ドライブレコーダー
ドライブレコーダー (Drive Recorder) とは、自動車の前方または後方の映像を録画しておく装置のことである。通称・略はドラレコ。基本的にはビデオカメラそのものであり、対候性や耐熱性が高められているカメラである。カメラの位置は、前方(フロントカメラ)は必須で、後方(リアカメラ)は任意となる。
概要[編集]
フロントガラス上部やリアガラス上部などに取り付けられることが多く、広角レンズにより広い視野角で録画をすることができる。そのため、万が一交通事故が起こった場合、進行方向、おおまかな速度など、事故の当事者同士の話が食い違う場合などで、事故の状況を客観的に把握するために、重要な役割を果たす。
国内メーカーのほとんどの機種は運転中の常時録画とイベント録画(衝撃検出)機能を備えており、電源を常時供給できるオプションを装着することで駐車時を含めて24時間録画し続けることができる[注 1]。ナビ連動タイプやスマートフォンなどと接続して操作するタイプはモニターレスの機種も多いが、一般的には前方カメラ用ドライブレコーダーの部分には、レンズの角度位置などの実際の映像を確認できるように、モニター、モニターパネルが付いている。ただし、走行中の操作や注視は非常に危険であるため、運転前などで停車時に画角の調整を済ませておく必要がある。
近年問題化しているあおり運転に対する抑止力にも成り得るとされ、自家用車への設置も増加している。車外だけでなく、車内の映像も記録できるタイプもある。映像には、機種により日時・速度等が文字スーパーとして記録される。 タクシー、トラック、バスといった営業用自動車にはかなりの割合で装着されている。特にタクシーの場合は車内を録画するタイプの物が装着されているケースが多い(タクシー強盗などへの対策として)。
事故がいつ起こるか分からないため、録画は常に行われる。そのため、記録用のmicroSDカードの読み書き寿命を超える例も見られ、定期的な点検や、高耐久型のmicroSDカードへの交換が勧められている[注 2]。
記録方式として、常に録画データをmicroSDカード等に書き込み続ける(容量が満杯になった時点で古いデータを書き換えながら記録する)常時録画タイプ、衝撃を検知し前後の映像のみをmicroSDカードに書き込むイベント録画タイプがある。後者は、他車同士の事故等では映像を記録できない。最近の機種では常時録画とイベント録画、駐車時の常時録画の録画領域をあらかじめ設定することで常時録画とイベント録画を両立しているものも多い。
ドラレコ本体でも簡易的な再生はできるものの、通常はパソコンなどに接続して再生することが多い。なお、ドラレコに使用されているmicroSDカードは定期的なフォーマットが推奨されており、保存しておきたい録画ファイルがある場合は事前にデータを転送しておくほうが良い。保存形式はmp4ファイルであることが多く、パソコンなどでの再生も容易である。
純正採用[編集]
日本国内においてドライブレコーダーの装着率は2019年の時点で4割後半[1]と、かなりの普及率を見せている。一方で自動車メーカーにおいては後付けタイプのドライブレコーダーをオプション装備として新車装着するなど、安全装置(ADAS)などと一体化したドライブレコーダーの採用には消極的であった。2022年に発表されたトヨタ・クラウンにおいてADAS一体型のドライブレコーダーが採用されたことをきっかけに各社で内蔵型ドライブレコーダーの普及が進むとみられている。一方で国内でドライブレコーダーが内蔵されたプリウスにおいても、訴訟社会といわれている北米においてはドライブレコーダーレスとして販売されている[2]など、需要と訴訟リスクを見極めたうえで搭載していると思われる。
内蔵型ドライブレコーダーの利点は後付けの配線や本体がなく、見た目がすっきりしているという点がある。それ以上に記録媒体により大きく信頼性の高いものを利用できるようになるため、データ損失や劣化が今以上に抑えることができ、操作もインパネ上で出来るようになるため操作性の向上が見込まれている。
類似装置[編集]
類似するものとしてイベントデータレコーダー(EDR)と呼ばれるものが存在する。
これはドライブレコーダーと違い、エアバッグの制御ユニットに内蔵される「ブラックボックス」のような装置であり、衝突までのアクセル・ブレーキやステアリングの舵角の状況などが記録されている。乗用車にも搭載されていて、2022年7月に新車での搭載が義務化された。一説によると、とある暴走事故が原因となり義務化に至ったとか。
このEDRに似た装置として、走行速度やエンジン回転数を記録するタコグラフもトラックやタクシーなどの業務車両を中心に広く使われている。特にエンジン回転数を記録できるものは「レボタコ」と呼ばれる。
撮影された動画の利用[編集]
ドライブレコーダー等で録画された映像がYouTube等の動画サイトで公開されることもある。事故の現場のみならず、煽り運転の現場、速度取締りなどの動画が公開されている。
変わり種では台湾で発生したトランスアジア航空235便墜落事故の様子がドライブレコーダーに収められており、この映像は広く知られた。
取り付け位置[編集]
ドライブレコーダーの前方録画用カメラ[注 3]をフロントガラスに取り付ける場合、フロントガラスの上端から20%以内の位置、もしくは下端から150mm以内の位置に取り付けることが可能である(車内に限られる)。それは、運転者の視界や運転操作の妨げにならないようにするためである。また、運転席から見てルームミラーの陰になる位置に取り付けることも可能である[3]。これらの位置に加え、ワイパーの作動範囲内に取り付ける必要があることからガラス中央上部、もしくはルームミラーの陰に取り付けられることが多い。ダッシュボード上に取り付けることも不可能ではないが、運転席からの視界を確保するための制限[4]に引っかからないようにする必要がある点、低い位置からの撮影になるため事故の全容がわかりにくい構図になってしまうことから、簡易的なものを除いて設置されることは少ない。
ドライブレコーダーを取り付ける際、取り付け前に用意するものはやわらかい布式メジャー (測定機器)と養生テープ、はさみ、スマホカメラ、きれいなクロスである。できれば脱脂用の無水エタノールがあるとより捗る。
ドライブレコーダーを取り付ける前に、スマホカメラがあれば、スマホカメラで録画撮影したとき、ドライブレコーダーの取り付け位置や、ドライブレコーダーのレンズの角度、カメラレンズの位置、ボンネットの長さを事前に確認・記録できる。スマホカメラの設定では、画角の広さは最大広角である0.6x、サイズ・ピクセルの比率は16:9に設定して録画する。
普通自動車の場合、前方のドライブレコーダーのレンズの上下角度は、画面の下にボンネットの縦全体が映るように向ける。参照ページは、コレを参照。
一般的なドライブレコーダーは両面テープでフロントガラスに接着するため、接着面のクリーニングと脱脂が重要となる。ここで手を抜いてしまうと夏の炎天下で接着面が剥がれてしまうこともある。ルームミラーに取り付けるタイプはそういったこともなく、20%の制約もないため取り付けが比較的容易である。一方、経年劣化で調節機構が緩んだルームミラーの場合はドライブレコーダーの重量で傾いてしまうこともあるため、取り付け車両のコンディションを確認の上で取り付けるドライブレコーダーを選定する必要がある。