大阪府北部地震
大阪府北部地震 | |
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本震 | |
発生日 | 2018年6月18日 |
発生時刻 | 7時58分34.1秒(JST)[1] |
震央 | 日本 大阪府北部 |
震源の深さ | 13km |
規模 | 気象庁マグニチュード Mjma6.1/モーメントマグニチュード Mw5.5[2] |
最大震度 | 震度6弱:大阪府大阪市北区・高槻市・枚方市・茨木市・箕面市 |
津波 | なし |
地震の種類 | 内陸地殻内地震[3] 逆断層型及び右横ずれ断層型 |
余震 | |
回数 | 震度1以上 57回 (8月17日午前9時現在)[4] |
最大余震 | 2018年6月19日0時31分25.0秒(JST)、M4.1、最大震度4[5] |
被害 | |
死傷者数 | 本文参照 |
被害総額 | 約1800億円 |
被害地域 | 大阪府を中心とする近畿地方 |
大阪府北部地震(おおさかふほくぶじしん)とは、平成30年(2018年)6月18日午前7時58分頃に大阪府北部で発生したマグニチュード6.1の地震のことである。死亡者は5名、負傷者は300名以上と推定されている。
概要[編集]
平成30年(2018年)6月18日午前7時58分頃、大阪府北部で震度6弱の地震が発生した[7]。大阪府で震度6弱を観測したのは、観測態勢が整った大正12年(1923年)1月以降で初めてである[7]。平成7年(1995年)の阪神・淡路大震災は大阪府の震度は4であった[7]。近畿地方で震度6弱以上の地震が発生したのは2013年の淡路島地震以来5年ぶりで、政令指定都市での震度6弱以上は2016年の熊本地震以来2年ぶりである。
深さ13キロと浅い地下で発生した直下型地震であり、これにより関西地方は交通機関がストップし、停電も相次いで都市機能は麻痺し、1000万人以上が大混乱した[7]。
地震が起こってから余震も相次いでおり、6月19日午後10時までに震度1から4の余震が合計して29回観測されるなど、活発な地震活動が続いている[8]。
各地の震度[編集]
震度 | 都道府県 | 市町村 |
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6弱 | 大阪府 | 大阪市北区、高槻市、枚方市、茨木市、箕面市 |
5強 | 大阪府 | 大阪市(都島区、東淀川区、旭区、淀川区)、豊中市、吹田市、寝屋川市、摂津市、交野市、島本町 |
京都府 | 京都市(中京区、伏見区、西京区)、亀岡市、長岡京市、八幡市、大山崎町、久御山町 | |
5弱 | 大阪府 | 大阪市(福島区、此花区、港区、西淀川区、生野区)、池田市、守口市、大東市、豊能町、能勢町 |
京都府 | 宇治市、城陽市、向日市、京田辺市、南丹市、井手町、精華町 | |
滋賀県 | 大津市 | |
兵庫県 | 尼崎市、西宮市、伊丹市、川西市 | |
奈良県 | 大和郡山市、御所市、高取町、広陵町 | |
被害・影響[編集]
死亡者[編集]
- 高槻市 - 9歳女児。高槻市立寿栄小学校でプールサイドのブロック塀が倒れ、下敷きになって死亡[7]。
- 日本政府は昭和53年(1978年)の宮城県沖地震により、3年後に改正建築基準法を施行し、構造上安全と確認された場合を除き、塀の高さを2.2メートル以下にするなど耐震基準を強化したが、このブロック塀は宮城県沖地震から40年以上残る危険ブロックだったという[11]。6月19日、大阪府警は業務上過失致死容疑で捜査を開始する。女児の死因は全身骨折による失血死。このブロック塀は3年に1度の法定点検が行なわれていたが、平成25年(2013年)は未実施で、さらに点検した市教委職員2人には建築士などの資格が無かった。防災専門家の吉田亮一は平成27年(2015年)にこのブロック塀の危険性を指摘していたが、聞き入れられ無かったという。
