近鉄8400系電車
近鉄8400系電車(きんてつ8400けいでんしゃ)は、近鉄奈良線系統にて運用される近畿日本鉄道の通勤型電車の1形式。
概要[編集]
1969年の昇圧直前に登場し、1972年までに合計55両が製造された。基本構造は8000系に準ずるが、3または4両編成を基本とするべく、電動発電機と空気圧縮機の大容量化が図られている。
車体は8000系中・後期型と同一の21m級4扉・ラインデリア付きの全鋼製拡幅車体を持ち、主電動機も145kW級の直巻電動機とされた。制御装置は単純なMMC型電動カム軸式抵抗制御となっている。
ブレーキ方式はHSC-D発電併用電磁直通ブレーキを採用している。台車については基本的に8000系と同一の空気ばね台車であるKD-64系、B12 - 14およびモ8415については新造品の金属ばね台車であるKD-73系[1]で、いずれも近畿車両製のシュリーレン式台車で統一されている。
改造[編集]
ク8559の編入改造[編集]
1976年に爆破被災車両であるク8559が中間電動車に改造されて本系列のモ8459に編入された。当該車両は種車の金属ばね台車ではなく、8600系で実績のあるKD-76系空気ばね台車が採用されており、貫通路も狭幅化がなされているが、貫通扉は種車の両開きのものを踏襲している。
モ8415・モ8417の固定編成化[編集]
製造時、単独Mc車であったこの2両だが、前者は8416Fの製造時に3連化され、後者については2連で登場した8411Fと固定編成を組み、回生ブレーキ化の際にモ8411に改番。同時に元モ8411は運転台撤去がなされモ8461Fとなり新8411Fを名乗ることになった。
冷房化・回生ブレーキ化[編集]
1978年から1985年にかけて冷房化が行われ、同時に8405Fおよび2連のままで残った8410Fを除く全車が1C8M・回生ブレーキ付きの界磁位相制御化改造を受けた。改造車は先頭電動車の電装解除と中間付随車の電装が行われており、パンタグラフも集約されている。8405Fは最後まで抵抗制御のままであり、モ8455のパンタグラフが1基であるなど、他とは趣を異にしていた。
ワンマン化[編集]
1992年から翌93年にかけてすべての3連にワンマン化改造がなされ、車内自動放送装置や足踏み式デッドマン装置などが取り付けられ、田原本線向けのワンマン化に対応された。
車体更新・B更新[編集]
1986年から1993年までに全車に対して車体更新工事が行われ、側面方向幕も設置された。1997年に入るとB更新工事も始まり、転落防止幌も設置されるようになり、2003年までに8401・05・10Fの計10両を除く全車に対して完了した。
特別塗装[編集]
8409Fが旧600系を復刻したダークグリーン塗装、8414Fが820系を復刻した、マルーン1色に銀帯を配した塗装をしていたが、いずれも2022年3月末をもって元に戻された。
廃車・運用[編集]
B更新未施工の10両は2004年から2014年にかけて全車が廃車解体された。特に8405Fは2006年に中間車を廃車にして以降、2010年の廃車まで2両編成で運用していた。その後、2022年に入り3連の8416Fも余剰廃車となり、2022年12月現在は4連6本、3連6本の計42両が在籍し、4連は奈良線・京都線・天理線・橿原線にて、3連は単独で田原本線の他、2本併結の6連で奈良線や京都線系統でも使用される。4連はワンマン化がなされていないため、代走以外で生駒線では使用されない。
2024年以降、奈良線には8A系が投入されるが、本系列のうち4連は8000系並みに数が少なく、8000系に次いで代替されあっさり全廃となるものと予想される。また、3連も安泰とは言えず、新型車両の投入により捻出された1252系[2]などで両数を減らしながら置き換える可能性もあり、今後が注目される。特に8409Fは塗油装置を備えているものの、編成内のモ8459はク8559時代から数えると車齢が55年を超えており、かつ近鉄最後の扇風機搭載車両であるため置き換えが急務の可能性が高い。