高等学校
高等学校(こうとうがっこう)とは、中学校での教育を踏まえて、さらに高度の教育を実施する学校。括りとしては中学校と同じく中等教育の範囲に含まれる。
概要[編集]
中学校を卒業した者を入学資格とし、日本では義務教育の枠外である。行きたければ行けばいいし、行きたくなければ行かなくても良い学校である。行きたければ入学試験を受験する必要がある。
本ページでは中等教育を施す目的で学校教育法成立以降に旧制の中学校、実業学校、高等女学校を母体に発足した新制高等学校を記述する。
なお、中等教育学校および、学校教育法成立以前に存在して、新制高校とは全く性質が異なり、高等教育を施した学校である旧制高等学校は別ページとする。
高等学校の分類[編集]
科目の分け方、学校の大きさ、部活動等の面では大学よりは中学校に近い。ただし、義務教育では無いという意味では中学校より大学寄りである。
授業時間による分類[編集]
教育課程による分類[編集]
設置母体による分類[編集]
現在、高等学校を運営する独立行政法人の設置は認められていない。
- 国立 - ほとんどが国立大学教育学部の附属校だが、本部の附属校もある。学科は普通科、総合学科、芸術科のみで一部を除き高大連携は行っていない。かつては、商船、電波、農業の職業系高校も存在したが、商船、電波は高等専門学校に昇格して姿を消し、農業は総合学科に改組された。
- 公立 - 数が最も多く、特に都道府県立や政令市の市立は全国的に分布している。政令市以外の市町村立や組合立の高校もある。
- 私立 - 都市部に多いが、
世間と隔絶目的で僻地に開校される全寮制学校や県境の小市街地にある学校もある。校風も学力も学校によって様々。附属高における上位大学への入学特典もマチマチである。
課程による分類[編集]
単位修得過程による分類[編集]
- 学年制高等学校
- 単位制高等学校 - 単位制高等学校では卒業保留のみで、原級留置の制度はない。
入学[編集]
各高校で入学試験を行い、合格者が入学できる方式。
全日制高校[編集]
国立・私立の場合は、学科試験メインで、面接等を行う高校もある。中学校の調査書も必要であるが、通常は参考程度。代わりに、中学卒業見込者のみを対象とすることが多い。なお、私立高の場合、入試前の事前相談を義務付けるところもある。
公立高校の場合、通常の学科試験に加えて、「内申点」の比重が大きく、中学在学中に内申点を集めることも入試においては重要となる。現役時に全落になっても、要項上、中学既卒者の志願を妨げないが、鳥取県を除き、中卒後の学習成果を加点できず、内申点は据え置かれるため、上位校目指しの浪人(中学浪人)は事実上困難である。
定時制・通信制高校[編集]
公立定時制で試験を課すところもあるが、概ね全日制より易しめである。通信制は公私立とも書類や面接による選考が主である。中学既卒者にも門戸を開いており、公立通信制では高齢の卒業生が話題となる。
全日制に合格できなかったが、何としても自宅通学できる高校へ進学したいと考える者が定時制や毎日通学型の通信制へ進むことも多い一方、定時制すら定員内不合格となる受験生もおり、社会問題として提起されている。
通学区域[編集]
国公立の場合、学区が県毎や国立高校毎に定められていて、普通科では原則学区内の高校にしか進学できない。学区は1校単位から10校単位、あるいは全県1学区まで形態は様々である。専門学科は全県1学区が大勢である。県境では、隣接する県教委同士が協定を結び、住地の隣県の公立高を受験できる地域や地域みらい留学加盟校のように全国募集を行う公立高校がある。この場合、居住地の県の公立高受験は放棄することになる。
私立は建前として無学区制で、有名スポーツ校や進学校は広域から生徒を集め、不登校・中退者向けに全国募集を謳う学校もあるが、高1、高2は未成年なので、自宅外の場合、学校に近い地に身元保証人がいない場合は入学できない(入学願書が受理されない)ことがある。
現況[編集]
- 生活
- 義務教育ではないが、2020年度のデータで高校へ進学した中学3年生は通信制も含めると98.8%にのぼり[1]、事実上の義務教育になっている。
- 大半の全日制高校が制服を定めている。かつては公立校は学生服・セーラー服、私立校はブレザーが主流だったが、公立校でも周年記念や近隣校の統合などの節目をきっかけにブレザータイプへ更新する例も多い。全日制で私服着用可の高校も僅かにある。
- 専門高校のうち、工業科・漁業科・水産科・農林業科・工芸科では制服・体操服の他に学校指定の作業服が用意される。
- 始業時刻は8時15分から8時半前後のことが多い。中学校同様、部活動の朝練習の関係で7時台前半に登校する生徒も居る。
- 携帯電話の持ち込みは禁止されていない学校がそれなりに多い。
- 夜間定時制高校を除いて一般に給食は実施されていないため、昼食は自身で確保する必要がある。登校中にコンビニや駅の売店で買ったり、校内の購買部(売店)で買ったり、自宅から弁当を持ってきたり。
