近畿日本鉄道

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社章

近畿日本鉄道(きんきにっぽんてつどう)は、近畿地方や、三重県愛知県を拠点とし路線網をおく鉄道会社大手私鉄)である。私鉄の中では、日本一路線距離が長い鉄道会社である(508.1km)。近鉄(きんてつ)と呼ばれる。

路線網[編集]

路線名 路線記号 軌間 区間 路線距離
km
備考
近鉄難波線 A 1435mm (標準軌) 大阪上本町駅 - 大阪難波駅 2.0 この2路線の駅番号は大阪難波駅から(大阪線経由で)菖蒲池駅まで通算している。
近鉄奈良線 布施駅 - 近鉄奈良駅 26.7
近鉄京都線 B 京都駅 - 大和西大寺駅 34.6 この2路線の駅番号は京都駅から橿原神宮前駅まで通算している。
近鉄橿原線 大和西大寺駅 - 橿原神宮前駅 23.8
近鉄生駒線 G 王寺駅 - 生駒駅 12.4
近鉄天理線 H 平端駅 - 天理駅 4.5
近鉄田原本線 I 新王寺駅 - 西田原本駅 10.1 近鉄の他路線とは離れているが、西田原本駅構内に橿原線との連絡線がある。
近鉄けいはんな線 C 長田駅 - 学研奈良登美ヶ丘駅 18.8 駅番号はコスモスクエア駅から通算している。生駒駅から学研奈良登美ヶ丘駅までは奈良生駒高速鉄道 (第三セクター) が保有。
近鉄大阪線 D 大阪上本町駅 - 伊勢中川駅 107.6 駅番号は大阪難波駅から通算している。近鉄で一番路線が長い。
近鉄名古屋線 E 伊勢中川駅 - 近鉄名古屋駅 78.8
近鉄信貴線 J 河内山本駅 - 信貴山口駅 2.8
近鉄湯の山線 K 近鉄四日市駅 - 湯の山温泉駅 15.4
近鉄鈴鹿線 L 伊勢若松駅 - 平田町駅 8.2
近鉄山田線 M 伊勢中川駅 - 宇治山田駅 28.3 この3路線の駅番号は大阪難波駅から通算している。
近鉄鳥羽線 宇治山田駅 - 鳥羽駅 13.2
近鉄志摩線 鳥羽駅 - 賢島駅 24.5
近鉄南大阪線 F 1067mm (狭軌) 大阪阿部野橋駅 - 橿原神宮前駅 39.7
近鉄吉野線 橿原神宮前駅 - 吉野駅 25.2 駅番号は京都駅から通算している。
近鉄道明寺線 N 道明寺駅 - 柏原駅 2.2
近鉄長野線 O 古市駅 - 河内長野駅 12.5
近鉄御所線 P 尺土駅 - 近鉄御所駅 5.2
近鉄生駒鋼索線 Y 1067mm (狭軌)
鋼索線
鳥居前駅 - 生駒山上駅 2.0 実際の運行は宝山寺駅で分断されている。
近鉄西信貴鋼索線 Z  信貴山口駅 - 高安山駅 1.3

概要[編集]

明治時代に創業し、1960年代まで数多くの鉄道会社を吸収合併して現在の姿となった。全線電化区間[注 1]である。

1950年代まで、「近鉄」の通称は滋賀県近江鉄道の方に使われるのが大勢だったが[注 2]、鉄道エリア外の東京や岡山に掲示された名古屋駅や京都駅接続を前提とした「近鉄特急で」の大看板や全国ネットの提供番組「真珠の小箱」の宣伝戦略で、形勢が変化し、近江鉄道を近鉄と呼ぶことは皆無に近くなった。

東京から西日本方面へのメインルートから外れた奈良県三重県に多くの路線を持つ。
この2県では、上記の「真珠の小箱」のネットがJNN系列になった頃から国鉄の労使関係が悪化し、1970年代に電化された湊町~奈良間を除いて、路線状況が旧態依然だった[注 3]こともあり、JRを差し置いて近鉄が県を代表する鉄道会社となっている。

沿革[編集]

三重電気鉄道合併まで、中小鉄道事業者のM&Aで事業拡大をしていた。

特徴[編集]

駅名標[編集]

