デマンドバス

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デマンドバスは、利用者の要求 (demand) に対応して運行する形態のバス(乗合バス)である。オンデマンドバス(On-Demand Bus, 和製英語)ともいう。

本項では、乗合タクシーの形態で運行されるデマンドタクシーについても記述する。

概要[編集]

デマンド型交通en:Demand responsivetransport, DRT)方式により運行されるバス
オンデマンド方式による公共交通機関の運行は、過疎地をかかえる地方自治体などで注目されている。この場合、バスでなく(デマンド対応型の)乗合タクシーなどとして導入されることが多く、これらを総称してデマンド型交通と呼ぶことがある。
一方で住民サービスとして税金から支出している都合上、事前登録が必要な路線では登録資格が当該自治体の住民に限定されている場合も多い。この場合、不特定多数の利用が不可なことから、厳密には公共交通機関とは呼べない。
また、アクセスバスを走らせるほどの需要がない都市と空港を結ぶアクセス手段として用いられる例も多い。

歴史[編集]

日本[編集]

日本では、1972年6月27日に阪急バス富士通いすゞ自動車との共同開発で大阪府豊能郡能勢町に初めて導入した[1][2]1997年10月に廃止[3])。

コール・モービル・システムを導入したデマンドバスも阪急バスが最初であり、東京芝浦電気三菱自動車工業と共同開発で、大阪府箕面市1975年5月10日に運行を開始した[4][5]。1985年7月3日に廃止[3]、一般路線化された。運行は阪急バス茨木営業所が担当。

1975年12月24日には、東京急行電鉄(現:東急バス)が同社初のデマンドバスとして「東急コーチ」自由が丘線を運行開始。三菱自動車工業(現:三菱ふそうトラック・バス)製の中型貸切車を使用し、三菱グループとデマンドシステムを共同開発した。以降、コーチ路線は各地に追加されたが、2001年前後にデマンドルートを廃止し一般路線化された(「東急コーチ」の名称は引き続き使用)。

詳細は「東急コーチ」を参照

1999年10月15日には、京浜急行電鉄(現:京浜急行バス)が「京急ポニー号」を運行開始。京急では初のデマンドバス路線で、運行開始にあたり「東急コーチ」を運行していた東急バスの協力を仰いでいる。

詳細は「京浜急行バス鎌倉営業所#京急ポニー号」を参照

高度道路交通システム (ITS) を導入したデマンドバスは、高知県2000年運行開始の中村まちバスが最初とされる[6]

詳細は「中村まちバス」を参照

東京大学2007年9月にデマンドバスサービス「コンビニクル」を開発し、大阪府堺市(実験終了)、千葉県柏市山梨県北杜市などで実証実験を行っている。WebをベースとしたASPサービスとしてオンデマンドバスを提供する。システム導入・更新時のコスト低減が期待され、デマンドバスの運行コスト低減の面で期待される。

2018年には、自動車部品メーカーのアイシンが、過疎地向けデマンド交通システムのチョイソコを開発。路線バスが廃止された地域で導入が広がっている。

問題点[編集]

利用者のいない停留所を経由しないことから運行の効率化に結びつく利点があるが、目的地までの所要時間が他の利用者の都合によって変わることがあり、利用者からすると乗ってみるまで目的地到着時間が分からないという欠点がある。また、事前にバス迂回運行を申し込むシステムでは、予約の連絡に必要な施設や場合によってはオペレーターの人件費が掛かるため、一般の路線バスに比べて運行経費は高くなると考えられる。

一方で、過疎地をかかえる地方自治体が運営・委託のものは、住民サービスとして税金から支出している都合上、事前登録が必要な路線では、当該自治体の住民に登録資格が限定されている場合も多く、この場合、近隣自治体の住民や帰省客、観光客などの不特定多数の人々は、一般のタクシーやマイカー、レンタカーなどに頼らざるを得ず、名勝等での観光業の衰退に繋がることもある[注釈 1]

日本での採用例[編集]

日本の乗合タクシー運行事業者一覧#「路線不定期運行」の事業者」、「日本の乗合タクシー運行事業者一覧#「区域運行」の事業者」も参照

北海道[編集]

東北地方[編集]

