池袋乗用車暴走死傷事故
事件現場近くの公園に建てられた慰霊碑 | |
日付 | 2019年4月19日 |
時間 | 12時25分頃 |
場所 | 東京都豊島区南池袋4丁目 |
死者 | 2人 |
負傷者 | 10人 |
原因 | ブレーキとアクセルの踏み間違い 飯塚は車の異常を主張 |
犯人 | 飯塚幸三(事故当時87歳) |
罪状 | 過失致死傷 |
池袋乗用車暴走死傷事故(いけぶくろじょうようしゃぼうそうししょうじこ)とは、平成31年(2019年)4月19日午後0時半頃に東京都豊島区南池袋4丁目路上のサンシャイン近くの東池袋交差点付近で発生した交通事故である。この事故は元通産省の高級官僚である飯塚幸三によって引き起こされ、12人の死傷者が出た。本来なら現行犯逮捕が基本であるが、この事故で飯塚は逮捕されず、在宅起訴されるに留まった。ネットなどでは「平成最後の凶悪事件」とまで言われている。
概要[編集]
平成31年(2019年)4月19日午後0時25分頃、飯塚は板橋区内の自宅から文京区内のレストランでの食事のため、妻を乗せて乗用車(トヨタ・プリウス)を運転中、ガードパイプに乗用車を接触させた後、時速60キロから時速84キロまで加速し、およそ150メートルにわたって暴走し、速度を落とさないまま横断歩道に突っ込み、横断歩道上の自転車と衝突しA(当時31歳)とその長女のB(当時3歳)を死亡させた。また40歳代から90歳代の歩行者8名に重軽傷を負わせた[1]。飯塚と同乗していた80歳代の妻も骨折した。また後日、警視庁の調べにより、死亡したAは飯塚にはねられた際、500メートル先まではね飛ばされていたことと、事故時に飯塚が時速89.999キロ以上を出していたことも判明した。
飯塚は平成30年(2018年)頃から足が不自由になり、杖を使って歩いていたという。近所の人の話として、自動車の車庫入れがきちんとできないまで運転は危なかったという。エアバッグが正常に作動するなど乗用車に機器の不具合が確認されておらず、運転席の足元近辺に落下物が無く、ペダルに物が挟まって動かなくなるトラブルも考えられないことから、運転操作ミスの可能性の高さが指摘されている。
これらの事故はいずれも赤信号で侵入しており、飯塚は信号無視していたと見られる。また飯塚は事故当時、時速100キロ近くの速度で走行していたと報道されている[2]。
なお、これだけの事故を起こしながら飯塚は直後に逮捕[3]されていない[4]。インターネット上では天下り官僚で叙勲まで受けている「上級国民」であるから、とする説が飛び交っているが、上記の通り加害者が入院しているため逮捕されていないという意見もある。また、ウィキペディアにある記事は度重なる荒らしのためもあったとされて保護依頼が出され、編集ができなくなっている(ただ、事故を起こした事実すら記載すると即削除対象とされている異常事態にもなっている。事故に関しては特筆性が無いとされているが、Wikipediaの飯塚の記事には飯塚個人の趣味を掲載するなど、特筆性があるのか疑問がある記述も存在する)。
被害者[編集]
- 当時31歳の女性A(死亡)。なお、この女性Aは後日、飯塚の運転する車にはねられた際に約50メートル先の路上に叩きつけられていたことが判明している。
- 当時3歳の女児で上記の女性Aの長女B(死亡)。
- このほか、8名が重傷あるいは軽傷の怪我を負った。後に死亡した母子とは別の母子が軽傷を負っていたことも明らかとなり、負傷者は10名となる。
加害者[編集]
- 飯塚幸三(当時87歳、運転手)。
- 同乗の女(飯塚の妻。80歳代)。
この両者も事故で重傷の怪我を負ったという(しかし4月23日の報道では軽症としているのに対し3日後の4月26日に重症と報道される不可解な点がある)。
事故後[編集]
事故後、飯塚は胸の骨を折る重傷を負ったとして入院していたが、5月19日午前に退院した。また5月18日に目白警察署で任意の事情聴取を受けている。このときは両手で杖を突きながらサングラスにマスク姿で目白署に現れている[5]。この時点ではまだ逮捕されていない。また飯塚は否認を続けており「ブレーキを踏んだが利かなかった」と供述している[5]。ただしアクセルやブレーキに異常は確認されていない[5]。
2019年5月31日、東京都公安委員会は飯塚の運転免許を取り消す決定をした。警視庁幹部によると、交通違反の内容を確認する「意見の聴取」が同日午前に千代田区内で行われたが、飯塚は「足が悪い」として欠席したという。
2019年6月13日午前、警視庁は現場に飯塚を交えて事故の実況見分を行なった。この際、飯塚は献花台に見向きもせず、手を合わせもしなかったという。飯塚は実況見分後の事情聴取で「最初に接触事故を起こし、パニック状態になってアクセルとブレーキを踏み間違えた可能性もある」と話しているという。
2019年6月下旬、飯塚の自宅マンションに目白警察署の捜査員と思われる男性3人が入っていき、続けてシルバーのワンボックスカーがやって来て、こちらにも2人の捜査員が乗っていたという。元警察官僚の澤井康生弁護士によると「原則として、警察が加害者の警護をすることは、まずありません。ただ、飯塚容疑者は日本中からバッシングされています。もしかすると、脅迫状が届き、家族が警察に相談して、地元警察署が様子を見ていた可能性はあります」と、すなわち異例の上級警護かもしれない、という。
2019年7月19日、車に同乗していた飯塚の妻が事故について「覚えていない」と話しているということが報道された。
2019年7月23日午前、飯塚の起こした事故で重傷を負った78歳の男性が警視庁の実況見分に立ち会い、事故当時の状況などを確認した。この男性は自転車で横断歩道を渡っていた際に飯塚が運転する自動車にはねられている。男性によると「死ぬかと思ったんですから、この辺に車が来たっていうのは覚えているんですけど、それから飛ばされて地面にうつぶせになっている時に意識が戻ったんですね」と日本テレビの取材に応じている。男性は飯塚について「正当な処罰を求めたい」と話した。
警視庁は飯塚を過失運転致死傷罪の疑いで書類送検する方針だとされている。
なお、この事故に続くかのように7月24日の午後4時頃、JR池袋駅前の交差点で当時73歳の男が運転する乗用車が暴走する事故が発生している。この事故における怪我人はいない。
2019年9月13日にはJ-CASTニュースが飯塚の代理人に取材を申し込んだが、拒否されている(書面での回答も拒否された)。
2019年9月18日には、飯塚の事故の2日後に発生した神戸三宮バス暴走死傷事故の初公判が神戸地裁で開始されており、未だに飯塚に対して送検すらされてないのは異常な事態となっている。
2019年9月20日、被害者遺族が東京都千代田区の東京地方検察庁を訪れ、飯塚への厳罰を求める署名39万1136筆と、速やかな送検や起訴を求める要望書を提出した[6]。遺族は多くの署名が集まったことに感謝し今後も自分ができる限りの事をことをしていく決意を表明した。
2019年10月1日の朝、妻に付き添われて、自宅マンションから出てきたところを週刊FLASHの記者に「飯塚さん、ご遺族、被害者の方々に伝えたいことは?」と直撃され、飯塚は「本当に申し訳ないということだけです。(体調は)よくないです。ご覧のとおり……」とはっきりした口調で答えた飯塚だが、杖を突く手は、ブルブルと震えていたという[7]。
2019年11月8日、警視庁はアクセルとブレーキを踏み間違えたことが原因だと断定し、来週にも飯塚を書類送検する方針であることを固めたと報道された。
2019年11月12日、警視庁交通捜査課は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の容疑で、飯塚を書類送検した。警視庁は書類送検に際し、検察に起訴を求める「厳重処分」の意見をつけている。
2020年2月6日、東京地検は飯塚を自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で在宅起訴した。
2020年9月16日、東京地裁が飯塚の初公判を10月8日に開くことを明らかにした。起訴状では、飯塚は東京都豊島区東池袋で乗用車を運転中、ブレーキと間違えてアクセルを踏み続け、時速約96キロまで加速。横断歩道で主婦のA(当時31歳)とその長女のB(同3歳)をはねて死亡させ、通行人ら9人に全治1年間の重傷などを負わせたとしている。
2021年6月、国土交通省は自動車事故時のアクセル、ブレーキなどの運転状況が分かる記録装置の搭載を義務付ける方針を固めた。事故原因の究明に役立てるためであり、2022年7月以降に発売する新型車が対象となる。2026年5月以降は販売済みのモデルを含む全新車に拡大する方針だとされる。他に衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)が前方を横断する自転車に対しても作動するように義務化するとされ、記録装置は「イベントデータレコーダー」(EDR)と呼ばれる。これは飯塚が起こした事故で、飯塚が自分の運転ミスが原因かどうかを認めずに未だに争っているためで、国土交通省は義務化することで操作ミスや車両の不具合など事故原因を特定しやすくするため判断したという。
