教員
教員(きょういん)とは、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・大学及びこれらに準ずる学校において、在学者に対して教育や保育を行う職員またはその職業である。
概要[編集]
教職に就くには多くの国でライセンス(免許)を必要とする。日本における教育職員免許状は校種・教科単位での交付で、教職課程のある大学で所定の教育を受け、単位を取得することで免許が交付される。ただし、教育職員免許状には陸上無線技術士や海技士のように国家資格の所持および関連実務の経験で交付される免許状や専門の職歴を元に交付される特別免許状がある。
大学や高等専門学校教員へ就任するには免許は必要はないが、専攻する分野について教育・研究・実務上の知識・能力・実績を必要とする。高校以下でも、各教科・科目の中でも特に専門的な領域のみを担当し、教育委員会に届け出を出すことで免許なしでも就任できる特別非常勤講師がいる。
なお、学校保健をつかさどる養護教諭、給食に関する教育及び給食の管理をつかさどる栄養教諭が校種の区分がない独立の教員免許状として存在する。また、学校図書館の専門的な業務を担う司書教諭があるが、これは司書教諭講習を修了しただけでは機能せず、別途、教科の教育職員免許状を所有しないと司書教諭として任用されない。
幼稚園教員[編集]
- 必要となる免許
- 幼稚園教諭普通免許・臨時免許
幼稚園に勤務し、園児の教育と保育をつかさどる。幼稚園教諭普通免許を所有している者は保育士国家試験の実技・筆記試験の一部科目免除の特典がある。認定こども園に勤務する際は幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を取得する。
園児への教育・保育・保護者への応対以外の主な業務は
- 幼稚園バスへの添乗
- 教室や遊具など施設・設備の安全点検・清掃
などがある。
男女比で言えば女性の比率が圧倒的に高い。
小学校教員[編集]
- 必要となる免許
- 小学校教員普通免許
小学校に勤務し、児童の教育をつかさどり、児童の校内の安全、保護、健康面の管理なども重要な業務に含まれる。
小学校は学級担任がほぼ全ての教科の授業を担当する。ただし、音楽・図画工作・家庭科といった専門性の高い教科は専門の教員が担当することもある他、近年は高学年に限って教科ごとに担当教員が交代する教科担任制を採用する学校もある。
児童の始業から終業までの業務の他、教材準備、宿題などの提出物・連絡帳のチェック、テストの採点、学級通信・学年通信・行事のお知らせなど保護者への連絡文書の作成といった児童の日々の学習に必要な業務を行い、学校によっては部活動の顧問が業務に含まれる場合もある。
採用試験では多くの所で水泳の実技試験、水泳以外の体育の実技試験、ピアノ演奏など音楽の実技試験が行われている。
中学校教員[編集]
- 必要となる免許
- 中学校教員普通免許
中学校に勤務し、生徒の教育をつかさどり、更に校内の安全管理、生徒の健康面の管理・保護、不審者対策、殆どの学校で部活動の顧問業務もつかさどる。
中学校からは本格的に教科担任制がスタートし、教科の指導は教科担任、学級の指導は学級担任と業務が一部分担される。
生徒の始業から終業までの業務の他、教材準備、宿題など提出物のチェック、テストの採点、学級通信・学年通信・行事のお知らせなど保護者への連絡文書の作成といった生徒の日々の学習に必要な業務を所定の勤務時間内で行うが、実際は本来の業務に含まれない部活動の顧問としての業務が事実上正規の業務になってしまっており、一例として朝8時から正規の業務に含まれる職員朝礼が始まる学校でも、部活動の顧問を持っていて尚且つ朝練習のある部の顧問を担当していると、朝練習の始まる時刻(朝7時)に合わせて出勤し、生徒の監督・指導を行わなければならない。ただし中高一貫校では、高校ルールが適用されてほぼ監督・指導を行わなくて良い学校もある。(これは運次第)
当然放課後も活動している部では最終下校時刻まで生徒の指導・監督を行い、その後に生徒の日々の学習に必要な業務、校務分掌として割り当てられた業務を行う必要があり、最終退勤時刻が所定の退勤時刻よりも遥かに遅くなる事が珍しくない。開庁日だけでも終わりきらず、自宅に持ち帰って休日も業務に追われることもある。
高等学校教員[編集]
- 必要となる免許
- 高等学校教員普通免許
高等学校に勤務し、生徒の教育をつかさどり、更に校内の安全管理、生徒の健康面の管理・保護、不審者対策、部活動の顧問業務もつかさどる。