青森県
  • 弘南バス
    • 黒石〜温川線平川市切明地区) 2001年12月より
      • 切明地区から乗車する際は、前日夜までに集落の世話役を通じて担当営業所へ電話予約することにより、切明経由で迂回運行する。なお、切明地区で降車する場合は乗車時に乗務員に申告する。予約のための配車機器を設置せず、配車コストを抑制している。
宮城県
  • 柴田町乗合タクシー
    • 柴田町には、バス路線がないことから、デマンド型乗合タクシーを運行している。
福島県
  • おだかe-まちタクシー(福島県商工会連合会小高町)
    • 2001年6月1日より運行を開始した、福島大学経済経営学類教授である奥山修司と、NTT東日本日本ラッドが連携し実現したドアtoドアを初めて可能とするシステム化されたデマンドバス。現在同システムは全国で55自治体に展開されており[7]、ICTを活用したデマンド交通としては日本最大のシェアを誇る。(2011年6月現在)
  • 西会津町民バス
    • 2012年4月1日より。

関東地方[編集]

群馬県
栃木県
茨城県
千葉県
埼玉県
  • イーグルバス
  • 深谷市コミュニティバス「くるリン」
    • 2010年4月1日より、需要の少ない郊外地域の循環6路線を予約制のタクシー車両運行に転換。深谷タクシーに委託。
  • 川越市デマンド交通「ときも号」
    • 2013年、2014年に市内3エリアの路線バスの代替として実証運行を行っている。市内タクシー事業者が合同で、予約受付、配車指示等を行っている。2014年度の実証運行からはICT(コガソフトウェア株式会社孝行デマンドバス」)を活用し、移動サービスを展開している。
  • 本庄市デマンド交通「はにぽん号」・「もといずみ号」
東京都
神奈川県

北陸・甲信越[編集]

山梨県
長野県
  • 飯田市遠山郷高校通学支援乗合タクシー(高校生限定)
  • いいだ愛のりタクシー(飯田市下伊那郡
新潟県
富山県
  • 富山地方鉄道バス
    • 43・44系統の「月岡西緑町」停留所(2002年度より試験運行、その後本格運行)
  • 大山コミュニティバス(富山市
    • 一部の路線・便・区間で実施
  • 大沢野シルバータクシー(富山市)
    • 「シルバータクシー利用証」保有者限定
  • 大庄地区デマンドタクシー(富山市)
    • 事前の会員登録が必要。2012年10月1日から2013年3月31日までの試行運行
  • 魚津市民バス
    • 一部の路線・便・区間で実施
  • 射水市コミュニティバス
    • 新湊庁舎・本江線の「本江道番」停留所(2009年5月20日より)
  • 射水市デマンドタクシー
  • 南砺市営バス
    • 一部の路線・便・区間で実施
  • 小矢部市乗合タクシー
石川県
福井県

東海地方[編集]

静岡県
愛知県
岐阜県
三重県
  • 玉城町元気バス
    • 2008年11月4日から東京大学が開発した「乗り合い型交通システム コンビニクル」を採用し、共同で実証実験を開始。
    • 玉城町から運行・管理・運営を玉城町社会福祉協議会へ委託。(平成25年度事業費 1,900万円)
    • 運行エリアは町内で、利用は町民に限る。利用者は事前に会員登録が必要となり、氏名・住所・連絡先の他、身体的の状態など生活機能面も登録される。(このデータが、「ICTを利活用した安心・元気な町づくり事業」による外出支援、見守りにも活用される)
    • 運用時間は、9時〜17時で、年末年始以外運行。町内を3台の9人乗りワゴン車が走る。予約受付は30分前から2週間先まで予約可能。予約方法は電話での予約以外に、インターネット、ケータイ、スマートフォン(独自開発)、タッチパネル(43カ所設置)からもできる。利用料は無料。
  • 伊勢市 おかげバスデマンド
  • 伊勢市 沼木バス予約便

近畿地方[編集]

