小田急線列車内無差別殺人未遂事件

小田急線車内無差別殺人未遂事件

日付	2021年8月6日
時間	20時30分ごろ
場所	小田急電鉄小田原線成城学園前駅 - 祖師ケ谷大蔵駅の線路を走行していた列車内
死者	確認なし
負傷者	10人（うち重傷1人）
原因	不特定の女性に対する怨恨
結果	新宿駅 - 向ケ丘遊園駅間の上下線で一時運転見合わせ
犯人	T容疑者（単独犯行）
罪状	殺人未遂罪 送検容疑

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小田急線列車内無差別殺人未遂事件（おだきゅうせんれっしゃないむさべつさつじんじけん）とは、2021年8月7日午後8時30分ごろ、小田急電鉄小田急小田原線成城学園前駅 - 祖師ヶ谷大蔵駅間を走行する快速急行の列車で発生した殺人未遂事件である。

概要

小田急小田原線成城学園前駅～祖師ヶ谷大蔵駅を走行していた上り快速急行新宿行きの列車内(当該車両は5000形5056×10)で、突如一人の男が刃物を振り回し乗客複数人を切りつけ、乗客に殴る蹴るの暴行を加えるなどした事件が発生した。この事件で20代～50代の男女10人が負傷し、少なくとも4人が、刃渡り20センチメートルの牛刀によって切りつけられたという。また、負傷者の一人である東京都内在住の女子大学生は、背中や胸を7か所切られ重傷を負っている。その後、緊急ボタンが押され電車が停車した。犯人とみられるT容疑者は他乗客がドアコックで開けたドアから逃走し、午後9時半ごろ杉並区にあるコンビニに血が服についた状態で来店し「自分がやった」と名乗り出た。そのため、店員が警察にその旨を通報し身柄を拘束され、成城警察署まで連行されたとみられる。登戸駅から乗車した犯人Tは、7号車にて無差別に人々を切りつけた上、8号車ではサラダ油に火をつけ多くの人々を殺害しようとしたことが分かっている。乗客が事件後SNSに投稿した、当時の列車内の動画では、医療従事者がけが人を手当てしている様子が伺える。

当時の状況

当時事件発生列車に乗車していた男性によれば、急に前車両から数十人がなだれ込んできて驚いたという。その際、服に血の付いた女性から「刃物を振り回している男性がいる」と聞き、何が起こったのかも把握できず不安だったと話している。また別の男性は、電車内は多くの人が別の車両に逃げようともみくちゃになり、パニック状態になっていたと述べている。

なお、刺傷させるだけでなく、床にサラダ油まいてライターで火を付けようとしたが、燃え広がらなかったという。サラダ油は常温では、燃え広がらない。ガソリンでなかったのが、幸運であった。「乗客が途中で降りられない快速急行を狙った」というから、計画性が伺える。

容疑者

容疑者は神奈川県川崎市多摩区在住の職業不詳の男性Tとみられる。乗客3名に対する殺人未遂の疑いで3回逮捕されている。容疑者は2021年5月ごろから世田谷区の生活保護を受けていた。

動機

犯行動機は「約6年前から幸せそうな女性を見ると殺したいと思うようになった」というものだが、直接のきっかけは明確でない。捜査関係者の取り調べで15年ほど前から女性一般に強い敵意を持っていたようであるが、事件に至る事情であり、直接のきっかけとはいえないが、女性に対する偏見に加え、生活上のストレスから犯行に及んだ可能性もあると捜査本部はみている。

また犯行の前日に、食料品店における万引きを女性店員から摘発されていたことが判明した。当初はその店に押し入ろうとしたものの閉店していたために、犯行場所を電車内に変更した。電車内にした理由は、密室で逃げ場がない上、多くの人を集中して殺すことができると思ったからだとしている。「女性店員を殺したいと思って再び店に戻ろうとしたが、閉店していたので、電車で事件を起こした」との供述から「万引通報の腹いせで事件を決意したとされる。

事件当日、ビールと酎ハイを万引きし、そこで酒のつまみが必要となり、新宿区内の食料品店でベーコンとオリーブを万引きしようとしたが、女性店員にみつかり110番通報された。万引きがバレたのは人生で初めてだったため、女性店員を逆恨みして殺そうとしたが。しかし閉店のためできず、殺害対象を電車の女性客に移したと想定される。

犯行現場を快速急行の電車内としたのは、事件発生区間の快速急行は、10分ほど無停車のため犯行しやすいといった理由が挙げられている。

起訴について

起訴状の罪名

想定されている罪名は殺人未遂容疑である。これは人を殺すつもりで殺そうとしたが、死に至らなかった場合である。 殺人未遂の構成要件は、①「殺意の有無」と②「行為の危険性」の2つである。

犯行の証明可能性

構成要件①は「大量に人を殺したかった」「幸せそうな人を殺したい」との証言から立証できそうである。構成要件②は「逃げ場のない電車内」で「女子学生の胸や背中など7か所を包丁で切りつけ」たことから立証できそうである。結果的に女子大学生(20歳)は重傷を負った。電車内で火を付けようとして、一部はサラダ油とはいえ、実行もしているが、これは殺人未遂容疑の一部には入っていないようである。