マスコミ報道[編集]
部屋のカレンダーは当時のまま[編集]
被害者家族3人が事故直前まで暮らしていた部屋のカレンダーは2019年4月のままという。カレンダーをめくると、自分だけ時が進んでいく現実を認めることになり、できないと遺族は語る(2020年10月8日、FNN報道)。
飯塚に対する批判など[編集]
警視庁によると、事故現場に至る左カーブの辺りで、同乗の妻が「危ないよ、どうしたの」と声を上げた。飯塚は「あー、どうしたんだろう」と応じており、直後に車道左側の金属製の柵に接触したとみられる。その後、スピードを上げたまま交差点に突入していた。事故直後には飯塚が動揺した様子で息子に「アクセルが戻らなくて、人をいっぱいひいちゃった」と電話している様子が映っていた。この情報はまだ飯塚が上級国民であることが警察内部に把握されていない段階であったために流出してしまった情報で、この後に飯塚が上級国民とわかったために警察が情報封鎖に躍起になったとする説がある。実際、4月20日の時点では、マスコミは自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で事情を聞く方針と新聞などに書いていた。
また、事故を起こした飯塚には死傷させた12名に対する救護義務があるはずだが、飯塚は救護義務を怠っていた、とされている。これは息子に電話をかける時間があるのに救護義務はできないのか、と飯塚に対する批判をさらに強くさせる一因となった。
飯塚は上級国民とする説がある[8]。マスコミなどは「容疑者」ではなく「元院長」という呼称を用いていた。それは逮捕前の人物を容疑者と呼ぶべきではないからだという。警視庁は「逃亡や証拠隠滅の恐れはない」との理由から身柄の拘束をせず、飯塚の回復を待って任意で事情聴取する方針とした[8]。これは池袋の2日後に起きた神戸三宮バス暴走死傷事故(8人死傷)の64歳の運転手が現行犯逮捕されたことと比較して、ネット上では疑問の声が噴出し「上級国民だから逮捕されないのか」と憤慨する意見が続出した[8]。飯塚は元高級官僚であるため、現在においても政府関係者との繋がりがあり、当然、警察とも繋がりがあるとされ、それが関係するのではないかという[8]。これに対し、ある弁護士は「加害者が入院している際は逮捕できないためである」と述べた。また、マスコミはドライブレコーダーの映像を公開するように警察に求めているが、警察はこれを認めていないという[8]。
事故後、飯塚の自宅やフェイスブックが特定されたが、既にフェイスブックは削除されており、自宅の電話も繋がらないようにされていたという[8]。ネット上では飯塚が息子(息子も上級国民とする説がある[8])に指示を送り、これらの作業をさせたのではないかとされている[8]。また、所轄署の刑事の話によると、事故後に警察の上層部が多くやって来たという[8]。緘口令は出ていないが、触れるなというお達しも出ているという[8]。警察が狙っているのは事故の風化とされ[8]、また捜査も国策捜査[8]をすることでお茶を濁そうとしているのではないか、とみる説がある。
警視庁によると飯塚を逮捕しない理由は「一般論として逮捕の必要性などは刑事訴訟法の手続きに則って判断しています」と答えたという[5]。また弁護士の話として元通産官僚という経歴に一定の忖度が働いた、逮捕令状を出す裁判所では一般的に社会的地位が高い人間は逃亡の恐れなしという判断を下すからとしているという意見もある(実際、元フジテレビアナウンサーで、元首相・福田康夫の甥と結婚している千野志麻もそうだった)[5]。
元裁判官の八代英輝弁護士は「(飯塚が)退院されて事情聴取を受けた時点で、逮捕するのが普通だと思いますね」と情報番組で指摘しており、飯塚が退院後も逮捕されていないことに疑問を投げかけている。
週刊女性が2019年の冬頃に飯塚を取材するために居住しているマンションを訪れた際、「迷惑です。インターホンを押し取材をすることはおやめください。悪質な場合……」という貼り紙が週刊女性が夏に報じたときのままあったとされ、改めて取材を申し込むと事故当時、助手席に乗っていた妻と思われる女性が「お断りします!」とピシャリと強気すぎる応対をしたという。
声優の花澤香菜は2021年5月2日、「サンデー・ジャポン」(日曜・午前9時54分)のコメンテータとして出演し、「被告は一貫して自分の記憶は間違っていないと言っているが、ちゃんと被害者や遺族の方に向き合っているのか」と述べた。
2021年5月24日、遺族の松永拓也さんは莉子ちゃんの損傷が特に激しかったため看護師に見るのを止められたことに言及し、「こんな理不尽なことがあるのか」と悔しさを述べた。4月27日の被告人質問で被告が車の異常が原因だとする被告の無罪主張について「事故後、きょうが一番絶望を感じた」と涙した。被告に対して「被害者や遺族の話を逃げずに聞いて、疑問に答えてほしい」と述べた。
事故発生原因[編集]
パーキンソン症候群の疑い[編集]
2019年10月18日、飯塚に手足の震えや筋肉のこわばりが起きるパーキンソン症候群に罹患していた疑いがあることが捜査関係者への取材で判明する。警視庁は加齢による身体機能の衰えや認知症など別の病気の有無も調べ、運転操作への影響について詰めの捜査を進めているという。捜査関係者によると、飯塚は片足の具合が悪く通院していた。パーキンソン症候群と似た症状もあり、医師は「運転は許可できない」と伝えていた。事故後には別の医師が、パーキンソン症候群の疑いがあると判断したという[9]。
危険運転致死傷の不適用[編集]
飯塚は池袋の事故の際、信号無視並びに事故現場から約200メートル手前の左カーブで前のバイクや車を追い抜く際に急加速を始め、縁石に接触しながら時速90キロ台後半で横断歩道に突入して多くの人を死傷させるなど、危険運転に近い行為をしていたが、警視庁は飯塚の暴走は故意では無いなどと判断して、罰則の重い危険運転致死傷罪を適用しなかった。
ただし、2018年12月の三重県津市で発生した4人死亡暴走事故の裁判では危険運転致死傷罪の成立を認めなかった[10][11]ため、仮に飯塚が危険運転致死傷罪で起訴されたとしても危険運転致死傷罪の成立が認められない可能性もありうる。
飯塚被告人の前科[編集]
(飯塚には)平成13年(2001年)に同じような事故歴(前科)があることがわかった。検察側は冒頭陳述で01年に同種の前科一犯(自転車との接触事故、略式処分)があると明らかにしている[12]。
今回は前回と異なり「事故の責任を認めていないので、不利な状況」と報道されている[13]。「交通事故調査解析事務所」の熊谷宗徳代表はブレーキとアクセルを踏み間違えても、それに気づかない場合が多い、と語る[13]。 そのほか、論告では10年頃から今回の事故までに計5回の物損事故を起こしたと指摘されている。なお刑法犯でなければ前科とは言わない。しかし略式起訴された場合は刑罰を受けるので、犯罪をして刑罰を受けたということになるため「前科」として扱われる。
加害者家族の思いについて[編集]
飯塚の裁判が開始されたのにまるで合わせるように、令和2年(2020年)10月9日付の『現代ビジネス』において、前年に発生した池袋暴走死傷事故の加害者家族に関するコラム記事が掲載された。ただし、加害者家族のコメントとあるが、このコメントを家族の誰が発言したのかなどは一切明かされていない。また、加害者家族のプライバシーに一応は関わるもので、守秘義務があるはずなのに、これを世間に公表して良いのかという問題もある。
これは『現代ビジネス』のコラム《「上級国民」大批判のウラで、池袋暴走事故の「加害者家族」に起きていたこと》で、ライターが加害者遺族の知られざる苦労を記したものであるが、文中では「加害者家族のコメント」として「正直、逮捕してもらいたかったです…」などと並び、ライターも「危険なのは塀の中より社会」「加速しているように見える格差社会の間で無力感に苛まれている人々の復讐であり、不満の捌け口にもなっている」として、加害者家族に向けられる終わりなき社会的制裁を危惧している内容が記されている。
ただ、この加害者家族の思いは飯塚に前科があったことがわかる前に発表されており、加害者家族は以前の事故の際に何の対処もしていなかったことになり、これが本当に加害者家族の思いなのか疑問も持たれる。
精神科医からの意見[編集]