伊勢中川駅の駅名標
  • 鋼索線とけいはんな線を除き、現在は白地ベースのものが使用されている。中央部に焦げ茶色の太い横線が入り、その上に漢字及びひらがなで、横線の部分にはアルファベットで駅名が表記される。アルファベットはヘボン式ローマ字で表記されている。右上にはA15のように駅ナンバリングが入る。また、横線の下には両隣の駅名が漢字とアルファベットで表記され、駅ナンバリングも入っている。矢印は横線の中に、進行方向に則り表示されている。ただし、以下に該当する場合はこれに従う。
    • 駅名に 「近鉄」 が含まれる場合、「近鉄」 が小さく表示される。例えば近鉄奈良駅の場合、「近鉄奈良」 と表記されている。
    • 駅名に 「河内」 など旧国名や 「大阪」 など都道府県名が含まれる場合、旧国名及び都道府県名が小さく表示される。例えば大阪難波駅の場合、「大阪難波」 と表記されている。
    • 上記2例とも、ひらがな及びアルファベットでは全ての文字が同じ大きさで表示される。ただし、「近鉄」 ・旧国名及び都道府県名との間に、アルファベットはハイフンが、ひらがなは半角スペースが入る。例えば近鉄日本橋駅の場合、アルファベットは 「Kintetsu-Nippombashi」 、ひらがなは 「きんてつ にっぽんばし」 と表記されている。
    • 一部の駅で学校名など副駅名が導入されている。この場合、ひらがな表記と横線の間に、小さく副駅名が表記される。なお副駅名は丸カッコで囲まれている。例えば河内小阪駅の場合、ひらがな 「かわち こさか」 と横線の間に(大阪商業大学大阪樟蔭女子大学前)と表記される。
    • 大阪上本町駅の地上乗り場 (大阪線) の駅名標では、大阪難波方面の部分に難波線の路線記号Aが入り、隣に漢字で 「近鉄日本橋 大阪難波 方面 (地下のりば) 」 、下にはアルファベットで 「For Kintetsu-Nippombashi Osaka-Namba (Underground Platform) 」 と表示されている。
  • けいはんな線でも白地ベースのものが使用されている。ただし他路線と違い、下部に深緑とライムグリーンのラインが入っている。若干深緑のラインが太めである。そのラインよりも上のところに漢字で駅名が表示され、その直下にひらがなで小さく、アルファベットは深緑のラインの中にすべて大文字で表記される。漢字の右上には駅ナンバリングが入るが、他路線に比べて小さめである。両隣の駅名も入り、アルファベットは深緑のラインの中に小さく表記される。ただし、以下に該当する場合はこれに従う。
    • 駅名に 「学研」 が入る場合、「学研」 が小さく表示される。例えば学研北生駒駅の場合、「学研北生駒」 と表示されている。ただし、他路線と違いひらがなの部分には空白は入らず、普通に 「がっけんきたいこま」 と表示されている。
    • 2006年延伸開業区間の白庭台駅 - 学研奈良登美ヶ丘駅間は、バックに薄く駅のシンボルマークが入る。

車内放送[編集]

現在は車掌がタブレット端末で操作を行い、車内に自動放送を流している。この形態は2016年3月頃から順次近鉄の各車両に広まったほか、その後は直通先の阪神電気鉄道京都市交通局に所属する車両でも同じような放送が流せるようになっている。

通常は、駅を発車した後に日本語で 「次は、(例)八戸ノ里、八戸ノ里です。」 とアナウンスされ、続いて英語で 「The next stop is Yaenosato. Station number, A-09.」 とアナウンスされる。到着時には日本語で 「八戸ノ里、八戸ノ里です。」 、続いて英語で 「This is Yaenosato. Station number, A-09.」 とアナウンスされる。ただし、駅名標と同様に以下に当てはまる場合はそれに従う。

  • 駅名に 「近鉄」 がつく場合、「近鉄」 を省略して案内する。例えば近鉄丹波橋駅の場合、「次は、丹波橋、丹波橋です。」 とアナウンスされ、英語も同様に 「The next stop is Tambabashi. Station number, B-07.」 とアナウンスされる。
  • 駅名に旧国名や都道府県名がつく場合、日本語では2回目に駅名を言う際に旧国名や都道府県名を省略する。例えば奈良県の大阪上本町駅の場合、「次は、大阪上本町、上本町です。」 とアナウンスされる。ただし、英語では 「The next stop is Osaka-Uehommachi. Station number, D-03.」 とアナウンスされる。
  • 終点の場合、その駅の線路構造により放送が違う。線路が行き止まりになっていない大阪難波駅の場合、「まもなく、大阪難波、難波です。この電車は、この駅までです。」 とアナウンスされる。ただし、線路が行き止まりとなっている京都・近鉄名古屋駅の場合 「名古屋、名古屋、終点です。」 とアナウンスされる。なお、どちらも前駅発車後の放送は 「次は名古屋、名古屋です。この電車は、次までです。」 とアナウンスされる。

運行形態[編集]

以下は、駅名に 「近鉄」 がつく場合はそれを省略する。(例:近鉄名古屋駅→名古屋駅)

特別急行列車[編集]

名伊観光特急「しまかぜ」と名阪甲特急「ひのとり」。

専用車両を用いて運行され、全車指定席である。愛称はない[注 4]

特別急行列車の特徴[編集]

近鉄特急は名阪、名伊、阪伊、京奈に代表される同系統の列車の大量運行だけでなく、全社の特急ネットワーク活用も重視しており、接続配慮だけでなく、30分以内の乗り継ぎであれば、特急料金もキロ通算の算定としている。3列車通算乗り継ぎで直通運行の無い区間でも乗継列車全ての座席が指定され、1枚の券が発券され、JRの在来線特急に無い特徴となっている。

