大糸線の歴史

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

大糸線の歴史(おおいとせんのれきし)は、日本国有鉄道大糸線の全通、電化までの経緯のことである。大糸線長野県松本市松本駅から新潟県糸魚川市糸魚川駅に至る鉄道路線地方交通線)である。

概要[編集]

松本駅信濃大町駅の間は信濃鉄道によって建設された。現在の路線名は鉄道省信濃大町駅糸魚川駅を結ぶ路線として建設したため。「おおいとせん」と訓読みする珍しい例。南部は比較的なだらかな地形に沿っており、元私鉄らしく駅間距離が短いが、北部は姫川上流の険しい渓谷に阻まれ、また豪雪地帯で冬期の運休が多いほか、台風の原因からくる集中豪雨による災害で不通になることもあった。駅間距離も南部に比べて長い。

開通までの経緯[編集]

信濃鉄道[編集]

交通の便に乏しかった安曇平(松本盆地)への鉄道敷設を目的に設立された信濃鉄道が高瀬川 (長野県)右岸に沿って建設した。登山客やスキー客によって信濃鉄道は大きく利潤をあげ、株式配当もできたが、世界恐慌により経営が立ちゆかなくなり、国有化に至った。

年月日 新規開業区間 以前の既設区間 備考
1915年1月6日 松本市駅-豊科駅10.7km -
1915年4月5日 北松本駅-南松本駅0.2km 北松本駅 - 豊科駅10.7km
1915年6月1日 豊科駅-柏矢町駅2.8km 南松本駅 - 豊科駅10.9km
1915年7月15日 柏矢町駅-穂高駅2.0km 南松本駅 - 柏矢町駅13.7km
1915年8月8日 穂高駅-有明駅2.2km 南松本駅 - 穂高駅15.7km
1915年9月29日 有明駅-池田松川駅7.6km 南松本駅 - 有明駅17.9km
1915年11月2日 信濃松川駅-信濃大町駅 (旧)7.3km 南松本駅 - 信濃松川駅25.5km
1916年7月5日 信濃大町駅 (旧)-信濃大町駅1.8km 南松本駅 - 信濃大町駅 (旧)32.8km
1916年9月18日 南松本駅-松本駅0.5km 南松本駅 - 信濃大町駅34.6km 南松本駅を松本駅に併合
1937年6月1日 - 松本駅 - 信濃大町駅35.1km 国有化

大糸線[編集]

年月日 新規開業区間 以前の既設区間 備考
南線 北線
1929年9月25日 信濃大町駅-簗場駅11.2km - -
1930年10月25日 簗場駅-神城駅8.9km 信濃大町駅 - 簗場駅11.2km -
1932年11月20日 神城駅-信濃森上駅6.4km 信濃大町駅 - 神城駅20.1km -
1934年11月14日 糸魚川駅-根知駅10.0km 信濃大町駅 - 信濃森上駅26.5km -
1935年11月29日 信濃森上駅-中土駅12.5km 信濃大町駅 - 信濃森上駅26.5km 根知駅 - 糸魚川駅10.0km
1935年12月24日 根知駅-小滝駅3.6km 信濃大町駅 - 中土駅39.0km 根知駅 - 糸魚川駅10.0km
1937年6月1日 (信濃鉄道国有化) 信濃大町駅 - 中土駅39.0km 小滝駅 - 糸魚川駅13.6km
1957年8月15日 中土駅-小滝駅17.7km 松本駅 - 中土駅74.1km 小滝駅 - 糸魚川駅13.6km

電化[編集]

信濃鉄道[編集]

1926年1月8日松本駅-信濃大町駅35.1km

大糸線[編集]

年月日 区間 距離
1959年7月17日 信濃大町駅-信濃四ツ谷駅 24.6km
1960年7月20日 信濃四ツ谷駅-信濃森上駅 1.9km
1967年12月20日 信濃森上駅-南小谷駅 8.5km

災害史[編集]

黒部ダム[編集]

関西電力黒部ダム建設のために大糸線で資材輸送の照会を長野鉄道管理局に求めたのは1956年であった。建設資材の輸送期間は1956年から1961年の間でその量はセメント48800トン、鋼材・木材52000トン、その他50000トンで、セメントは富田駅から他は東京、大阪方面から信濃大町駅まで輸送するもので、資材基地として信濃大町駅から北へ2kmの専用線を敷設、ここに66000㎡の基地を建設している。