- 自己責任の範囲内で自由が許されるようになるため、下校中の買い食いや寄り道を咎められるようなことは荒れている学校や
無駄に厳しい学校以外少ない。
- 学習
- 授業時間は平日50分/コマ×6コマが標準だが、学校によっては毎日45分×7コマもしくは一部の曜日で50分×7コマとしている学校や土曜午前も授業を行う学校もある。
- 定期考査の回数は中学校と同じで、3学期制で年間5回、2学期制で年間4回。試験は相変わらず全教科一斉で、学習内容もより踏み込んだものとなるため学習負荷は中学校よりも高い。
- 単位制が始まるが、殆どが単位・学年併用制である。進級・卒業には規定の数の単位を取得しなければならないため、授業をある程度真面目に受けなければならない。
- 単位は各科目ごとに規定の数が定められており、最も多い体育教科体育科目は3年間で7~8単位の取得を必要とする。高校の標準的な修業年限である3年で割ると、1年あたり2~3単位になる。各科目の単位数は1週間の授業回数とニアリーイコールになる。
- 3年間続けて履修する科目は体育くらいで、これにより最短在籍年数の縛りが生じる。
- 体育以外のほとんどの教科は、科目が細かく分かれているため、一つ一つの科目の単位数は少なく、1年ないし2年かけて履修する。
- 全日制高校では定期考査で良い点を取るだけでなく、規定の出席日数も満たさないと単位修得できない学校が殆どである。
- 規定の数の単位を修得できないと原級留置となり、同じ学年をもう1年やり直し、かつ単位既修得の科目も授業を受け直すことになる。厳しい学校では1度でも原級留置が確定すると退学しなければならなくなる。
- 教育課程
- 普通科の多くは、高校2年あるいは3年で文系と理系に分かれ、学校によってはさらに国公立大進学コースと私立大進学コースに分かれる。専門学科でも、3年次は選択科目が多い。
- 入試対策
- 大学入試対策を重視するかしないかは、学校によって異なる。いわゆる「進学校」であっても、授業で入試対策に力を入れていない一方で、塾通いや通信教育を受講をする多くの生徒やそうした生徒から受ける高いモチベーションで難関大学への高進学実績を挙げている学校もある。
- 部活動
- 部活動はどこの学校にもあり、全員へ入部することを義務付けている学校も存在するが、運動部・文化部共に地方の学校でもある程度豊富な選択肢が用意され、中学校ほど幽霊部員に対して厳しい態度を取っているところは少なく、部の掛け持ちも認められる。
- 新体操など、競技者数が少ないスポーツは、民間クラブ所属でも大会参加が認められるが、名目的な顧問が就けられる。
- 都市部の生徒数の多い学校を中心に同好会の発足が認められる学校もあるが、全員入部を義務付けている学校では同好会新設を認めない学校もある。
- 特に野球では、高校野球部同士で競う、阪神甲子園球場での全国大会が有名で、プロ野球への登竜門的な性質も持っている。
進路[編集]
- 卒業後の進路は進学・就職のどちらか。就職する生徒が多いのは商業科、工業科など理数、英語、体育以外の専門学科であり、進学する生徒が多いのは普通科、理数科、英語科、芸術科といった学科で、多くの卒業生が高校3年の秋から冬に入学試験を受け、大学等に進学する。
- 就職を選ぶ場合、専門学科、普通科に関わらず、定められた解禁日に学校へ送られてくる求人票の中から希望先を選ぶ。但し、併願は原則できない。学校側も生徒が希望の就職先に行けるよう面接練習などのバックアップを行う。
- 進学希望者の中には、卒業した年に希望の大学に入学できず、翌年以降改めて大学受験する道を選ぶ人も多く、これを浪人と呼ぶ。浪人する場合、通常は予備校や補習科で受験勉強を継続するが、自学自習で受験勉強する人(宅浪)や、翌年の入試でうまくいけば中退する前提で第二志望の大学にとりあえず入学する人(仮面浪人)も多い[注 1]。
- かつては、卒業後就職するのが一般的だった商業科、工業科など理数、英語、体育、芸術以外の専門学科でも、近年は、専門学科でも総合型選抜や指定校推薦で大学や専門学校へ進学する生徒が少なくない。
- 体育科や運動系の部活動で実績を挙げた生徒は、スポーツ強豪校・企業へのスポーツ推薦での進学や就職が多い。就職の場合は、採用選考を部活動単位で行う企業も多く、この場合は部活動の顧問の裁量が就職先に強く影響する。
旧制高等学校[編集]
詳細は「旧制高等学校」を参照
高等学校の生徒が登場する作品[編集]
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関連項目[編集]
参考文献[編集]
脚注[編集]
- 注
- ↑ 大学の場合、入学前に修得した共通教育相当科目の単位を認定するところが殆どで、仮面浪人のメリットになることもある。
- 出典