架線下DC

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架線下DC(かせんしたディーシー)とは、電化区間でありながら旅客列車の運行に電車(電気機関車)ではなく、気動車(ディーゼル機関車)を利用するもの。
「DC」とはディーゼルカー(Diesel Car)の略であり、Direct Current(直流)の意味ではない。

概要[編集]

通常、架線を張って、電車を走らせるほうが効率がいい。しかし時として電車を走らせるほうが高コストになる場合があり、その時には電化区間でありながら気動車列車を走らせることがある。

実施される例[編集]

  1. 途中駅から非電化路線に入る場合
  2. 設備面で電車を使用すると高コストになる場合
  3. 変電所容量が小さい場合
  4. 間合い運用
  5. 臨時列車の運転
  6. 電車の不足
  7. 災害や異常時に変電所が停止した場合
  8. ホームの共用
  9. 事業用として用いられる場合
  10. かつて走っていた客車列車を復刻した場合

1.のパターンは相応の実施例がある。非電化線の始発駅から電化区間にある主要駅までの列車が気動車で運行される例が殆どだが、急行「きのくに」のように、僅かな非電化区間(南海乗入編成の和歌山市駅構内の連絡線通過)のために架線下DCを強いられた例もあった。

2.のパターンは交流電化路線や路線内に交流と直流の境目(デッドセクション)が存在する路線に見られる。特に経営基盤の弱い第三セクター鉄道が並行在来線を引き継いだ場合、現状の交直流電車やインバータの必要なVVVF制御を採用した交流電車[注 1]は最低でも2両単位での製造となり製造費用が高価になるため、利用者が少ない時間帯の単行での運転は難しいことから、電車の導入はためらわれる傾向にある。国鉄時代も交直流急行型電車の増備がためらわれたため、急行「しらゆき」、「出島・弓張」、「おが」が架線下DCで運行し、電車急行にはならなかった。

3.のパターンは列車の一部を気動車とすることで変電所に負荷をかけないようにする。定期での実施例は会津鉄道会津高原尾瀬口会津田島間くらいで少ないものの、国鉄時代の田沢湖線がこの方式だった。最近だと土讃線琴平駅まで寝台特急サンライズ瀬戸が延長運転された時に当該時間帯の普通列車を臨時に電車から気動車に変更されていた。

4.のパターンは、電化区間と非電化区間が入り混じる山陰本線で顕著だが、国鉄時代も非電化区間を交えた広域運用のため、急行「赤倉」が長らく架線下DC運用を強いられた。また、富士急行に乗り入れる急行「かわぐち」は新設時全線電化区間だったが、中央東線急行との併結運用のため気動車が用いられた。これに関しては後述する。

5.のパターンはジョイフルトレイン等で顕著である。また、2013年11月9日から翌10日にかけて豊川市でB-1グランプリが開催された際などには飯田線内でキハ75による臨時列車が運転された。

6.のパターンは本来電車で運転している列車の代走運用などに見られる。例としてはJR四国2000系気動車がしおかぜ・いしづちの運用から撤退した後でも、ダイヤ乱れや豪雨等で8600系8000系の手配がつかなくなるとこの2000系が充当される例が存在する。

7.のパターンは東日本大震災後の仙石線や野岩鉄道線で多く見受けられた。特に仙石線の陸前小野-石巻間は2012年3月の再開時には電化設備が復旧していなかったのでキハ110系気動車による4両編成が運転されていた。国鉄で除雪車に電車が用いられないのも、非常時の停電に備えるためであった。

8.のパターンはダイヤの関係などでホームを共用する際に見られるもの。一部駅で行われている。(架線下DCと言えるのか…?)

