クローズドドアシステム

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クローズドドアシステムとは、主に路線バスにおいて停留所単位で乗降制限を設ける制度である。

概要[編集]

中長距離を運行する高速バスで盛んに設定されており、乗車専用停留所・降車専用停留所が設定されている。

高速バスだけでなく、一般路線バスでも複数事業者が乗り入れ運行を行っている区間で、一部事業者が乗車専用・降車専用としている他、バスターミナル・主要駅行の系統で終点の一つ手前の停留所を降車専用としている場合がある。

元々は、民間・公営バス事業者の路線設定過程で、エリア外で他者の権益を侵さないために暗黙で申し合わせた運行ルールだったが、そのルールに沿って設定された高速バスでは、結果的に長距離利用をしたい乗客の乗車機会が、短距離利用を希望する乗客によって奪われることがない効果を得ている[注 1]

なおクローズドドアシステムはバスに限らず、鉄道でも設定事例があるが一部のホームライナーや観光列車・臨時列車に限られている。

具体例[編集]

高速バス[編集]

乗車側で乗客の乗車機会を奪うことがない様にする効果が得られる他、降車側もダイヤに縛られず運行できるというメリットがある[注 2]
阪急バスが、1980年代半ばに中国自動車道経由の高速バスで採用してから[注 3]、拠点間直行ダイヤや運賃プール精算とともに高速バスのデファクトスタンダードになっている。

路線バス[編集]

路線バスの場合、バス会社間の暗黙の縄張りルールから採用されることがある。

神姫バス 明石駅西神中央駅(現43,44系統の前身)
1987年開業。従来からの神姫バスの運行エリアである明石市西区玉津町、平野町では乗降とも扱いを行う一方、西神ニュータウン内は神戸市営バスの営業エリアとされたため、北行が降車専用、南行が乗車専用とすることで西神ニュータウン内の利用ができない様になっていた。数年で解消され、現在は全区間で乗降とも可能になっている。

鉄道[編集]

多くの場合、長距離列車は急行・特急料金を徴収し、近距離を割高料金にすることで短距離客が利用しにくい様にしてきた。近年、数は少ないが有料着席列車を中心に増加傾向にある。

京急「モーニング・ウィング」「イブニング・ウィング」
全ての駅で乗車可能である一方、起点付近では降車できない様になっている。郊外地域の三浦海岸→上大岡の利用はできないが、逆方向は可能。
西武拝島ライナー
夕方運行の拝島行は全ての駅で乗車可能である一方、起点付近の高田馬場駅では降車できない様になっている。2023年3月新設の朝運行の西武新宿行は、小平以西で乗車限定、高田馬場駅で降車限定となる。
東京メトロ西武S-TRAIN」(平日)
小手指 - 練馬間、飯田橋 - 豊洲間の利用は不可で、練馬 - 飯田橋間を含むルートでなければ乗車できない。
横浜高速鉄道S-TRAIN」(休日)
元町・中華街 - 横浜間の利用は不可。東急・メトロ・西武線内は乗降ともに可能だが、池袋に限り上下とも降車専用になっている。
東武東京メトロTHライナー
霞ヶ関 - 久喜間で採用。霞ヶ関 - 上野間、新越谷 - 久喜間の利用は不可で、上野 - 新越谷を含むルートでなければ利用できない。ただし、霞ヶ関 - 恵比寿間はフリー乗降。
東京メトロ千代田線「ロマンスカー
表参道 - 北千住間の利用は不可。東京メトロの駅からは、小田急成城学園前 - 表参道間を含むルートでなければ利用できない。
京王京王ライナー
新宿発は明大前で降車不可。新宿行は府中・京王永山以遠の駅は乗車のみで明大前では降車のみで乗車不可。
京阪「ライナー」
全ての駅で乗車可能である一方、起点付近では降車できない様になっている。京都都心部の出町柳→七条、大阪都心部の淀屋橋→京橋の利用はできないが、逆方向は可能。

[編集]

  1. 一方、都市部から離れた区間では、少ない路線バスの合間に空席の高速バスの運行が目立つことがある。
  2. 例えば、神戸淡路鳴門自動車道上にある高速舞子バス停の場合、停車する全てのバスがクローズドドアシステム、あるいは始発・終着のバスである。そのため、南方向のバースを乗車専用、北方向のバースを降車専用で統一している。
  3. これには、原則クローズドドアシステムで運行していなかった国鉄ハイウェイバスが、姫新線の乗車実績低下で中国道の延伸区間をはじめとした全国で新設が控えられたことも影響している。
    この方法が確立する以前は、東北急行バスのようにバス事業者が合弁を組んだり、地方バス事業者を傘下にいれて暗黙のルールを回避した長距離バスを運行したり、鉄道の相互直通運転のようにローテーションで担当便を変更させるのが主流だった。