大糸線の歴史
大糸線の歴史(おおいとせんのれきし)は、日本国有鉄道大糸線の全通、電化までの経緯のことである。大糸線は長野県松本市の松本駅から新潟県糸魚川市の糸魚川駅に至る鉄道路線(地方交通線)である。
概要[編集]
松本駅と信濃大町駅の間は信濃鉄道によって建設された。現在の路線名は鉄道省が信濃大町駅と糸魚川駅を結ぶ路線として建設したため。「おおいとせん」と訓読みする珍しい例。南部は比較的なだらかな地形に沿っており、元私鉄らしく駅間距離が短いが、北部は姫川上流の険しい渓谷に阻まれ、また豪雪地帯で冬期の運休が多いほか、台風の原因からくる集中豪雨による災害で不通になることもあった。駅間距離も南部に比べて長い。
開通までの経緯[編集]
信濃鉄道[編集]
交通の便に乏しかった安曇平(松本盆地)への鉄道敷設を目的に設立された信濃鉄道が高瀬川 (長野県)右岸に沿って建設した。登山客やスキー客によって信濃鉄道は大きく利潤をあげ、株式配当もできたが、世界恐慌により経営が立ちゆかなくなり、国有化に至った。
年月日 | 新規開業区間 | 以前の既設区間 | 備考 |
---|---|---|---|
1915年1月6日 | 松本市駅-豊科駅10.7km | - | |
1915年4月5日 | 北松本駅-南松本駅0.2km | 北松本駅 - 豊科駅10.7km | |
1915年6月1日 | 豊科駅-柏矢町駅2.8km | 南松本駅 - 豊科駅10.9km | |
1915年7月15日 | 柏矢町駅-穂高駅2.0km | 南松本駅 - 柏矢町駅13.7km | |
1915年8月8日 | 穂高駅-有明駅2.2km | 南松本駅 - 穂高駅15.7km | |
1915年9月29日 | 有明駅-池田松川駅7.6km | 南松本駅 - 有明駅17.9km | |
1915年11月2日 | 信濃松川駅-信濃大町駅 (旧)7.3km | 南松本駅 - 信濃松川駅25.5km | |
1916年7月5日 | 信濃大町駅 (旧)-信濃大町駅1.8km | 南松本駅 - 信濃大町駅 (旧)32.8km | |
1916年9月18日 | 南松本駅-松本駅0.5km | 南松本駅 - 信濃大町駅34.6km | 南松本駅を松本駅に併合 |
1937年6月1日 | - | 松本駅 - 信濃大町駅35.1km | 国有化 |
大糸線[編集]
年月日 | 新規開業区間 | 以前の既設区間 | 備考 | |
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南線 | 北線 | |||
1929年9月25日 | 信濃大町駅-簗場駅11.2km | - | - | |
1930年10月25日 | 簗場駅-神城駅8.9km | 信濃大町駅 - 簗場駅11.2km | - | |
1932年11月20日 | 神城駅-信濃森上駅6.4km | 信濃大町駅 - 神城駅20.1km | - | |
1934年11月14日 | 糸魚川駅-根知駅10.0km | 信濃大町駅 - 信濃森上駅26.5km | - | |
1935年11月29日 | 信濃森上駅-中土駅12.5km | 信濃大町駅 - 信濃森上駅26.5km | 根知駅 - 糸魚川駅10.0km | |
1935年12月24日 | 根知駅-小滝駅3.6km | 信濃大町駅 - 中土駅39.0km | 根知駅 - 糸魚川駅10.0km | |
1937年6月1日 | (信濃鉄道国有化) | 信濃大町駅 - 中土駅39.0km | 小滝駅 - 糸魚川駅13.6km | |
1957年8月15日 | 中土駅-小滝駅17.7km | 松本駅 - 中土駅74.1km | 小滝駅 - 糸魚川駅13.6km |
電化[編集]
信濃鉄道[編集]
大糸線[編集]
年月日 | 区間 | 距離 |
---|---|---|
1959年7月17日 | 信濃大町駅-信濃四ツ谷駅 | 24.6km |
1960年7月20日 | 信濃四ツ谷駅-信濃森上駅 | 1.9km |
1967年12月20日 | 信濃森上駅-南小谷駅 | 8.5km |
災害史[編集]
黒部ダム[編集]
関西電力が黒部ダム建設のために大糸線で資材輸送の照会を長野鉄道管理局に求めたのは1956年であった。建設資材の輸送期間は1956年から1961年の間でその量はセメント48800トン、鋼材・木材52000トン、その他50000トンで、セメントは富田駅から他は東京、大阪方面から信濃大町駅まで輸送するもので、資材基地として信濃大町駅から北へ2kmの専用線を敷設、ここに66000㎡の基地を建設している。
詳細は「黒部川第四発電所」を参照
1996年の沿線状況[編集]
現在も共通する点が多い。
