通商破壊
通商破壊 (つうしょうはかい) とは、戦時において軍隊や沿岸警備隊が敵国や、中立国でも戦時禁制品を積んだ商船を臨検、拿捕することである。
概要[編集]
戦時に於いて、敵国が貿易によって利潤を得たり、あるいは武器や戦争遂行に必要な物資を手に入れることによって戦力を増強することは望ましいことではないので必要に応じて海軍が行う。これに対抗して行うのが船団護衛である。なお、通商破壊は陸上交通でも行える可能性はあるが、一般的な用法としては水上交通として用いることがほとんどである。
自沈処分[編集]
通商破壊からの反撃や逃走が不可能と悟った商船乗組員は敵に利益を与えないために積荷ごと自沈処分を行うことがある。このときの積荷が家畜や家禽だと悲惨な光景が広がる。奴隷の場合だと後の世界では非難に値する行為である。
戦時国際法[編集]
商船の乗組員は民間人であり、武器を持たない民間人への攻撃は慣習、及び戦時国際法では禁止されているのではないかと考えられる。しかし、商船を武装化した武装商船による通商破壊への抵抗も認められ、また、戦時に於いては商船乗組員は、士官は予備士官に、部員は軍属に任命されることが多い。[1]ただし、商船に非戦闘員の乗客が存在した場合、この乗客が殺傷された場合、あるいは乗客の荷物が奪われた場合はいかなる問題になるか議論がある。
歴史[編集]
近世以前[編集]
古代以前、国家による海軍がない時代、商船を襲うのは海賊であった。その海賊から守るために武装したのが武装商船であった。古代国家の誕生により海軍による通商破壊のほかにも海賊を利用することもあった。この形態は海賊行為を非合法化した近世まで続く。通商破壊から守るために海軍による船団護衛を行った。
近世[編集]
海賊の非合法化により、通商破壊を行うのは交戦国の海軍のみ認められた。これを行うのは鈍足な主力艦である戦列艦ではなく、武装は軽微だが軽快で高速を出すことができるフリゲートであった。
近代[編集]
蒸気機関の登場による機帆船の時代になり、フリゲートの大砲の威力が増したので武装商船との武装の威力の格差が大きくなった。フリゲートの要求に従わない場合は商船を沈めることもできた。やがて帆装が廃止され、風に従うことの必要性もなくなり、速度の遅い商船を逃がしてしまうこともなくなった。
第一次世界大戦[編集]
フリゲートは大砲の口径が大きい巡洋艦に置き替えられた。ドイツ海軍の潜水艦は神出鬼没に現れ、商船隊を攻撃した。無制限潜水艦作戦は連合国の商船隊を恐怖に陥れたが、これはアメリカ合衆国の参戦に繋がった。また、イギリス沿岸で商船を攻撃し、イギリス本土を兵糧攻めにした。インド洋で活躍した巡洋艦エムデン (巡洋艦)は多数の輸送船を沈めた。
第二次世界大戦[編集]
無制限潜水艦作戦は、アメリカ合衆国、ソビエト連邦、大日本帝国も行ったほか、軍用機での通商破壊も行われた。アメリカ海軍は、大日本帝国に対してノースアメリカンB25爆撃機を転用した襲撃機「アパッチ」は大口径の機関銃と大型爆弾で商船のみならず、護衛の駆逐艦や海防艦も沈めた。また、アメリカ海軍の航空母艦から発艦した艦載機は武装商船と化した青函連絡船の攻撃を行い、これを沈めた。
関連項目[編集]
参考文献[編集]
脚注[編集]
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