- 茨木市 - 85歳男性。本棚の下敷きになり死亡[7]。
- 大阪市東淀川区 - 80歳男性。日課だった小学生児童の登校の見守りに向かう途中で、民家のブロック塀の倒壊に巻き込まれて死亡[7]。
- 阪神淡路大震災の際、塀の上部が破損したため、その部分だけを補修したのみだったという。なお、このブロック塀倒壊の際にもう1人の男性が巻き込まれて足に大怪我を負傷した[11]。
- 高槻市 - 66歳男性。自宅で衣服や本に埋もれた状態で死亡。
- 高槻市 - 81歳女性。自宅で死亡。病死と見られるが、タンスが近くで倒れており、震災関連死とされる[12][13]。
怪我人[編集]
大阪府だけでなく、京都府、奈良県、兵庫県、三重県、滋賀県などに出ている[7]。内訳は大阪府は344人、兵庫県は37人、京都府は17人、奈良県は4人、滋賀県は3人、三重県は2人、徳島県では1人であった[8]。
交通[編集]
大阪府の公共交通機関は一時的に完全に麻痺した。東海道・山陽新幹線は発生から米原駅から岡山駅の間で運行を見合わせ、午後12時50分に名古屋駅から新大阪駅間が運転を再開する。新大阪駅から岡山駅の間の上下線再開は午後2時9分であった。関西を走るJR、私鉄各社も全線や一部で運行を停止。JR西日本は、大阪府・京都府・奈良県・兵庫県・滋賀県の2府3県内全ての鉄道路線で列車の運転を見合わせた[14]。このため、新大阪駅で新幹線を降りても大阪市中心部に向かう交通手段がなく、タクシー乗り場にはおよそ200メートルの列ができた。
私鉄各社では、阪急電鉄京都本線の高槻市~淡路間にて大きな鉄道営業設備の破損が発生したが、比較的復旧が後回しとなった路線でも大阪メトロ御堂筋線・北大阪急行電鉄は午後7時前、阪急京都本線は午後10時過ぎには全線復旧した(南茨木駅は終日通過扱い)[7]。反面JR線の一部は翌日の始発まで復旧しなかった。また、関西の鉄道路線で最も被害の大きかった大阪モノレールは、彩都線を除いて20日の始発にようやく運転を再開した。阪急南茨木駅のエレベーターはなぜか未だに全機復旧しておらず、一部は12月になっても放置プレイをくらっている。
飛行機は日本航空、全日空で6月18日到着予定の計74便が欠航した[15]。
主要道路でも各地で大渋滞が発生し、歩道には大阪市の中心部から自宅に向かってぞろぞろと歩く帰宅困難者の流れができた[7]。
休校[編集]
大阪府内の公立小学校、中学校、高校などで合わせて972校が休校する[16]。京都府、奈良県、兵庫県では296校が休校し、4府県での休校は少なくとも合わせて1268校に上っている[16]。校舎など施設に被害が出た国公立の小学校、中学校、高校や大学、幼稚園などは5府県の合わせて111校に上っている[16]。
なお、20日の実施を予定していた大阪府内の公立中学校3年全員を対象にした「チャレンジテスト(統一テスト)」も延期された。
食料[編集]
余震が来る前にと大阪府内の被災者はスーパーマーケットやコンビニに飲料水やおにぎりなどの食料の買い占めに向かい、午後までに食料は店頭からほぼ消えた。断水が行われた箕面市等では、その後もしばらくの間ミネラルウォーターが飛ぶように売れた。供給が急がれているが、品薄が続いた。
停電[編集]
停電も発生し、一時は最大およそ17万軒で発生し、大阪市や京都市、奈良県でエレベーターに閉じ込められる人が相次いだ。国土交通省によると、地震の影響で滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県など5府県のエレベーター214基で閉じ込めがあった。午後5時までには全ての救出作業の終了を確認している[16]。
大阪府豊中市や箕面市など7市で最大およそ17万戸、兵庫県では最大およそ490戸が停電も地震からおよそ2時間半後に全て復旧した[16]。