9.のパターンは、主にJRで見られ、例えばキヤE195形やキヤ97形は、レールを引き揚げる駅までの路線が非電化[注 2]という事情や、効率的に運搬したいという考えなどもあって気動車が採用され、また検測車両も、電化非電化にかかわらず運用するという方法をとりたく、JRグループ全体に在籍する在来線の検測に関わる車両24両の内、17両が気動車[注 3]と、気動車が好まれて使われている。万葉線でも、除雪に使用する6000形はディーゼルとされている。

10.のパターンは伊予鉄道坊っちゃん列車など、蒸気機関車けん引の客車列車をディーゼル機関車によって復活する場合が挙げられる。小湊鐵道線のように非電化でも行われることもあるが、電化の場合はここだけとなる。

主な実施例[編集]

本項では、電化区間で電車が車両基地の送り込みのためだけに運行される事例[注 4]は扱わない。

JR北海道の気動車特急[編集]

1.のパターン。宗谷・オホーツクの札幌~新旭川間、おおぞら・とかちの札幌~南千歳間、スーパー北斗の函館-新函館北斗間及び東室蘭~札幌間が架線下DCとなる。電化区間よりも非電化区間のほうが圧倒的に長い。

JR北海道千歳線・函館本線[編集]

1.2.4.のパターン。電化区間の全線にわたって、下記のキハ201系以外の気動車を見かけることもあるが、留萌本線石勝線、新函館北斗以北への直通や送り込みであることが多い。

JR北海道キハ201系気動車[編集]

1.4.のパターン。元々札幌から蘭越方面への直通運転のために製造されたが、たったの4編成12両のみの存在であり、直通列車の本数も少なく、逆にそのバケモノ性能を活かして電車の予備として使用されていることもある。

道南いさりび鉄道線[編集]

2.のパターン。一部ホームが非電化である上に、函館運輸所に普通列車用の電車が配置されていなかったため、JR江差線当時から普通列車は気動車で運行されていた。さらに北海道新幹線の開業により、木古内駅構内の架線電圧が交流25000V・50Hzへ昇圧され、通常の在来線交流電車が入線できなくなっている。なお木古内駅の同線ホームについては非電化のままとされている。

JR東日本羽越本線[編集]

1.2.のパターン。新津から磐越西線坂町から米坂線に乗り入れる列車と村上-間島間にある交直流デッドセクションを越える普通列車が架線下DCとなる。なお、国鉄時代も交直流急行型電車や耐寒耐雪構造の直流電車の投資を抑えるため、白新線に乗り入れる急行「羽越」、「しらゆき」や新津〜新発田の客車列車以外の普通列車が全電化区間走行の架線下DCとなっていた[注 5]。また、男鹿線向けEV-E801系を当該デッドセクション越えに入れて架線下DCを解消しても良いように思われるが、2023年現在そういった動きは見られない

JR東日本磐越西線・会津若松〜喜多方間[編集]

1.2.のパターン。当該区間は交流電化区間だが、スイッチバック会津若松駅で流動の段差ができるため、運行系統が会津若松で分かれ、当該区間の電車運行は数本しかなかった。

2021年8月、JR東日本は翌年以降同区間の電化撤去を行うと発表し、2022年3月のダイヤ以降の該当区間の電車運用は皆無となっている。

JR東日本 東北線[編集]

1.2.のパターン。安積永盛〜郡山間で水郡線列車が電化区間を走行する。仙台〜塩釜〜小牛田間で、仙石東北ラインの列車や陸羽東線送り込みの気動車が電化区間を走行する。花巻〜盛岡間では、釜石線直通列車が電化区間を走行する。

以前は、黒磯-高久間のデッドセクションを越える一部の列車に気動車を使用したが2020年3月で終了。デッドセクションを通る列車を交直流電車にするか気動車にするか模索した結果、電車に落ち着いた為である。さらに以前は黒磯駅構内で架線に流れる電気を必要に応じて直流・交流で切り替える複雑な地上切り替えを取っていたが、作業員が感電死する事故を契機に黒磯駅構内を直流に固定する車上切り替え方式に変えたためである。

HB-E300系「リゾートビューふるさと」[編集]

1.5.のパターン。基本的な運行区間は電化区間の大糸線・篠ノ井線に限られるが、気動車であることを活かして飯山線の十日町以南に乗り入れたことがある。

IGRいわて銀河鉄道[編集]

