近鉄1220系電車

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近鉄1220系電車・近鉄1230系電車
近鉄1233系VC42編成 in R01.05.jpg
名古屋線所属のVC42編成。2019年時点での姿。
基本情報
製造年1987年 - 1998年
投入先近畿日本鉄道難波線大阪線信貴線奈良線京都線橿原線天理線生駒線名古屋線山田線鳥羽線志摩線
阪神電気鉄道本線阪神なんば線
主要諸元
編成2両編成
編成定員272名(1220系)
298名(1230系)
車両定員136名(1220系)
149名(1230系)
自重38.0 t (Mc車) ・31.0 t (Tc車)
全長20,720 mm
全幅2,800 mm
全高4,150 mm
車体高4,050 mm(VC32まで)
4,030 mm(VE33以降)
車体材質アルミニウム合金
台車Mc車・M車:KD-95/KD-96B・KD-306・KD-306H[1]
Tc車・T車:KD-95A/KD-96C・KD-306A・KD-306I[1]
主電動機MB-5023A(1220系)
MB-5035-A[1](1230系以降1270Fまでと1277F)
MB-5035-B(1257・71 - 76F)
主電動機出力165kW
駆動方式WNドライブ
歯車比6.31(1220系)
5.73(1230系列)
編成出力660kW
制御方式VVVFインバータ制御(GTO素子)
制御装置VF-HR-111(VC21)
VF-HR-115(VC22・23)
VF-HR-123(VC31以降)
制動装置回生併用電磁直通ブレーキ(HSC-R)
保安装置近鉄型ATS
阪神型ATS(VE71以降)
備考電算記号:VC(大阪線・名古屋線所属車)
VE(奈良線・京都線所属車)
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近鉄1220系電車(きんてつ1220けいでんしゃ)とは、近畿日本鉄道で運用されている通勤形電車の1形式。本項では1230系列についても解説する。1020系については近鉄1020系電車を参照されたい。

概要[編集]

1984年にVVVF試作車1420系が登場したが、その量産形式の2両固定編成として1422系とともに1987年に登場した。1422系では三菱製のVVVFを搭載するが、1220系列では日立製のVVVFを採用した。

その後、増備車として以下の形式が登場している。純粋な1220系としては、単独運用が困難な機器配置であったことから高安に配置されたVC21 - 23編成のたったの3本のみの増備にとどまった。

  • 1230系 - 全線共通車体としたものだが、1220系からの設計変更車。VC31編成とVC32編成が該当。明星所属。
  • 1233系 - 当初から全線共通車両として投入。VE33 - 39, 41, 44 - 46編成およびVC40, 42, 43, 47, 48編成が該当。西大寺・東花園・富吉・明星所属。
  • 1249系 - 1233系をベースに補助電源装置をMGからSIVに変更したもの。VE49 - 51編成が該当。西大寺所属。
  • 1252系 - 台車をボルスタレス台車化したもの。VE52, 58, 62 - 64, 70 -76, 77編成が該当。東花園・西大寺所属。
  • 1253系 - 上記の1252系のT車のディスクブレーキを2枚にしたもの。VC53, 55 - 57, 59 - 61, 65 - 69編成が該当。明星・高安・富吉所属。
  • 1254系 - 上記の1253系に滑走検知装置を搭載。VC54編成が該当。高安所属。

さらには1233系のVC40編成が1240系、1253系のVC59, 65 - 69編成が1259系に改造されている。いずれも明星所属。

なお、1251 - 57と1351 - 57の車号は1420系と1422系がそれぞれ1251系と1250系を1990年まで名乗っていたため1420系時代から数えた場合2代目となる。

構造[編集]

1420系の前面をベースとし、車体幅を2800mmに広げた21m4ドアアルミ車体を備える。

主電動機は1220系がMB-5023A、1230系列がMB-5035系で、いずれも定格出力165kWの三相誘導電動機となっている。なお、主電動機の形式が異なることから歯車比も異なり、前者は101:16=6.31, 後者は86:15=5.73としている。

制御装置は日立製のGTOサイリスタ使用のVVVFで、1220系は初期型のものを採用し、1230系列は後期型のものを使用するが、後期型は停車時に初期型、発進時に後期型の音を発するという近鉄独特のものとなっている。後に1220系のものもソフト変更により1230系列と同様の音を発するようになった。