ガス・水道、その他[編集]
都市ガスも一時はおよそ11万戸の供給が停止した。大阪ガスは大阪府内の都市ガスの供給を停止し、完全復旧に1週間以上かかると発表した[16]。
高槻市では水道管が破裂し、20日朝まで断水や濁り水が発生した世帯があった。火災の通報も大阪や兵庫で合わせて20件あった[16]。
NHK受信料[編集]
6月19日、NHKは大阪北部地震で半壊、半焼または床上浸水以上の被害を受けた世帯の6月、7月のNHK受信料(地上波と衛星放送)を免除すると発表した。対象地域は13市町(大阪市・豊中市・吹田市・高槻市・守口市・枚方市・茨木市・寝屋川市・箕面市・摂津市・四条畷市・交野市・島本町)である。ただし免除を受けられる世帯は契約者からの届け出やNHKの調査によって決められ、前払いで支払い済みの受信料も対象となるという[17]。
建築物[編集]
- 平等院鳳凰堂(国宝。京都府宇治市) - 中堂の壁に10数センチのひびが数箇所あった。
- 東大寺戒壇院(国宝。奈良県奈良市) - 四天王立像の右手に載っていた木製の宝塔が落下。
- 石清水八幡宮(京都府) - 参道の石灯篭およそ40基が損壊。
- 寺院「妙喜庵」(国宝。京都府大山崎町) - 千利休の遺構とされる茶室・待庵の外壁に最大およそ2メートルのひびが入り、書院(重要文化財)の欄間が外れた。
- 立命館大学大阪いばらきキャンパスA棟(大阪府茨木市) - 天井からコンクリートが剥がれ落ちる、蛍光灯が落ちるなどと築4年とは思えない脆さを見せつけ、学生に1週間の長期休暇をプレゼントした。しかし他のキャンパスでは平常どおりに開講してしまい、平成30年7月豪雨時の大学当局の対応共々自校・他校の教授・学生・職員の失笑を買うこととなる。
- 住宅の一部損壊は大阪府で303棟、京都府で206棟、兵庫県で3棟、奈良県で3棟である[8]。
イベント[編集]
リアル脱出ゲームは、地震の影響で大阪ヒミツキチオブスクラップとアジトオブスクラップ大阪ナゾビルを臨時休業をする措置のうえ同日開催予定のイベントを全て休演扱いとなった。
緊急地震速報[編集]
震源に近い地域では揺れが始まってから緊急地震速報が鳴った。震源が内陸で深さがおよそ13キロと浅いためで、同様のケースの場合、今後も速報より前に揺れだして間に合わない可能性があり、注意が必要だという。気象庁によると緊急地震速報が流れたのは6月18日午前7時58分41.9秒の時であり、震源に近い大阪府北部と京都府、兵庫県、奈良県の一部は揺れが始まるまでの時間の猶予がなかったと見られている[16]。
デマ問題[編集]
地震後、SNSでは「外国人がコンビニ強盗を始める」「シマウマが脱走」などという嘘の情報が投稿された。シマウマ脱走についての情報には写真が添付されていたが、これは過去の新聞社のインターネット記事を使用したと見られている[16]。
スマホゲーム[編集]
- ファイナルファンタジー レコードキーパー - 6月18日に開催予定だった試練の回廊イベントは地震の影響により中止となった。理由は敵が地属性をメインに使うためである。
ブロック倒壊事故[編集]
最大震度6弱を観測した大阪府北部地震で、高槻市立寿栄小学校のプールにあったブロック塀がおよそ40メートルにわたって道路側に倒壊し、登校中の4年の女児が下敷きになり死亡した。塀の高さは基礎部分を含め高さおよそ3.5メートルで、建築基準法施行令の制限(2.2メートル以下)を超えており、学校側は平成27年(2015年)に防災専門家から危険性を指摘されていた。
地震後の経歴[編集]
6月18日。
- 午前7時58分頃 - 地震発生。
- 午前8時 - 政府が首相官邸の危機管理センターに官邸対策室を設置する。
- 午前8時3分 - 安倍晋三首相が各府省庁に早急な被害状況の把握、被災者の救命救助、国民への適時的確な情報提供を指示する。