1.のパターン。花輪線直通の列車が、盛岡~好摩間に乗り入れる。

JR東日本 高崎線[編集]

1.のパターン。八高線の列車が、倉賀野~高崎間に乗り入れる。

JR東海の気動車特急・快速・急行・武豊線直通[編集]

1.のパターン。JR東海の電化区間の関西本線名古屋口や東海道本線から非電化区間(高山本線、伊勢鉄道線、紀勢本線および関西本線支線)に特急「ひだ」・「南紀」、快速「みえ」、DL牽引貨物列車が乗り入れる。

以前武豊線は非電化区間であり、名古屋への直通区間快速を運転する場合はキハ25およびキハ75に限定されていた。こちらは2015年3月の武豊線電化をもって終了。急行は西日本の関西本線に乗り入れたが2006年に廃止されており現存しない。さらに、中央本線や関西本線名古屋口のホームライナーも太多線乗り入れや間合い運用の気動車運行があった。

東海道線の岐阜駅においても8番のパターンで高山線の普通列車が架線のあるホームに乗り入れる。

伊勢鉄道普通[編集]

1.のパターン。電化区間のJR関西本線に乗り入れる。

東海道・山陽線の気動車特急[編集]

1.のパターン。ひだ、スーパーはくと、スーパーいなば、はまかぜが該当。それぞれ高山線、智頭急行・因美線、播但線非電化区間及び山陰線に乗り入れる。

びわこエクスプレス2号[編集]

4.のパターン。電化区間の東海道線のみの運用だが、当該列車には上記のはまかぜ6号で大阪に到着したキハ189系をそのまま充当している。

紀勢線 新宮~紀伊勝浦間[編集]

1.のパターン。特急「南紀」が乗り入れる。

京都丹後鉄道宮福線・宮豊線(宮津~天橋立間)[編集]

1.3.のパターン。特急はしだての乗り入れのために電化されたが、113系・115系による宮福線の1往復以外の普通列車はすべて気動車となっている。また、宮福線は気動車の老朽化により置き換えが進んでいるが、その新車も気動車である。

北近畿タンゴ鉄道KTR8000形気動車[編集]

1.のパターン。前述の宮福線および宮豊線を通る特急はしだてのうち豊岡駅直通列車はKTR8000形が使用され、かつ該当列車に併結する特急まいづるについても全線電化ながらこの車両が使用される。

JR西日本 山陰線[編集]

1.4.のパターン。豊岡〜城崎温泉間の普通列車で城崎温泉以遠の非電化区間に乗り入れる列車は、豊岡にある気動車基地への入出庫のため。特急「はまかぜ」は、城崎温泉以遠に加え播但線非電化区間にも乗り入れるため。
山陰線は、伯耆大山〜西出雲間でも、非電化区間への乗り入れだけでなく、電化区間のみを運行する気動車列車が多く設定されている。

嵯峨野観光鉄道嵯峨野観光線[編集]

気動車ではなく客車列車ではあるが1.のパターン。トロッコ嵯峨~トロッコ嵐山間は山陰線の下り線を走行する。 トロッコ嵯峨行きは山陰線下り線を逆走する形になる。

JR西日本 北陸線 越前花堂~福井間[編集]

1のパターン。越美北線の列車が乗り入れる。 なお、福井駅越美北線用ホームは電化されていない。

JR西日本/のと鉄道七尾線七尾-和倉温泉間[編集]

1.2.3.のパターン。和倉温泉駅まで大部分が電車であるJRの特急列車が乗り入れるが、和倉温泉駅は2面2線しかなく、普通列車は七尾駅にて運行形態が分かれており、七尾駅以北の普通列車はすべてのと鉄道の気動車となっている。七尾~和倉温泉間の運賃・料金体系は、東京の北千住〜綾瀬間のように変則的で、七尾以北のみの利用はのと鉄道の乗車として扱う。

特急花嫁のれん[編集]

1.のパターン。七尾線/IRいしかわ鉄道線の観光列車運転に伴い、将来的なのと鉄道乗り入れを考慮して、キハ48から改造されている。

JR東日本鹿島線・鹿島神宮-鹿島サッカースタジアム間[編集]

