内航海運
内航海運(ないこうかいうん)とは、商船を使用して国内の港から港へ貨物を運ぶ業種のことである。
概要[編集]
日本の国土交通省によると、国内の貨物輸送(トンキロベース)のおよそ4割、鉄鋼や石油製品、セメントなど産業基礎物資輸送(トンキロベース)のおよそ8割を担っている。
沿革[編集]
歴史は古いが、本格的な運営は江戸時代からであった。陸上交通が整備されていないときには航路は大量の貨物が運搬できる手段であり、西廻海運、東廻海運によって日本各地に港が整備された。このときに整備された港町は現在でも日本各地に面影を残す。船主は地域によって異なる商品の値段の利ざやによって莫大な利益を得たが、この時代の船は構造の脆弱な千石船や北前船といった和船で、しばしば海難を起こす危険で命がけの航海であった。外国との貿易が始まると近代的な港湾設備が整えられた。また、西洋式帆船、次いで汽船が投入されるが、従来の和船も西洋式帆船の帆装、固定式舵の設置を行った和洋折衷船として使われた。この形態は昭和初期まで見られた。しかし、太平洋戦争中は南方への船腹の徴収、アメリカ海軍による爆撃、機雷敷設といった通商破壊、港湾設備の容量不足により、内航海運は壊滅状態に陥った。政府は鉄道輸送を強化して輸送の確保を試みたが、鉄道輸送も限界に達して国内各地で物不足が発生した。
現状[編集]
一般の貨物船やコンテナ船以外にもカーフェリーのような貨客船やRORO船を使用している。海路しか交通機関のない離島や道路で結ばれてない北海道はもちろん、陸路で結ばれた本州、四国、九州相互でも重要な輸送機関である。
民主党政権が実施した高速道路無料化施策で、経営不振となった内航航路も出だしたが、運輸業界の働き方改革で、運転手の休息手段や人手不足緩和の手段として見直されつつあり、2021年7月に22年ぶりに新たな長距離フェリー航路が開設されている。
他の交通機関との比較[編集]
- 長所
- 最も少ない人員、エネルギーで大量の物資を輸送することが出来る。重量物ほど、他の交通機関より有利になる。
- 車や航空より、圧倒的にCO2排出量が少ない。
- 短所
- 速度が遅い
- 使用できる港湾が限られる
- 大規模な揚陸装置が必要
- 日本国内では内陸部で使用できる河川が限られる
- 荒天の際には海難の危険がある。
- 鉄道貨物よりはCO2排出量が多い。
その他[編集]
鉄道や道路との連携は将来的にも欠かせない。
夜行旅客輸送の減退が加速化して、壊滅に近い鉄道に代わり、高速バスがニーズを埋めているが、バスとて昨今運転士不足に悩まされており、本州でもいずれ高速バスの代替を船舶が担う必要が出てくると思われる。