令和2年(2020年)10月14日、精神科医の片田珠美が、「池袋暴走事故「上級国民」だけでなく「家族も死刑」と袋叩きにする人々のヤバい心理」と題して、飯塚を弁護するような文章を発表した。それによると「このように、加害者本人だけでなく、その家族も叩く傾向に最近拍車がかかっているように見えるとされる。加害者家族の責任を問い、それ相応の責任を取るまでは許さないという姿勢で袋叩きにするのであり、特に加害者とその家族が恵まれた境遇にいるように見える場合、バッシングはより激しくなり、これは大衆の胸中に潜んでいる羨望のせいだろうとしており、羨望とは、他人の幸福が我慢できない怒りにほかならないという。飯塚が東大卒で順調に出世し、功成り名を遂げた飯塚は、大衆の羨望をかき立て、同時に、飯塚のおかげで裕福かつ安楽な生活を送っているように見える家族も羨望の対象になるのだとしている。
またジャーナリストの江川紹子も、池袋暴走の飯塚叩きに対して問題提起し、「加害者家族を苦しめるのは『社会』の人々」と発言している。
飯塚以外の高齢者との比較[編集]
飯塚が逮捕されないのは高齢で事故時には飯塚自身も怪我をして入院していたから、証拠隠滅の恐れや逃亡の可能性が無いから、と言われているが、他の高齢者と比較してどうなのであろうか、と疑問が持たれている。けがの程度によって逮捕が見送られるかは不明である。
- 2016年10月、横浜市港南区の通学路で集団登校中の小学生の列に軽トラックが突っ込み、市立桜岡小学校1年の当時6歳の児童が死亡し、児童4名が重軽傷を負った事故で、当時87歳の男が自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑で逮捕された(男は鑑定などで留置を長期とされた末、認知症であったとして不起訴処分となった)。
- 2018年1月、群馬県前橋市で道路を逆走して女子高生2人をはねて意識不明の重傷を負わせた当時85歳の無職の男が逮捕された(女子高生1人は後日死亡)。禁固の実刑が求刑されるが、2020年3月、男は持病の薬の副作用によって低血圧に陥り、意識障害が起こって事故を起こした可能性が大きいと認定され、無罪判決となった。検察側は控訴。さらに2審では加害者家族と代理人は有罪判決を望み、1審とは別の弁護人(40年来の知人)を選任し、有罪判決を望む方向に転換する異例の事態になっている。被告の長男は「無罪は望んでいない」と述べ、罪を償うべきだと意見した[14]。[15](前橋高齢者逆走死傷事故)。
- 2018年5月、神奈川県茅ヶ崎市で90歳の女が運転する車にが暴走し、1人が死亡、3人がケガをする事故があり、女は現行犯逮捕された。しかし、検察が勾留を認めなかったため、すぐに釈放された。
- 2019年6月3日午後6時30分頃、大阪市此花区伝法5のスーパー「ライフ此花伝法店」近くの歩道に車が突っ込み、子供2人を含む男女4人がはねられて病院に搬送されたが、いずれも命に別条はないにも関わらず、大阪府警此花署は乗用車を運転していた同区の無職の80歳の男を自動車運転処罰法違反(過失致傷)容疑で現行犯逮捕した。
- 2019年6月6日、大阪市平野区平野北1丁目で76歳の男が運転する車が駐車場から急発進し、60歳代の男性をはねて公園に突っ込んだ。男性の命に別状はないが、警察は76歳の男を過失運転致傷罪の現行犯で逮捕した。
- 2019年6月13日午前9時50分頃、兵庫県西宮市樋之池町の市道で乗用車が歩道を散歩していた保育園児ら約20人の列に突っ込み、6歳の女児が車の下敷きになって肩の骨を折り、5歳の女児が膝に軽い怪我をした。西宮警察署は自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷罪)の疑いで、乗用車を運転していた西宮市の無職の69歳の女を現行犯逮捕した。
- 2019年6月17日午後5時頃、東京都町田市の都道で歩道を歩いていた小学生らの集団に乗用車が突っ込み、いずれも7歳の小学生女児2人と50代女性、5歳の男児がけがをして病院に搬送され、女児1人とその母親の女性が重傷とみられるが命に別条はないにも関わらず、警視庁町田署は乗用車を運転していた60歳の女を自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷罪)の容疑で現行犯逮捕した。
- 2019年9月14日、愛知県名古屋市の金山総合駅前で、タクシーが人混みに突っ込み、7人が怪我をした(死者は無し)。警察は75歳のタクシー運転手を過失運転致傷罪の容疑で現行犯逮捕した[16]。
- 2019年9月25日、埼玉県川口市で学童保育の送迎車が、小学3年生の男子児童(当時9歳)をはねて死亡させる事故が発生し、警察は運転していた74歳の男を過失運転傷害罪(のち致死に切り替え)の容疑で現行犯逮捕した(74歳の男は最初から事故を認めていたが、警察は現行犯逮捕した)。
- 2019年10月3日、岐阜県岐阜市北一色の国道156号の交差点で軽乗用車を運転していた関市の無職の76歳の男が、自転車で横断歩道を渡っていた女子高生をはねて怪我をさせたにも関わらず、逃走したとして、ひき逃げなどの疑いで逮捕された(女子高生は全治1週間の怪我で、生命に別状はない)。
- 交通事故では無いが、2019年10月8日、徳島地裁は約2ヶ月前の7月30日午後4時45分頃に徳島市下助任町1のスーパーで卵1パック(販売価格245円)を盗んだ飯塚と同じ88歳の無職の男に対し、窃盗罪で懲役1年(求刑同1年6月)の判決を下した。
- 2019年10月24日午前10時15分頃、愛知県あま市丹波深田の喫茶店「珈琲庵」に75歳の男が運転する車が突っ込み、店内にいた客の当時82歳の女性が両足首の骨を折るなど、20代から80代の男女9人が重軽傷を負い、警察は運転していたあま市の男を過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕した。
- 飯塚の事故から2日後に発生した神戸三宮バス暴走死傷事故は、2019年10月30日に神戸地裁が禁固3年6か月(求刑禁固5年)の判決をバス運転手に言い渡した。飯塚がまだ逮捕も送検もされていないのに対し、こちらは超スピード裁判・判決となった。
- 2019年11月11日午前、東京都八王子市宇津木町で横断歩道を歩いていた保育園児の列に軽トラックが突っ込み、子供4人を含む7人が負傷した事故で、警視庁八王子署は同日午後、自動車運転処罰法違反(過失致傷)容疑で運転手の60代の男を現行犯逮捕した(のち釈放)。
- 2020年10月15日午後1時頃、北海道札幌市白石区南郷通9丁目南の市道で自転車に乗っていた男性(当時91歳)が車にひき逃げされた。警察は運転していた87歳の男Iを逮捕した(ニュースなどでは容疑者表記されている)[17]。
- 2021年3月16日午前11時50分頃、東京都町田市木曽西2丁目の「ショッピングセンター305」地下駐車場の通路で、歩いていた夫婦がバックしてきた乗用車にひかれ、下敷きとなり、町田市下小山田町の79歳男性、73歳女性の夫婦が全身を強く打つなどして死亡した。町田署は自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで、乗用車を運転していた町田市図師町の無職の71歳の女を現行犯逮捕した。女は「アクセルとブレーキを踏み間違えた」と供述している。
逮捕が行われなかった件[編集]
逮捕されなかったことの正当性について[編集]
加害者が重傷を負い、緊急入院が必要な場合は通例においては逮捕されないとされ、もしそのような状態で逮捕した場合は、違法且つ違憲であるとされる。他の高齢者が起こした事故との対比があるが、怪我をしてもその場で緊急入院する必要性がないと判断されれば一時逮捕されることは普通であり得るとされ、要はその辺りの基準が曖昧なのである。また飯塚の退院時には殆どの証拠が出揃っており、社会的にも地位があり逃亡の恐れがないと判断され、本人も謝罪の意を示しているため逮捕状が出されなかったとされている。
矛盾点[編集]
2019年9月29日、奈良県葛城市で乗用車が軽自動車に追突し、そのはずみで近くの歩行者がはねられ、4歳の男の子を含む5人が怪我をした。乗用車は逃走したが、事故当日にソチオリンピック・スノーボード男子の銅メダリストの平岡卓が警察に出頭し、事故について容疑を認めているという。また、平岡には飲酒の可能性も指摘されている。
警察は平岡を「任意で」事情聴取しており、今後は逮捕せずに書類送検する見通しであるという。
これは飯塚の時の逮捕を見送った理由と大いに矛盾している。飯塚の場合は「事故の際に重傷を負って入院していたので、ひとまず逮捕を見送る」「退院後も飯塚には社会的地位があり、『逃亡』や『証拠隠滅』の恐れが無いため、逮捕はしない方針である」と警察は説明している。実際、弁護士の北村晴男は飯塚に証拠隠滅の恐れも逃亡の恐れも無いので逮捕しないのであると述べている[18]
しかし平岡はひき逃げして「逃亡」している。さらに飲酒の可能性もあり、これが事実なら飯塚より悪質であり、なぜ逮捕をしないのか? 飯塚の時と警察や一部の弁護士が述べた見解と矛盾点がある。
