中学校
(新制中学校から転送)
ナビゲーションに移動
検索に移動
中学校(ちゅうがっこう)とは、小学校の課程を終えた者が進学する日本の教育機関。12歳から15歳までの3年間の教育を行う学校。外国にも類似の教育機関がある。本ページでは学校教育法施行以後の現行の新制中学校を記述し、施行以前の旧制中学校は別ページとする。
概要[編集]
現在の中学校は学校教育法に定められている。
児童期を終え、思春期に入った者が入学する。一部の中学校には、自転車通学、スクールバス通学の所もある。
部活動は中学校より本格化し、所属する部によっては市区町村大会・都道府県大会・地方大会・全国大会へと出場する。
沿革[編集]
新制中学校[編集]
学校教育法の施行によって1947年に誕生した。戦時措置で実施が延期された義務教育が9年間に延長され、義務教育の後期3年間を担う学校で、公立中学校では男女共学とされている。
戦後間もなくの設置のため、校舎不足で問題が起きた。午前・午後の二部授業を行う学校もあったが、校舎の建設が急がれて収束した。また、街に溢れる浮浪児のために、暫定措置として大阪で最初の夜間中学が設置された。
市町村は中学校の設置を義務づけられたが、予算がなく、隣接する市町村との間で組合立中学校を設置すること[注 1]もあったが、市町村合併や生徒急増による独立で解消したところもある。校舎の捻出も様々で、一から建設したところも多かったが、国民学校高等科、青年学校普通科、中等学校に併設したもの、新制高等学校の統廃合により余った校舎を活用したものと様々である。今でも、小学校や高等学校に隣接した中学校があるのはこの名残である。
例[編集]
教職員[編集]
- 公立中学校では、常勤の教諭でほぼ構成され、教科指導や学級指導など表に見える業務の他、総務、生活指導等の分掌を分担している。
- 校長、教頭(副校長)の管理職以外に、教務主任、校務主任の中間監督職が置かれており、特に教務主任は準教頭的なポジションとなっている。
- 昨今、教諭の過重労働も指摘される中、中学校の事務職員は1名から2名程度が殆どで少ない。
- 教員になるためには教員免許状が必要である。取得には大学の教育学部のほか、各教科に対応する学部で単位を取得し、教育実習を行う必要がある。その後、公立中学校の場合は各地方自治体の教育委員会が行う採用試験を受ける必要がある。
- 公立学校の教員は数年単位で勤務校が変わる。異動の範囲は教育事務所の管轄単位のため、同じ自治体の中で異動する場合もあれば、別の自治体の学校や外国の日本人学校へ異動する場合もある。
教科・科目[編集]
現行[編集]
過去に存在[編集]
現状[編集]
生活[編集]
- 殆どの中学校が制服を定めている。男子は学生服、女子はセーラー服といったデザイン性や機能性などが殆どないものが主流で、ブレザーは全体で見ると少なめ。
- 小学校同様学校指定の体操服が存在し、体育や技術といった実技系の授業は体操服に着替えて受ける。
なお常に制服を着用することを校則で定めている学校が多いが、近年、特にコロナ禍以降は制服の着用は入学式・始業式・終業式・卒業式・修了式など儀礼的な行事の日のみ着用義務付けで、平時は毎日洗濯出来る体操服の着用を認める所もある。 - 地域・学校によっては名札の着用が校則に定められていることがある。かつては登下校中であっても名札を外すことや隠すことは認められていなかったが、近年のプライバシー保護意識の高まり、子供を狙った犯罪の増加などから登下校中は名札を外したり隠したりしても良いと校則を改めたり、名札の廃止に踏み切ったところも多い。
- 小学校に比べると学校数は少なく(小学校の半分程度の地域が多い)、地方では中学校で初めてクラス替えを経験する者も多い。通学距離・時間も長くなり、通学手段として自転車が認められるようになるが、学校の定めた基準をクリアした上で許可を必要とする。
- 学生証を発行するところは少なく、生徒手帳がその役割を担っているところが多い。
- 始業時刻は8時15分から8時半前後のことが多いが、実際は部活動の朝練習の関係で7時台前半に登校をすることを強いられる子供がそれなりにいる。当然教員の出勤時間もそれに合わせて早くなる。
- 給食は2021年度のデータで9割以上の学校で実施されている。[1]
- 生徒が掃除に取り組むのはどこの学校も同じ。清掃の時間は学校によってまちまちで、下校時のホームルームの前、昼休みの後など。
- 終業時刻は15時半~16時の間が多いが、部活動が春と夏は18時~18時半、日の入りの早くなる秋と冬は16時~17時に設定される最終下校時刻まで行われることが大半。教員の正規の退勤時間は終業時刻からおよそ1時間後に設定されているが、部活動の顧問を務めている場合、安全責任の問題などから少なくとも最終下刻時刻まで退勤できない所が大半である。
- 部活顧問を受け持つ教員は最終下校時刻後に日々の学級運営や学習活動に必要な業務をこなす必要があるため、退勤できるのが21時を過ぎることも珍しくない。
校内生活における禁止事項[編集]
- 小学生に比べて行動範囲が広がり、行動力も上がるためか、禁止事項がとにかく多い。
- 携帯電話の持ち込みを禁じている学校が多く、保護者への迎えの連絡などは校内に設置された公衆電話を利用する。近年は徐々に緩和されつつあるが、それでも携帯禁止の学校は少なくない。