ブレーキ方式は従来車との併結を考慮して回生ブレーキ併用の電磁直通ブレーキ(HSC-R)としたが、大阪線の青山峠や奈良線の生駒峠を越えるべく抑速ブレーキを備える。

台車は1220系と1230系列がシュリーレン式のダイレクトマウント空気バネ台車のKD-95系あるいはKD-96系、1252系以降はボルスタレス台車のKD-306系とした。

車内はロングシートで、トイレは備えない。

改造[編集]

全車共通[編集]

以下の改造は1233系列に限らずほぼすべてのVVVF車に対して行われた。

  • 車体側面のVVVFマークを撤去[2]
  • Tc車に車椅子スペースと手すりを設置
  • 連結面に転落防止幌を設置
  • 床材や座席モケットを交換

1240系・1259系[編集]

1259系VC69編成。外観上の違いはほとんどないが、左側にワンマン標示が折り畳まれていることがわかる。

名古屋線・山田線用ワンマン車として1233系VC40編成と1253系VC59, 65 - 69編成に対して運賃箱や車外スピーカーの設置などの改造が施され、それぞれ1240系、1259系に形式変更された。同様の改造は1230系の全編成に対しても行われたが、形式は1231系とならずそのままとなった。

1252系VE77編成[編集]

1026系のVL30編成(1030F)は4連で登場したがVL26編成(1026F)の6連化のために中間車を提供し、その際に1252系に編入されVE77編成(1277F)となった。この際、パンタグラフをモ1277に増設したが、6620系のパンタ削減で発生したものを流用している。

1253系・1254系のディスクブレーキ1枚化[編集]

ディスクブレーキ1軸2枚の仕様で登場したこの2系列については時期不詳ではあるものの1枚に改められているが、大阪線・名古屋線向けということもあったためか1252系への形式変更は行われていない。

阪神直通対応改造[編集]

1252系のVE71 - 77編成(1271F - 77F)に対して2009年より開始された阪神なんば線との相互直通運転に対応した改造が行われたが、1271系などへの形式変更は行われなかった。当初はVE71 - 76編成が対象であったが、2012年にVE77編成も改造の対象となった。

ドアチャイム・車内案内表示器の設置[編集]

VC42編成に搭載されたLCD(撤去済み)

バリアフリー対応工事としてドアチャイムと車内案内表示器を設置している。2016年までの施工車には3色LEDの車内案内表示器となったが、2018年以降の施工車には近鉄初のLCD式車内案内表示器が設置された。

奈良線に所属する車両と1254系、1259系の全車には施工済み。それ以外の大阪線・名古屋線所属の1233系と1253系についてはVC48, 60編成以外に対して、未更新時代に施工されている。1220系、1230系、1240系には車体更新まで施工されなかった。

うちVE38編成が初のLCD搭載車となったほか、VC42編成については名古屋線初のLCD搭載車とされた。

なお、後述の車体更新でVE34編成とVC42編成は一度すべて撤去後され、VE36編成はドアチャイムと開閉予告灯を残し車内案内表示器のみ撤去されている。VC31以降の編成に関しては横長型のLCDのものを設置、またはそれに交換され、未設置で更新出場した編成にも波及している。

軌道検測装置の搭載[編集]

奈良線所属のVE58編成と名古屋線所属のVC60編成は新型の軌道検測装置を搭載し、回送運用や営業運転で軌道検測を行っている。

行先表示幕のフルカラーLED化[編集]

フルカラーLEDに行先表示を変更されたVC53編成。

1253系のVC53, 57, 60編成を対象に方向幕の交換省略を目的にフルカラーLEDの行先表示幕に交換されている。VC60編成は上記の軌道検測装置との絡みで行われたとみなして良い。

車体更新[編集]

2023年8月17日、1620系のVG23編成に続き、1230系のVC32編成が車体更新を受け高安を出場し、翌日には営業に復帰した。機器類は相変わらずそのままで、GTO-VVVFや電磁直通ブレーキを維持している[3]。本系列、および名古屋線所属車からは初めてとなり、以降も1220系VC21編成などに普及しつつある。なお、VE34編成・VC42編成・VE36編成の車内案内表示器は撤去、VE33編成以降のものは交換された。

