夜行列車

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現存する唯一の夜行列車、サンライズ出雲・瀬戸

夜行列車(やこうれっしゃ)とは、発駅から日付を跨ぐか、ほぼこれに準じて夜を徹して午前4時以降に終着駅に到着する旅客列車もしくは混合列車である。ただし、日本国内では混合列車の夜行列車はほとんど存在しなかった。

概要[編集]

狭義の一晩跨ぎの旅客列車のみを夜行列車として扱う。

日本[編集]

ここでは貨物列車や午前2時までに終着駅に着く定期旅客列車[注 1]は除外する。また、元日早朝(大晦日深夜)など特定日の終夜運転は別ページとする。
日本国内では混合列車の夜行列車の存在は確認できないが、混合列車は貨車の入れ替えに時間がかかるほか、需要の小さい閑散線区に設定されるので、閑散線区に設定されない夜行列車が混合列車となる可能性はない。なお、パレット輸送を行う荷物・貨物兼用のワキ8000、ワサフ8000を連結した客車列車は混合列車として扱われない。
現在はわずか2系統のみとなっている。

海外[編集]

国境を越えて広範囲に路線が繋がっているヨーロッパでは、環境意識の高まりも後押しし、夜行列車が復活しつつある。特にオーストリア連邦鉄道は、オーストリアと他の国を結ぶ系統はもちろん、オーストリアを通らない列車まで含めて数多くの夜行列車を運行している。
シベリア鉄道では、極度に人口の少ない地域が多く、定期の昼行列車が設定されていない区間もある。一方で、長距離夜行列車は全線で一日数往復確保されており、夜行列車の方が本数が多くなっている。

日本での歴史[編集]

登場~太平洋戦争末期[編集]

鉄道が延伸し、長距離列車が登場すると、昼夜を跨いで走る列車が登場した。それが旅客列車となると乗客は必然的に車内で仮眠を取ることになる。鉄道が登場する以前にも、客船馬車が長距離を運行するときには旅客は仮眠を取っていたので、その延長線上に長距離列車があった。日本では東海道本線が全通した1889年夜行列車が登場したため、乗客は車中泊することとなった。山陽鉄道は一等寝台車を登場させ、鉄道省もそれに続いた。鉄道国有化によって多くの有力私鉄が国有化され、夜行列車も官営鉄道のみの運転となった。

戦後[編集]

寝台車 (鉄道車両)の復活は1946年運輸省マイネ40形客車に始まり、進駐軍からの返還によってマロネ29をはじめとする二等寝台が復活、スロネ30も新製された。三等寝台は復活が遅れ、1956年ナハネ10まで待たなければならなかった。1958年には元祖ブルートレインことあさかぜが登場した。

新幹線開業~国鉄末期[編集]

東海道新幹線開業に始まる高速列車の登場は、到達時間の短縮といった効果が起きた。これに接続する夜行列車は一時期強化されたが、山陽新幹線開業後、国鉄運賃が50%値上げされた頃から効率の悪い夜行列車の使用が敬遠されるようになり、昭和55年10月1日日本国有鉄道ダイヤ改正では、山陽本線経由で関西と宇野(四国連絡)や九州を結ぶ夜行座席急行列車「鷲羽」「雲仙」「西海」「阿蘇」「くにさき」が廃止され、山陽路の座席夜行が全廃された。この動向に呼応するかのように、1980年代前半に国鉄の経営改善のため、夜行列車の全廃が提言されたが、撤回されている。

関西汽船などの客船運行で、鉄道以外の夜行旅客の競合があった西日本では、山陽線急行全廃の3年後に阪急と西日本鉄道が共同運行する高速バス「ムーンライト」が登場。「ムーンライト」はたちまち都市間交通の一角を担うようになった。一方、東日本でも東北急行バスが細々と運行されていたが、夜行旅客の主流は鉄道で、1982年に東北新幹線が大宮起点で開業した際も、当時の佐々木秋田県知事は、「乗換だらけの新幹線なら、東京への往来は『あけぼの』を使う」と新聞で論評している。