また2019年11月11日午前、東京都八王子市宇津木町で横断歩道を歩いていた保育園児の列に軽トラックが突っ込み、子供4名を含む7名が負傷した事故で、警視庁八王子署は同日午後、自動車運転処罰法違反(過失致傷)容疑で運転手の60歳代の男を現行犯逮捕した。ところが男は首に負傷しているにも関わらずに現行犯逮捕されている。後になって入院が必要になったとして釈放しているが、飯塚を逮捕しない理由として挙げられた「事故の際に重傷を負って入院していたので、ひとまず逮捕を見送る」と明らかに矛盾している。ただし、けがの原因による差ともとれなくはない。
2021年3月16日午前11時50分頃、東京都町田市木曽西2丁目の「ショッピングセンター305」地下駐車場の通路で、歩いていた夫婦がバックしてきた乗用車にひかれ、下敷きとなり、町田市下小山田町の79歳男性、73歳女性の夫婦が全身を強く打つなどして死亡した。町田署は自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで、乗用車を運転していた町田市図師町の無職の71歳の女を現行犯逮捕した。女は「アクセルとブレーキを踏み間違えた」と供述している。女は飯塚と同じ2人を殺し、さらに実名まで自身のミスを認めているにも関わらずに現行犯逮捕されており、飯塚が特別扱いされているのは明らかで、なぜ逮捕するかどうかの判断が分かれるのか、警察は説明する必要がある。
飯塚を逮捕しないことに対する反論[編集]
慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純は「車で死亡事故を起こした場合でも、今回に限らず逮捕されないケースもあるようなので、警察のルールを破った行動ではないと思う。世間から見ても上級の人生を送っていたであろう人だからこそ、身分などが明らかで逮捕の際に逃亡の恐れがないと判断されることは自然だし、人物像によるそれなりの配慮があったとしても、ルールの範囲内だったと考えることはできる。最初に逮捕されなかったからと言って許されたわけではまったくなく、世間の注目もあるので、起訴されて重い罰が課される可能性は高いと思う。むしろ、逮捕されていなかったことでネットで騒がれて、顔写真や経歴などがさんざんさらされて、警察に逮捕はされなかったが、ネットや社会に逮捕されたようなもの」との見方を示した。
海外メディアから見た飯塚[編集]
インドネシア大手紙「Tribunnews」で飯塚が起こした池袋の事故が報じられ、世界レベルで問題視されている。「なぜか逮捕されない」「日本の当局から特別扱いを受けている日本人」など日本で物議を醸している内容がそのままインドネシアで報じられている。同紙によると「飯塚は研究所の所長を務めたとき、年間最低2000万円が支払われていたと推定されていて、飯塚の年金はおよそ3000万から4000万円で[19]、元政府高官であり、日本政府から勲章を受け取っている」からとされた上で、記事のタイトルは「二人を轢き殺したのに逮捕されていない」となっており、やはり海外でも逮捕されない事態に疑問が持たれている。
遺族の記者会見[編集]
2019年7月18日午後に動画を公開したAの夫のCが記者会見を開いた。会見では加害者の飯塚に厳罰を求める署名活動を行うことも発表した。
2019年8月4日、Cが、飯塚に対する厳しい刑事処分を求めて現場近くの公園で署名活動を行なった。Cによると、郵送を通じて既に8月4日時点で5万人分以上の署名が集まり、8月30日時点で29万人となった[20]。今後、東京地方検察庁に提出する予定という。Cは「しかるべき処罰を受けさせることが(事故の)再発防止につながると思う」と語っている。警視庁は自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷罪)容疑で書類送検する方針を固めていると報道された[20]。
2019年10月12日、飯塚が書類送検されたことを受けてCは「やっとスタートラインに立った。(飯塚には)2人の死に向き合ってほしい」と語気を強めた。また事故から書類送検までの7か月間は「苦しみや悲しさと向き合い、葛藤し続ける日々だった」と振り返り「2人(死亡した家族)には(飯塚の)書類送検について特に報告しておらず「いつも通り『愛している』『ありがとう』と伝えた」という。また「(飯塚が今後は)当然起訴されると思っている」「(飯塚が事故について)否認しているとしたら裁判の場で明らかになる」と話し、被害者参加制度で裁判に参加する意思も示した。そして「(被害者である)2人や社会のためにも軽い罪で終わらないようにできることをやり、少しでも交通事故が減るように活動していく」と決意を語った。また、高齢ドライバーの運転について「東京や地方で事情が違う」とした上で「家族で話し合ったり、技術的な改善を進めたりしてほしい」と願った。
飯塚の呼称[編集]
飯塚は逮捕されていないため、現在まで「元院長」など敬称付きでほとんどのマスコミでは呼ばれたり記載されている。ただし読売新聞は2019年5月18日の段階で飯塚を「容疑者」と呼んだ。その後、マスコミ関係は分かれる形で飯塚を容疑者と呼ぶ場合もあれば、元院長など未だに敬称を付ける場合や実名すら報道しない場合もある。また、SNSでは逮捕されないことにより炎上しており「上級国民」などとも呼ばれる。
一部の紙面でも相変わらず飯塚には敬称が用いられているが、週刊FLASHのように飯塚を「容疑者」(被疑者)と呼ぶマスコミも少しずつ現れ始めている。
裁判が始まってからは「被告」と呼称したり表記するマスコミも出始めているが、元院長とする場合もまだ存在している。
飯塚は優遇されていないという意見[編集]
マスコミからの報道 [編集]
マスコミが以下のような報道を行ったとされるが、根も葉もないものが非常に多い意見であり、無視しても構わないものである。むしろ飯塚を擁護するだけ無理が現れている例となっている。
- 逮捕状請求前にもかかわらず、実名と顔写真を公開する異例の対応[21]。
- 飯塚は被害者遺族と被害者に謝罪の意も示しているがマスコミはこれらをスルー(実際はスルーしておらず、飯塚が被害者に謝罪の手紙を送った旨は報道され、その謝罪文の内容が批判された[22])。被害者への賠償も覚悟しているとされるが、裁判で飯塚は起訴内容を否認している。
- 事故を起こしたことについて認めているが、「アクセルが...」という発言しか報道していない(上記の飯塚の事故経歴を見ればわかるが、マスコミは正確に報道しており、さらに飯塚が「フレンチに遅れそうになったから」と発言した事実も明らかになっている)。
- 交通事故で家宅捜査されたという異例な警察の対応をマスコミはスルー(実際は[23]のように報道されている)。
- 意見聴取という言い分を話せる機会を辞退したことについて「聴取に応じないとは大胆」と報道(実際は「足が悪い」として意見聴取を拒否したことを報道している[24])。
- 殺害予告を受けて警察が張っているのを「警察に護衛されている」と報道されたとする説(実際は護衛される事態が異常であり、一般人なら考えられない待遇であり、弁護士すら疑問を投げかけている[25])。
以上のような肯定意見も少なからず存在するが、ほとんど飯塚を弁護するために無理やりのようなものが多く、無視しても問題はないと考えられる。
上級国民以外で入院後逮捕されなかった例 [編集]
- 2016年に、東京立川市の病院駐車場内で、80歳の高齢者の女が2人を死亡させる交通事故が発生した。いわゆる「上級国民」ではない高齢者が加害者で、こちらも当初入院しており、退院後も逮捕されていない。しかし、東京地裁立川支部は2018年、女性に禁錮2年の実刑判決を言い渡した[26]。
逮捕されない飯塚[編集]
飯塚は上級国民で元通産省の官僚だったため、本来は現行犯逮捕が基本であるはずが逮捕されず、重傷を負ったことを理由に病院に入院した(退院後も逮捕されていない)。また、マスコミも飯塚に敬称を付けて呼んでいた(書類送検されて以降は、多くのマスコミが「飯塚容疑者」と呼ぶようになった)。ちなみに当初、ドライブレコーダーの情報で「妻が「危ないよ、どうしたの?」と呼びかけ、飯塚が「あー、どうしたんだろう」と応じる声も記録されていたことや、飯塚が事故後、息子に「アクセルが戻らなくなって人をいっぱいひいてしまった」と電話したことが情報として漏れたのは、この時点では飯塚が上級国民とまだマスコミや警察関係者に判明していなかったためである。
なお、逮捕されないのは証拠隠滅の恐れが無いから、としているが、事故後に飯塚のフェイスブックなどは削除され、自宅の電話番号も変更されているなど、証拠隠滅ともとれる行動が見られる。さらに事故を起こした飯塚には死傷させた12名に対する救護義務があるはずだが、飯塚は救護義務を怠っていた、とされている。これは息子に電話をかける時間があるのに救護義務はできないのか、と飯塚に対する批判をさらに強くさせる一因となった。