松本駅-信濃大町駅[編集]
松本駅の篠ノ井線発着ホームから側線を挟んだ駅の外れ、松本電鉄上高地線の発着ホームと同じ島式ホームから大糸線の普通列車が発着する。上高地線は南へ向かうが、大糸線は北へ向かう。女鳥羽川を渡ると北松本駅である。ここまでは篠ノ井線と並行するが、篠ノ井線には北松本駅はない。北松本駅北側で篠ノ井線は北へ向かい、大糸線は北西に向かう。国道19号をくぐり、奈良井川を渡ると島内駅である。ここから国道147号と並行して西へ向かう。島高松駅から進路を北西に変えて梓川を渡ると南安曇郡豊科町になり、梓橋駅に至る。次に南安曇郡三郷村となり、一日市場駅となる。ここから進路を北に変えると中萱駅であり、拾ヶ堰を渡ると再び南安曇郡豊科町となり、南豊科駅を過ぎると豊科町の中心部である豊科駅に至る。南安曇郡穂高町に入り、柏矢町駅、穂高駅を過ぎて穂高川を渡り、有明川を過ぎ、安曇追分駅を過ぎると国道147号と並行する。
大糸線で運行された旧型国電[編集]
1954年には早くも買収国電が一掃され、1966年には霜取り用のクモハ12001を除いて17m級旧型国電も姿を消した。以下に旧型国電の変遷を記す。
形式 | 1956年3月1日 | 1960年4月1日 | 1965年3月31日 | 1969年3月31日 | 1975年3月31日 | 1981年4月30日 |
---|---|---|---|---|---|---|
クモハ11 | 11両 | 11両 | 13両 | ー | ー | ー |
クモハ12 | 2両 | 1両 | 1両 | 1両 | ー | ー |
クハ16 | 9両 | 11両 | 12両 | ー | ー | ー |
クモハ40 | ー | ー | ー | 1両 | 1両 | 1両 |
クモハ41 | ー | ー | 3両 | 9両 | 1両 | ー |
クモハ60 | ー | ー | ー | 9両 | 9両 | 9両 |
クハ55 | ー | ー | ー | 15両 | 15両 | 9両 |
サハ57 | ー | ー | ー | 3両 | 3両 | 2両 |
クモハ51 | ー | ー | 3両 | 2両 | 7両 | 4両 |
クモハ54 | ー | ー | ー | ー | 3両 | 3両 |
クモハユニ64 | ー | ー | 1両 | 1両 | ー | ー |
クハ68 | ー | ー | ー | ー | 3両 | 3両 |
クモハ43 | ー | ー | ー | ー | 4両 | 2両 |
クモハユニ44 | 2両 | 2両 | 1両 | ー | ー | ー |
サハ45 | ー | ー | ー | ー | 3両 | 3両 |
クモユニ81 | ー | ー | ー | ー | 1両 | 1両 |
合計 | 24両 | 25両 | 34両 | 41両 | 50両 | 37両 |
注1) 1959年6月1日以前はクモハはモハ、クモハユニはモハユニである。
注2) 1965年以降、松本運転所北松本支所となった。
注3) 1981年7月24日以降、国鉄115系電車に取り替えられた。
運行状況[編集]
全線で運行される列車は1982年11月14日ダイヤ改正で急行「白馬」[1]が廃止されて以降存在しない。
1968年10月1日ダイヤ改正(ヨン・サン・トオ)時点では、新宿発着の急行「アルプス」のうち1往復が全線を運行していた (下記参照。上りは糸魚川駅-南小谷駅普通列車)が、1975年3月の急行「アルプス」がすべて電車化されたため、全線運行は廃止された。
過去には登山客に向けて早朝下りで急行アルプスが雁行する特徴があり、国鉄分割民営化前後の冬期期間はシュプール号の運転により列車容量が限界を超えることがあった。
南小谷以南の優等列車は最盛期より減少して、2022年3月ダイヤ改正時点で定期の特急列車は1往復のみで、定期夜行列車も消滅している。普通列車のほとんどは松本駅発着だが、篠ノ井線、中央本線まで延長運転している列車もある。下り列車については有明駅 (長野県)、信濃大町駅行きの列車がほとんどだが、南小谷駅まで行く列車もある。信濃大町駅でほとんどの列車が系統分断し、以北は列車本数も少ない。南小谷駅では完全に系統分断しているが、接続は十数分以内である。以北はさらに列車本数が減少する。
沿線周遊指定地[編集]
運行状況の歴史[編集]
1964年10月1日ダイヤ改正[編集]
- 準急「白馬」
- 運行区間: 新宿-松本-信濃森上、糸魚川
- 運行本数: 一日2往復。うち1往復は信濃森上止まりだが、北行は信濃森上以北各駅停車の普通列車として糸魚川まで直通する。
- 停車駅: 松本、豊科、信濃大町、信濃四ツ谷(現:白馬)、南小谷、平岩、糸魚川。信濃森上発着列車は信濃森上にも停車。
