国鉄キハ181系気動車
国鉄181系気動車(こくてつ181けいきどうしゃ)は日本国有鉄道が開発、運用した特急型気動車である。
名称[編集]
本来の名称は「国鉄181系気動車」である。国鉄181系電車と混同しないようにするためにキハをつけている。
開発に至った経緯[編集]
国鉄80系気動車は速成を迫られた事情から、従来型エンジンを搭載して量産されたが、上野駅と秋田駅を結んでいた特急「つばさ」での運用で、奥羽本線の板谷峠でエンジンがオーバーヒートして、単独登板に無理があった。そのため、補機として電気機関車を借りていたが、連結時間短縮のため、補機解消を検討していた(結局、構想倒れとなり、電車化まで補機は解消せず)。
加えて、中央本線では、塩尻駅と中津川駅の間は電化工事の計画はあったものの、沿線自治体から特別急行列車の早期の運転が切望された。しかし、80系気動車を投入する場合、1エンジンのキハ82を2両連結せねばならず、勾配区間の続く同区間では急行列車よりも速度が遅くなる可能性があるため、同形式の投入はできなかった。一方、同区間では既に昼行の気動車急行列車が7往復運転され、国鉄キハ55系と同様な車体構造をもつキロ60、キハ60、さらに急行用のキハ90、キハ91、キサロ90で長期テストを行い、高出力の新型エンジンの開発が進んだ。こうして、量産への移行の目処がたったため、大馬力機関を搭載する気動車を開発。急行用で試作車の量産移行を断念して従来型との混結前提のキハ65増備とした一方、新たな特急用気動車として本系列を投入した。
概要[編集]
走行機関は500馬力のDML30HSEを採用した。自然冷却方式を採用したため、屋根上の放熱器が設置された。ただし、キハ181は軽量化のため、キサシ180は走行機関を搭載しないために放熱器の設置は省略された。車体は国鉄80系気動車とほぼ同じ構造だが、ヘッドライト周辺のライトケースが簡略化のため角形となった。車体断面も、屋根上の放熱器設置のため、卵形から、従来車と同じ構造となった。客用ドアも、台車がステップに干渉するために折戸となった。分割併合時の簡略化のため電気連結器が設置されている。
形式[編集]
- キハ181
- 運転台を持つ気動車である。軽量化のため、屋根上には放熱器は設置されておらず、走行機関のほか運転台後方に放熱機構や発電用機関を搭載するため、客室部が短い。なお、便所、洗面所の設置はない。
詳細は「国鉄キハ181形気動車」を参照
- キハ180
- 運転台のない中間車の気動車である。屋根上に放熱器が設置されている。
- キサシ180
- 走行機関、発電機関の搭載のない食堂車である。屋根上の放熱器の搭載はない。
運用[編集]
本系列は、ヨン・サン・トオで、まず「しなの」に投入され、電化後も新幹線博多開業前まで東海道本線名古屋以西で運行された1往復と名古屋発着の1往復に運用された。
次いで、前記の目的通り「つばさ」電車化前まで運用され、首都圏でも運行され、間合いの特急「あおば」で北上線でも運行された。山陽新幹線岡山開業対応で、四国や伯備線特急にも投入された。
一方、「しなの」を担当した名古屋機関区では、初期故障のトラウマから、「しなの」や「つばさ」の完全電車化後、高山本線の急行「のりくら」や紀勢本線の急行「紀州」の格上げ分に充当することを拒否り、その関係で新幹線博多開業でキハ80系で新設した「おき」に新設後わずか1年で本系列が充当され[注 1]、西日本の機関区に配置が偏る格好となった。
特急「やくも」電車化後は、従前キハ80系で運用された京都、大阪発山陰特急を置き換えた。
国鉄分割民営化後[編集]
西日本旅客鉄道と四国旅客鉄道に引き継がれた。
四国旅客鉄道所属の車両は本四備讃線の開業による岡山駅への乗り入れ復活があったが、騒音対策のため後継車に置きかえられた。
一方、西日本旅客鉄道では、特急「いそかぜ」で関門トンネルに乗り入れたり、分民化後に新設された特急「くにびき」や智頭急行開業後に新設の特急「はくと」1往復や特急「いなば」に運用されたこともあった。
最後は、兵庫県下発着の修学旅行臨に運用されたり、2011年のキハ189系の置き換えまで特急「はまかぜ」で活躍したが、2011年をもってすべての運用を終了した。
海外譲渡[編集]
最後まで活躍していた15両はミャンマー国鉄へ譲渡され、ヤンゴン-チャイトー間の特別列車やヤンゴン環状線に投入された。ミャンマー初の冷房車両であったが、状態不良のためチャイトー方面の特別列車は2021年現在休車状態にある。
参考文献[編集]
『鉄道ピクトリアルNo772』電気車研究会2006年2月1日発行
注[編集]
- ↑ この措置によるキハ80系余剰車が「のりくら」格上げ分に充当された。
JR西日本の鉄道車両 |