特別急行列車
特別急行列車(とくべつきゅうこうれっしゃ、英:Limited Express)とは普通急行列車に比し、停車駅が少なく、速度が高く、専用の車両を使用する急行列車である。略称は特急と呼ばれる。
概要[編集]
他の列車種別に比べて運行が優先される。特急券の必要な列車では特別な車両を用いて運行される。新幹線で運行される旅客列車はすべて特別急行列車である。
国鉄は1968年9月まで特急列車を文字通り「特別な急行列車」と位置付け、設定線区や走行距離で急行列車と格差をつけていたが、1968年のいわゆる「ヨンサントウ」ダイヤ改正および1972年10月の「エル特急」新設で設定線区が亜幹線級へ広がり、走行距離も片道150km未満の短距離特急が出現するようになり、1980年10月のダイヤ改正以降は幹線区で昼行優等列車の総特急化が始まった。
国鉄分民化後は、国鉄時代の1980年に急行を快速化して、特急運行線区と見做されなかった三角線、日南線、指宿枕崎線、肥薩線吉松以南のような九州の枝線区でも、旺盛な観光レジャー需要を背景に特急列車が設定されるようになった。また、1982年に急行を廃止した飯田線飯田以南も佐久間レールパーク開園を皮切りに観光バブルが生じ、それに乗じて特急列車が設定された。
加えて、国鉄分民化以降に全国に拡大した「ホームライナー」も、JR東日本、JR西日本、JR九州では特急化が進み、篠栗線のように通勤特急初設定の線区や日豊本線鹿児島口や中央線八王子以東のような片道50km以下の超短距離特急も出現している。
一方、新幹線並行路線や並行在来線でない、かつての特急運行の主力線区において、鹿島線、成田線の滑河以北、内房線の青堀以南、両毛線の新前橋〜前橋間、奥羽本線の新庄〜大曲間、山陰本線の益田〜東萩〜下関間のように、高速バスとの競争に敗れた等の理由で利用者が減少して特急列車を廃止するケースも生じ、「踊り子」、上越線渋川以北、羽越本線酒田以北、大糸線、牟岐線のように需要の多い時間帯や期間に絞っての運行に減量化するケースも出ている。
各社別の位置づけ[編集]
国鉄・JR[編集]
一部区間を除いて、特別急行料金が必要で、市に1駅、あるいは2〜3市に1駅ぐらいの間隔で停車する列車が多い。ほとんどが回転式で方向転換し、リクライニング機能を備えたクロスシート車である。
昭和中期頃は、県で1,2駅程度しか停車しない超速達列車のみが特急を名乗り、都市毎の輸送はボックスシートの急行が担っていた。しかし、1976年の大幅値上げ以降、スピードでは絶対に勝てない飛行機が大衆化し、道路整備により列車と自動車のスピード差が縮まったこともあり、1980年以降、急行「伊豆」や昼行急行「アルプス」などの特急統合で「運賃改訂無しの体のいい値上げ」の反発もあったが、多くの昼行急行で停車駅を減らさないまま、車内設備を快適にした上で特急に格上げされた。また、特急列車は急行と違い末端区間でも普通列車に種別変更しない不文律があったが、1982年11月の「あかぎ」、「ゆけむり」の特急格上げに際して、末端が普通運行区間になり、不文律は破れた。
一方で、かつての特急は新幹線に代替されるものが増えたため、昭和期の急行相当の列車は、実質、現在の特急列車と短距離ニーズ主体の快速列車に分化したと言うことができる。加えて、信越本線などの並行在来線やJR鹿島線、飯田線飯田以北、JR姫新線のように民間の高速バスが昭和期の急行列車の役割を担っているところもある。
東武鉄道[編集]
かつての伊勢崎・日光・鬼怒川線は、国鉄と同じ特急、急行の2階級だったが、2006年に料金体系を変えないまま、特急に一本化された。
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大井川鉄道[編集]
大井川本線において、終着駅で客扱いをしないで折り返し、新金谷駅に戻ってくる遊覧列車を指しており、折り返さない普通のSL・ELは急行として区別されている。
尚、2022年台風9号による運転休止前はSL・ELの列車は全て特急であった。
特急券[編集]
特別急行列車に乗車する際は、日本国有鉄道及びその後継である旅客鉄道六社、これらと直通運転する第三セクター鉄道、地方民鉄では乗車券のほかに特別急行券、いわゆる特急券の購入が必要で、全車指定席の場合は座席指定を受ける必要が生じる。
東武鉄道[1]、西武鉄道、小田急電鉄、近畿日本鉄道、南海電気鉄道の「こうや」、「りんかん」といった全車指定席制の特急や長野電鉄、富山地方鉄道、富士急行(現:富士山麓電気鉄道)[2]も同様である。
京成電鉄、名古屋鉄道、南海電鉄「サザン」は指定席に乗車する場合に特急券が必要であり、「座席指定券」と称される場合もある。それ以外の鉄道では乗車券だけで特別急行列車に乗車できる。
自由席[編集]
「自由席」も参照
1980年のダイヤ改正以降、国鉄は繁閑の別無くほぼ全ての特急列車に自由席を設置するようになった。自由席はみどりの窓口でのマルス操作による座席指定が省けるため、料金を割り引いて乗客に還元している。
JR化後も、特急列車に自由席を置く体制が継続したが、マルスの乗車券発券機能の統合による多機能化や旅客鉄道毎の業務の機能の多角化で、座席指定を伴った切符を券売機で発券したり、座席指定を伴ったネット決済やネット決済での割引サービスが容易にできるようになったため、2014年の「スワローあかぎ」を皮切りにJR東日本でー特急列車の全席指定制が進み、JR西日本でも「はまかぜ」などで特急の全車指定席化が進行しつつある。
このJR特急列車の全席指定制推進に対しては、空席を自由に選べないことによる子連れ家族やグループ帯同の機械やネットが不得手の女性・高齢層や、自由席より料金が値上がりしたことへの廉価志向の乗客層の潜在的な反発がある。
愛称[編集]
特急券が必要な列車は指定席の関係上、愛称が付く。ただし、近畿日本鉄道の特別急行列車には愛称はつけない[3]。
その他[編集]
小田急電鉄では、国鉄御殿場線乗り入れ列車に特別準急列車の種別名を付けていた。これは、国鉄の付加料金を徴収する準急行列車に合わせており、小田急内でもロマンスカーに準じた「料金の必要な準急」と識別するのに便利な種別であったが、国鉄の制度改正によって御殿場線内が急行列車となったため、苦肉の策として連絡急行列車の種別名として、乗車券のみで乗れる急行と区別していた。
脚注[編集]
日本における列車種別 |