいる学生も多いのが心強い。
だいたい新幹線0系電車の設計者が大日本帝国海軍で陸上爆撃機銀河 (航空機)の設計者であることに対して鉄道屋は「なにくそ!」と対抗心を燃やすか、環境問題やエネルギー問題や土木・工学などの分野との協業を積極的に行なっていただきたい。太平洋戦争の戦時下において憧れだったのは「民間航空機の就航」であり、「軍用機の開発」に関してはさまざな思いがあるという。これに対して、鉄道は(兵站などの軍事的な利用はあるものの)走れるだけ走るという自由さがある。それの成果を思いきり享受・堪能し鑑賞してこそ鉄ヲタの本懐であろう。
エンペディアにおける「鉄道ファン」[編集]
古くからwiki界隈には鉄道ファンのユーザーが一定数存在しており、我らがエンペディアも例外ではなかった。鉄道は比較的書きやすいジャンルであるため、駅記事や車両記事等が大量に執筆されていった。
Twitter鉄道界隈[編集]
しかし、2021年3月に大手SNSTwitterでの鉄道ファン同士のトラブルを題材としたゆーかブロック祭り2020の記事が作成されたことにより、Twitterから鉄道ファンのユーザーが大量に流入し、何百本もの鉄道系ツイッタラーの記事が乱立する事態となった。これだけなら良いことなのだが、これらユーザー記事の実態は「誹謗中傷・個人情報の公開」「一般人に近い人の不祥事の晒し上げ」「日本語文法に関する感覚が崩壊しており、日本語のようであるが日本語として解釈不能な文章」といった凄惨なものであった。やがてエンペディア内でもこれらを問題視する意見が高まり、規制を検討する議論が過去に幾度か行われている。
結果、フォーラム:Twitterユーザー関連の記事について及び関連議論(参照)にて、ネガティブな記述は基本的に受け入れないとの取り決めがなされた。ただ、「微妙なケースについては程度をわきまえる」という風潮である。
鉄道ファンの有名人[編集]
注釈[編集]
- ↑ 21世紀に入ってからは「幕」ではなく、並べた発光ダイオードを使った電光表示になっていることが多いが、依然としてこの呼称が使われる。
関連項目[編集]
- おたく
- キモヲタ
- 鉄道界隈
- 鉄道
- 大八車マニア
- ロメコン - 「路面電車コンプレックス」の意。
- レールバス - 台車は鉄道台車であり軌道も鉄道軌道であるが、シャーシや内装はバスであるもの。なかには(例は少ないが)軌道上も公道上も走れるものもあるらしい。
- ステビ - 「ステーション・ビバーク」の意。
- 廃線マニア - ときどき巡礼者もいる。
誰か路線と駅名の一覧を作ってくれんかな。