想定される裁判

立証は容易なので(警察はすぐに送検している)、刑の上限は死刑、下限は5年。執行猶予もありえる。殺人未遂では有罪の場合でも、情状酌量により懲役3年から5年の刑が多い。しかし自己中心的な動機は刑が重くなる傾向がある。直前の万引き事件や大量無差別殺人を供述していることから、情状にもよるが、重い判決も想定される。執行猶予付き判決の可能性もないわけではないが、社会的影響が大きいので、精神鑑定も行うのではないか。

鑑定留置

2021年9月22日から、東京地方検察庁は逮捕された男の鑑定留置を3ヵ月間の予定で行う。当時の精神状態や刑事責任能力を調べるのが目的である。

田中良弁護士(元検事)は妄想型の統合失調症の可能性があると述べる。精神疾患が認定されると、その程度によっては、刑が軽くなることがあるとした。

事件の背景

事件の背景については、これから明らかになるであろうが、事件については社会的な背景も考える必要があろう。大学の理工学部に進学しながら、中退して職を転々としたと言われる。その間、なにがあったのか、就職氷河期の影響はあったのか、今後の更生の可能性はあるのか、コロナ禍の影響、そこに至るまで相談できるところはなかったのかなど、検討課題は多い。

人物像

T容疑者と同じアパートに住む70代の住民は、「常識的な人で、あんな事件を犯すとは考えられない」と驚きを示した。2021年8月1日に、Tの自宅から煙が出ていたのを住民が発見した際周辺の住民は、自宅の窓から顔をのぞかせたTに大丈夫か確認を取ったが、声をかけても無反応であったという。このときのTについて、住民は「違和感を覚えた」と話した。捜査本部は普段から生活用品や食料品の万引を繰り返していたとみている。

警察の捜査

捜査本部は2021年8月8日、容疑者を重傷の大学生への殺人未遂容疑で送検した。自宅を家宅捜索し、事件のあった車両を現場検証した。送検容疑は8月6日20時半ごろ、成城学園前駅から祖師ケ谷大蔵駅間を走行する上り新宿行きの快速急行の電車内で、都内の女子大生（20）の背中や胸など7カ所を牛刀（刃渡り20センチ）で切り付け、殺害しようとしたことである。

容疑者の供述と証言

供述　

• 「人生がうまくいかない」と容疑者は考えていた。
• 「自分はクソみたいな人生を送ってきたため、幸せそうな女性を見ると殺意が沸いた」旨の供述をした。
• 数年前にインターネットで牛刀（刃渡り約20センチ）を購入。今回の事件で使用した。
• 「逃げ場がなく大量に殺せると思い、快速急行を狙った」
• 「殺せなくて残念だが、乗客が逃げまどう光景を見て満足した」
• 容疑者は最初は灯油を準備して車内に放火しようとしたが、買えなかったため(代わりに)サラダ油になったと供述した(ANNニュース、2021年8月8日)。
• 「サークルで知り合った女性に蔑んだ態度をとられた」
• 「出会い系サイトで知り合った女性とデートしたが途中で断られた」
• 数カ月前から生活保護を受けて生活していた
• 「自分の不幸は周りのせい」と考えている。
• 「仕事で女にあごで使われ、女に恨みをもっていた」と供述する。
• 職を転々とした理由を「人間関係が嫌になり辞めてしまった」と供述する。
• 電車の乗客の運が悪かった、と証言している。

証言

• 同じ大学のテニスサークルだった男性の証言「ムードメーカーで誰にでも優しく、先輩や後輩から慕われる存在だった」
• 逮捕された男の高校の同級生は卒業後に会ったとき、「仕事してなくて、職業・ナンパ師って言っていた」と語ったと証言した
• 捜査幹部は「大学時代から約15年間で、女性へのゆがんだ思いを蓄積させていった可能性もある」と語る
• 新歓コンパなどでは周囲になじめない新人を見つけると、積極的に声をかける優しい人だった。
• 最後に勤務していたのは都内のパン工場であったという。

影響

この事件の影響で、小田急小田原線の向ヶ丘遊園駅-新宿駅間が0時ごろまでの長時間に渡って運転を見合わせた他、運行していたそれ以外の区間にも大幅な遅れが発生した。。小田急小田原線の向ヶ丘遊園駅-海老名駅間、小田急江ノ島線と小田急多摩線が向ヶ丘遊園駅-新宿駅間運転再開まで各駅停車のみでの運行になったほか、東京メトロ千代田線との相互直通運転や特急ロマンスカーの運行が終日中止になるなど小田急にとっては経済的な被害が生じている。

インターネット上では犯人に関してさまざまな批判がされており、「人のせいにするとは最低」「自己評価は高いけど中身が伴ってない」という意見が多い。また違う視点から、「実行していないだけでそういった考え方を持つ人は多そう」「自分のコンディションがよくないとき、自分以外皆幸せに見えてしまうのは確か」など分析的な意見も出ている。

脚注

（注）プライバシー保護の観点から、出典名に容疑者の実名が記載されている場合は、ここではすべてT容疑者に置換しています。

関連項目

• 殺人未遂
• 2018年東海道新幹線車内殺傷事件 - 2018年、東海道新幹線の列車内で犯人が刃物で乗客を無差別に切りつけた事件。こちらは死者が1人出た。
• 東海道新幹線焼身自殺事件
• 2021年京王線車両放火事件

外部リンク

• 오다큐선 흉기 난동 사건 (韓国語版ウィキペディア)

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