大阪 - 名古屋間 (名阪特急)[編集]

名阪乙特急「アーバンライナー」

大阪難波・上本町 - 名古屋間で運行。東海道新幹線と競合関係にあり、速度は東海道新幹線に対して劣勢だが、特急料金の安さや、津駅への停車、難波直通の利便性では名阪特急が優勢である。

停車駅によって、大阪・鶴橋駅と名古屋駅の間は原則として津駅にしか停車せず「ひのとり」が用いられる甲特急と、大和八木駅名張駅白子駅四日市駅桑名駅にも停車する乙特急がある。また、2012年3月19日までは鶴橋駅と名古屋駅の間はどの駅にも一切停車しない列車もあり、俗に名阪ノンストップ特急と呼ばれていた。また、方向幕には行き先の上に赤でNONSTOPと表記されていた。

大阪線と名古屋線が接続する伊勢中川駅には止まらず、駅近くの連絡線を通過する。乗務員は津駅で交代する。なお、名阪ノンストップ特急は連絡線走行中に交代していたが、国土交通省からの指導によりこのような運用は廃止された。
近鉄の特急車両の車両の向きはこの名阪特急を基準とし、編成の向きが異なる区間を名古屋・関西地区の双方から列車が来る伊勢中川-賢島間に限っている。

なお、使用車両は甲特急は「ひのとり」、乙特急は「アーバンライナー」で統一されており、汎用特急車両は緊急時の代走以外使用されない。

大阪・名古屋・京都 - 伊勢志摩方面 (阪伊特急・名伊特急・京伊特急)[編集]

名伊特急

大阪難波・名古屋・京都駅と宇治山田駅鳥羽駅賢島駅を結ぶだけでなく、阪伊乙特急と名伊乙特急に関しては名阪乙特急の補完の役割も務めている。このため、一部の阪伊乙特急及び名伊乙特急は伊勢中川駅で接続するダイヤが組まれており、阪伊乙特急には、名阪乙特急が停車しない布施大和高田榛原伊賀神戸榊原温泉口の各駅に停車する列車もある。出退勤時は通勤輸送の性格を強めており、桔梗が丘駅久居駅にも停車している。

また、名伊特急と京伊特急は、どちらも新幹線の停まる名古屋駅及び京都駅を発着しているため、新幹線との接続も念頭に入れており、阪伊特急や名伊特急のビジネスモデルを国鉄はエル特急の参考にしたとしている。

なお、最盛期に比べると京伊特急の本数は減少し、現在は京伊特急が京橿特急の補完的な存在となっている。

2016年伊勢志摩サミット開催前後は鵜方駅まで短縮して運行されていた。

なお編成の向きの関係上、名伊特急は名伊特急として、阪伊・京伊特急は阪伊・京伊特急として折り返す。

大阪・京都 - 奈良方面 (阪奈特急・京奈特急)[編集]

他の特急系統に比べると短距離で停車駅も比較的多く、奈良線・京都線内の通勤輸送や都市間輸送を担っている。また、京都駅が新幹線停車駅であり、二つの古都・京都と奈良を結んでいるが故に京奈特急に関しては、後述の京橿特急と共に観光輸送も担っている。
この系統で2022年4月に19200系を使用した新たな観光特急「あをによし」が運行を開始。30年ぶりに1往復ながら京阪直通特急が復活した。

大阪阿部野橋・京都 - 橿原神宮前 - 吉野 (吉野特急・京橿特急)[編集]

南大阪・吉野線は特別急行列車を運行している路線では唯一の狭軌路線であるため、他の線区とは異なる専用車両を使用する。南大阪線内の随所には急カーブがあり、吉野線内には急勾配があり吉野口駅を迂回する関係上、他系統と比べて速度が遅い。最高速度は時速110kmである。
フリーゲージトレインの研究成果を生かし、京都〜橿原神宮前間の京橿特急を吉野まで直通運行させる構想がある。

特急その他[編集]

  • 天理線には定期特急列車は設定されていないが天理教の例祭の日などに臨時特急が運行される。
  • かつては湯の山線にも難波や名古屋から直通定期特急が運行されていた。
  • 加えて、1992年まで大和西大寺駅経由で京都〜近鉄難波 (当時) 間を所要1時間で直通する「第三の京阪特急」と通称された阪京特急が運行されていた。

その他[編集]

脚注[編集]

注釈
  1. 法隆寺線や初瀬線のように非電化のまま廃線となった路線もある。
  2. もっとも、1950年代後半は、東海道本線の逼迫から関西本線の準急「かすが」に最新車両が投入されるなど、国鉄天鉄局管内は、後年よりむしろ厚遇され、近鉄名阪特急に対し競争力を持っていた。
  3. 路線状況に加え、国鉄急行は名阪・京橿特急との競合がない桜井、高田に停車し、競合する畝傍に停まらないといった列車設定をしていた。
  4. 戦後直後の復活期は存在した。
出典

外部リンク[編集]

参考文献[編集]