潜水艦
潜水艦(せんすいかん、英:Submarine)とは、水中での航行が可能な軍艦である。建造、運用に最も制約の大きい艦種である。
概要[編集]
原子力潜水艦が登場する1950年代まで潜水艦は、夜間に水上での航行を行い、動力はディーゼルエンジンで、この時に発電機で充電を行い、日中の潜水航行は蓄電池で電動機駆動で走行する可潜艦であった。充電のために水上走行は不可欠であった。任務としては海中に身を潜めて船舶に接近し、魚雷で攻撃する。船体の小さい潜水艦に巨大な艦砲は搭載できず、圧縮空気のみで攻撃できる魚雷がもっとも効果的であった。
構造[編集]
水圧は深度が大きくなるにつれて大きくなるので、潜水する潜水艦の艦殻は厚くする必要があるが、厚すぎると艦が重くなるので、ただ厚くすればいいというわけでもない。潜水するときは艦内前部の注水タンクに海水を注入し、浮上するときは艦内にある圧縮空気で注水タンクの海水を排水して浮力を得る。このため、潜水するときは前部から潜水し、浮上するときは前部から浮上する。このため、潜水艦を「鯨」に例えることができる。
歴史[編集]
構想は古くからあったが、走行方式の関係でなかなか実用化されず、実用化されたのは20世紀初頭のアメリカ海軍であった。これはガソリンエンジンと蓄電池での電動機駆動であった。第一次世界大戦でドイツ海軍がディーゼルエンジンと蓄電池での電動機駆動の潜水艦が本格的に運用をはじめ、Uボートは連合国側の軍艦、商船を次々沈め、イギリスに兵糧攻めを行った。しかし無制限潜水艦作戦によるルシタニア号撃沈によりアメリカ合衆国の世論は参戦に傾き、ドイツの敗北に繋がった。第二次世界大戦は主な参戦国が運用し、主に通商破壊を行ったほか、離島への輸送、枢軸国同士の輸送も行った。
艦内での生活[編集]
艦内は狭く、個室は艦長しか持たず、あとは相部屋で、しかもベッドは人数分がなく、当直毎に交替して使用する。艦内の酸素を節約するため、当直員以外はベッドで休むことになっている。常時海水蒸留装置が使えないので真水は水上艦以上に貴重であった。
艦内の食事[編集]
艦内の小さな冷蔵庫で保管できる生鮮食料品の量には限りがあり、数日でなくなってしまい、それがなくなれば缶詰の生活となる。毎日がそうなるので缶詰に嫌気がさし、牛肉の缶詰は生理的に受け付けないと訴える者もいた。それでも赤飯やみかんの缶詰は好評だったようだ。調理器具は電気炊飯器、電気レンジくらいしかない。艦内の楽しみは食事しかないので、料理の腕の良い者の存在は歓迎された。また、潜水艦の食料にも多額の予算が使われた。
元旦 (木) | 朝食 | 雑煮 (缶詰餅、かまぼこ、筍、フキ、ホウレンソウ)、数の子、切りするめ、煮豆、紅生姜 |
昼食 | 白飯、その儘 (鶏肉大和煮)、里芋白煮、吸物 (かに缶、松茸、ホウレンソウ) | |
夕食 | 白飯、その儘 (いわし油漬け)、酢の物 (万才煮)、吸物 (キャベツ、人参、筍、椎茸)、 | |
漬物 (大根味噌漬け) | ||
五日 (月) | 朝食 | みそ汁 (赤味噌、広島菜)、漬物 (旧漬) |
昼食 | その儘 (缶詰獣肉)、鉄砲和え (豆もやし)、漬物 (旧漬) | |
夕食 | 塩魚 (ボイル)、桜ボイル (ジャガイモ、菜、筍)、汁、漬物 | |
六日 (火) | 朝食 | みそ汁 (赤味噌、豆もやし、乾油揚)、漬物 (旧漬) |
昼食 | おはぎ (もち米、小豆)、辛子和え (缶詰獣肉)、澄汁 (椎茸、ほうれんそう)、漬物 (旧漬) | |
夕食 | その儘 (缶詰魚肉)、油いり (ひじき、乾油揚)、漬物 (旧漬) | |
七日 (水) | 朝食 | みそ汁 (赤味噌、干大根)、向付 (鉄火みそ)、漬物 (古漬) |
昼食 | その儘 (缶詰獣肉)、浸し (ほうれん草)、吉野汁 (筍、ふき)、漬物 (古漬) | |
夕食 | その儘 (缶詰獣肉)、甘煮 (乾馬鈴薯、人参)、漬物 (古漬) | |
八日 (木) | 朝食 | みそ汁 (赤みそ、広島菜)、漬物 (古漬) |
昼食 | 塩魚 (ボイル)、煮しめ (馬鈴薯、人参、ごぼう)、漬物 (古漬) | |
夕食 | ソボロ煮 (缶詰獣肉)、濃平汁 (松茸、ふき)、漬物 (古漬) | |
九日 (金) | 朝食 | みそ汁 (赤みそ、豆もやし)、向付 (干海苔)、漬物 (古漬) |
昼食 | その儘 (缶詰獣肉)、ぬた (豆もやし、わかめ)、漬物 (古漬) | |
夕食 | ソボロ煮 (缶詰獣肉)、澄汁 (椎茸、切り麩)、漬物 (古漬) | |
十日 (土) | 朝食 | みそ汁 (赤みそ、干大根)、漬物 (古漬) |
昼食 | ハムライス (燻製獣肉)、スープ (かに缶詰、干うどん)、漬物 (古漬) | |
夕食 | その儘 (缶詰魚肉)、油いり (乾ぜんまい)、漬物 (古漬) |
基地への帰還[編集]
長期間の任務から基地に帰ると、艦の整備は専門の整備員に任せて基地の大浴場で垢を落とした。風呂上がりには冷たいビールだ。その後は乗組員は近場の保養地に出かけた。横須賀だと熱海、呉だと長門湯本、佐世保だと嬉野である。そこは湯けむり漂う温泉であった。皆、嬉々として列車に乗った。また、潜水艦乗りは多額の給料をもらっており、それを温泉地の旅館で使ったので乗組員は芸者にモテた。
現代[編集]
現代の潜水艦は浮上して艦載砲で攻撃するような事は考慮されていない。動力により通常動力型潜水艦と原子力潜水艦に大別される。
天敵は対潜ヘリコプター。対空兵装は基本無いので見つかれば一方的に追い詰められる。
関連項目[編集]
潜水艦を描いた作品[編集]
- 小説
- 深海の使者 (小説)
参考文献[編集]
- 大日本帝国海軍省『青年學校海軍智識』軍人會館出版課昭和15年5月20日改訂増補発行。