- 午前8時10分 - 菅義偉官房長官が首相官邸に入る。
- 午前8時15分 - 総務省消防庁が京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県の4府県に緊急消防援助隊の出動準備を要請する。
- 午前8時32分 - 菅義偉官房長官が緊急記者会見で「揺れが大きかった地域の皆さんは情報に注意して行動してほしい」と発言する。
- 午前8時58分 - 安倍首相が官邸で記者団に「人命第一の基本方針で、政府一丸になって対応している」と発言する。
- 午前9時10分 - 総務省消防庁が愛知県、滋賀県両県に緊急消防援助隊の出動準備を要請する。
- 午前11時36分頃 - 総務省消防庁が午前11時30分時点で、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県の2府2県で91人が負傷と発表する。大阪府の3人が死亡と発表する[18]。
- 正午 - 大阪府知事が自衛隊に災害派遣要請を出す。
- 午後2時10分 - 自衛隊が大阪府吹田市で給水支援を開始する。
- 午後5時49分 - 官邸で首相・防災大臣・防衛大臣らによる関係閣僚会議を開催する。首相が「ライフラインの復旧に全力で取り組んで行きたい」と発言する[19]。
脚注[編集]
- ↑ “震度データベース検索 (地震別検索結果)”. 気象庁 (2018年6月20日). 2018年6月22日確認。
- ↑ “M 5.5 - 2km NNW of Hirakata, Japan”. アメリカ地質調査所 (2018年6月18日). 2018年6月19日確認。
- ↑ “近くの断層、過去に大地震=大阪「6弱」は観測史上初”. 時事通信. (2018年6月18日) 2018年6月18日閲覧。
- ↑ “大阪府北部の地震活動の最大震度別地震回数表(PDF)”. 気象庁地震火山部 (2018年6月23日). 2018年9月8日確認。
- ↑ “震度データベース検索 (地震別検索結果)”. 気象庁 (2018年6月21日). 2018年6月22日確認。
- ↑ 気象庁発表資料
- ↑ a b c d e f g h i j 『日刊スポーツ』2018年6月19日。26面
- ↑ a b c 『朝日新聞』2018年6月20日。1面
- ↑ “地震情報(震源・震度に関する情報)”. 気象庁. 2018年6月18日確認。
- ↑ 各地の震度に関する情報 気象庁 2018年6月18日8時7分
- ↑ a b 『日刊スポーツ』2018年6月19日。25面
- ↑ “大阪北部地震、死者4人に 高槻市が81歳女性死亡発表”. 朝日新聞. (2018年6月19日) 2018年6月19日閲覧。
- ↑ “死亡4人に 81歳女性、心臓に持病”. 毎日新聞. (2018年6月18日) 2018年6月19日閲覧。
- ↑ “在来線で運転見合わせ相次ぐ、新幹線は米原―岡山で不通”. 朝日新聞. (2018年6月18日) 2018年6月18日閲覧。
- ↑ 『日本経済新聞』2018年6月19日。1面
- ↑ a b c d e f g h i 『日刊スポーツ』2018年6月19日。24面
- ↑ 『朝日新聞』2018年6月20日。33面
- ↑ 『デイリースポーツ』2018年6月19日。23面
- ↑ 『日本経済新聞』2018年6月19日。4面
関連項目[編集]
- 有馬-高槻断層帯(有馬-高槻構造線) - 本地震の震源付近にある断層帯(構造線)。大阪府北部から兵庫県の六甲山地方面へ東西に伸びる。1596年にM7.5程度の慶長伏見地震が発生している。
- 生駒断層帯 - 本地震の震源南側にある断層帯。大阪府の東端付近を南北に伸びる。
- 上町断層 - 本地震の震源西側にある断層帯。大阪府西部を南北に縦断する。
- 六甲・淡路島断層帯 - 有馬-高槻断層帯に隣接し、南西の淡路島方面に伸びる断層帯。