1.2.のパターン。鹿島臨海鉄道大洗鹿島線は、鉾田市などで地磁気の観測に影響を与えるため直流電化が規制され、かつ鹿島サッカースタジアム駅が臨時駅のため、鹿島神宮駅にて運行系統が分断し、当該区間で鹿島臨海鉄道の気動車列車が乗り入れている。過去には成田空港燃料輸送の見返りで鹿島臨港線の旅客列車も同様の乗り入れを行った。鹿島線の貨物列車は鹿島サッカースタジアム駅まで直流電気機関車で運行され、鹿島サッカースタジアム駅で鹿島臨海鉄道鹿島臨港線の機関車に付け替えており、旧北陸本線の泊以東や肥薩おれんじ鉄道と似た運行実態となっている。

あいの風とやま鉄道[編集]

1.のパターン。あいの風とやま鉄道は電車の運用であるが、他社からの乗り入れ車が気動車である。えちごトキめき鉄道との場合、両社の分界駅は市振駅だが、構内配線や旅客流動を反映して、あいの風とやま鉄道線泊駅までえちごトキめき鉄道の車両が乗り入れる。
また、泊駅以西では基本的に電車が運行されるが、城端線城端駅からの乗り入れが休日を除き行われている。線内の運行は高岡駅 - 富山駅間で平日は2往復、土曜日は1往復。 なお電化区間は全て交流電化であるが、所有している電車は全て交直流電車である。

えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン[編集]

2.のパターン。梶屋敷西方にデッドセクションが存在し、最低2両が必要な交直流電車では輸送力過剰になるため、1両単位で運用可能な気動車が導入された。糸魚川や構内の広い青海西方へのデッドセクション移転も検討されたが、直流化費用の捻出に難航したため見送られた。一方、気動車での運用に変更されたことによってデッドセクションが至近にあることで長年構想がありながら実現できなかったえちご押上ひすい海岸駅が開業した。
2022年時点では、乗り入れ距離相殺のために糸魚川まで乗り入れるあいの風とやま鉄道の521系と、観光用の413系のみ電車運用である。それ以外は貨物列車が電化設備を使用している。なお、開業当初は485系電車の運用があった。

えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン[編集]

2.4.のパターン。上記の日本海ひすいラインで使用されるET122形が間合い運用や直通運用で新井まで乗り入れることがある。

しなの鉄道[編集]

1.のパターン。飯山線の列車が長野~豊野間に乗り入れる。

肥薩おれんじ鉄道[編集]

2.のパターン。電化設備は前記のえちごトキめき鉄道等と同様にJR貨物が使用している。肥薩おれんじ鉄道は全区間交流電化であるものの、誘導電動機を用いたVVVF制御の交流電車の製造費用が高額なため。

JR西日本伯備線・福塩線[編集]

1.4のパターン。芸備線や井原線直通以外に新見-米子間のうち1往復がキハ120形、生山-米子間のうちの1往復および米子発根雨行きの1本がキハ121形による運用となっている。キハ120形は芸備線の車両であり、布原駅では芸備線直通のこの車両しか客扱いを行わない他、かつては備中高梁-新見間の大半の普通列車を担当していたこともあった。
井原鉄道の列車は共有区間の総社〜清音間および福塩線の神辺〜福山間で電化区間に乗り入れる。なお、国鉄時代には福塩線に府中以北の非電化区間に直通する福山発着の列車が存在した他、府中-下川辺間が電車の折り返しが運用に支障をきたすにもかかわらず電化されていたことがあった(1962年撤去)。

JR西日本 山陽線[編集]

1のパターン。神戸~岡山間で各方面直通の特急が、櫛ヶ浜~徳山間で岩徳線直通が、幡生~下関間で山陰線直通がそれぞれ乗り入れる。

JR九州佐世保線全線・大村線 早岐 - ハウステンボス間[編集]