滋賀県
京都府
  • 西日本ジェイアールバス福知山営業所
    • 2007年3月1日より一部ルートで導入。2012年4月1日より一部ルート廃止・定期運行化。同社では「オンデマンドバス」と称した。
  • 京丹後市営バス
    • 豊栄竹野線、宇川線
      • 2014年7月14日より実証運行を開始。同市のNPO法人気張る!ふるさと丹後町が予約と運行業務を受託。
  • 久御山町デマンド乗合タクシー「のってこタクシー
    • 久御山町民限定で事前に利用登録が必要。
奈良県
大阪府
  • 阪急バス
    • 日本で初めてデマンドバスを、過疎地域型・都市(住宅地)型ともに本格的に導入した事業者。当時はかなり先進的なシステムとして注目され、2000年以前は運輸関係を中心に多くの雑誌に取り上げられた。
      • 大阪府能勢町(能勢デマンドバス)、日本初(1972年-1997年)。
      • 大阪府箕面市阪急間谷住宅(間谷ミディバス・コールモービルシステム) 1975年5月10日より。現在は一般路線化。
  • 大阪市交通局
  • 大阪市平野区
    • 2013年に廃止された赤バス区役所〜南巽の代替として予約制コミュニティ交通(福祉輸送)を1年間限定で実施。
  • 堺市乗合タクシー
    • 2013年6月末をもって廃止されたコミュニティバス(堺市ふれあいバス・みはらふれあい号)の代替として、2014年3月から公共交通空白地域で運行[12]
  • 大阪市生野区平野区
兵庫県
  • 朝来市コミュニティバス「アコバス」(神姫グリーンバスが予約・運行業務を受託)
    • 2007年1月より運行開始。11路線中の2路線(朝来市生野町内を走るコース)について、事前に電話で予約することにより最寄の停留所へ行く方法を取っている。
      予約がない場合には運行されない。これにより細かなルート設定ができ、便数を増やせる上に全地区に停留所を置けるメリットがある。

四国地方[編集]

高知県

  • 中村まちバス四万十市
  • 空港乗合タクシー
  • 高知市デマンド(予約)型乗合タクシー高知市
    • エリア型
      • 鏡あい愛号(鳥越 - 川口 - 鏡地域)
      • 土佐山かわせみ号(みづき坂中央 - 土佐山地域、小坂峠 - 土佐山庁舎 - 土佐山地域)
      • 久重かわせみ号(土佐山地域 - 小坂峠 - 久重地域)
    • 路線型
      • 円行寺かわせみ号(みづき坂中央 - 円行寺 - 土佐山地域)
      • はるちゃん号北ルート(新川通 - 春野高校前 - 春野運動公園 - 内ノ谷 - 団地南口)
      • はるちゃん号南ルート(弘岡上 - 新川通 - 新川 - 秋山 - JAはるの - 諸木郵便局 - 長浜 - 団地南口)
      • しおかぜ号(JAはるの - 春野庁舎 - 新川通 - 新川 - 仁ノ - 甲殿 - 長浜 - 団地南口)
      • みませ号(団地南口 - 長浜 - 東塩谷公民館 - 御畳瀬漁協 - 渡船場 - 塩谷 - 長浜 - 団地南口)
      • うらど号(桂浜 - 浦戸 - 藻洲潟または南地 - 長浜 - 団地南口)
      • 予約型医大病院乗合タクシー一宮線(刑務所前 - 蒲原団地 - 医大病院 - 布師田 - 一宮駅前 - 一宮バスターミナル)
      • 予約型医大病院乗合タクシー美術館通線(美術館通 - 大津バイパス - 領石通 - 土佐大津駅 - 中島 - ひまわり幼稚園 - 医大病院

中国地方[編集]

広島県
岡山県
  • 真庭市コミュニティバス
    • 22系統(八束ルート)
    • 23系統(川上ルート)
    • 28系統(西河内ルート)
    • 30-2系統(振興局・湯原ルート(コミュニティバス))
    • 33系統(福谷・寺河内ルート)
    • 34系統(二ノ氏ルート)
  • 瀬戸内市デマンドバス「モーモーバス」(瀬戸内市牛窓地域)
    • 2012年7月1日から2014年3月まで実証運行。自宅から目的地までのドアトゥドアで送迎する。
    • 運行事業者は東備バス株式会社で、瀬戸内市の指定管理者として、バスの運行、管理、運営を行う。
    • 利用者は事前に利用登録し、予約を行うことでバスに乗車できる。運行時間は8時〜16時。予約は1ヶ月前から当日30分前まで受付可能。1日に何回乗っても300円。9人乗りワゴンタイプ2台で運行。車両には手摺やステップを改造したものを使用し、高齢者の乗り降りに配慮している。予約時は希望する出発時刻か到着時刻を指定できるため、路線バスとの乗り入れも容易に行える。瀬戸内市商工会との連携により、モーモーバス利用者は商店等で割引サービスが受けられ、地域活性化も図る。
    • ICT(コガソフトウェア株式会社孝行デマンドバス」)を活用し、地域ニーズに即した生活交通ネットワークの構築を積極的に展開している。
  • 玉野市デマンドタクシー「シータク
鳥取県
島根県
山口県
  • 福岡空港アクセス便
    • 山口市・宇部市内〜福岡空港(山口第一交通)

九州地方[編集]

