周遊券
周遊券(しゅうゆうけん)とは、かつて日本国有鉄道及び、その後継会社のJRグループが発売していた乗車券である。
概要[編集]
いわゆる企画乗車券とは異なり、規則や通達によって発売方法や使用方法、払い戻し方法が決められている乗車券であった。
種類[編集]
周遊券の記載の区間に従って乗車する一般周遊券と一定の周遊区間で自由に乗車できる均一周遊券があった。
内容[編集]
一般周遊券[編集]
以下、3つの条件で発行された。有効期間1か月であった。当初、国鉄線、会社線ともに1割引だった。
- 日本国有鉄道及びJRグループの営業する鉄道、自動車、航路といった路線を営業キロ201km以上乗車すること[注 1]。
- 出発駅と到着駅が同じであること。
- 定められた周遊指定地を極端に大回りせずに2か所以上訪れる乗車船券を発行すること[注 2]。
周遊指定地は全国に最大295か所あった (1988年1月)。
- ワンポイント周遊券
- 上記の3つの条件のうち、周遊指定地1ヶ所組み込みのみで発売した周遊券。鉄道管理局やJR支社裁量で周遊地を指定して発売した。
均一周遊券[編集]
均一周遊券でも自由周遊区間や途中経路に接続する周遊指定地への私鉄線の割引特典があった。
ワイド周遊券[編集]
出発駅から周遊区間出入口までのA券と、周遊区間[注 3]と、その出発駅までの帰り道のB券から構成。道南、みなみ東北、九州北のように地域の半分を周遊区間としたワイドも存在した。
周遊区間出入口までの往復は急行券なしでの急行列車の普通車自由席乗車[注 4]や東名・名神ハイウェイバスの利用が可能[注 5]で、周遊区間内は特別急行列車の普通車自由席が特急券なしで乗車可能だった。また、四国・九州方面で関西汽船の航路が片道使用可能なコース、北陸で能登地区追加のオプション、北海道で片道十和田湖経由のオプション、東日本発売の信州で片道名古屋経由[注 6]もしくは草津・白根経由のオプションもあった。有効期間は20日、14日、10日。
ミニ周遊券[編集]
ワイド周遊券と設定はほぼ同じ。自由周遊区間は「東京ミニ」や「山口・秋芳洞ミニ」のような中規模のものもあったが、概ね狭かった[注 7]。また、周遊区間での特急券なしでの特別急行列車の普通車自由席の特典はないが、急行券なしでの普通急行列車の普通車自由席乗車や東名・名神ハイウェイバスの利用が可能だった[注 8]。券種は「ミニ」の語呂と同じ32種類[注 9]だった。有効期間は14日、10日、7日。
立体周遊券[編集]
ニューワイド周遊券[編集]
立体周遊券の発展的解消で登場。北海道、九州に加え、四国も設定され、後の周遊きっぷに似た制度であった。
飛行機利用の制限がないほか、航路や、国鉄線の大回りも認められた。但し、ニューワイド新設時から路線を増やした東名・名神以外の高速バスは経路に組み込めなかった。
ルート周遊券[編集]
一般周遊券の中で特に人気のルートをあらかじめ設定した周遊券。経路上で急行列車の普通車自由席は急行券なしで乗車できた。国鉄分割民営化後、しばらくして廃止されたが、利用の大半を占めた立山黒部アルペンルートはJR各社が代替の企画きっぷを販売している。
登場から廃止まで[編集]
1950年代に登場、均一周遊券は1960年代に登場、1972年に利用のピークを迎えたが、その後は西日本を中心に均一周遊券の最大の特典である自由席のある長距離急行列車の減少も相まって、利用実績が低下。1980年代初頭にワイド周遊券で自由周遊区間内の特急列車自由席のフリー乗降を可能としたなどの改革を行ったものの売り上げ減少はとどまらず、1998年(平成10年)3月31日発売分をもって廃止された。
その後、周遊きっぷに引き継がれたものの、これも15年後の2013年(平成25年)3月31日に発売終了した。
関連項目[編集]
注[編集]
- ↑ 国鉄分割民営化後に設定された高速バスの一部は除外された。
- ↑ ただし、佐渡島、沖縄といった特定周遊指定地は一か所の訪問で周遊券が成り立った。また、訪問箇所に数えない準周遊指定地も存在したが、準周遊指定地への乗車線券を組み込むことで、JR(国鉄)線を201km以上にする工夫を施したり、「極端に大回り」にならない決め手になることがあった。
- ↑ 囲まれたゾーンを対象としたので、国鉄(JR)バスの枝線区も自由乗降可能だった。
- ↑ 全車座席指定の臨時急行「銀河」などで急行料金が必要だったこともあり、普通車指定席、グリーン車や寝台車でも急行料金免除を求める声もあったものの、均一周遊券廃止まで実現しなかった。国鉄はマルスのシステム上、急行列車で指定席券、グリーン券や寝台券のみの発券ができなかったことを免除ができない理由としていた。
- ↑ 山陰ワイド周遊券の大阪以東発は中国ハイウェイバスも利用可能だった。
- ↑ 飯田線はオプション無しでも経由可能で、信州ワイドに限り東名豊川から東名ハイウェイバスに乗車可能だった。
- ↑ 券片に示された鉄道・自動車線区だけ、自由乗降可能だった。
- ↑ 姫新線経由が可能でも中国ハイウェイバス利用は、自由周遊区間につながる「津山・美作ミニ周遊券」に限られた。また、「松江・出雲ミニ周遊券」では、広島 - 出雲市間で中国自動車道経由の「出雲350(現・みこと号)」運行開始後に一部の発地で経由利用が可能になった。
- ↑ 設定当初は「越前・若狭湾ミニ」があったが、上越新幹線開業後に無くなり、「新潟・弥彦ミニ」が設定された。