近鉄8000系電車
近鉄8000系電車(きんてつ8000けいでんしゃ)は、1964年に奈良線系統に登場した近畿日本鉄道の鉄道車両。
概要[編集]
1964年、奈良線では建築限界の拡張工事が行われたため、輸送力増強を目的として900系をベースに1980年までに208両が製造されたが、全車が同時に在籍したことはない。1969年の昇圧時に900系を本系列に編入する予定もあり、8021からの付番となっていたが、廃車まで900系の、8000系への編入は行われなかった。
構造[編集]
車体は900系のものを踏襲した21m級4扉の、裾絞りのある全鋼製拡幅車体を採用し、初期は扇風機を搭載していたが、中期でラインデリアを採用、末期は新製冷房車として落成した。8069Fのみはアルミ合金製の角屋根車体を採用している。
台車は初期がコイルバネ台車のKD-51系、中・後期は空気ばね式のKD-64系、末期は新規設計の空気ばね式であるKD-86系が採用されたが、いずれもシュリーレン式台車となっている。
主電動機は後の11400系でも採用される600V下で115kW級のMB-3064ACあるいはHS-833Krbを採用。制御方式はVMCあるいはMMC方式の抵抗制御となっていた。ブレーキ方式は電制併用の電磁直通ブレーキに統一されている。
改造[編集]
冷房化[編集]
1974年に入り8023Fが冷房化されたが、ベンチレーターの撤去を伴う大改造となったためコストが高くつき、一旦中断された後、1977年から85年にかけて内容を変更の上で残りの冷房化も完了し、同時に編成組み替えや界磁位相制御化がなされたものも存在した。
界磁位相制御化[編集]
上記の冷房化に並行し、4連の一部に対しては先頭電動車を電装解除して中間車に電装品を移し替え、中間車同士でユニットを組ませたうえで8800系と同様の回生ブレーキ付き界磁位相制御に改造された。また、2両編成の一部は新製中間車モ8250とユニットを組ませて界磁位相制御の3両固定編成となった。
8069Fの中間封じ込め改造[編集]
1989年に入り、連結器かさ上げ工事が行われたが、8069Fはアルミ車ゆえ技術的に不可能だったためかその対象外となり、運転台を使用停止の上で8074Fの中間に封じ込められた。
車体更新・B更新[編集]
1983年頃より車体更新が始まり、方向幕の設置などがなされた。1996年から2000年にはアルミ車体の8069F以降にB更新が施工され、後に転落防止幌の設置やモケット交換なども一部になされている。
事件[編集]
1972年に8059Fは菖蒲池付近を走行中に何者かにより爆破される事件に巻き込まれ、1976年の検証終了・復旧時にMc車が8600系、Tc車が8400系に編入されて編成消滅している。
廃車[編集]
最盛期は206両が在籍していたが、1233系や9020系などに置き換えられる形で900系より先行して1996年から廃車が始まり、2002年までに扇風機搭載車両は全滅した。2004年からはB更新施工車の廃車も始まり、同年内に2連は一旦全廃。唯一のアルミ車の4両は従来の8074Fの2両とともに2005年に廃車解体された。2006年には4連のうち8085Fと87Fが中間車を廃車にして2連化されたが、2014年にこれらも廃車され2連は全滅している。2006年からは末期製のモ8250を組み込んだ3連の廃車が始まっている。廃車後、一部の金属ばね台車は900系の台車換装に、一部の空気ばね台車は2610系や1010系のコイルバネ台車や、2000系の、10100系由来のベローズ式空気ばね台車からの台車換装に利用されている。
2021年のダイヤ改正では最後まで3連で残っていたB78編成とB79編成が運用を離脱・休車、2023年2月に廃車となりモ8250も同時に全滅。2023年時点では4連7本28両が奈良線・京都線系統で使用される。
2024年10月以降、奈良線系統には8A系が投入されるが、本系列は後継の8400系や8600系と比較しても数を減らしていることから真っ先に代替対象となり数年以内に全廃となることは確実であり、残る7本の廃車も9月より進んでおり、10月初頭までに8083F・8084Fの順に廃車された。