- 携帯電話の他に現金の持ち込みも禁じられていることが多いが、公衆電話を利用するための100円以内の小銭やテレホンカードであれば持ち込みが黙許されている。
- 下校中に軽食や飲み物を買う事が店・自動販売機を問わず禁止されていることが多い。放課後、下校中に店へ出入りしているのを巡回中或いは退勤中の教員が目撃し、後日学年集会沙汰になったという事例は数知れず。
学習[編集]
- 授業時間は1コマ50分×6コマが標準。4時間目の後に昼食・昼休みの時間を挟んで5・6時間目を行う。
- 3学期制の学校では年に5回、2学期制の学校では年に4回定期考査を行う。試験は全教科一斉で複数単元に渡る広範囲のため、小学校の単元別試験に比べると試験学習の負荷が高くなる。
- 定期考査の総合得点を元に学年・学級で順位付けを行い、各生徒個人に手渡しされる結果票に順位が記載される。かつては廊下に順位を張り出すこともあり、ドラマや漫画の中で描かれる事もあったが近年は減っている様子。
- 定期考査に加えて模擬試験や実力テストも行われる。これらのテストの結果が高等学校、高等専門学校への進学を大きく左右することもある。
進路[編集]
- 中学校で義務教育が修了するため、その後の進路は生徒の自主性に任せられるはずだが、2020年度のデータで中学卒業と同年に高校へ進学した中学3年生は通信制も含めると98.8%にのぼり[2]、事実上の義務教育継続として卒業年と同年の高校進学が志向されている[注 3]。
- 中卒で就職する子供も割合として非常に少ないながら居ることには居る。一例として競馬の騎手は殆どが中卒で[注 4]、往時より減少はしたが中卒の力士もいる。
その他[編集]
- もともと学校数が小学校ほど多くないにも関わらず、近年は少子化により小学校と同様に都市部でも生徒数が減少し、小学校ほど急激な減少はないものの、学校の統廃合が進んでいる。なお、少人数学級実現を主張する識者から、統廃合に関する疑問の声が出ている。なお、戦後進められた町村合併では、中山間部で学校の統廃合やそれに伴う寄宿舎生活が行われていた。
- 学力低下が指摘されている。ゆとり教育などが原因とされ対応策がとられている。但し、不満の解消には至っていない。
- いじめによるネグレクトや不登校など、教諭は、様々な問題に立ち向かわされている。このため、少子化対応も兼ねて小学校と統合し、義務教育学校になって教職員組織を強化する事例もある。
- 都市部での中学受験の問題もある。浮きこぼれて授業に飽き足らなくなったり、ゆとり教育など公教育に対する不信感や「荒れた」校風を回避できるため、私立中学校への入学に向け小学生へ過度な受験準備をさせてしまうことがある。
制度的課題[編集]
- 高等学校でほぼ常置されている通信制課程は、東京と大阪しか設置されておらず、東京は入学資格が限定される。また、大阪で家庭など、5教科以外の科目はないため、正規の教育課程とされていない。
- もっとも、新型コロナ禍での映像授業の推進も相俟って、中学校通信課程への潜在ニーズは大きいと思われる。ちなみに、八洲学園が不登校対策の通信制中学校を教育特区で申請(但し、文部科学省は児童労働を助長するといった理由から消極的である。)している。
年齢[編集]
- 法規の年齢を超えての在学は事実上許されおらず[注 5]、義務教育終了年齢の15歳を超えると出席時数不足でも「形式卒業」の形で事実上放校される。
- 特別支援学級のような形態で、満16歳を超える年齢で生徒を受け入れる昼間学級組織や、特別支援学校と普通学校の中間の位置付けの県立等の公立の不登校・国外生徒の支援学校は整っておらず、専修学校(124条校)にも中等課程は無い。
- 救済策として、戦後直後からの「夜間中学校」が活用されている。「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」制定前は暫定的なものとされ、設置されない県があるといった地域格差が生じていた。
旧制中学校[編集]
詳細は「旧制中学校」を参照
関連項目[編集]
参考文献[編集]
- 百瀬孝『事典昭和戦前期の日本』吉川弘文館2002年8月20日第8刷発行。ISBN-4-642-03619-9
- 百瀬孝『事典昭和戦後期の日本』吉川弘文館1995年7月10日第1刷発行。ISBN-4-642-03658-X
脚注[編集]
- 注
- ↑ 広島県のようにGHQの教育担当者が組合立中学校を奨励したケースもあり、現在でも広域学区の名残を伺わせる学校名がある。
- ↑ 特別支援学校中学部では現存。
- ↑ 理由としては、いわゆるレベル上高校目指しの中学浪人は、合否判定で必ずしもプラス評価にならないことや、高校野球など運動系の部活で体力面でのアドバンテージを無くすため、年齢制限を設けていることが挙げられる。
- ↑ 騎手を養成する競馬学校でも高等学校の普通教科に相当する内容を教えているが、高卒資格は得られない。
- ↑ 保護者と生徒自身が原級留置に同意すれば、満16歳以上の在学も可能だが、1993年の神戸市立小学校強制進級事件の影響もあって、原級留置を希望しても殆ど受け入れられていない。
- 出典