山陽新幹線
西日本旅客鉄道(JR西日本) 山陽新幹線 | |
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基本情報 | |
国 | 日本 |
所在地 | 大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、山口県、福岡県 |
種類 | 高速鉄道(新幹線) |
起点 | 新大阪駅 |
終点 | 博多駅 |
駅数 | 19駅 |
開業 | 1972年3月15日 |
全通 | 1975年3月10日 |
所有者 | 西日本旅客鉄道(JR西日本) |
運営者 | 西日本旅客鉄道(JR西日本) |
車両基地 | 博多総合車両所 |
使用車両 | 500系・700系・N700系 詳細は、#車両の節を参照 |
路線諸元 | |
路線距離 | 553.7 km |
営業キロ | 644.0 km |
軌間 | 1,435 mm(標準軌) |
線路数 | 複線 |
電化方式 | 交流25,000 V・60 Hz 架空電車線方式 |
最大勾配 | 15 ‰ |
最小曲線半径 | 4,000 m |
閉塞方式 | 車内信号式 |
保安装置 | ATC-NS |
最高速度 | 300 km/h |
山陽新幹線(さんようしんかんせん)は、JR西日本が所有する新大阪駅から博多駅に至る高速鉄道路線。
建設に至った経緯[編集]
太平洋戦争前に鉄道省が計画し、建設した弾丸列車計画は東京駅から下関駅を経て朝鮮半島に至る路線で、現在の東海道新幹線、山陽新幹線にほぼ並行する路線だった。弾丸列車の建設は戦争の激化によって中断され、一部用地は売却されたが、 戦後の混乱期を過ぎて復興が軌道に乗ると、東海道本線の線路容量の限界対策として東海道新幹線の建設に至った。東海道新幹線の建設と同時に山陽本線は山口県内を最後に全線電化が完工し、関西 - 九州の特急・急行列車が増発されたが、やがて山陽本線の線路容量も限界に達した。そこで東海道本線と同様、狭軌複々線案、狭軌別線案、標準軌別線案を比較して、東海道新幹線との直通ができ、沿線自治体の要望の強い山陽新幹線の計画が東海道新幹線の完成も待たずに決定し、東海道新幹線の完成翌年の1965年に工事が始まった。特に、宇野線乗り入れの四国連絡優等列車で線路容量が逼迫した岡山駅までの建設が先行され、次いで博多駅までの建設が1967年に始まった。
概要[編集]
東海道新幹線から延伸し、1972年3月に岡山駅まで開業、1975年には博多駅まで開通し全線が開通した。国鉄分割民営化によりJR西日本の管轄となった。東海道新幹線より緩いカーブや勾配で線形が良いため高速運行に適している。また、軌道はバラスト使用箇所は僅かで、大半でスラブ軌道を採用した。
また、1964年の開業から半世紀以上経過して、老朽化対策を迫られているJR東海の東海道新幹線より余裕があるが、高度経済成長期に東海道新幹線の建設をはじめ各種の開発でコンクリートに必要な川砂を使い果たしたり、山砂が不足してしまったため、極力塩分を除去した海砂を利用したものの、それでも微量に残った塩分から鉄筋の腐食が進行して、コンクリートの老朽化のペースは東海道より早いという話もある。さらに、工事に関連して、2001年度から2009年度にかけJR西日本の関連会社・広成建設が、山陽新幹線の岡山県・広島県・山口県内のトンネルの補修工事に際し、工事に使用したモルタルの量を、実際の使用量よりも水増しして代金をJR西日本に請求していたことが判明した[1][2]。
一方で、東京 - 新大阪間の需要が大きく、200万 - 300万都市圏をいくつも抱える東海道新幹線と異なり、東京から離れれば離れるほど所要時間の問題で新幹線より航空機の利用客数が増加[注釈 1]し、かつ福岡空港が福岡市街から近距離と新幹線沿線では格段に立地が良く、京阪神と福岡県を除く山陽新幹線沿線は最大で150万都市圏のため、JR西日本はJR東海ほど稼げていない。利便性を高めるため、東海道新幹線では停車駅が完全に統一されている「のぞみ」の停車駅が山陽新幹線内では不揃いで、停車駅が多い傾向にある。