以下の各要件に該当するデマンドバス

  • 始発時刻もしくは終着時刻が決まっている
  • 所定の停車地でのみ乗降可能
  • 利用者登録なしで利用可能、もしくは誰でも利用者登録可能
名称・愛称 運行主体 主な運行区間・区域 備考
福岡県
のるーと 西日本鉄道 福岡市東区アイランドシティ地区
福岡市西区壱岐・野方地区
宗像市日の里地区
板屋脇山線 飯倉タクシー 脇山 - 板屋(福岡市早良区
中ノ島公園(那珂川市) - 板屋
福岡市による支援あり
大字西地区乗合タクシー 飯倉タクシー 福岡市早良区(内野 - 西) 福岡市による支援あり
あいのりタクシー 朝倉市 朝倉市内各地
おでかけ交通 ひまわりタクシー 中谷 - 平尾台北九州市小倉南区 定期便運行日以外の日に予約制で運行
なかよし号 中間市 中間市街地 - 垣生・下大隈
中間市街地 - 砂山・底井野
小塩・妹川地区のりあいタクシー うきは市 うきは市民センター - 小塩地区
うきは市民センター - 妹川地区
有明佐賀空港リムジンタクシー 有明佐賀空港活性化推進協議会 福岡県南部7市町 - 佐賀空港
佐賀県
有明佐賀空港リムジンタクシー 有明佐賀空港活性化推進協議会 佐賀県17市町 - 佐賀空港
長崎県
鷹島のりあいタクシー 松浦市 鷹島島内各地と船着場を結ぶ
熊本県
まるおか号 球磨郡山江村 人吉市街地 - 山田
人吉市街地 - 万江
大分県
日田市営バス 日田市
鹿児島県
瀬戸内海浜バス 南部交通 古仁屋 - 清水 - 運動公園
古仁屋 - 節子 - 嘉徳
古仁屋 - 蘇刈 - ヤドリ浜
(いずれも大島郡瀬戸内町
左記の区間のうち末端部のみデマンド運行
沖縄県
おでかけなんじい 南城市 南城市内各地
国頭村営バス 国頭村 辺士名 - 比地
辺士名 - 奥
一部の便は予約なしの定時定路線運行

関連項目[編集]

脚注[編集]

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注釈
  1. 現に鉄道以外の交通手段が平日の通院需要中心のふれあいバスのみになり、イベント時以外の土曜はオンデマンド予約のバスのみになった浜松市天竜区佐久間町中部地区では、佐久間ダム観光に対応して作られた施設が閉鎖され、飲食店も閉業して1件も無くなっている。
出典
  1. 谷沢保 (1972). “バス経営における決断と実行-ディマンド・バスの意味をきく―”. 運輸と経済 32(9): 42-47. 
  2. 辻 弌朗 (1972). “能勢町デマンドバスシステムについて”. トランスポート 22(9): 32-36. 
  3. a b 『ハートフルネットワーク : 阪急バスこの15年 : 阪急バス株式会社創立75周年記念誌』 阪急バス株式会社、2002年
  4. 谷沢 保 (1975). “デマンドバスの新方式―阪急間谷団地バス―”. 高速道路と自動車 13(10): 53-58. 
  5. 辻 弌朗 (1976). “バス最前線からの報告―能勢町デマンドバス・箕面市間谷コールモビルシステ ム―”. 運輸と経済 36(6): 39-45. 
  6. 砂田洋志「高知県四万十市の地域公共交通システムの調査報告 : 中村まちバスの調査報告」、『山形大学紀要. 社会科学』第46巻第1号、山形大学、2015年7月、 121-138頁、 ISSN 0513-4684NAID 120005713169
  7. 全国デマンド交通システム導入機関連絡協議会
  8. 「電話でバス」を運行しています - みどり市(2016年5月31日更新/2017年2月1日閲覧)
  9. 相乗りタクシー(デマンド交通)”. 新潟市北区. 2020年9月5日確認。
  10. 三条市デマンド交通”. 三条市. 2020年9月5日確認。
  11. 清水プラント3を拠点とするバス路線再編社会実験について - 福井市
  12. 堺市乗合タクシー” (日本語). 堺市. 2020年6月12日確認。
  13. Osaka Metro Groupによる大阪市で初めてのAIオンデマンド交通の社会実験が始まります” (日本語). 大阪市. 2020年6月12日確認。
  14. オンデマンドバスの社会実験を2021年3月30日から開始します” (日本語). 大阪市高速電気軌道. 2020年6月12日確認。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]