カレー
カレー(Curry、咖喱、咖哩、カリー)は、多種類の香辛料を併用して食材を味付けするというインド料理の特徴的な調理法を用いた料理に対する英語名。転じて、それを元にしたヨーロッパ系の料理や、同様に多種の香辛料を併用して味付けされる東南アジアなど[注 1]の料理も指す。 以上は「カレー風味」の意であるが、ラーメンと並んでほぼ国民食と云われるカレーライスの略称として使われることも一般的である。「おい、カレー食いにいこうぜ」と誘われたら「カレーライス」だと判断するのが一般的であって、「カレーうどん」や「カレー南蛮そば」ではない。ナンとともに食べるカレーは、「ぎりぎりセーフ」かもしれないが。
概要[編集]
日本ではインド発祥と云われるが、インドにカレーという料理があるわけではなく、香辛料(スパイス)を混合して味付けがされているものはカレー風とされるだけである。日本でいう味噌や醤油やのような感覚ではあるが、香辛料・香味料の配合は各家庭で異なっていたらしい。現在では香辛料を乾燥・消毒・粉末化などして「合わせ香辛料」的に加工した「ガラムマサラ」が普及しており、「カレー粉」などが生まれた。
現在、日本で食べられているカレーライスは、イギリス風(イギリス海軍から日本から伝わったとされる)のカレーであるが[注 2]、「インド風」「イギリス風」がある。「イギリスでは御飯にカレーを掛けて食べるわけではなく、パンにカレーを付けて食べる」という意見もあるが、日本のカレー文化はそれらの文化から派生しつつも独自の発達を遂げている。
また、インドにおいて日本のカレーのようにカレー単独で食べる場合、ナン(無発酵パン)やチャパティ(発酵パン)を使って食べるのは北部のみで(そもそも小麦は北方で栽培されるため、南方では米が多い)、南部では日本と同様米を使うことが多い。ただし使用する米は長粒種のインディカ米で、日本の短粒種(ジャポニカ米)とは異なる。
カレーを食べる場合、辛いカレーの場合は辛さと体温の上昇率による個人差にもよるが、食事で摂った余計なカロリーを熱で排出してダイエットすることも可能である(ただし辛さは食欲を増進したり、辛いために飯を食べてしまって太る場合もある)。
語源と分類[編集]
タミール語でソースを意味するKariが語源とされる。勿論、「辛い」が由来ではない。(辛えエエエエのギャグを言った人は大体その場を寒くする。)
をひっくるめて「カレー」と呼称するため、日本人以外には混乱を起こしかねない。
レトルトカレー はカレールウを長期保存するために開発された製品であり、カレーうどんはレトルトカレーと麺つゆと冷凍うどんがあれば簡単に作れる。
歴史[編集]
イギリス[編集]
長い航海では搭載している塩漬け牛肉、バター、チーズといった食材が痛み、悪臭を放つようになった。そこでこれらで作ったシチューはカレー粉の前身であるガラムマサラによって臭い消しを行なった。また、固く焼き締めて岩のようになったビスケットはそのままで食べることはできないのでこのシチューに入れた。
詳細は「近世イギリス海軍の食生活」を参照
日本において[編集]
日本でカレーのレシピが初めて文献で確認できるのは、明治5年(1872年)に出版された「西洋料理指南」という書籍である。それによると当時は具にネギ、アカガエル、生姜、鶏、鯛、牡蠣などを煮て、それにカレー粉と小麦粉を加えるのが調理法として記録されている。
ご飯にカレーをかけたカレーライスは軍隊や食堂に取り入れられて日本で急速に人気が拡大していく。明治時代後期にはカレーうどんも生まれた。また、カレー粉は明治時代後期までは外国からの輸入に依存していたが、明治38年(1905年)に大阪府の薬種問屋・「大和屋」(現在のハチ食品)が日本初のカレー粉製造に成功して、日本国産のカレー粉販売も始まった。
