JR東日本E231系電車1000番台
K-26編成(田町駅にて) | |
製造所 | 川崎重工 東急車輛 総合車両製作所 |
運用者 | JR東日本 JR東海 |
製造年 | 2000-2007年 |
最高運転速度 | 120km/h |
設計最高速度 | 120km/h |
電源方式 | 直流1500V |
保安装置 | ATS-P ATS-Sn |
制御方式 | VVVFインバータ制御(IGBT素子) |
歯車比 | 7.07 |
所属車両 センター | 国府津車両センター 小山車両センター |
E231系電車1000番台(イー231けいでんしゃ1000ばんだい)とは、東日本旅客鉄道(JR東日本)が設計・開発した近郊型直流電車である。
概要[編集]
1990年代、首都圏の近郊路線で運用されていた113系・115系は老朽化が進行しており、3ドアクロスシートの構造上ラッシュ時の混雑が深刻化していた。このような状況を打開するべく、当時中央・総武緩行線に投入されていたE231系通勤タイプを近郊路線用にアレンジした車両が登場した。これがE231系1000番台である。ボックスシートを導入する一方で一部の車両はオールロングシートとなり、遠距離利用と通勤利用どちらにも対応できる。また、先代E217系で採用されたクラッシャブルゾーンも受け継いでいる。前照灯は顔面の上側に移され、これは後のE531系やE233系、E235系に取り入れられた。こうした仕様の違いから、通勤タイプとは別形式といっても過言ではない。
現在は登場当時に投入された宇都宮線・高崎線・東海道線のほか、湘南新宿ラインや上野東京ラインといった直通サービスでも使用されている。かつてはJR御殿場線にも乗り入れたが、2012年に撤退している。2015年からは小山車両センター所属車両と国府津車両センター所属車両が(ほぼ)共通運用化され、E233系3000番台との併結運転も開始された。
帯は80系より受け継がれてきたオレンジ色と緑色の湘南色を採用しているが、同形式が「湘南電車」と呼ばれることは少ない。制御機器は日立製の3レベルIGBT-VVVFを採用している。一般的なVVVFインバータでは加速時に磁界音が上昇し減速時に下降する傾向があるが、このVVVFはその逆で加速する際に一時磁界音が降下するため、音鉄からは「墜落インバーター」と親しまれている。現在は別のインバーターへの取り替えを含めた機器更新が進行しており、墜落インバーター搭載車両は数を減らしているが、世界的な半導体不足の影響もあってかドアエンジンのみ更新して出場する編成も増えている。
種類[編集]
小山車両センター所属車(初期)[編集]
E231系1000番台の中で一番最初に製造されたグループで、「ヤマ初期」と呼ばれる。2000年から2003年にかけて基本U編成41本、付属U編成28本が東急車輛製造、川崎重工で落成した。小山電車区(現:小山車両センター)の115系を駆逐するために2000年6月より運用を開始し、2004年までに全運用を置き換えた。当初はモノクラス編成であったが、2004年から2005年にかけて基本編成の4・5号車へのグリーン車組み込みを行った。このグループはJRの中でも特に椅子が固いことで有名であるが、実際は長時間座っても疲れにくい構造になっておりトータルの快適性は115系よりも向上したといえる。2015年ごろより機器更新を施工し、現在このグループの未更新車は消滅した。前照灯のled化工事も進行中である。
国府津車両センター所属車[編集]
東海道線の113系取り替え用として2004年に登場した。ヤマ初期車と比べると案内表示機が1段式から2段式に変更されるなどの仕様変更が行われた。国府津車両センターにグリーン車つきの基本K編成42本、付属S編成34本が投入され、2006年ダイヤ改正で東海道線東京口から113系を全て追い払った。なお、JR東海所属の車両も一部が置き換え対象となった。基本編成はグリーン車導入によって余剰となったヤマ初期車の元4・5号車を6・7号車に組み込んで使い回しているため、案内表示器が1段式の車両と2段式の車両が同じ編成内に混在している。なお、コツK-01編成のみ全車新造された。一時期は一部の編成が落成直後から小山へ貸し出されていた。2020年11月のS-13編成を皮切りにこのグループへも機器更新が波及し、未更新車はその数を徐々に減らしつつある。