小倉 - 博多間は北九州市と福岡市という福岡県の二大都市を結ぶことから1983年1月31日の新幹線定期券(フレックス)の発売開始[3]を機に通勤手段としての利用が急増し[4]、新幹線一駅間の利用者数としては全国最高となる1日あたり7900人を記録した[5]。そのため[4]北陸新幹線が金沢まで延伸されるまでは全国的にも珍しかった[6]、小倉 - 博多シャトル運行のこだまが当初は毎日運転の臨時列車として[3]車両運用の間合いを活用して[4]1983年7月1日より設定され[7]、定期列車となった後も1985年6月24日のダイヤ改正[7]や1997年3月22日のダイヤ改正[8]など増強されてきた。ちなみに、1985年6月24日より運行の0系R0編成は小倉 - 博多を示すステッカーが貼られ当区間限定の6両編成での運用となり[9]、分民化につれ、短縮編成が広島、岡山へと拡がっていった。
また、この区間ではJR九州鹿児島本線や各種高速バスも並行していることから割引きっぷ「新幹線よかよかきっぷ」が設定されている[10]。この区間の下りでは混雑緩和のため1983年6月20日から自由席に通用するきっぷで指定席の空席に着席できる特例が設けられた[3]が、九州新幹線との直通運転開始のため2011年3月11日をもってこの特例は廃止された[11]。
なお、小倉 - 博多間の実キロは55.9 kmであるが、営業キロは鹿児島本線と同じ67.2 kmにそろえられている。しかしこの区間、ならびにJR九州山陽本線・鹿児島本線の下関 - 門司 - 小倉の区間をふくむ新下関 - 小倉間のどちらか一区間以上をふくむ場合は概要節で述べたようにJR西日本とJR九州で異なる運賃体系となっているため、普通乗車券の場合は指定された経路しか乗車できない[12]が、歴史節で述べたとおり鹿児島本線の定期乗車券(SUGOCA定期券をのぞく)で山陽新幹線に乗車することができ[13]、山陽新幹線の新幹線定期券で鹿児島本線に乗車することもできる[14]。ゆきは新幹線、かえりは在来線などといった往復乗車券も発券可能[15]。
単線で24時間運転させる計画があったため、信号所となるよう多数の駅が設置されているが深夜運転は騒音問題などから実現しなかった。
日本で2番目に建設された新幹線である。
運用[編集]
東海道新幹線・九州新幹線とそれぞれ相互乗り入れを行っているが、東京、新横浜、名古屋もしくは京都から熊本もしくは鹿児島中央までの3社直通運転は行っていない。その理由は、航空機より時間がかかり過ぎて、新幹線に有利に傾く要素がない[注釈 2]のと、JR東海が全編成の座席数を16両1323席に固定する運用をし、かつ、九州新幹線に乗り入れ可能な最大8両対応かつ最急35‰の勾配[注釈 3]に対応する編成を保有せず、一部区間の乗り入れも許可していないためである[注釈 4]。
愛称[編集]
線内のみ運転の列車は、開業時から東海道新幹線への乗り入れがされていることから東海道新幹線への愛称を用いており、九州新幹線開業後も特に「こだま」系統で独自の愛称をつけていない。九州新幹線乗り入れ列車は「つばめ」以外の九州新幹線の愛称を用いる。
駅一覧[編集]
駅名 | 新大阪からの | 東京からの | 停車駅 | 接続路線 | 所在地 | |||||
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営業 キロ |
実キロ | 営業 キロ |
実キロ | |||||||
東海道新幹線 (東京方面) 直通 | ||||||||||
新大阪駅 阪 | 0.0 | 0.0 | 552.6 | 515.4 | 全 | 東海道新幹線・JR-A46 JR京都線・JR-F02 おおさか東線・M13 御堂筋線 | 大阪府 大阪市淀川区 | |||
新神戸駅 神 | 36.9 | 32.6 | 589.5 | 548.0 | 全 | S02 神戸市営地下鉄西神・山手線・北神急行電鉄北神線 神戸布引ロープウェイ(ハーブ園山麓駅) |