1.2.4.のパターン。佐世保線は日中(除く江北 - 早岐間の一部運用)、早岐 - ハウステンボス間については終日、すべての普通列車が大村線の非電化区間に直通するか、乗務員の関係で気動車で運転される。電車列車は特急みどり・ハウステンボスのみで、特急みどりは早岐〜佐世保間で乗車券のみで自由席に乗れるサービスを実施している。

もっとも、大村線には明治時代に作られた小断面トンネルが複数存在し、全線の電化は不可能である。

JR九州 日豊線[編集]

1.のパターン。西小倉~城野間で日田彦山線直通が、別府~大分間で久大線及び豊肥線直通の特急列車が、宮崎~南宮崎間で日南線直通が、隼人~鹿児島間で肥薩線直通がそれぞれ乗り入れる。

JR九州 豊肥本線[編集]

1.のパターン。熊本~肥後大津間で特急及び普通が多数運転されている。

JR九州 日南線[編集]

1.のパターン。宮崎空港線に乗り入れない気動車列車が南宮崎 - 田吉間で電化区間を走行する。

JR九州 長崎本線[編集]

1.のパターン。佐賀 - 久保田間で唐津線の列車が乗り入れる他、西九州新幹線開業に伴い肥前浜 - 長崎間の電化が撤去され、気動車の運用が江北 - 諫早間にて新たに設定されたため江北 - 肥前浜間が架線下DC区間に加わった。

オランダ村特急[編集]

5.のパターン。基本的な運転区間は門司港-佐世保間であったにもかかわらず、九州全土に長崎オランダ村をPRできるように気動車で運転され、485系「有明」との協調運転も行っていた。1992年の他特急転用以降も1.のパターンで鹿児島本線(ゆふDX、ゆふいんの森II)や長崎本線(シーボルト)、日豊本線(あそぼーい!)の電化区間を通る。

JR四国[編集]

1.のパターン。気動車特急の南風の岡山-琴平間、うずしおの岡山-高松間、しまんとの高松-琴平間、宇和海の松山-伊予市間、ミッドナイトEXP高松・モーニングEXP高松の全区間が電化区間となる。普通列車も松山-伊予市間は乗客流動から気動車列車が多く、多度津-琴平間にも非電化区間に直通の気動車列車がある。

東武鉄道・会津鉄道・野岩鉄道[編集]

3.4.7.のパターン。会津鉄道の会津高原尾瀬口〜会津田島間は最大で電動車2両分の変電所容量のため、「リバティ」など長編成列車が乗り入れる際は、反対方向は気動車運転にせざるを得ない。
2022年3月11日のダイヤ改正後、会津高原尾瀬口〜会津田島間で電車は「リバティ」のみとなり、普通列車は全て気動車運用となった。

過去には、2021年現在、定期で乗り入れる「リバティ」も会津荒海駅で交換の場合、対向列車は気動車であり、早朝に当該区間のみを気動車で運行する列車があった。
さらに、2015年9月10日の豪雨で不通になったのち19日に運用再開した際には野岩鉄道の上三依塩原温泉口~会津高原尾瀬口間については前者の区間とともに停電の影響が残るために同年12月11日まで全列車気動車での運転となり、電車は上三依塩原温泉口止まりとなっていた。

AIZUマウントエクスプレス[編集]

1.のパターン。非電化区間の会津田島以北に乗り入れるため、必然的に気動車で運用されるが、操縦者免許の問題から全区間会津鉄道の運転手が乗務を担当する。

SL大樹[編集]

客車列車だが事実上の6.のパターン。鬼怒川線で2010年代後半に蒸気機関車列車の運転を開始する時点では東武線内から電気機関車が全廃されていたため、補機や車両回送、代走はスペック的に丁度良いと思われる、JRから購入したDE10が担う[注 6]

過去の例[編集]

こちらも電化撤去の例は「電化の廃止」を参照。

JR北海道 室蘭本線 室蘭 - 沼ノ端間[編集]

2.のパターン。2011年より711系を置き替える際、新車の製造コストを抑制するため、札沼線電化で余剰となったキハ141系を活用しそのまま玉突き代替して以降785系や789系の一部間合い運用以外はすべて気動車で運転されていた。2023年春、737系電車の投入に伴い原則全電車化。