車体更新済み
✕はドアチャイム、車内案内表示器未設置または撤去。△はドアチャイムのみ存置。
  • VC32✕
  • VC21
  • VC22✕
  • VE34
  • VC42
  • VE36
  • VC31
  • VE33
  • VC23
  • VC40
  • VE37

この他、新塗装化の試験がVC54編成になされたが、運用復帰時は元に戻されている。また、1430系や6400系に機器更新車が出ている中で本系列からは機器更新車が出ていない。

完全都市型ワンマン試験[編集]

1233系VE37編成以降は1026系のVL35編成とともに車両側面に後方確認カメラが設置され、ワンマン運転の試験を実施することが発表されている。

運用[編集]

2021年現在、廃車は1両も出ておらず合計で2両編成50本の100両が在籍し、1220系と1254系全車、および1253系5本は大阪線、1230系、1240系と1259系全車、および1233系4本、1253系1本は名古屋線、それ以外の27本については奈良線・京都線で運用される。

特に1252系のうち7本は阪神線にも乗り入れることから、本系列は愛知三重奈良京都大阪兵庫の2府4県で見かけることができるため、譲渡車と臨時運用を除くと2021年現在大手私鉄で最も広い範囲で見られる通勤車両となった[4]

ただし、阪神直通対応の7本のうちVE72編成は、阪神ATSが故障しているためか、2022年頃より阪神線を出禁になっている。

また、限定的な運用が行われている編成も存在し、1220系の他、奈良線向けの1233系・1249系は単独運用が組まれていない。

車両番号[編集]

  • 1221 - 77:Mc車。うち24 - 30は欠番。
  • 1321 - 77:Tc車。うち24 - 30は欠番。

今後[編集]

製造から古いもので既に35年を経過しようとしているが、置き換え計画はまだない。それどころか2024年以降の新車投入時はより古い2410系8400系の世代の車両の淘汰を進めていく方針なのでこれらを差し置いての廃車は考えられず、リニューアルも始まっている以上今後も末永い活躍が期待される。

事故[編集]

2009年2月27日に普通列車として運転していたVC57編成が東青山駅構内で脱線し、床下機器を損傷したが、台車と主電動機が新造された上で運用に復帰している。

2023年12月20日にも普通列車として運転していたVE49編成が笠縫 - 新ノ口間で軽自動車と衝突し、運転台のガラスとスカートを破損したが、車体更新はなされず同月27日までに修復され復帰している。

編成一覧[編集]

詳細は「近鉄1220系・1230系の編成一覧」を参照

ラッピング[編集]

過去には以下の編成にラッピングが施されていたが、いずれも元に戻された。

  • VC31編成(名泗コンサルタント、2009年4月 - 2014年12月)
  • VC43編成(海洋漂着物啓発、2014年8月 - 2015年3月)
  • VC48編成 (着信御礼!ケータイ大喜利、2015年5月 - 8月)

2022年1月17日より、VC66編成にミジュマルのラッピングを[5]、2023年2月6日より、VC67編成にとばしまメモリー なみの章のラッピングを、同月下旬より、VC68編成に同うみの章のラッピングを施して運行している。

関連項目[編集]

近い世代の車両[編集]

脚注[編集]

  1. a b c 三好好三『近鉄電車』p.89
  2. ステッカー式でない1420系には未施工。L/Cカーの5800系にはVVVFマーク自体が設置されなかった。
  3. 同じくGTOサイリスタのVVVF車小田急1000形電車においては、車体更新と機器更新が同時になされ、未更新車はあっさり廃車された。
  4. 特急を含めると東武500系電車東京埼玉千葉群馬栃木福島(乗り入れ先の野岩鉄道会津鬼怒川線会津鉄道会津線)の1都5県を股にかけ、1233系と並ぶ。神奈川(乗り入れ先の東急東横線東急田園都市線)を含めた1都6県を股にかける東武は、一見広そうな運用を持つ6050系は臨時でしか群馬に入らないことや神奈川に乗り入れられないこと、10000系10030系は福島に乗り入れたことがないことと神奈川に乗り入れられないこと、8000系も神奈川に乗り入れられないことや福島への乗り入れがすでに終了していることから2021年現在は近鉄の1233系が最も広い範囲で定期運用を行う通勤車となる。
  5. 近鉄、ポケモンとコラボした「ミジュマルトレイン」を運行。1259系にラッピング”. 鉄道プレス. 2021年12月22日確認。