兵庫県 | 神戸市中央区 | ||
西明石駅 | 59.7 | 54.8 | 612.3 | 570.2 | JR-A74 山陽本線(JR神戸線) | 明石市 | ||||
姫路駅 | 91.7 | 85.9 | 644.3 | 601.3 | JR-A85 山陽本線(JR神戸線)・J 播但線・K 姫新線 SY 43 山陽電気鉄道本線(山陽姫路駅) |
姫路市 | ||||
相生駅 | 112.4 | 105.9 | 665.0 | 621.3 | A 山陽本線・A 赤穂線[* 1] | 相生市 | ||||
岡山駅 | 180.3 | 160.9 | 732.9 | 676.3 | 全 | S W 山陽本線・N 赤穂線[* 2]・V 伯備線[* 3] L 宇野線(宇野みなと線・M 瀬戸大橋線)・T 津山線・U 吉備線 H 岡山電気軌道東山線(1系統)・S 岡山電気軌道清輝橋線(2系統)[* 4](岡山駅前停留場) |
岡山県 | 岡山市北区 | ||
新倉敷駅 | 205.5 | 186.7 | 758.1 | 702.1 | W 山陽本線 | 倉敷市 | ||||
福山駅 | 238.6 | 217.7 | 791.2 | 733.1 | W X 山陽本線・Z 福塩線 | 広島県 | 福山市 | |||
新尾道駅 | 258.7 | 235.1 | 811.3 | 750.5 | 尾道市 | |||||
三原駅 | 270.2 | 245.6 | 822.8 | 761.0 | G 山陽本線・Y 呉線 | 三原市 | ||||
東広島駅 | 309.8 | 276.5 | 862.4 | 791.9 | 東広島市 | |||||
広島駅 広 | 341.6 | 305.8 | 894.2 | 821.2 | 全 | G R 山陽本線・Y 呉線[* 5]・B 可部線[* 6]・P 芸備線 M1 広島電鉄本線(広島駅電停) |
広島市南区 | |||
新岩国駅 | 383.0 | 350.0 | 935.6 | 865.4 | 錦川清流線(清流新岩国駅) | 山口県 | 岩国市 | |||
徳山駅 | 430.1 | 388.1 | 982.7 | 903.5 | ■ 山陽本線 | 周南市 | ||||
新山口駅 | 474.4 | 429.2 | 1027.0 | 944.6 | ■ 山陽本線・■ 山口線・■ 宇部線 | 山口市 | ||||
厚狭駅 | 509.5 | 453.3 | 1062.1 | 968.7 | ■ 山陽本線・■ 美祢線 | 山陽小野田市 | ||||
新下関駅 | 536.1 | 477.1 | 1088.7 | 992.5 | ■ 山陽本線 | 下関市 | ||||
小倉駅 九 | 555.1 | 497.8 | 1107.7 | 1013.2 | 全 | 鹿児島本線・日豊本線・日田彦山線[* 7]・北九州高速鉄道小倉線 | 福岡県 | 北九州市 小倉北区 | ||
鞍手信号場 | - | (520.3) | - | (1035.7) | 鞍手郡鞍手町 | |||||
博多駅 福 | 622.3 | 553.7 | 1174.9 | 1069.1 | 全 | 九州新幹線・■ 博多南線・鹿児島本線・篠栗線(福北ゆたか線)[* 8] K 11 福岡市地下鉄空港線 |
福岡市博多区 | |||
九州新幹線 (鹿児島中央方面) 直通 | ||||||||||
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- ↑ 赤穂線は運転系統上、全列車が山陽本線経由で姫路駅に乗り入れる。
- ↑ 赤穂線の正式な終点駅は東岡山駅だが、運転系統上は全列車が山陽本線経由で岡山駅に乗り入れる。
- ↑ 伯備線の正式な起点駅は倉敷駅だが、運転系統上は全列車が山陽本線経由で岡山駅に乗り入れる。
- ↑ 清輝橋線の正式な起点駅は柳川停留場だが、運転系統上は全列車が岡山駅前停留場に乗り入れる。