令和元年(2019年)5月18日に飯塚は退院し、その日のうちに目白署で取り調べを受けたが、この時点で逮捕はされず、マスコミの前で謝罪のみをしている。ただし謝罪したといっても、自らの顔をサングラスやマスクで隠した上でしており、一説に別人だったのではないかとする説も出ている。5月31日、飯塚の運転免許は取り消された。
6月13日、警視庁は飯塚を交えて事故現場で実況検分を行なった。この際、飯塚はこれまで「ブレーキが利かなかった」などと話していたが、実況見分後の事情聴取では「最初に接触事故を起こし、パニック状態になってアクセルとブレーキを踏み間違えた可能性もある」と話したという。
2019年7月19日、車に同乗していた飯塚の妻が事故について「覚えていない」と話しているということが伝えられた。
2019年7月23日午前、飯塚の起こした事故で重傷を負った78歳の男性が警視庁の実況見分に立ち会い、事故当時の状況などを確認した。この男性は自転車で横断歩道を渡っていた際に飯塚が運転する自動車にはねられている。男性によると「死ぬかと思ったんですから、この辺に車が来たっていうのは覚えているんですけど、それから飛ばされて地面にうつぶせになっている時に意識が戻ったんですね」と日本テレビの取材に応じている。男性は飯塚について「正当な処罰を求めたい」と話した。
2019年(平成31年)4月21日の神戸三宮バス暴走死傷事故は半年後の2019年9月18日に神戸地裁で初公判が行なわれている。飯塚幸三の事故は2019年(平成31年)4月19日の事故から2020年(令和2年)10月8日のため、約1年半であるが、自動車に原因がないことを慎重に調べていたためとみられる。刑事事件としては早い方ともいえる。
2019年9月20日、飯塚のために家族を失った被害者遺族が代表して東京地検を訪れ、車を運転していた飯塚への厳罰を求める署名39万1136筆と速やかな送検や起訴を求める要望書を東京地検に提出した。
元裁判官の八代英輝弁護士は「(飯塚が)退院されて事情聴取を受けた時点で、逮捕するのが普通だと思いますね」と情報番組で指摘しており、飯塚が退院後も逮捕されていないことに疑問を投げかけている。
2019年11月12日、警視庁交通捜査課は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の容疑で、飯塚を書類送検した。警視庁は書類送検に際し、検察に起訴を求める「厳重処分」の意見をつけている。 テレビ東京の取材により飯塚が「予約していたフレンチに遅れそうだった」と供述していたと報道された[27]。
なお、飯塚が逮捕されない理由として、多くの識者や警察関係者は「飯塚が事故で重傷を負っていたため」と説明しているが、2019年11月11日午前、東京都八王子市宇津木町で横断歩道を歩いていた保育園児の列に軽トラックが突っ込み、子供4名を含む7名が負傷した事故で、警視庁八王子署は同日午後、自動車運転処罰法違反(過失致傷)容疑で運転手の60歳代の男を現行犯逮捕している。この男は首に負傷しているにも関わらずに現行犯逮捕されている。後になって入院が必要になったとして釈放しているが、飯塚を逮捕しない理由として挙げられた「事故の際に重傷を負って入院していたので、ひとまず逮捕を見送る」と明らかに差があるとの説があるが、八王子市宇津木町の事故では自動車運転処罰法違反(過失致傷)容疑で午前中に現行犯逮捕した運転手(60代の男性)について、事故当日の午後には、首の負傷で入院が必要になったとして、男性を釈放しているから、違いはあまりない[28]。
法律家の中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也によると、法律家の観点からいくと、逮捕という形で捜査する理由は2つだけであるとする。1つは逃亡する恐れがある場合であるが、本人が入院中であったから逃亡の可能性はなかった。2番目の証拠隠滅のおそれについては、ドライブレコーダーや車など事故の証拠になるものを全部警察が押さえていたので、在宅のまま捜査を続けてきたという。慎重に捜査した理由は、最初「機械に不具合がある」「ブレーキが利かなかった」と飯塚本人が証言していたためであったという[29]。
2020年2月6日、東京地検は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で、飯塚を在宅起訴した。ただ、在宅起訴なので、飯塚は普通の生活をこのまま送ることが可能となる。また、過失致死傷罪の法定刑は7年以下の懲役または禁固、あるいは100万円以下の罰金でしかない。自由刑に処せられても高齢のため執行停止となる可能性さえある。
裁判[編集]
裁判は民事裁判と刑事裁判とがあるが、ここでは社会的影響が大きい刑事裁判を中心にして述べる。 2020年10月8日、東京地方裁判所(下津健司裁判長)104号法廷にて初公判が開かれ、2021年9月2日午後2時に判決となった。 結果は有罪であり、論告求刑「禁固7年」に対して[30]、判決は東京地裁は禁固5年の判決を出した。飯塚に対して東京地裁は、飯塚の運転における過失を認定した上で、裁判長は飯塚に「罪に向き合い、遺族に対して真摯に謝罪するように」と述べた。控訴期限である2021年9月16日までに被告人と検察側の双方が控訴しなかったため、「禁錮5年」の実刑判決が確定した。
刑事裁判[編集]
東京地方検察庁は飯塚幸三被告人を過失運転致死傷の罪で2020年2月6日在宅起訴した[31]。警視庁は2019年11月、起訴を求める厳重処分の意見を付けて書類送検した。暴走は故意ではなかったとして、罰則の重い危険運転致死傷罪の適用は見送られている。
初公判:異例の対応と無罪主張[編集]
2020年10月8日、東京地方裁判所(下津健司裁判長)で、初公判が開かれたが、この公判は当初から異例づくめだった。まず、AとBの遺族であるCが被害者参加制度を使って裁判に臨んだが、亡くなった2人A及びBの「遺影」の持ち込もうとしたのに対して、被害者参加人としては禁止され、抗議の上申書を提出するも却下されたという。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務局長の高橋正人弁護士は、被害者参加して遺影を持たないか、一般人として傍聴席に座り遺影を持つかの「二者択一」を裁判官に迫られたとして、裁判所側のこの対応を疑問視している。J-CASTニュースが東京地裁に取材したところ「裁判官の総合的な考慮にもとづく判断で決まってくる」とのことだったとされる。また飯塚はこの公判において、黒のスーツ姿で紺色のネクタイを締め、車椅子に乗って法廷に入ったとされ、弁護人の手を借りて証言台前に移動して立ち上がり「(遺族の)ご心痛を思うと言葉がございません。心からおわび申し上げます」と述べ、深く頭を下げたという。下津健司裁判長は早稲田大学出身で、刑事第17部の総括判事である。早い段階で司法研修所刑事裁判教官を務めており、エリートポジションにある。東京地裁刑事部のエース級裁判官の一人であるから、東京地裁の意気込みがうかがえる。
しかし、飯塚は起訴内容の認否を問われると「アクセルペダルを踏み続けたことはないと記憶しています。車の何らかの異常で暴走したと思っております」と述べて起訴内容を否認し、無罪を主張した。「車の異常から暴走した」とする被告人(弁護)側に対し、検察側は「運転ミスが原因」と指摘。双方の主張が対立することになった。検察側は冒頭陳述で、事故約1カ月前の車両点検では、被告人の車のブレーキやアクセル機能に異常は確認されていなかったと明らかにし、何らかの異常が起きた場合は電気系統で加速が制御される仕組みだったと指摘。車の記録装置にはアクセルペダルを踏み込んだデータが残っていたと主張した。弁護側は「間違ってアクセルを踏み続けたことはない」と述べ、過失致死傷の成立を争う姿勢を示したが、詳しい主張は明らかにしなかった。
検察は、飯塚の車に搭載されていたドライブレコーダーの当日映像を流した。事故直前、飯塚は時速60キロで進行中に車線変更を繰り返し、時速84キロまで加速し、横断歩道上の自転車と衝突後は、時速96キロまで加速し、ブレーキペダルを踏み込んだ記録はない。後続運転手の証言によれば当時、飯塚の車のブレーキランプは一度も点灯しなかったとした。飯塚の車に異常がなかったとする証拠が多数示された。
なお、飯塚幸三が運転していたのは2代目「トヨタ・プリウス」と報道されている。2003年から2011年までに発売された2代目プリウス(NHW20)から本格的なEDR(イベント・データ・レコーダー)が装備されている。EDRにはアクセルペダル開度、エンジン回転数、モーター回転数、ブレーキのON/OFFが記録されている。EDRの記録が証拠として採用される可能性は高いと見られる。なお飯塚が運転していた車は、2007年登録のプリウスである。問われているのは過失運転致死傷罪で、7年以下の懲役もしくは禁固、または100万円以下の罰金となっている。
第2回公判:飯塚が居眠りしたとされる[編集]