高等学校は教科の内容をより細分化した科目で授業を行うが、免許上は各教科単位で区別される。例えば国語教科の免許を持っている教員は国語総合・国語表現・現代文・古文の各科目を受け持てる。ただし芸術教科など高度な専門性を必要とする科目では科目専門の免許のみ保有している者もある。
部活動顧問については活動日に毎日指導・監督を行う必要はなく、職員室で学級運営や日々の授業に必要な業務、校務分掌に関する業務を優先させ、部活動の方は全く指導・監督せずに事務手続きだけ行ったり、週に1日だけ指導監督を行い、それ以外の日は生徒の自主練習に任せている教員も多い。それでも万が一のアクシデントに備えて生徒が全員下校するまで帰宅することが出来ない学校が多いが、部活動を放置して先に帰宅可能な学校もある。
大学・高専教員[編集]
大学もしくは高等専門学校に勤務し、学部・学科学生や大学院生に自身が専攻する分野についての教授を行う。上から順に、教授、准教授、講師、助教のランクに分かれている。また特任教授、特任准教授、助手などの任期つきのポストが近年多い。
教員免許は必要ないが、専攻する分野について教育・研究・実務上の知識・能力・実績が求められ、博士の学位を持つ者でないと一般的に大学や高専の教授にはなれない。
なお、准教授が助教授の職名だった時代は、博士課程の大学院生の指導教員になれないといった制約があった。
教員の地位[編集]
教員の地位は勤務する学校が公立か私立かによって変わる。公立学校であれば地方公務員、私立学校であれば運営する学校法人に採用された職員となる。
公立学校教員の採用試験は都道府県、政令指定都市の教育委員会または文科省令で指定した複数市町村[注 1]の教職員人事協議会が実施する。例えば東京都の市区町村立の小・中学校の教員採用試験は東京都教育委員会が行う。一方神奈川県の市町村立の小・中学校の教員採用試験は神奈川県教育委員会が行い、政令指定都市の横浜市・川崎市・相模原市の各市立小・中学校の教員採用試験は横浜・川崎・相模原の各市教育委員会が行う。都道府県教育委員会に採用された教員はその都道府県内で人事異動が行われるが、概ね各地の教育事務所単位での人事異動となる事が多い。政令指定都市採用の教員は採用された市内の学校間で異動する。
教員として一定年数経験を積むと、学校の現場を離れて教育委員会事務局へ異動となる場合もある。そして教育委員会事務局で経験を積んだ元教員が今度は校長や教頭などの管理職として学校の現場に戻ってくる事もある。
私立学校教員の採用試験は各学校が独自で教員候補者を募集する企業の採用試験のような形態から、各地の私学協会が持つ採用希望名簿に登録してオファーを待つ方式などがある。他校への異動は運営する学校法人が複数の学校を有していない限り起きない。
人事異動[編集]
公立校及び複数の学校を運営する学校法人では教員の人事異動を定期的に行う。異動は年度末に行い、原則として年度途中での異動は行わない。実施の理由としては
- 個人の希望(例:自宅から勤務校までが遠く、通勤が負担になっている・中学校と高校の免許を持っていて本当は高校で勤務したかったが、人数の都合などで中学校に勤務している・人間関係など)
- 組織の都合
- ある学校で年度末で退職する教員が1人出るが、必要な教員数は変わらないので子供の数が減ってクラスの数も減る別の学校から1人を転任という形で補充する。
- ある学校で特別支援学級を開設することになったが、ノウハウを持つ教員が居ないので別の学校からノウハウを持った人物を転任させる。
- 僻地の学校へ全員1度は担うことを定める規程や、教育機会の均等化を根拠とするもの。
- 多様な経験を教員に与える。
- 組織の固定化を防ぐ
- 昇進
などがある。
公立校の教員の配置は教育委員会が決めるが、誰を異動させるか判断して教育委員会と調整するのは校長の役目である。校長は教員の異動アンケートや面談の結果を元に異動に好意的な教員をリスト化し、これを教育委員会へと提出。教育委員会はリストを元に誰をどこに配置するか決定する。
風当たりの強さ[編集]
よく教員は風当たりが強い職業と言われる。その原因としては
- 理不尽な指導・懲戒
- 授業を放棄して職員室へ帰る
- 実技系授業における晒し者にするような指導
- 留年・卒業見送りの心配がほぼゼロに近い義務教育段階での留年や卒業見送りをちらつかせる脅し
- 違反に対して釣り合わない懲戒・そもそも違反ですら無い行為に対する懲戒
- 教員の不祥事に対するマスコミ報道
- 給与の削減等で質の良い人材が集まらなくなった
などが挙げられる。