- ↑ 呉線の正式な終点駅は海田市駅だが、運転系統上は全列車が山陽本線経由で広島駅に乗り入れる。
- ↑ 可部線の正式な起点は横川駅だが、運転系統上は全列車が山陽本線経由で広島駅に乗り入れる。
- ↑ 日田彦山線の正式な起点駅は城野駅だが、運転系統上は全列車が日豊本線経由で小倉駅に乗り入れる。
- ↑ 篠栗線の正式な終点駅は吉塚駅だが、運転系統上(福北ゆたか線)は全列車が鹿児島本線経由で博多駅に乗り入れる。
所有[編集]
使用車両[編集]
かつて使用されていた車両[編集]
現在使用している車両[編集]
運行種別[編集]
みずほ[編集]
山陽新幹線内の最速達型列車。全列車が九州新幹線に直通する。
さくら[編集]
山陽新幹線内の準速達型列車。全列車が九州新幹線に直通する。
のぞみ[編集]
東海道新幹線系統の速達型列車。九州新幹線全通後は山陽新幹線内の最速達型列車の座を「みずほ」に譲った。山陽新幹線内完結の列車はなく、全列車が東海道新幹線に直通している。
ひかり[編集]
準速達型列車。九州新幹線全通後は山陽新幹線内の準速達型列車の座を「さくら」に譲った。山陽新幹線内完結の列車は徐々に少なくなってきている。ひかりレールスターでの運行もあるが、ほぼ臨時列車で、定期ひかりレールスターは徐々に少なくなってきている。
こだま[編集]
山陽新幹線内の各駅停車型。他路線とは乗り入れていない。
脚注[編集]
- 注釈
- 出典
- ↑ JR西関連会社、4.7億円水増し請求 トンネル工事 - 朝日新聞 2010年5月11日
- ↑ トンネル工事で4億7000万水増し 9年間で JR西関連会社 - 産経新聞 2010年5月11日
- ↑ a b c ISBN978-4-553-08973-2 JTBパブリッシング出版 寺本光照著 時刻表でたどる新幹線発達史 p.66
- ↑ a b c ISBN978-4-425-30181-2 成山堂書店出版 運輸政策研究機構著 日本国有鉄道民営化に至る15年 p.208
- ↑ 北九州市史 五市合併以後 第1巻 p.260
- ↑ 日本経済新聞:北陸新幹線、金沢-富山間でシャトル運行
- ↑ a b ISBN978-4-553-08973-2 JTBパブリッシング出版 寺本光照著 時刻表でたどる新幹線発達史 p.187
- ↑ データで見るJR西日本 p.70
- ↑ ISBN978-4-553-08973-2 JTBパブリッシング出版 寺本光照著 時刻表でたどる新幹線発達史 p.71
- ↑ 西日本旅客鉄道:新幹線よかよかきっぷ
- ↑ 山陽新幹線 小倉~博多間の指定席特例廃止 - 鉄道コム
- ↑ 新幹線を利用する予定で買った普通乗車券で、並行する在来線を利用できま...:JRおでかけネット - JR西日本
- ↑ JR九州[SUGOCA] | Q&A - JR九州
- ↑ 博多駅~小倉駅間の新幹線定期券(FREX)で並行する鹿児島本線も乗車できますか。 - JR九州
- ↑ 乗車券 | きっぷのルール | 駅・きっぷ・列車予約 | JR九州 - JR九州
- ↑ 東海道新幹線では、1999年に引退
- ↑ 東海道新幹線では、2003年に引退
- ↑ 東海道新幹線でも、同時に引退
- ↑ 東海道新幹線では、2010年に引退
- ↑ 2020年3月8日に東海道新幹線から引退することが発表された。しかし新型コロナウイルス(COVID-19)の感染予防のため運休となり事実上3月1日の団体列車で引退した。
- ↑ 現在は、N700A相当の車両設備へ改造されている
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 私が山陽新幹線です【JR西日本公式】(@jrw_yamakan) - X(旧:Twitter)
- 東海道・山陽新幹線 のぞみ・ひかり・こだま:JRおでかけネット
- 山陽・九州新幹線 みずほ・さくら・ひかり・こだま・つばめ:JRおでかけネット
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