- 気動車普通(松本発着)
- 運行区間: 松本-信濃森上(←糸魚川)
- 運行本数: 一日1往復。南行は糸魚川発、北行は信濃森上行。
- 停車駅: 松本、北松本、豊科、穂高、信濃松川、信濃大町、神城、信濃四ツ谷(現:白馬)-糸魚川間の各駅。南行は簗場にも停車。
- 気動車普通(主に信濃森上-糸魚川)
- 運行区間: (信濃大町-)信濃森上-糸魚川
- 運行本数: 概ね2時間に1本。うち一日2往復が信濃大町まで直通する。
- 停車駅: 各駅停車。ただし、南行の大町行は飯森通過で、うち1本は糸魚川-平岩間ノンストップ、南神城、稲尾、北大町も通過する。
- 電車普通(主に松本-信濃森上)
- 運行区間: 松本-信濃森上
- 運行本数: 概ね2時間に1本
- 停車駅: 松本、北松本、梓橋、一日市場、豊科、穂高、有明、安曇追分、信濃松川、信濃常盤、信濃大町以北の各駅。ただし例外が多い。
- 電車普通(主に松本-信濃大町)
- 運行区間: 松本-信濃大町
- 運行本数: 概ね2時間に1本
- 停車駅: 各駅停車。ただし、途中駅通過の列車もある。
1968年10月1日ダイヤ改正[編集]
凡例[編集]
営業キロ | 駅名 | 駅設備/列車番号 | 251M | 1401D | 137D |
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… | 新宿駅発 | … | 1310 | ||
0.0 | 松本駅発 | 洗弁電 | 1740 | 1810 | … |
0.7 | 北松本駅発 | 1743 | ↓ | … | |
2.6 | 島内駅発 | 1747 | 急行 | … | |
3.8 | 島高松駅発 | 1749 | アルプス | … | |
5.2 | 梓橋駅発 | 1752 | 4号 | … | |
6.8 | 一日市場駅発 | 1757 | ↓ | … | |
8.4 | 中萱駅発 | 1759 | ↓ | … | |
10.4 | 南豊科駅発 | 1802 | ↓ | … | |
11.4 | 豊科駅発 | 1805 | 1825 | … | |
14.2 | 柏矢町駅発 | 1809 | ↓ | … | |
16.2 | 穂高駅発 | 1812 | ↓ | … | |
18.4 | 有明駅発 | 1816 | ↓ | … | |
19.9 | 安曇追分駅発 | 1820 | ↓ | … | |
22.8 | 細野駅発 | 1823 | ↓ | … | |
23.8 | 北細野駅発 | 1826 | ↓ | … | |
26.0 | 信濃松川駅発 | 1829 | ↓ | … | |
28.6 | 安曇沓掛駅発 | 1833 | ↓ | … | |
30.9 | 信濃常盤駅発 | 1837 | ↓ | … | |
34.0 | 南大町駅発 | 1841 | ↓ | … | |
35.1 | 信濃大町駅着 | 電 | 1843 | 1900 | … |
- | 信濃大町駅発 | - | … | 1901 | 1910 |
37.2 | 北大町駅発 | … | ↓ | 1914 | |
39.4 | 信濃木崎駅発 | … | ↓ | 1918 | |
41.6 | 稲尾駅発 | … | ↓ | 1922 | |
42.6 | 海ノ口駅発 | … | ↓ | 1925 | |
46.3 | 簗場駅発 | … | ↓ | 1931 | |
52.8 | 南神城駅発 | … | ↓ | 1939 | |
55.2 | 神城駅発 | … | ↓ | 1947 | |
56.7 | 飯森駅発 | … | ↓ | 1950 | |
59.7 | 白馬駅発 | … | 1930 | 1955 | |
61.6 | 信濃森上駅発 | … | 1934 | 1959 | |
65.4 | 白馬大池駅発 | … | ↓ | 2006 | |
68.7 | 千国駅発 | … | ↓ | 2013 | |
70.1 | 南小谷駅発 | … | 1949 | 2018 | |
74.1 | 中土駅発 | 電 | … | ↓ | 2026 |
78.5 | 北小谷駅発 | … | ↓ | 2032 | |
85.0 | 平岩駅発 | … | 2009 | 2055 | |
91.8 | 小滝駅発 | … | ↓ | 2104 | |
95.4 | 根知駅発 | … | ↓ | 2113 | |
100.3 | 頸城大野駅 | … | ↓ | 2121 | |
105.4 | 糸魚川駅着 | 洗弁電 | … | 2037 | 2128 |
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