2020年12月3日、東京地裁で第2回公判が開かれ、事故の目撃者3人が出廷し、3人とも「プリウスは減速していない」「ブレーキランプは1度も点灯していない」と証言した。これは飯塚や弁護側の証言と全く食い違っている。
また、飯塚は公判中に下を向いて動かなかったとされており、一説に居眠りしていた可能性が指摘されている。被害者遺族はその飯塚の態度に対して、強い憤りを示している。
第3回公判:飯塚は過失なしと陳述[編集]
2020年12月14日、第3回公判が東京地裁で開廷され、飯塚の弁護側の冒頭陳述が行なわれた。飯塚の弁護士は検察側が指摘するアクセルとブレーキの踏み間違いについて、「足を上げて、目視した上でブレーキを踏んだ」と主張。さらに「車の電子部品のトラブルの可能性がある」とし、その上で、車は購入してからおよそ10年が経ち、「経年劣化による電子部品のトラブルの可能性がある」と述べ、飯塚被告には「ブレーキと間違えてアクセルを踏んだ過失は認められない」と陳述した。
飯塚は相変わらず下を向いたままで反省の態度を示さず、被害者遺族に対して会釈もせず、公判後に被害者遺族は「(飯塚が裁判を)ひとごとのよう」な態度をしているとして、怒りと悲しみを滲ませた。
第4回公判:飯塚の無罪主張に反論[編集]
2021年1月19日、第4回公判が行われ、現場周辺の防犯カメラや、事故車両のドライブレコーダーの映像を分析した警視庁の捜査員が証人として出廷した。時速約53キロで走行していた車が、縁石や自転車と衝突しながら加速を続け、被害者母子のA、Bが自転車をはねる直前には時速約96キロに達していたと証言した。また、防犯カメラの映像ではブレーキランプの点灯を確認できず、急加速をした際に車の前方が浮き上がる「ノーズアップ」現象が起きていたとした。 第4回公判後に被害者遺族は会見し、民事提訴したことを明らかにし、その理由を「新型コロナウイルスの影響でなかなか刑事裁判が進まず、被告本人の口から何があったのかを早く聞きたかった」と説明した。
第5回公判:事故原因を故障とする飯塚側の主張に捜査員が反論[編集]
2021年2月1日、第5回公判が東京地裁で開かれ、事故車両や現場の検証を担当した警視庁交通捜査課の捜査員の証人尋問が開かれた。弁護側はこれまでに、経年劣化によって「電気系統のトラブルでブレーキが利かなかった可能性は否定できない」と訴えていたが、捜査員はこの点について「事故前後の被告車両の状態が記録されたデータには、アクセルやブレーキの電気系統の故障記録が確認できない」と主張し、さらに現場検証でも「事故で破損した箇所を復元するなどして被告車両を走らせたところ、ブレーキが利いた」と訴えた。被告車両には、「電気系統に異常があった場合でも作動する油圧ブレーキが搭載されることに触れ、ブレーキペダルを踏んでいれば車は減速したはずだ」と訴えた。さらに、事故車両のアクセルペダルとブレーキペダルで、一部だけほこりが拭われていた痕について「暴走事故でよく見受けられる痕だ」と説明した。
これに対して弁護側は反対尋問で、「アクセルペダルを踏むこと以外の要因で、モーターやエンジンを動かすための電気信号が送られることは全くはないのか」と追及したが、捜査員は「全くない」と返した。
公判終了後、退廷する飯塚に対して傍聴席にいた中年の女性から2度にわたり、「人殺し」と言う言葉が投げかけられている。
第6回公判:飯塚側の主張にトヨタが反論[編集]
2021年3月3日、東京地裁で第6回公判が行なわれた。
この日の公判では、事故車「プリウス」のメーカーであるトヨタ自動車で故障診断を担当する社員が証人として出廷した。これまで飯塚と弁護側は事故原因を車の不具合によるものとして無罪を主張してきたが、事故現場の実況見分にも立ち会ったという証人は「コンピューター、部品の機能ともに正しいことを確認しました。(事故車の状態は)正しかったと考えております」と証言した。
被告側は事故車について「勝手に加速した」などと主張しているが、故障が生じた車が加速する可能性について、証人は「ございません。なんらかの故障が生じた場合、安全サイド(減速する)に設計・開発するのが常識だからです」と否定した。
第7回公判:飯塚に対する初の被告人質問[編集]
2021年4月27日午後1時30分より、東京地裁で第7回公判が行われ、飯塚に対する初の被告人質問が行なわれた。
弁護側の被告人質問で自動車の運転歴について聞かれ、53年以上と答える。
飯塚は事故当時、同乗する妻と2人でレストランに向かっていたとし、「昼食の予約をしていて、レストランに行こうをしておりました。電車やバスでも行けますが、乗り換えに時間がかかるので車で行きました」と述べた。予約に間に合わせるため、急いでいたとの報道については「12時ちょっと過ぎに出て、12時半の予約でしたから、急がないでも十分に間に合っていました」などと発言した。
さらに飯塚は「アクセルは踏んでいない」と過失を否定する一方「事故時はパニックになった」とも述べた。飯塚は、事故現場となった交差点に差し掛かろうとした際、「アクセルペダルを踏んでいないのにエンジンが異常に高速回転を始めた」と供述し、「ブレーキペダルを踏んでも減速せず、抜けたような感じで抵抗感がなかった」と話した。
また、飯塚は当日の乗車前にアクセルとブレーキが正常に機能しているかチェックしたと明かし「異常はありませんでした」とも述べた。
検察側質問で飯塚の証言とドライブレコーダーの記録との矛盾が多いと指摘された。被害者のA、B母子について飯塚は「乳母車を押していた」と述べたが、実際には母子とも自転車に乗っていた。アクセルとブレーキを踏み間違えたかどうかについては、踏み間違えた記憶はないと答えた。さらに80歳を過ぎた頃から、車に傷をつけたり、バンパー修理交換などの頻度が増えていると指摘された。歩くために杖を使うようになり、つえの本数が1本から2本に増えているとの指摘に、運動能力の低下の実感がないと回答した。
第8回公判:飯塚側が改めて無罪主張[編集]
2021年6月21日13時30分から、東京地方裁判所で第8回公判が行なわれ、妻子A、Bを亡くした被害者遺族Cが、被害者参加制度を利用して被告人質問した。Cが「2人の生前の写真を見てどう思いましたか」と尋ねると、飯塚は「かわいい方を亡くしてしまって申し訳なく思ってます」と答えた。また、Cから「あなたは無罪を主張していますね?」と問いただされると、飯塚は「心苦しいが、私の記憶ではアクセルとブレーキを踏み間違えていないので、私の過失はないと思ってます」と改めて無罪を主張した。第7回公判での飯塚の4つの記憶違いについて、Cはいずれもドライブレコーダーの映像と違っていなかったかとCが質問したところ、飯塚は表現は正確でないところはあるものの、大筋では正しいと説明した[32]。
Cは「(あなたに)刑務所に入ってほしいと思う。その覚悟はありますか」と質問したところ、飯塚は「はい。あります」と答えた。さらに「息子さんに『ブレーキとアクセルを踏み間違えた』と発言しませんでしたか」と問い、飯塚は「覚えていません」と回答した。Cは「警察の供述調書に被告人がそのように話した」と供述調書に書かれていると指摘した。続いて被害者遺族Dは「(飯塚が)過ちを認めないことに、悲しみと怒りを覚える」と述べた。また裁判長は、いまだに後遺症がある被害者3人の意見陳述書について「(事故を)車のせいにせず、被害者のことをもっと受け止めて」「アクセルとブレーキを踏み間違えたと認めるべきだ」と代読した。
公判終了後の記者会見でCは「被告(飯塚)の口から真実を述べてほしいという夢は破れた。刑務所に入ってほしい」と述べた[33]。
第9回公判:論告求刑と弁護側最終弁論[編集]
2021年7月15日13時30分から17時まで、東京地方裁判所104号法廷にて、第9回公判が行なわれた。最初に遺族7人が意見陳述を行った。遺族から「あなたは人間の心を持っていない」と厳しい言葉が投げかけられた。遺族は「最大限の重い実刑判決を望む」と述べた。被告人は車で出かけなければ、事故は起きなかったと悔やんでいると語る。検察官は飯塚被告人が平成22年ごろから物損事故を5回起こしていたことを指摘した上で、車両がなければ生活できないという理由もないのに、利便性を優先させ、加齢に伴う認知能力などの衰えから運転操作を誤った過失があると事故原因を指摘した。東京地方検察庁は過失運転致死傷罪の上限である禁錮7年を求刑した[34]。
論告求刑の間、飯塚はうつむいた状態でいたが、傍聴席から「寝てるんじゃないよ!」と声が上がり、裁判長から「静かにしてください」と注意があり、数十秒間中断した。判決期日は、2021年9月2日14時からと決定した。
地裁判決[編集]
2021年9月2日午後2時、東京地裁で判決公判が開かれ、飯塚幸三に禁錮5年の実刑判決が下された。
当日の公判を傍聴するため、午前に東京地裁前に傍聴券を求めて長蛇の列ができ、地裁は22席の一般傍聴席に対し、整理券563枚を配布し、倍率は25.59倍だった。