東急東横線[編集]

3.のパターン。1936年から変電所を増設せずに増発すべく、キハ1形ガソリンカーを8両導入したが、戦時中の燃料事情悪化により短期間で終了した。

常磐線[編集]

1.または4.のパターン。1985年まで運行の急行「奥久慈」や1978年まで運行の急行「そうま」で架線下DC運行があった。

水戸線 小山 - 下館間[編集]

交直跨り区間だが、1.のパターンで真岡線に直通する列車が運行されていた。

房総地区[編集]

1のパターン。1975年3月に総武本線佐倉以東、成田・鹿島線成田以東が電化されるまで、新宿・両国~佐倉~成田間で気動車急行が架線下だった。

JR東日本 越後線 吉田 - 新潟間[編集]

6.のパターン。E129系の一部が2022年の水害により使用不能となった後、E127系が上越線で運転されていたが、更なる水害で使用不能となったE129系が増加したため、GV-E400系の一部を越後線の運用に充てることになった。現在は解消済み。

もっとも、越後線では一部区間で電化撤去の噂があり、今後が注目される。

中央東・富士急行・小海・大糸線[編集]

1または4。戦前に中央本線は東京-甲府のみ電化され、飯田線、大糸線南部は前身の私鉄によって電化されていたが、中央本線の甲府以西は上諏訪まで1964年、篠ノ井線松本等へは1965年まで電化されていなかった。そのため急行「アルプス」、「天竜」等はキハ58系列での運行となり、八王子、大月、甲府、飯田、信濃大町などで、優等列車群が架線下DCとなっていた。それに伴い、富士急行乗り入れの急行も新設時から全区間架線下DCにも関わらず気動車だった。
ちなみに、「アルプス」は、小海線や大糸北線乗り入れ列車を併結していたため、1975年2月まで架線下DCの気動車列車が残り、1975年3月以降も大糸線で運行する急行「白馬」、「つがいけ」で架線下DCが存在した。
なお、普通列車では、1975年3月以降も大糸線信濃大町以北や中央東線の上諏訪 - 小淵沢間で非電化区間に直通する気動車が運行された。

中央西線[編集]

事実上の4.あるいは6.のパターン。1968年の中央本線中津川以西電化以降、優等列車群で架線下DCが生じた。1973年には運行区間が全線電化されるも、特急「しなの」では1975年までキハ181系の運用が大阪直通1往復を含む2往復残され、急行「赤倉」も165系の手配や他急行との共通運用解消の目処がつかず1982年までキハ58で運行された。それ以外でも夜行急行「ちくま」、「きそ」などで廃止や臨時化まで気動車列車で残されたパターンも多い。
また、1.のパターンで「ホームライナー太多」などの太多線直通や明知線に直通する気動車もあった。

東海道本線 新所原 - 豊橋間[編集]

1.のパターン。通学時などに、二俣線列車の一部が気動車で乗り入れていた[注 7]

JR西日本 北陸線[編集]

1.のパターン。シュプール白馬・栂池は大糸線の僅かな非電化区間に乗り入れるために気動車が用いられていた。
また、七尾線が非電化だった頃、津幡〜金沢間を乗り入れる気動車が架線下で、加えて大阪から和倉温泉を結んでいた列車、「ゆぅトピア和倉」は、ジョイフルトレイン「ゆぅトピア」を無動力の状態で大阪~金沢間を485系の後部にくっつけて運行し、金沢で分離するという運転形態をとっていた。
これらの運転形態は、七尾線の電化完成で必要とされなくなり、1991年に和倉温泉以北直通の急行「能登路」のみとなり、2002年に廃止された。

JR西日本富山港線[編集]

4.のパターン。通勤・通学時間帯以外は需要が少なく、高山本線で使用のキハ120形を日中および夜間に運行していた。富山ライトレール富山地方鉄道富山港線転換で解消。

遠州鉄道[編集]

