家畜
家畜(かちく)とは、もっぱら「人間によって生殖をコントロールされた動物」のことをいう。「家魚」「家禽」などの総称である。
概要[編集]
家畜として代表的なものとしては、イノシシを家畜化したブタがある。
雄豚は生まれてすぐに牙を切られ、去勢され、尻尾を切られる。ただし、「種豚」といわれる雄は去勢されていないため、養豚業を放棄した業者らが野に放ち、イノシシと交雑して「イノブタ」が生まれた。
家禽としてはニワトリがいるが、日本国内では交雑するような対象がいないため、家禽とされる。孔雀なども日本国内では家禽のひとつである。
家魚は日本ではほとんど知られていないが、中国では鯉のほか四大家魚があった。これは生殖をコントロールされていたわけではないが、四大家魚は大河でなければ繁殖ができず、幼魚を捉えて養殖するしか方法がなかったが、鯉は池で飼っても繁殖が可能であるため、叛乱の防止のために養殖などが禁止された時代があった。
特徴[編集]
- 形質が非常に多様化する。特に非適応的な形態のものが現れる。
- 繁殖期の延長。(発情期が長い)
- 病気や環境変化への耐性低下。(例えばラクダは湿度に極端に弱く、これは西アジアでは多いラクダがインドで見られない理由)
- 繁殖等への人の手助けが必要になるなど、自立性の低下。
なお、ミツバチやカイコは昆虫であり、これらを家畜と呼ぶ事は少ないが、この項に示される性質を共有する。人間も家畜とは言わないが、この項に示される性質を共有する。その点ではこれらの昆虫や人間も家畜であるといえる。
家畜化可能性[編集]
家畜化可能な動物は限られている。
- 性格:人間の言うことを聞ける程度に穏やかであること(最悪でも去勢して制御可能)。序列性のある集団を形成する。
- 繁殖:人為的に選択されたり、人の目に晒されても繁殖が可能。また、成長速度がはやい。
- 食料:餌が人間が供給できる量・質の範疇である(肉食のオオカミや穀物を食べるイノシシはこの点で人間の食糧と競合するので家畜化の際の障壁)。
を満たすと家畜化しやすい。人間に対する有用性も必要な気がするが、人為的で選択的な繁殖が可能なら品種改良でなんとかなることもある。
例えば、
- ウマ,イノシシ,ウシは家畜化されたが、シマウマ,イボイノシシ,アフリカスイギュウは気性が荒く家畜に向かない。
- ガゼルはパニックを起こすので家畜に向かない。(ヒツジはパニックを起こすが、群れの秩序や牧羊犬を用いて制御可能。)
- トナカイやウシは家畜化されたが、シカやアンテロープははっきりと集団内の序列を作ることがなく家畜に向かない。
- オオカミ(イヌ)は高度な群れを構築し、そのリーダーを人間に置き換えたような関係を構築することで家畜化された。
- パンダは繁殖が困難なので家畜に向かない。(現代的な動物園ですら繁殖は困難。)
- ゾウは成長に時間がかかり、家畜に向かない。(戦象といって戦いに使う例はある。)
- 反芻動物(ウシ,ヒツジ,ヤギなど)は、人間の消化できない草を食し、食糧競合の観点から家畜化に有利。
- イノシシ(ブタ)は、人間の食べ残しを食し、農耕がさかんな地では家畜化に有利。
逆家畜化[編集]
家畜化は、「人間によって生殖をコントロールされた動物」とされるが、逆に人間が家畜化されているという考え方がある。
鶏[編集]
ニワトリは野生の鳥に比べて対して飛べない鳥だが、地球上でも最も数の多い鳥である。この状況をニワトリが人間に利用されているのではなく、 ニワトリが人間を家畜化して繁栄したととらえることも可能。ただし、種としての繁栄は個体の幸福と相関ほぼないので、ニワトリが幸せても言えないし人間が不幸ということでもない。また、家畜化はニワトリが意図して起きたものではなく、なるべくしてなった共進化的現象である。
小麦[編集]
小麦は、それ自体に移動性はないが世界中で見られる植物である。この状況を小麦が人間に利用されているのではなく、 小麦が人間を家畜化して繁栄したととらえることも可能。また、穀物を選択的に収穫する過程で、似た形質の雑草が穀物化する現象も知られていて、 大麦,ライ麦などがある。これらも、人間を家畜化している。
以上の背景からか、小麦の奴隷という名称のパン屋もある。
ネコ[編集]
イエネコは世界中の人間に飼われている哺乳類である。イエネコは、家畜化可能性から考えて家畜かに向かない動物である。なぜなら、序列性のある集団をつくりにくいし、食性は肉食性。ネズミ捕りに役立つものの、イヌ程忠実ではないし、肉や乳、皮がとれるわけでもない。そこで、むしろネコが人間を家畜化したと考えられた。
また、古代エジプトでネコはバステト神として崇拝された。紀元前252年にアケメネス朝ペルシャ軍が猫を盾にして、エジプト軍を攻撃したときには、エジプト軍は抵抗ができずに壊滅させられた。現代でも、一部のネコ狂信者はネコのことをネコ様と呼び崇めている他、「ネコと和解せよ」という看板が日本各地に存在する。これらは、ネコによる人間家畜化の証拠であろう。
人間[編集]
自己家畜化という。人間が人間を家畜化しているというもので、人間は家畜的とその主人の両方の性格を数多く持つ。