飛行機
飛行機 (ひこうき)とは、航空機のうち、重航空機に分類されるもので、固定翼をもち、飛行に要する発動機を要するものである。他の航空機、また乗り物の中で最も速度が高く、他の追随を許さない。
概要[編集]
飛行機が飛べる原理は航空力学、航空工学によって説明できる。いずれも20世紀の物理学、機械工学である。
原理[編集]
飛行中の飛行機には、重力、揚力、抗力、推力がかかっている。このうち最も重要なのが揚力で、主翼の構造が重要な役割を果たしている。
構成[編集]
胴体と主翼、尾翼、降着装置、発動機で構成される。
胴体[編集]
前部に操縦席、中央部に主翼、後部に尾翼がある。胴体には客席、貨物室、燃料タンクがある。
主翼[編集]
揚力を発生させるための装置である。断面は鳥類の翼と同じで、ここに気流が流れると下面よりも上面の気圧が低くなり、上向きの力が加わる。水平面に対して主翼につけられる角度が迎角である。迎角が大きくなると揚力が大きくなるが、十数度以上になるとそれ以上に揚力が大きくならない。また、揚力は速度の二乗に比例するので一定の速度より速度が落ちると揚力が急速に小さくなる。この速度を失速速度という。アスペクト比、翼面荷重によって速度、航続距離に影響がある。形状によって直線翼、楕円翼、テーパー翼、前進翼、後退翼、三角翼、可変翼がある。
尾翼[編集]
飛行中の機体を安定させるための装置である。垂直尾翼に方向舵、水平尾翼に昇降舵がある。尾翼のない無尾翼機がある。
降着装置[編集]
ライト兄弟が開発したライトフライヤーは離陸にレールと車輪、着陸に橇を使ったが、やがて自動車の車輪を転用した車輪が登場した。また、飛行中は車輪が空気抵抗となるため、これを機体内に引き込む引き込み脚が開発された。
発動機[編集]
ライト兄弟が開発した飛行機は質量の小さく、馬力が大きいガソリンエンジンであり、それに続く飛行機もガソリンエンジンでプロペラを回転させていた。1930年代からジェットエンジンが開発、実用化された。なお、1930年代にディーゼルエンジンの飛行機も少数だが存在した。電動機でプロペラを回転させる飛行機は1920年代に構想があったが、蓄電池の重量から実用化できなかった。しかし近年、太陽電池を用いて電動機でプロペラを回転させる飛行機の飛行に成功した。
燃料タンク[編集]
胴体や主翼に収められる。戦闘機など、軍用機には増槽が使われることがある。これでも足りないときは空中給油が行われる。
種類[編集]
推進方法[編集]
任務[編集]
用途[編集]
歴史[編集]
第一次世界大戦まで[編集]
構想は古くから存在したが、実現したのはアメリカ合衆国のライト兄弟が1903年12月17日にキティーホークで12秒の飛行が初めてであった。その後、多くの技術者によって改良が加えられ、ドーバー海峡横断にも成功し、一時間程度の飛行にも耐えうる段階で第一次世界大戦を迎えた。
第一次世界大戦[編集]
第一次世界大戦では新兵器の軍用機として活躍した。当初は偵察機として使われ、やがて爆弾を落とすようになって爆撃機が誕生した。それらの敵の跋扈を阻止するために戦闘機が誕生した。開戦から数年の間に大幅な性能向上が行われ、プロペラ回転圏内から弾丸を発射する機関銃を装備し、照準装置で投下される爆弾を積んだ爆撃機によってドーバー海峡を横断した戦略爆撃が行われた。
戦間期[編集]
第一次世界大戦の教訓から各国は航空戦力の増強と飛行機の性能向上に努めた。軍縮によって軍艦の所有に制限が加わったことにより、この傾向に拍車がかかった。また民間航空会社が生まれ、旅客機による旅客輸送、郵便輸送が始まった。ダグラスDC3のような優秀な機材も登場した。
第二次世界大戦[編集]
第二次世界大戦では主兵器として決定的な役割を果たした。軍用機の性能が戦争の行方を左右するほどになった。航空母艦による機動部隊の活躍、本格的な戦略爆撃機の登場、襲撃機による通商破壊、ジェット機による運用が行われた。また、多数の輸送機が使用された。
冷戦期[編集]
本格的なジェット機時代が到来した。軍用機の速度が音速を超え、主兵器がミサイルとなった。旅客機はさらに大型化、高速化し、機材はジェット機が使用されるようになり、客船や長距離列車が衰退した。一方、これに対抗する形で東海道新幹線が登場した。
影響[編集]
軍用機の登場は戦争の被害の拡大を招き、戦争の様相を一変させた。また、旅客機の登場と大型化は客船の衰退を招き、さらに世界を狭くさせ、人や物の移動の活発化させてグローバル化が進んだ。
輸送上の特徴[編集]
旅客輸送[編集]
音速に近い速度で輸送することができ、他の輸送手段と比べて最もスピードが速い。そのため、長距離に強い。 一方で、離着陸に長い滑走路を必要とし、空港は広い面積を必要とする。そのため、市街地に設置することができず、短距離輸送では不利である。また、鉄道と比べて環境負荷も大きい。 概ね、直線距離で600kmを超えると高速鉄道より有利になる傾向がある。
また、数百人が犠牲になる重大事故が起きることがあり、危険な乗り物との印象を持たれがちである。しかし、遭遇する確率は低く、自動車の方が死亡事故に遭う確率が高いとの試算もある。実際、アメリカ国家安全保障会議の試算によると飛行機での死亡率は0.00048%で、自動車の死亡率0.9%より2000倍近く低くなっている。
貨物輸送[編集]
音速に近い速度で輸送することができ、他の輸送手段と比べて最もスピードが速い。そのため、長距離に強い。 一方で、積載可能な量が限られていて、大量輸送が難しい。また、鉄道や船と比べて環境負荷も大きい。 そのため、スピード重視の貨物(植物や郵便物)の長距離輸送に用いられる。