昭和59年2月1日日本国有鉄道ダイヤ改正に実施の貨物のヤード方式が全廃されるダイヤ改正に続き、昭和61年11月1日日本国有鉄道ダイヤ改正では荷物輸送、郵便輸送が廃止され、旧態依然な夜行列車の運転目的を消滅させてしまった。

昭和62年4月1日日本国有鉄道分割民営化後[編集]

国鉄分割民営化直前、昭和61年11月1日日本国有鉄道ダイヤ改正が行われ、この「ロクイチ・イチイチ」改正の体制でJR旅客会社の夜行列車の運行が行われた。1988年春には、「北斗星」、「はまなす」の新設や「瀬戸」の四国乗り入れが行われたものの、JR九州で、1993年に夜行急行が特急化した他、1994年3月には「みずほ」が廃止されるなど、「ロクイチ・イチイチ」体制の崩壊が始まった。
さらに20世紀末になると、LCCの出現で価格競争が進んだ飛行機の使用の普及、安くてデラックスな夜行バスの登場で、「カシオペア」など個室で売り出した列車を除き、夜行列車は「コスパが合わない」移動手段とされ、加えて、21世紀に入ると並行在来線第三セクター化の進行や夜間勤務の要員削減といった鉄道事業者側の事情で、ダイヤ改正のたびに廃止され続け、2016年には客車寝台特急や夜行急行が廃止された。

令和時代[編集]

国土が細長い日本では、夜行列車に適した800km程度の距離の列車を設定できる区間が限られるとされ、現在はわずか2系統のみとなっている。

特徴[編集]

ダイヤ面[編集]

日本では、草創期の「あさかぜ」で深夜の京都、大阪に停車したように、かつては夜間も客扱い停車したが、1960年代後半以降、深夜の停車は荷物扱いのみとなり[注 2]、乗降扱いを行わないのが一般的で、長距離ノンストップとなっている。現存唯一の定期列車であるサンライズ出雲・瀬戸は、上りは大阪から静岡まで、下りは浜松から姫路までノンストップで、京都・名古屋を堂々と通過する。一方海外では、深夜にも多くの駅に停車・客扱いするのが一般的である。

車両面[編集]

夜行列車は乗換無しで寝たまま目的地に直行できるのが強みなので、多層建ての列車が多い。日本だとサンライズ出雲サンライズ瀬戸の分割・併合があるが、海外はもっと複雑で、かつてのヤード系貨物輸送のように、車両毎の組換えを行うこともあり、ダイヤの都合上分岐駅に1時間以上停車する車両もある。

1968年10月1日ダイヤ改正の夜行普通列車一覧[編集]

凡例[編集]