1.のパターン。1960年代に二俣線では国鉄二俣線の遠江森駅まで直通の気動車列車が設定されていた。なお、浜松のお荷物天竜区は天竜市の時代から遠鉄電車と天浜線天竜二俣駅以西の直通列車の復活を要望しているが、電化の場合、鳥羽山トンネルの堀下げが必要で一旦保留となっている。この場合は架線電圧の関係で蓄電池電車バイモード車両でも問題はなさそうである。また、奥山線は廃止まで部分電化のため、全線直通列車は電化区間を気動車で運行していた。

特急北アルプス[編集]

1.のパターン。非電化の高山本線に乗り入れるべく、名鉄では珍しく気動車で運転され、新名古屋の地下ホーム発着も珍しかった。2001年に完全に廃止されている。

一部の名鉄特急[編集]

4.のパターン。前述の「北アルプス」の間合い運用で運行。乗り入れ特急では現れない東岡崎駅豊橋駅発着列車もあった。2001年に「北アルプス」廃止、キハ8500系引退により運行終了。

富山地鉄特急「アルペン」[編集]

4.のパターン。前述の「北アルプス」の間合い運用がされたことがある。

名鉄広見線・三河線現存区間[編集]

1.4.のパターン。八百津線および三河線末端区間への送り込みのために一部列車をLE-Carで運行した他、広見線末端区間の一部列車を八百津線用のLE-Carでの運行とした。2001年の八百津線廃止で広見線の運用が、2004年の三河線一部廃止で同線の運用が終了。

北陸線(現在の直流化区間)・湖西線(近江今津~近江塩津間)[編集]

2.のパターン。北陸線のデッドセクションが坂田~田村間にあった頃は坂田と河毛は2両分の簡素なホームしか無かったため、普通列車でも3両以上の列車は通過していた。そこで坂田と河毛に停車する2両の列車に気動車が用いられ、木ノ本(朝夕は入出庫を兼ねて敦賀)~米原(新快速彦根延長前の通勤通学時や新快速が彦根折り返しの頃は接続を考慮して彦根)に運行されていた。また、湖西線のデッドセクションが永原~近江塩津間にあり、この区間の普通列車は旅客流量を勘案した上で全て気動車で近江今津~近江塩津・敦賀を運行されていた。1991年の長浜以南の直流化で交直流電車に余裕が出来たため、交直流電車に置き換えられて終了。(坂田は8両対応のホームを作り移転し、河毛はホームを3両分に延長したため、通過する普通列車はなくなった。)

近江鉄道[編集]

2.のパターン。名鉄と同じく、コスト削減の為にレールバスを運転していたが、ラッシュ時の扱いに支障が出たり、軽すぎて踏切が動作しなかったりと散々だった為に電車運転が復活した。

大和路線[編集]

木津〜加茂間電化後も、急行かすがが架線下DCで奈良まで乗り入れていたが、急行かすが廃止により解消。以降、木津〜加茂〜笠置を直通する定期列車は運行していない。

福知山線[編集]

1.のパターン。全線電化後も、特急エーデル鳥取エーデル丹後タンゴエクスプローラータンゴディスカバリーといった変わり種の特急や、夜行急行だいせんが走っていた。2011年の改正で、電車のみの運行となった。

JR西日本 可部線[編集]

1.のパターン。広島運転所への送り込みを兼ね、可部以西に直通する気動車列車が山陽本線を含む電化区間の広島 - 可部間で運行されていた。

JR九州日豊本線 佐伯-延岡間[編集]

2.のパターン。2009年以降、老朽化の進んだ717系の置き換えのために高価な交流電車ではなくキハ220形を新製および転属させて運用に就かせていたが、2018年3月をもって787系に置き換えられた。

特急ゆふいんの森[編集]

1.のパターン。現在は気動車の運行がない日豊本線の城野 - 別府間で1992年から1995年まで、久大本線直通の小倉発着の「ゆふいんの森」が運行された。

JR九州 福北ゆたか線関連[編集]