小山車両センター所属車(後期)[編集]
2006年2月から6月にかけて、高崎車両センターの211系を置き換えるために10両編成8本と6両編成4本が投入された少数派。小山所属車両であるが構造はほぼ同時期に製造された国府津車両センター所属車両と共通設計となっている。これらの編成の増備により2006年7月より上野駅を発着する全ての中距離電車がグリーン車付きとなった。2007年には追加で付属1本(U-118編成)が落成した。このグループの車両においても機器更新が行われているが、更新車はまだ少数派である。
編成内容[編集]
基本編成[編集]
号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ヤマ車 | クハE230-8000 | モハE230-3500 | モハE231-1500 | サロE230-1000 | サロE231-1000 | サハE231-6000 | モハE230-1000 | モハE231-1000 | サハE231-1000 | クハE231-6000 |
コツ車 | クハE230-8000 | モハE230-3500 | モハE231-1500 | サロE230-1000 | サロE231-1000 | サハE231-1000 | サハE231-1000 | モハE230-1500 | モハE231-3500 | クハE231-8500 |
付属編成[編集]
号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|---|
ヤマ車 | クハE230-6000 | モハE230-1000 | モハE231-1000 | サハE231-3000 | クハE231-8000 |
コツ車 | クハE230-6000 | モハE230-1000 | モハE231-1000 | サハE231-3000 | クハE231-8000 |
車両番号[編集]
- クハ
- E230-6001 ~ 6028 : 小山車付属編成1号車
- E230-6029 ~ 6062 : 国府津車付属編成1号車
- E230-6063 ~ 6069 : 小山車2次車付属編成1号車
- E231-6001 ~ 6041 : 小山車基本編成10号車
- E231-6042 ~ 6049 : 小山車2次車基本編成10号車
- E230-8001 ~ 8041 : 小山車基本編成1号車
- E230-8042 ~ 8083 : 国府津車基本編成1号車
- E230-8044 ~ 8091 : 小山車2次車基本編成1号車
- E231-8001 ~ 8028 : 小山車付属編成5号車
- E231-8029 ~ 8062 : 国府津車付属編成5号車
- E231-8063 ~ 8069 : 小山車2次車付属編成5号車
- E231-8501 ~ 8542 : 国府津車付属編成10号車
- サロ
- E230-1001 ~ 1041 : 小山車基本編成4号車。サハE231を置換。
- E231-1001 ~ 1041 : 小山車基本編成5号車。サハE231を置換。
- E230-1042 ~ 1083 : 国府津車基本編成4号車
- E231-1042 ~ 1083 : 国府津車基本編成5号車
- E230-1084 ~ 1091 : 小山車2次車基本編成4号車
- E231-1084 ~ 1091 : 小山車2次車基本編成4号車
- サハ
- E231-1001 ~ 1123 : 小山車基本編成4,5,9号車。後に4,5号車は国府津車6,7号車に転用。
- E231-1124 ~ 1125 : 国府津車基本編成6,7号車
- E231-1126 ~ 1133 : 小山車2次車基本編成9号車
- E231-3001 ~ 3028 : 小山車付属編成4号車
- E231-3029 ~ 3062 : 国府津車付属編成4号車
- E231-3063 ~ 3069 : 小山車2次車付属編成4号車
- E231-6001 ~ 6041 : 小山車基本編成6号車
- E231-6042 ~ 6049 : 小山車2次車基本編成6号車
- モハ
- E230-1001 ~ 1069 : 小山車基本編成7号車、付属編成2号車
- E230-1070 ~ 1103 : 国府津車付属編成2号車