列車番号 発駅と発車時刻 経由地発車時刻 着駅と到着時刻 一等車、寝台車 その他
423 小樽駅2128 富良野駅0224 釧路駅0936 ①・★
424 釧路駅1900 富良野駅0229 小樽駅0655 ①・★
421 函館駅2352 滝川駅1015 釧路駅1912
1422-422 釧路駅0810 新得駅1408 函館駅0500 新得駅から列車番号変更
421 上野駅2239 福島駅0614 青森駅2155 奥羽本線経由
422 青森駅0629 福島駅2200 上野駅0436 奥羽本線経由
227 上野駅2224 平駅0409 仙台駅0845 常磐線経由
228 青森駅1030 平駅0050 上野駅0455 常磐線経由
735M 上野駅2212 水上駅0237 長岡駅0453 上越線経由
734M 長岡駅2250 水上駅0142 上野駅0509 上越線経由
341 上野駅2259 小諸駅0352 直江津駅0818 信越本線経由
425 新宿駅2355 甲府駅0320 長野駅1016 中央本線経由
424 長野駅1825 甲府駅0045 新宿駅0423 中央本線経由
143M 東京駅2330 静岡駅0242 美濃赤坂駅0727
144M 大垣駅2032 静岡駅0100 東京駅0435
525 大阪駅2217 富山駅0621 新潟駅1412
528 新潟駅1515 富山駅2316 米原駅0511
921 名古屋駅1515 新宮駅2240 天王寺駅0500 ①・★ ①・★は新宮駅から
926(2926) 天王寺駅2240 新宮駅0555 名古屋駅1310 ①・★ 南海難波駅2215発、①・★は新宮駅まで
623 京都駅2125 姫路駅0025 宇野駅0301
622 宇野駅0020 姫路駅0340 京都駅0629
829 京都駅2203 出雲市駅0957 下関駅1842 出雲市駅まで★連結 山陰本線経由
826 下関駅0858 出雲市駅1859 京都駅0524 出雲市駅から★連結 山陰本線経由
721D 高松駅0020 高知駅0510 土佐佐賀駅0747 土讃本線経由
764D-268D 窪川駅2132 高知駅2338 高松駅0341 須崎駅から① 高知駅から列車番号変更、土讃本線経由
521 門司港駅2135 大分駅0127 西鹿児島駅0945 日豊本線経由
522 西鹿児島駅1901 大分駅0405 門司港駅0752 日豊本線経由
1421(2421) 門司港駅2239 佐賀駅0228 長崎駅0637 大村線経由。佐世保駅0443着
1422(2422) 長崎駅2301 佐賀駅0325 門司港駅0748 大村線経由。佐世保駅0047発

1993年3月18日ダイヤ改正の夜行普通列車一覧[編集]

凡例[編集]

  • 普通車全車指定席-全
列車番号 発駅と発車時刻 経由地と発車時刻 着駅と到着時刻 使用形式 愛称、設備
3981D 函館駅2330 長万部駅0250 札幌駅0630 キハ27 「ミッドナイト」、全・多客期自由席連結
3980D 札幌駅2330 東室蘭駅0218 函館駅0630 キハ27 「ミッドナイト」、全・多客期自由席連結
3763M-3921M 新宿駅2302 新潟駅0519 村上駅0612 国鉄165系電車 「ムーンライト」、全・新潟駅から全車自由席
3952M-3720M 村上駅2220 新潟駅2320 新宿駅0510 国鉄165系電車 「ムーンライト」、全・新潟駅まで全車自由席
1521M-421M 新宿駅0002 甲府駅0400 松本駅0634 115系電車 甲府駅で系統分割、列車番号変更
375M 東京駅2340 静岡駅0240 大垣駅0656 165系電車 グリーン車2両連結
372M 大垣駅2240 静岡駅0200 東京駅0442 165系電車 グリーン車2両連結
2921M 新大阪駅2244 白浜駅0230 新宮駅0501 165系電車

批評[編集]

日本の夜行列車衰退の一因として、鉄道技術[注 3]や車両導入に排他的な日本の風土も相まって、夜行用鉄道車両の大量導入が難しいことも挙げられる。
また、長野県で2016年(平成28年)1月の夜間にツアーバス転落事故が発生しても、夜行列車再建に鉄道所管の国土交通省は消極的である。
一方で、寺本光照のように、「夜行高速バスを好まない人もいる」として、減量一辺倒の動きに警笛を鳴らし、あくまで、夜行列車を復興するべきと考える鉄道批評家はいる。

その他[編集]

夜行列車といえば、東北方面の臨時を含めた急行列車に乗車のため、昼過ぎから上野駅などで待つ帰省客が名物で、盆、年末のニュースの格好の題材となっていた。

関連項目[編集]

[編集]

  1. 日着列車と呼ばれる。
  2. 当時の国鉄は、タクシー代わりに特急座席車を使うことを好まなかったのと、開放した改札からホームを寝床代わりに使うホームレスの流入を防ぐのを理由としていた。
  3. 欧州で盛んな機関車牽引客車列車の機回しを解消する幹線でのプッシュプル運転の導入等。