1.のパターン。2001年10月の福北ゆたか線の電化まで、電化区間の鹿児島本線の小倉 - 黒崎間、吉塚 - 博多間などに篠栗・筑豊本線直通の気動車が乗り入れた。

JR九州 香椎線(西戸崎線)関連[編集]

1.のパターン。2020年のBEC819系乗り入れ開始まで、電化区間の鹿児島本線の香椎 - 博多間に気動車が乗り入れていた。

JR九州 長崎線 諫早 - 市布 - 長崎間[編集]

1.のパターン。電化時代より大村線直通列車や長与経由の列車はすべて気動車で運転されていたが、2022年9月23日の西九州新幹線開業に伴い電化撤去となり架線下DCは解消した。

架線下でのディーゼルカー走行禁止[編集]

これは関連する事象として挙げる。欧州連合地球温暖化対策として架線下の気動車の走行をすべて禁止にすると規定しようとしている。これに基づき以下のような車両が現れた。

車種[編集]

次世代の蓄電池電車[編集]

電化区間では普通の電車として走行し、非電化区間では電化区間や充電設備で充電した電力で走行する車両。排ガスを全く出さないため環境に優しいが、電力をどのように発電するかで環境への負荷は変わる。また、非電化区間での走行可能距離が蓄電池の容量に左右される弱点がある。
日本でもEV-E301系を皮切りに導入が進んでいる。日本での他のメリットとしては動力車操縦免許が電車運転士免許でも可能で、線区によっては乗務員運用を合理化できる点が挙げられる。

燃料電池ハイブリッド電車[編集]

燃料電池と蓄電池を併用して電動機を駆動する車両。排出するのは水なので二酸化炭素を出さない分環境には優しいが、殆どの場合はその水素の生成段階での二酸化炭素排出があるので、解決にはならない。
日本でもFV-E991系を用いて試験走行を実施中。

バイモード車両[編集]

電化区間では電車として、非電化区間ではハイブリッド機構でない電気式気動車として走行する車両。非電化区間での排ガスが避けられないため、完全な地球温暖化対策の解決には至らない。
日本ではE001系のみに採用されたが、エンジンがかなり大きくなってしまった。

日本での動向[編集]

2020年代の時点で前述の動きの他にハイブリッド気動車を特急に投入する、さらにはその燃料にバイオ燃料を使用する、ついでに水素エンジンへの置換といった環境対策は行っている。しかし、電化区間直通の気動車や閑散電化区間の気動車の廃止の動きはなく、到底「架線下のディーゼルカー走行禁止」には至らないものとみなして良い。

関連項目[編集]

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  1. インバータを必要としない交流→直流変換のみでサイリスタ連続位相制御を採用した交流電車(711系電車など)は1M方式(2両ユニットを組まない電動車)によるコストダウンが可能で、交流電車全てがコスト高になるとは限らない。一方、交直流電車は直流区間でも使用できるように交流区間はただ交流を直流に変換するだけなので必然的にコスト高になる。
  2. JR東日本の場合、越中島貨物駅と仙台臨海鉄道の仙台ふ頭駅、JR東海の場合、名古屋港駅でレールを船から引き揚げるが、その駅がある越中島支線と仙台臨海鉄道、名古屋港線はそれぞれ非電化となっている。
  3. 内訳はキハ40-301,304、キヤE193系3両、キヤ95系3両編成2本、キヤ141系2両編成2本、DEC741形2両
  4. 一例として、宗谷本線の旭川 - 北旭川間は旭川運転所の移転に伴い電車送り込みのために電化された。
  5. 普通列車は一時期気動車が減少したが、現在は再び増加している。
  6. 急曲線の多い鬼怒川線では、EF64などの2500kW級のJRのF型機では過剰スペックと思われる。ちなみに関東大手私鉄では西武が、D型電機のE31を所有していたが、2010年に大井川鐵道に3両が譲渡されていた。秩父鉄道もD型電機を保有しているが、年代的にも古めで、手放す気はなさそうである。
  7. 1987年の天竜浜名湖鉄道転換時に乗り入れ列車の代替列車が新所原 - 豊橋間で設定されず、同区間では減便となった。