近鉄8600系電車
近鉄8600系電車(きんてつ8600けいでんしゃ)は、近鉄奈良線系統にて使用される近畿日本鉄道の通勤型車両の1形式。
概要[編集]
8400系の増備として1973年に登場した。奈良線系統では初の冷房車で、初期車についてはラインデリアを持たないことが特徴である。1979年までに85両が完全新造され、1976年と2014年に1両ずつが他形式から編入されている。
基本構造は8400系に準じ、21m級の4扉・全鋼製拡幅車体を持ち、冷房を当初から搭載した結果屋根回りがやや高くなった。機器類は8400系に準じたMMC型抵抗制御だが、主電動機はMB-3064ACに統一されている。初期車についてはラインデリアを持たず、後に扇風機やローリーファンを設置する羽目になった。末期の2編成にはラインデリアとの併用となったので冷房効率も格段に上がった。なお、8612Fのモ8612のみは爆破被災車モ8059から転用されたVMC式制御器を搭載しており、これが原因で後述の回生ブレーキ化の対象となった。
8619Fは8000系列で唯一の6両固定編成を組み、中間車のうち2両は末尾が70となっている。この結果、モ8620とク8120は欠番扱いになった。
台車は新規設計の近畿車両製シュリーレン式空気ばね台車であるKD-76系を採用。ブレーキ方式は電磁直通ブレーキで統一されている。
改造[編集]
他形式からの編入[編集]
1976年、爆破被災車のモ8059はサ8167に形式変更され、新造車モ8667とともに当時2両固定編成であった8617Fに組み込まれ4連化され、8600系の一員となった。サ8167については老朽化により2014年のB更新の際に1010系のモ1062を電装解除して転用したサ8177と差し替えられた。この結果、8617Fについては中間付随車の運転台撤去跡が目立ったり、窓配置が異なったりと4連化以降廃車まで異彩を放っていた。
回生ブレーキ化[編集]
1982年、8601 - 03, 12Fを対象に回生ブレーキ付きの界磁位相制御に制御装置を改修、1C8M化され、パンタグラフの移設も行われたが、重量のある新製冷房車に対する省エネ効果の薄さから以降本系列には波及しなかった。
車体更新・B更新[編集]
1993年から1999年にかけて車体更新が施工され、車体側面にも方向幕が設置された。
2002年からはB更新が開始され、2009年以降の施行分にはMc車に車椅子スペースを設置、2016年以降の施行分には2800系2817F以降のグレー基調の新しい内装デザインに変更されており、座席モケットをグレーに、優先席をオレンジにし、化粧板を黒基調に変更、床材も茶色ベースのドット柄に変更された。8621Fのサ8171では奈良寄りの妻面窓を塞いだ。これらの工事は2019年までにサ8167を除く全車に対して完了した。
パンタグラフの交換[編集]
2017年に定期検査を終えて出場した8619Fのモ8669は下枠交差型パンタグラフに交換されている。
廃車と運用[編集]
上記の編成内の差し替えにより余剰となったサ8167が2014年7月23日に廃車解体された。2024年3月には8611Fが橿原線内で落雷の事故にあい、復帰せず4月に廃車となった。その後、2024年9月の異端車8617Fの廃車、11月以降の8602Fの廃車を皮切りに本格的な廃車が進んでいる。
2024年11月現在、4連17本と6連1本の計74両が在籍し、前者は東花園、後者は西大寺に配置されていずれも奈良線・京都線・橿原線などで運用される。
2024年以降に新車が奈良線内に投入されるが、8000系や8400系と比較してもまとまった両数が存在するため、製造から50年近くを経過し生え抜きの車両に廃車こそ出ているものの全廃までは当分まだ先と予想される。