下津健司裁判長は事故原因について、アクセルとブレーキの踏み間違いによるものと認定。事故車両には定期点検や事故後の検査でも異常はなかったとし、車両の不具合が事故原因とする弁護側の無罪主張を退けた。その上で、アクセルとブレーキを的確に操作することは「年齢にかかわらず求められる最も基本的な注意義務の一つ」と指摘し、飯塚が義務を怠り、踏み間違いに気付かないまま車両を加速させており過失は重大だと批判した。
また判決について、母子2人が死亡したことについて「2人の無念さは察するに余りあり、遺族の喪失感も全く埋められていない」と言及し、また飯塚が法廷で謝罪の言葉を口にしたものの、過失を否定して無罪を主張する態度に終始しており、高齢であることや厳しい社会的非難を受けたことを踏まえても「長期の実刑は免れない」と指摘した。
その後、裁判長は判決文を読み上げた後「あなたの過失は明白。判決に納得するなら、責任と過失を認め、遺族に真摯に謝っていただきたい」と述べた。飯塚の控訴期限は2週間後の9月16日となる。
東京地裁の判決後[編集]
2021年9月15日、飯塚が控訴しない意向を固めたことがマスコミ関係者などから明きらかにされた。飯塚は同日朝、犯罪加害者家族の支援を行っているNPOの理事長と面会し「遺族に対して本当に申し訳ない」「裁判所の決定に従い、収監を受け入れ、罪を償いたい」と話したとされている。
2021年9月16日までに飯塚・弁護側、並びに検察側の双方が控訴しなかったため、禁錮5年の実刑判決が確定した。被告人は今後、刑務所に収監される見通しと報道された[35]。禁錮刑のため刑務所での労務作業は科されない。
10月12日、飯塚は収監のため東京地検に出頭し、同時にこれまでの無罪の主張を改めて、罪を認めて刑に服する旨のコメントを出した。
叙勲の剥奪について [編集]
平成27年(2015年)秋の叙勲で、「通産行政事務功労」の名目で瑞宝重光章を受章している[36][37]。瑞宝章は「国家又ハ公共ニ対シ積年ノ功労アル者」に授与されるもので、業績自体にだされる旭日章とは異なる[38]。
勲章褫奪令(明治四十一年勅令第二百九十一号)によれば、死刑、懲役又は無期若くは3年以上の禁錮に処せられ、実刑が確定したときは叙勲を褫奪される(勲章褫奪令第1条)。しかし執行猶予がついた場合は「情状により」決まる(勲章褫奪令第2条)。「ち奪」決定は、官報に掲載され、事実上は「叙勲取り消し」である。したがって、刑事裁判で3年以上の禁錮になるかどうか、執行猶予がつくかどうかは、飯塚にとって重要なことになる。地裁判決で禁錮5年が下されたため、飯塚が控訴しなければ勲章は剥奪されることになる。
9月29日、内閣府の賞勲局が弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「飯塚さんの勲章は刑が確定された時点で褫奪されています」と答えた。「返上ではなく、褫奪」であると説明された[39]。勲章褫奪令による褫奪とは「はぎ取る」という意味である[40]。いずれ官報に掲載されるという。
民事裁判[編集]
2020年2月9日、飯塚幸三被告に対して損害賠償を求める、第1回口頭弁論が東京地方裁判所(鈴木秀雄裁判長)で開かれた。原告は事故のため亡くなった被害者の親族9人で、慰謝料など計約1億7000万円を請求している[41]。飯塚幸三被告と弁護側は、早期和解を求めつつ、慰謝料の額などを争い、「請求棄却」を求めている。
令和2年(2020年)10月の初公判で飯塚幸三が無罪を主張し、刑事裁判の長期化も予想されたため、初公判当日に提訴に踏み切ったことを明らかにした。無罪を主張する飯塚幸三被告人の刑事裁判が長引く可能性を見越して民事提訴したものであり、被害者遺族は「早く元院長から真実を聞きたい」と説明している。
裁判に関係する出来事[編集]
被害者遺族の要望[編集]
第5回公判に前後して、被害者遺族は、犯罪被害者が裁判のために会社を休む際、有給休暇を使わざるを得ない現状を踏まえて、「特別休暇制度の義務化」を認めてほしいと厚労省に申し入れた。被害者遺族は被害者参加制度を利用して法廷に立つが、被害者への支援が不十分と感じている。
2021年9月2日の地裁判決の少し前、遺族のCは判決を前に『飯塚幸三被告人へ』と題したブログを公開し「1審の判決が出たらもうやめにしませんか」と呼び掛けた。「1審で判決が下った後、これだけ証拠がそろっているなかで争い続けることで、誰が幸せになるのだろう。僕たちも苦しい。社会全体にとってもメリットなのか」と述べた。
そして、迎えた判決の日。判決後、Cはこう述べた。「やっぱり涙がやっぱり出てきた、判決が出た瞬間に。これで命が戻ってくるなら、どんなにいいことかなって、ちょっとむなしさが出てきてしまった。ただ、やっぱりこの判決は、遺族がこの先、少しでも前を向いて、生きていけるきっかけにはなり得るなと。もし(飯塚が判決に)納得できるなら、罪を認めたうえで、心からの謝罪をしてほしい。納得できないなら、権利ですから、控訴すればいいと思います。ただ、心情的には、もう争いを続けることはしたくない」と述べた。
株式会社クボタのコメント[編集]
2019年4月22日、クボタは「当社元副社長の飯塚幸三氏はすでに当社を退職しており、会社としてのコメントは差し控えさせていただきます。」とのコメントを発表した[42]。
一般社団法人 日本淘道会[編集]
事故時まで一般社団法人 日本淘道会の理事長であったが、事故後に本人から理事長辞任の申し出があったとされ、理事会を開いて辞任したとされる[43][44]。
トヨタ自動車のコメント[編集]
2021年6月21日の日、飯塚からプリウスに技術的欠陥があったなどとされていたトヨタ自動車が報道各社に対してコメントを発表した。それによると「本件の被告人(飯塚)が、裁判の中で、本件の車両に技術的な欠陥があると主張されていますが、当局要請に基づく調査協力の結果、車両に異常や技術的な問題は認められませんでした」と反論している[45]。そもそもフットブレーキは油圧による機械的動作であり、電子制御は全く関与しない。
弁護士のコメント(1)[編集]
第一回公判の飯塚の証言について八代英輝弁護士は、無罪を主張するのは本人の権利とするが、車の不備を主張するのは人ごとの供述であり、自分自身と向き合うべきであると指摘した[46]。本村健太郎弁護士は弁護人との打ち合わせにより考えた可能性はあるが、「記憶にない」というのは正しい言い方であるとした[47]。自分の記憶ではこうだったと供述したからである。 元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は、「有罪になる」と断言したうえで、遺族の処罰感情が厳しいため示談ができなければ、禁錮3年6月から4年の求刑となり、判決は禁錮3年の実刑判決が予想されるが、これに執行猶予3年が付く可能性があるとした[48]。実際は#地裁判決のとおり。
若狭弁護士のコメント(2)[編集]
元東京地方検察庁特捜部副部長の若狭勝弁護士は、2021年7月15日の論告求刑について、高齢で事故が想定されるところ、あえて運転している。示談が出来ておらず、反省の態度もないので、一般的な事例からみても重い求刑となっている。禁錮5年から6年の判決が予測できるが、判決が確定しても高齢を理由として、刑務所行きは一時免除される可能性もあると語る[49]。
遺族の記者会見[編集]
2019年7月18日午後に動画を公開した被害者Aの夫Cが記者会見を開いた。会見では加害者の飯塚に厳罰を求める署名活動を行うことも発表した。
2019年8月4日、飯塚の事故のために死亡したAの夫Cが、飯塚に対する厳しい刑事処分を求めて現場近くの公園で署名活動を行なった。Cによると、郵送を通じて既に8月4日時点で5万人分以上の署名が集まっており、今後、東京地検に提出する予定という。Cは「しかるべき処罰を受けさせることが(事故の)再発防止につながると思う」と語っている。
2019年10月12日、飯塚が書類送検されたことを受けて遺族のCは「やっとスタートラインに立った。(飯塚には)2人の死に向き合ってほしい」と語気を強めた。また事故から書類送検までの7か月間は「苦しみや悲しさと向き合い、葛藤し続ける日々だった」と振り返り「2人(妻Aとその娘B)には(飯塚の)書類送検について特に報告しておらず「いつも通り『愛している』『ありがとう』と伝えた」という。また「(飯塚が今後は)当然起訴されると思っている」「(飯塚が事故について)否認しているとしたら裁判の場で明らかになる」と話し、被害者参加制度で裁判に参加する意思も示した。そして「(被害者である)2人や社会のためにも軽い罪で終わらないようにできることをやり、少しでも交通事故が減るように活動していく」と決意を語った。また、高齢ドライバーの運転について「東京や地方で事情が違う」とした上で「家族で話し合ったり、技術的な改善を進めたりしてほしい」と願った。
2020年2月6日、飯塚が在宅起訴されたことを受けて、遺族の男性Cは「ようやく一歩が踏み出せる」と話している。
被害者遺族に対する誹謗中傷[編集]
