近鉄2800系電車
近鉄2800系電車（きんてつ2800けいでんしゃ）とは、近鉄大阪線・名古屋線系統に所属する鉄道車両の1つ。電算記号はAX。
登場の経緯[編集]
近鉄大阪線・名古屋線系統に戦前から在籍していた2200系は老朽化が進んでいた。そこで、近鉄初の量産型冷房通勤車として2610系とともに1972年より本系列が投入された。
本系列は登場当初からロングシートで、かつ当初は全編成にトイレがなかった点で2610系と異なる。
構造[編集]
車体構造は前々年に登場した2600系に準じ、21m級4扉全鋼製車体を備える。この構造は2470系で一般化されたものだが、本系列をもってこの構造の採用は終了した。
車内はオールロングシートで、前年に登場した2430系に準ずる。なお、冷房搭載とはいえラインデリアや熱交換型換気装置は引き続き搭載された。1972年に登場した4本は冷房を5台、それ以外の13本には冷房の容量を増大した上で4台搭載する。
主要機器は2600系のベースともなった2400系に準じ、出力155kWの主電動機に発電ブレーキ対応の三菱電機製ABFM電動カム軸式抵抗制御の組み合わせとなっている。駆動方式はWN駆動方式であり、歯車比は83:18=4.61で設定された。
台車については2680系で採用されたシュリーレン式空気ばね台車のKD-72系を採用したが、最終増備の2本には新設計のKD-87系を採用した。
ブレーキ方式は近鉄の標準品であるHSC-D発電併用電磁直通ブレーキとしている。
パンタグラフは3連と2809FにはMc車の運転台側に1基とM車に2基、2連にはMc車に2基、2809F以外の4連はMc車の連結面側に1基とM車に2基搭載している。
こうして1979年までに2連2本、3連4本、4連11本の計60両が製造された。
改造[編集]
トイレ取り付け[編集]
2811, 13, 15, 17Fの4編成には急行運用を考慮して1987年から1998年にかけてトイレが設置された。
車体更新[編集]
1993年から1998年にかけて内外装の修繕工事や側面方向幕設置などの改造が全車に対して行われた。2816Fと17Fには乗降扉付近床面のノンスリップ化も行われている。
L/Cカーへの改造[編集]
1997〜98年にかけて2811, 13, 15Fに対してデュアルシート化改造が行われている。
3連化[編集]
2809Fは4連で落成したが、大阪線から名古屋線に転属する際にサ2959を抜いて3連化されている。
B更新[編集]
2000年代に入るとさらなる使用が見込まれたことから2度目の車体更新が行われた。主に転落防止幌やTc車の車椅子スペース設置が施工されている。
この工事は2008年から2017年までに廃車車両を除いた全車に対して完了した。
パンタグラフの交換[編集]
2013年以降、通常のひし形パンタグラフから下枠交差型パンタグラフに交換された車両も登場している。
運用[編集]
当初、2813, 15〜17Fは名古屋線所属であったが、1990年には全車が大阪線に集結した。その後、L/Cカー改造車、3連、2817F、2809F、2連の順に名古屋線に転属した。2817Fは再度大阪線用とされたが、2020年から一時期名古屋線に配置されたことがある。
この過程で2809Fが3連化された際、編成から抜かれたサ2959は2006年に廃車解体され、2022年現在は高安検車区に4連7本、富吉検車区に4連3本、3連5本、2連2本の計59両が在籍する。
大阪線所属車は主に青山町以西の幅広い運用に就く。名古屋線所属車のうち3連は普通・準急運用に就き、2連は普通から急行の増結用までの幅広い運用に就く。4連については5800系DG12編成、1200系FC92編成およびFC93編成、2610系L/Cカー改造車、および1400系FC07編成と共通運用で、主に名古屋方に2連を接続した6両編成で名古屋 - 鳥羽間の急行に充当され、3扉の5200系と運用は分けられている。
2025年以降、新車投入が計画されているが、まとまった両数が存在する本系列の全廃はまだ先であると予想される。