- E230-1104 ~ 1118 : 小山車2次車基本編成7号車、付属編成2号車
- E231-1001 ~ 1069 : 小山車基本編成8号車、付属編成3号車
- E231-1070 ~ 1103 : 国府津車付属編成3号車
- E231-1104 ~ 1118 : 小山車2次車基本編成8号車、付属編成3号車
- E230-1501 ~ 1542 : 国府津車基本編成8号車
- E231-1501 ~ 1541 : 小山車基本編成3号車
- E231-1542 ~ 1583 : 国府津車基本編成3号車
- E231-1584 ~ 1591 : 小山車2次車基本編成3号車
- E230-3501 ~ 3541 : 小山車基本編成2号車
- E230-3542 ~ 3583 : 国府津車基本編成2号車
- E230-3584 ~ 3591 : 小山車2次車基本編成2号車
- E231-3501 ~ 3542 : 国府津車基本編成9号車
その他[編集]
- 上記3種類の見分け方の一つとして全面の編成番号表示がある。小山初期車は白い札が掲示されており、国府津車は透明のステッカーが貼り付けられている。小山後期車は両方とも装備している。
- 小山車の付属編成番号は熱海寄りモハユニットの下2桁に合わせて付番されている。このため一部の番号が欠番となっている。
- 一時期、小山車に保安装置の都合上でJR東海区間へ入線不可能な編成が存在し、前面にⒺのステッカーが掲出されていたらしい。
- コツK-02編成は、製造後しばらくの間小山車向けのグリーン車の公式試運転用車両として使用された。この際、中間にグリーン車2編成分(4両)を挟み込んでいたため、ファンから注目されていた。
- 2005年に横浜駅付近でコツK-12編成が車両故障を起こして自走不可能となったため、急遽近くを走っていたE217系マリR-02編成(当時)に救援回送される出来事があった(当時の映像)。E231系とE217系が連結したのは恐らくこのときだけである。
- JRが製作した社員研修用ビデオ(別名股尾前科)にも事故当該車両として出演しているが、制御機器がなぜか三菱GTO-VVVFになっているなどツッコミどころが多い。
- 2023年にはそれまで機関車が担当していた黒磯訓練への充当を開始し、注目を集めている。なお、これがE493系本格稼働までの一時的な措置なのかは不明瞭である。
- 2004年2月、東急車輌の工場内で製造中であったサロE231-1005・サロE230-1005が事故で大破してしまうトラブルが発生。グリーン車が再度作り直される事態となった。なお、この時点で車番は受け継いでいるため、正確には廃車でない。
- 2023年8月には大船駅で電柱と列車が衝突する事故が起こり、当形式のS-14編成が被災した。損傷具合が激しいため、今後の復帰はだいぶ厳しいと思われる。
- U520・14編成は一時ホーム検知装置(京浜東北線用209系の廃車発生品)の試験車として運用されていた。
- 川重製車両と東急・新津製車両では切妻の構造などに差異がある。
今後の動向[編集]
E231系1000番台は登場から20年を迎え、更新時期に差し掛かりつつある。2027年〜2029年頃には小山車両センター所属初期車がE217系の置き換え開始時とほぼ同じ車齢となるので、代替車両の導入が始まっても可笑しくはない。しかし、現状としてE231系1000番台は小山初期車の機器更新が完了し、国府津車と小山後期車も施工の最中であるほか、ホームドア対応改造なども行われており引退の兆しが全く見えないのも実情である。
過去(2017年以前)には小山の一部編成の将来的な地方転用を見据え、サハやサロの機器更新を見送っていたそうだが、後にこの方針は撤回されたということが労働組合資料より判明している。また、2018年の産経新聞のニュース記事で2024年度からE235系2000番台が上野東京ライン系統に順次導入されることが発覚し一時話題となったが、こちらも昨今の情勢的に頓挫したと見ていいだろう。
そもそもE231系1000番台は1000両を数える大所帯で、211系・205系・719系・キハ110など更新を優先すべき車両が地方に大量にいることもあり、代替は当分(10年以上)先送りされていると言っていいだろう。
外部リンク[編集]
関連項目[編集]
JR JR東日本の鉄道車両 |