カレーライスと福神漬け[編集]
日本では、カレーライスのお供として福神漬けがよく用いられるが、これは日本郵船の旅客船において福神漬けをセットにしたことが由来とれる。それからカレーのお供としては福神漬けが根付いている。#参考文献を参照のこと。
すなわち、福神漬けはカレー用に作られた漬物ではなく、「刻みピクルス」「花辣韭」「紅生姜」とともに用いられる薬味のひとつであるため、牛丼にも合う。
「カレールウの素」への変革[編集]
インドでは、毎回スパイスを調合してカレーを作っていた[注 3]。しかし、それが不便だと感じたイギリス人はそれを予め調合しておいたカレー粉を作り、日本でもオリエンタルなどで販売された。しかし、それでも物足りなかった便利なものを作るのが大♡好きっ♡!な日本人は、量も調整しなくていい「カレールウの素」を開発した。
カレーとナン[編集]
前述のようにカレー料理にナンをつける慣習はインド全土に拡がっていない。
一方、日本では、神田川石材商工の先代社長が「インドのタンドール窯は料理に欠かせない」と思い込み、日本国内のインド料理店にタンドール窯の売り込みを行った結果、日本国内のインド・ネパール料理店にタンドール窯が普及して、カレー料理にナンが付くようになった[1]。
無水カレー[編集]
2024年の6月、X(旧Twitter)にて無水カレーがトレンド入りした。これはトマトと玉ねぎの水分で水を補う物である。油を使わないのでヘルシーとの評判である。なお、トマトは湯剥きしたほうが口当たりがよく、タマネギは細かく切ってから空気に晒したほうが血栓予防効果があるという。なお、タマネギは油を使わなくても焦げつかない。
カレーライスの調理方法[編集]
蛋白質と野菜と飯とカレールーがあればなんとかなり、栄養バランスもよければそこそこ日持ちもするため、愛食される。小笠原母島では生活の単位が「入稿日から就航日」という六日間までであるため、「出航日から煮込んだカレー」を売りにした店もある。
鍋にバター、ラード、ヘット、胡麻油などの油脂を引き、温めてから肉や野菜を入れて炒める。ただし野菜は強めに炒めるとか肉は低温調理するほうが柔らかいとかメイラード反応がどうこうとかいろいろあるので、このあたりは料理の公式に従うのが吉である。野菜としては塩を入れる。よく使われる野菜として、ジャガイモ、ニンジン、タマネギがあるが、夏野菜のナス、ピーマンのほか、キノコ類をを入れることもある。タマネギが透明になると水を入れて弱火で煮込む。野菜に十分に火が通ったらカレールウを入れて溶けるまで弱火で煮込む。
「毒でも入れないかぎり失敗しようのない料理」として豚汁やクリームシチューなどとともにキャンプ料理の定番であるが、ここにメシマズ(アレンジャー)の仕切り屋や出たがりが出しゃばってくると惨事が起きる。したがって「無個性という個性」「公式遵守」がコツである。カレールーのパッケージを熟読して、その通りに作ればいい。個性を出したければ下ごしらえとか下味とか具材の選択やスパイスのちょっとしたアレンジなどで勝負されたい。
使用される肉について[編集]
大日本帝国海軍ではイギリス式に牛肉を使っていたが、太平洋戦争末期の食料不足で、成育の遅い牛に代わって豚が使われた。日本国内では東日本が豚肉、西日本が牛肉を使う傾向が多い。とはいえチキンカレーや海鮮カレーなどもあるので、必ずしも「肉」である必要はない。牛筋カレーやチキンカレーがちゃんと作れれば、尊敬される。
脚注[編集]
- 注
- 出典
関連項目[編集]
参考文献[編集]
- 高森直史『海軍食グルメ物語』光人社2008年5月2日第4刷発行。
- 稲保幸『スタンダードカクテル』新星出版社1996年2月25日発行。
- 青木栄一「英海軍艦隊勤務の変遷」〈世界の艦船No.703〉海人社2009年3月1日発行。