大邱地下鉄放火事件

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
大邱地下鉄放火事件
Daegu subway fire 1.JPG
焼けたコインロッカー
日付2003年2月18日
時間9時53分
場所韓国大邱広域市
死者192人
負傷者148人
原因自殺(詳しい動機は不明)
犯人50代の男性1人
罪状放火
備考安全対策の不備で火災が拡大した模様
自殺には至らなかった模様
Wikipedia-logo.pngウィキペディアの生真面目ユーザーたちが大邱地下鉄放火事件の項目をおカタく解説しています。

大邱地下鉄放火事件(テグちかてつほうかじけん)は、2003年2月18日9時53分(現地時間)頃、韓国大邱広域市で発生した地下鉄列車への放火事件である。192人が死亡し148人が負傷する大惨事となった。

概要[編集]

自殺志願のある50代の男性が中央路駅到着直前に地下鉄車内でガソリンをまき、ライターで火をつけた。放火した動機は一人で死ぬのが悔しいから他の人を巻き添えにしようという身勝手なものである。自殺を決断するに至った経緯は不明。

更に相対式ホームである同駅に対向列車が入線したために被害が拡大した。尚死者は火元の列車より対向列車のほうが大きい。

火災報知機は作動したものの、誤作動が多発していたせいで今回も誤作動と思い込み、結果的に対応が遅れた。

この事件後、日刊ベストストアでの大邸の蔑称が「丸焼き」という大変不謹慎かつ不名誉なものになってしまった。

過去の事故との類似点[編集]

この事故には、過去に発生した日本の列車火災事故に見られたような問題点と類似する点がある。

例えば乗降ドアの非常開放手段が周知されていなかったこと、かつ側面窓の開口面積が僅かであったことにより車外へ脱出できない車両構造であったことが死者数を増やしたという点では桜木町事故と共通しており、トンネル内で発生した火災への対応として、列車を止めたことが被害を大きくしたという点は北陸トンネル火災事故に類似する。[1]これらは何れも日本が過去の経験において、犠牲を伴いながら教訓としてきたものである。韓国の地下鉄の建設に当たっては、日本が技術支援をしているため、その初期においては、こうした安全対策はそのまま持ち込まれた。しかし、何故必要なのかという教訓がしっかりと理解されなかったため、結果的に韓国の各地下鉄運営者はコスト低減のため安全対策を軽視するようになり、本火災事故につながったのである。日本国内では1990年代以降、システムの信頼性向上や車両の不燃化が進んだこともあり、悪戯による列車抑止を防止する観点から、ドアコックや消火器を極力隠す設計に移行しつつあった。しかし、この事件は、日本の鉄道関係者に世代を超えて桜木町事故の悪夢を思い出させることになり、再び非常時対策優先の表示・配置に回帰した。一時期コストダウンの一環として廃止されていた貫通路ドアの復活とドアクローザーの取り付けも教訓の中のひとつである。

不燃車両への論議[編集]

韓国の地下鉄は日本の技術援助によって建設されてきた。日本では人為的な放火による大規模列車火災事故の例はない。そのため、世界各国のメディアインターネット等において、本事件のように故意に可燃性液体が撒かれて放火された際、日本の地下鉄車両の防火構造をもってしても火災には対応しきれないのではないかという議論が湧き起こった。しかし、該当車両は韓国で独自に設計・製造した車両で、製造コスト低減のため、日本の物よりも基準が緩い「燃材」を用いており、これが被害を大きくした原因となったことが判明している[2]

日本の基準による地下鉄等旅客車は、高温でも容易に変化・劣化しない「燃材」を使用することが義務付けられており、実際に帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄)で廃車車両を利用した燃焼実験を行った際には、ガソリン等の可燃物が撒かれても、それ自体は燃えるが車両の内装品には(着火する可能性もあるが)少なくとも数十分以上の間着火しないことが確認されている。また、1990年代に地下鉄内で連続放火ボヤ騒ぎがあったが、いずれも座席の表皮やクッション材を僅かに焼失しただけだった。

大邱の火災で燃焼した主要な燃材は、乗客の着衣ならびに人体そのものであり、車両の不燃化だけでは同種の車両火災は防ぎようがないという点に着目した研究は存在しない。ただ本件の場合、前述の通り火災初期段階から延焼に至るまでの経緯で、車両・設備側の不備により火炎の伝播を早めている為、少なくともこの点では日本の地下鉄はより徹底した対策を採っている。

本事件では駅に通風口が1箇所しかないという排煙の悪さや、非常口の分かりづらさ、誘導員の不在などが影響し、列車から脱出しても駅出口までに辿り着けずに一酸化炭素中毒死する犠牲者が少なくなかった。日本の場合、地下鉄施設内の延焼防止や排煙についても設計段階から織り込まれており、さらに過去に起きた地下鉄サリン事件の教訓などから、駅員に対し徹底的に乗客誘導の教育が行われている[3]

脚注[編集]

  1. 北陸トンネル事故の時までは、走行風によって即延焼するから他の異常発生時と同様に停車が第一、と考えられていた。事故後、実験により走行を続けて安全を確保したほうが良いことが確認され、「地下線内やトンネル内で出火した場合は、停車せずに地上部に脱出するまで走行を続けること。または、地上部までの走行が不可能な(長大トンネル区間内や地下鉄の地下線区間内などで列車火災の)場合でも避難設備が完備されている場所(最寄り駅か青函トンネル内の定点など)までは走行を続けること」と、規定が変更された。
  2. 失敗知識データベース 大邸の地下鉄火災 (Report). 
  3. 一部、排煙能力の十分ではない路線も指摘されたが、これらはいずれも開削工法で掘られた浅深度の地下鉄で、構造上気密性が低い。しかし、これらの路線・駅についても設備改善が進められている。
鉄道での事件・事故
国内
海外
関連項目 鉄道事故の一覧 - 鉄道事件の一覧