列車便所

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列車便所(れっしゃべんじょ)とは、鉄道車両の内部に設置されたトイレのこと。

概要[編集]

鉄道草創期、列車内へトイレは設置されていなかった。長距離列車の場合、途中駅で長時間停車の時間が設けられ、乗客は駅備え付けのトイレを慌ただしく利用していたが、政府高官が用足し後に発車直後の汽車を追いかけて転落して死亡する事故が起きたことも相俟って、幹線でトイレが設置され始めるようになり、鉄道での長距離旅行が当たり前になると、トイレ休憩の時間を減らしてスピードアップ、乗客へのサービス向上を目的に車内へのトイレ設置が当たり前になった。

汚物処理の仕組みも初期の垂れ流し式から、現在の真空式・カセット式へと進化を遂げている。

なお、トイレ有り駅での停車時間確保は、合理化で車内トイレ無し車両が投入された地方JR線区や運転手の休憩が義務付けられる高速バス(車内トイレの有無に関わらず)において現在見られる光景である。

仕組み[編集]

開放式[編集]

いわゆる垂れ流し便所。排泄物は便器からそのまま線路へと落とされる。最も原始的な方法であり、車両や車両基地へ汚物処理のための特殊な装備・設備を必要としない。

しかし、線路周辺に悪臭を振り撒く上、停車中は汚物が一箇所に固まってしまう。このため開放式トイレを装備する車両にはトイレ付近に

停車中は使用しないでください

と書かれたプレートやステッカーが設置されていた。それでも停車中に使用する人は絶えず、多数の列車が発着する主要駅では始終臭っていた。一方、走行中も列車の走行風で一箇所に固まらないものの、汚物が拡散されることに変わりはなく黄害と呼ばれた。汚物は適宜地上勤務の職員が車両への給水用の水道水で流していた。

現在、日本国内で開放式便所を装備する車両は動態保存の車両以外に残されていないが、外国では今でも開放式が現役のところがある。

粉砕式[編集]

開放式便所の改良型。洗浄水の中に薬剤を混ぜ、汚物を消毒・粉砕してから線路上へ落下させる。結局垂れ流している事に変わりはないため、比較的短期間で消滅した。

貯留式[編集]

車両床下にタンクを設置し、そこに汚物を貯留する。線路へ汚物を落とさないので衛生面に優れ、停車中も使用可能というメリットがある。

日本では0系新幹線に初めて設置された。しかし床下に設置できるタンクの容量には限界があり、東京-大阪間を1往復するとタンクが一杯になってしまった。このため、1往復ごとに基地に入庫してタンク内容物を抜き取ってやらないといけないため、運用効率が悪化しこちらも比較的早期に消滅している。

循環式[編集]

車両床下にタンクを設置し、薬剤を混ぜた洗浄水を入れて出庫。使用後に洗浄水を流すと汚物は薬剤によって消毒・分解され、洗浄水だけを再利用するというもの。タンクの容量をあまり大きくせずとも長期間抜き取りを行わなくていいため、車両の入庫サイクルを崩さない。

洗浄水に混ぜられている薬剤は硫酸銅系の薬品であり、洗浄水は青みを帯びている。また脱臭のために芳香剤が混ぜられており、独特な匂いがある。

真空式[編集]

航空機にも採用されている汚物処理装置。便器内部の排水弁を一瞬開き、その後圧縮空気で汚物を吸引してタンクへ収める。洗浄水の使用量が少ないため、処理装置を小型化出来る。

カセット式[編集]

JR西日本の普通列車用車両に多く採用されている方式。処理装置内部に交換式のカセットが入れられており、大便・トイレットペーパーはカセットで回収。小便が混ざった洗浄水は消毒の上、車外へ排出される。カセットのろ過能力は一般家庭に設置されている浄化槽並に高く、排水は飲用可能なレベルらしい。そんな水誰が飲むんだという話は別にして。

使用後のカセットは車両基地で焼却する。なお電車には処理装置内部に電熱線が入っており、大便とトイレットペーパーを電熱線で焼いてしまうというものもある。