遺族の男性Cは、2022年3月11日にSNSで「金や反響目当てで、闘っているようにしか見えませんでした」と誹謗中傷された。3月16日、警視庁はCからの被害届を受理して侮辱容疑で捜査を開始。3月19日午前に愛知県に住む20歳代の男の自宅を捜索し、携帯電話などを押収した。また、任意で事情を聴き、男が関与を認める供述をしたとされる。
影響[編集]
事故後未だに飯塚が逮捕されていないため、ネット社会などでは上級国民ならば逮捕しないのかと議論が沸騰している。なお、飯塚以後に多くの重大事故が起きており(神戸三宮バス暴走死傷事故・大津園児死傷事故)、これらの運転手はいずれも逮捕されているのも、飯塚と比較されている。飯塚が叙勲されていることもあり、上級国民であり叙勲者であるならば逮捕されないのかとする意見まで発生している。
一方で、この事故を契機に高齢者の運転免許返納の動きが積極的になっている。また、大手自動車用品販売店が売っているアクセルとブレーキの踏み間違いによる急発進を防止する安全装置の売れ行きが大きく伸びている。2019年10月末時点で、東京都内で自主返納した人は5万3690名に上り、既に1年間の過去最多を更新している。ちなみにおよそ8割が70歳以上であるという。
2021年6月、国土交通省は自動車事故時のアクセル、ブレーキなどの運転状況が分かる記録装置の搭載を義務付ける方針を固めた。事故原因の究明に役立てるためであり、2022年7月以降に発売する新型車が対象となる。2026年5月以降は販売済みのモデルを含む全新車(継続生産車)に拡大する方針だとされる。他に衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)が前方を横断する自転車に対しても作動するように義務化するとされ、記録装置は「イベントデータレコーダー」(EDR)と呼ばれる。これは飯塚が起こした事故で、飯塚が自分の運転ミスが原因かどうかを認めずに未だに争っているためで、国土交通省は義務化することで操作ミスや車両の不具合など事故原因を特定しやすくするため判断したという。
飯塚幸三と池袋乗用車暴走死傷事故を題材としたとみられる作品[編集]
- 怨み屋本舗WORST(栗原正尚・グランドジャンプ連載。2019年15号 - 21号で「上級国民」1 - 7として連載された。単行本怨み屋本舗WORST「第10巻」に掲載) - 飯塚のモデルと見られる「勝居巌」が同乗している孫娘・紬が運転する自家用車で通行人を何人もはね殺し、巌とその息子・聡明が上級官僚であることからその事故をもみ消すというストーリー。
- ミナミの帝王(天王寺大原作・郷力也漫画・週刊漫画ゴラク連載。2020年2月28日号 - 終了) - 飯塚のモデルと見られる「柳原徹平」とその妻・「柳原絹子」が大阪市で信号無視して多数の人間を死傷させる事故を発端とするストーリー。この夫妻には息子も存在する設定となっている。
注[編集]
- ↑ (2)車線変更を繰り返し加速 被害者ら「厳重な処罰を」産経新聞,2020年10月8日
- ↑ 時速100キロ近くで暴走か 池袋10人死傷日本経済新聞,2019年4月24日
- ↑ 『週刊文春』(2019年5月30日号)では、逮捕はあくまで捜査の一手段で懲罰ではなく、証拠隠滅や逃亡の恐れが無いと判断した場合は逮捕しないのが原則で、車やドライブレコーダを押収済みで飯塚自ら事故を起こしたことを認めているため、逮捕していないという。ただしこれほどの事故を起こした場合は基本は現行犯逮捕である。ただし加害者が入院した場合は、逮捕できない。たとえば京都アニメーション放火事件の放火犯は大事件にも関わらず、入院中のため逮捕されていない。
- ↑ 。加害者が入院した際は、逮捕できないことになっているからである。なお、この事故から間もない4月21日に神戸市のJR三宮駅付近で発生したバスによる歩行者の暴走死傷事故では、64歳のバス運転手は自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)容疑で現行犯逮捕されている(神戸三宮バス暴走死傷事故)。
- ↑ a b c d e 『週刊文春』(2019年5月30日号)
- ↑ 元院長起訴求め、署名提出=地検に39万人分-池袋暴走共同通信、2019年09月20日
- ↑ 週刊FLASH 2019年10月22・29日号
- ↑ a b c d e f g h i j k l 『実話BUNKAタブー』2019年7月号
- ↑ パーキンソン症候群罹患か下野新聞、2019年10月19日
- ↑ 津市の4人死亡事故、二審も懲役7年 危険運転否定日本経済新聞、2021年2月12日
- ↑ 三重・津市の4人死亡事故、検察が上告断念 危険運転退けた判決確定中日新聞、2021年2月26日
- ↑ “池袋暴走”飯塚幸三被告に禁錮7年文春オンライン,2021年7月29日号
- ↑ a b 《池袋暴走事故》無罪主張の飯塚被告、傍聴した記者が目撃した「信じられない態度」週間女性PRIME、2020年10月27日号
- ↑ 1審無罪の被告、2審で異例の有罪主張産経新聞、2020年10月6日
- ↑ 被告代理人は、罪を償って人生を終わらせたい。有罪の判決をお願いするとした。ただし、被告の意思確認は慎重にするよう、群馬県弁護士会の意見が出されている。控訴審では加害者側が私選弁護人に変更しており、私選弁護人の場合は経済的な負担は大きくなる。
- ↑ この事故はタクシー運転手が飯塚とさほど変わりない高齢者であり、しかも飯塚と異なり死者が出ていない(負傷者にしても飯塚より少ない)にも関わらず、警察は現行犯逮捕したため、これに対して再度、飯塚の事故と比較される対象となってしまった。
- ↑ ひき逃げなので飯塚よりある意味で悪質性は高い。なお87歳の男は税理士であった。
- ↑ 池袋母子死亡暴走事故 加害者はなぜ逮捕されないのか…「行列」北村弁護士に聞く
- ↑ 役所の年金が高めと言っても、これほど高額になることはない。誤報であろう。
- ↑ a b 厳罰求める署名29万人に
- ↑ 千野志麻や平岡卓など、逮捕前に公開された例はいくらでもあり、異例ではない。
- ↑ https://search.yahoo.co.jp/amp/s/hochi.news/amp/articles/20190520-OHT1T50063.html%3Fusqp%3Dmq331AQQKAGYAdm5m-_7nL6bc7ABIA%253D%253D
- ↑ https://news.yahoo.co.jp/byline/tarobando/20190525-00127264/
- ↑ https://www.impression-company.com/entry/iidukashi-licence-erase
- ↑ 池袋暴走事故「飯塚幸三容疑者」の自宅は“上級”警護中SMART FLASH,2019年10月23日
- ↑ 捜査関係者「ネット上の批判は把握している」産経新聞,2019年4月23日
- ↑ 独自 池袋事故「フレンチに遅れる」テレビ東京,2019年11月12日
- ↑ 逮捕の60代男性、入院で釈放産経新聞,2019年11月11日
- ↑ 池袋暴走事故、飯塚幸三容疑者が「逮捕」でなかった理由ニッポン放送,2019年11月12日
- ↑ 池袋暴走事故飯塚被告に禁錮7年求刑日刊スポーツ,2021年7月15日
- ↑ 元院長を在宅起訴東京新聞,2020年2月7日
- ↑ 池袋乗用車暴走事故 飯塚被告「車の不具合、再起動で元に戻った」東京新聞,2021年6月21日
- ↑ 「怒り理解も過失ない」飯塚被告、直接質問の遺族に時事通信,2021年06月21日
- ↑ 池袋暴走、禁錮7年求刑時事通信、2021年7月15日
- ↑ 元院長、禁錮5年の実刑確定 控訴せず、収監の見通し時事通信,2021年09月17日
- ↑ 平成27年秋の叙勲受章者が決定されました国立研究開発法人産業技術総合研究所,2015年11月4日
- ↑ 平成27年秋の叙勲内閣府
- ↑ 勲章制定ノ件太政官布告第五十四号,明治8年4月10日
- ↑ 飯塚幸三氏の勲章「瑞宝重光章」が剥奪されていたBiglobe ニュース,2021年9月29日
- ↑ 勲章褫奪令
- ↑ 「民事も真実を知る手段の一つ」東京新聞,2021年2月9日
- ↑ 東京都豊島区東池袋で発生した事故に関する一部報道について株式会社クボタ,2019年4月22日
- ↑ 池袋暴走運転手が「理事長」務める団体 事故後に辞任の申し出J-CASTニュース,2021年7月16日
- ↑ 一般社団法人 日本淘道会
- ↑ 池袋暴走事故でトヨタが異例コメント朝日新聞、2021年6月21日
- ↑ 八代英輝弁護士報知新聞、2020年10月9日
- ↑ 本村健太郎弁護士報知新聞、2020年10月8日
- ↑ 「無罪」主張の飯塚幸三被告J-Cast ニュース、2020年10月9日
- ↑ 若狭勝弁護士、飯塚幸三被告は反省の態度なく求刑重くなったスポーツ報知,2021年7月16日