蓄電池電車
蓄電池電車(ちくでんちでんしゃ)は、車載の蓄電池を電力として用い、架線からの集電に頼らない電車のこと。このページでは、蓄電池機関車についても記載する。
概要[編集]
非電化区間では蒸気機関車や気動車を走らせるのが一般的であるが、諸般の事情により気動車の運用ができない場合、蓄電池を電力源とし、モーター駆動する電車が運用される場合がある。なお、充電については専用の充電器使用もしくは架線からの集電によって賄う。
かつては、出力に比べ電池重量が嵩み動力分散式の車両に向かない鉛蓄電池しか無く、長距離走行も困難というデメリットがあり、日本では一度廃れた。
しかし、鉛蓄電池と比較してエネルギー密度が高く長寿命で、出力に比して軽重量のリチウムイオン電池の開発・普及や、電力回生技術の向上によって制動時の電気エネルギーの活用が進んだことや、地球温暖化対策により近年再び見直されつつある。
歴史[編集]
歴史自体は古く、19世紀の時点で欧米では試験が繰り返され、ドイツについてはETA176形などの単行蓄電池電車が大量に製造され、運用についていた。
日本では1950年に宮崎交通が国鉄からキハ40000を譲り受けた際に蓄電池式の電車チハ100形に改造したのが始まりだが、これも1962年の廃止で運用を終了した。
この他にも、各地の専用線や地方鉄道ではトンネルの多い黒部峡谷鉄道向けの黒部峡谷鉄道BB形蓄電池機関車や沿線に火薬工場のあった貨物専用の須賀線向けの国鉄AB10形蓄電池機関車、西武山口線のおとぎ電車に使用の西武B11形蓄電池機関車といった蓄電池機関車も運用されていた。
本格的な見直し研究が始まったのは1999年頃のことで、架線集電と蓄電池のハイブリッド式電車にJR総研が目をつけた。まずは豊橋鉄道の路面電車線で廃車されたモ3300形を購入し、蓄電池仕様の車両に改造して試験を行った。この試験結果をもとにLH02形LRVを製造して試験を行っている。
JR東日本でも廃車になったキヤE991形を改造したクモヤE995形で架線・蓄電池ハイブリッド電車の試験を行い、他に、JR西日本とJR九州も試験を行った。
架線集電と蓄電池のハイブリッド式電車は、既投入のJR線区の近隣でも、線区別の乗務員運用や経営管理との両立や蓄電池の使用効率の問題で、五能線の東能代 - 能代間の一駅各停の一部や後藤寺線の列車がそれぞれ奥羽本線、福北ゆたか線直通の蓄電池列車として置き換わらないといった事例がある[注釈 1]。
また、既投入JRの電化・非電化区間の直通のみならず、試験時のLRV、JR以外の電化主体の路線から非電化の路線への直通列車[注釈 2]への適用やJR水戸線のように異方式電化の区間が短い線区での実用化も可能と思われるが、2024年の時点で思ったほど普及は広がっていない。
現状[編集]
2014年に、クモヤE995形の試験結果を元にJR東日本で烏山線のEV-E301系で実用化されている。
2016年にはJR九州の若松線と香椎線でBEC819系として実用化を果たし、JR奥羽本線・男鹿線向けにJR東日本にもライセンスされ、EV-E801系として運行している。