詳細は「黒部川第四発電所」を参照

1996年の沿線状況[編集]

現在も共通する点が多い。

松本駅-信濃大町駅[編集]

松本駅篠ノ井線発着ホームから側線を挟んだ駅の外れ、松本電鉄上高地線の発着ホームと同じ島式ホームから大糸線普通列車が発着する。上高地線は南へ向かうが、大糸線は北へ向かう。女鳥羽川を渡ると北松本駅である。ここまでは篠ノ井線と並行するが、篠ノ井線には北松本駅はない。北松本駅北側で篠ノ井線は北へ向かい、大糸線は北西に向かう。国道19号をくぐり、奈良井川を渡ると島内駅である。ここから国道147号と並行して西へ向かう。島高松駅から進路を北西に変えて梓川を渡ると南安曇郡豊科町になり、梓橋駅に至る。次に南安曇郡三郷村となり、一日市場駅となる。ここから進路を北に変えると中萱駅であり、拾ヶ堰を渡ると再び南安曇郡豊科町となり、南豊科駅を過ぎると豊科町の中心部である豊科駅に至る。南安曇郡穂高町に入り、柏矢町駅穂高駅を過ぎて穂高川を渡り、有明川を過ぎ、安曇追分駅を過ぎると国道147号と並行する。


大糸線で運行された旧型国電[編集]

1954年には早くも買収国電が一掃され、1966年には霜取り用のクモハ12001を除いて17m級旧型国電も姿を消した。以下に旧型国電の変遷を記す。

北松本電車区・松本運転所北松本支所の配置電車
形式 1956年3月1日 1960年4月1日 1965年3月31日 1969年3月31日 1975年3月31日 1981年4月30日
クモハ11 11両 11両 13両
クモハ12 2両 1両 1両 1両
クハ16 9両 11両 12両
クモハ40 1両 1両 1両
クモハ41 3両 9両 1両
クモハ60 9両 9両 9両
クハ55 15両 15両 9両
サハ57 3両 3両 2両
クモハ51 3両 2両 7両 4両
クモハ54 3両 3両
クモハユニ64 1両 1両
クハ68 3両 3両
クモハ43 4両 2両
クモハユニ44 2両 2両 1両
サハ45 3両 3両
クモユニ81 1両 1両
合計 24両 25両 34両 41両 50両 37両

注1) 1959年6月1日以前はクモハはモハ、クモハユニはモハユニである。

注2) 1965年以降、松本運転所北松本支所となった。

注3) 1981年7月24日以降、国鉄115系電車に取り替えられた。

運行状況[編集]

全線で運行される列車は1982年11月14日ダイヤ改正で急行「白馬」[1]が廃止されて以降存在しない。
1968年10月1日ダイヤ改正(ヨン・サン・トオ)時点では、新宿発着の急行「アルプス」のうち1往復が全線を運行していた (下記参照。上りは糸魚川駅-南小谷駅普通列車)が、1975年3月の急行「アルプス」がすべて電車化されたため、全線運行は廃止された。
過去には登山客に向けて早朝下りで急行アルプスが雁行する特徴があり、国鉄分割民営化前後の冬期期間はシュプール号の運転により列車容量が限界を超えることがあった。
南小谷以南の優等列車は最盛期より減少して、2022年3月ダイヤ改正時点で定期の特急列車は1往復のみで、定期夜行列車も消滅している。普通列車のほとんどは松本駅発着だが、篠ノ井線中央本線まで延長運転している列車もある。下り列車については有明駅 (長野県)信濃大町駅行きの列車がほとんどだが、南小谷駅まで行く列車もある。信濃大町駅でほとんどの列車が系統分断し、以北は列車本数も少ない。南小谷駅では完全に系統分断しているが、接続は十数分以内である。以北はさらに列車本数が減少する。

沿線周遊指定地[編集]

運行状況の歴史[編集]

1964年10月1日ダイヤ改正[編集]

  • 準急「白馬」
    • 運行区間: 新宿-松本-信濃森上、糸魚川
    • 運行本数: 一日2往復。うち1往復は信濃森上止まりだが、北行は信濃森上以北各駅停車の普通列車として糸魚川まで直通する。
    • 停車駅: 松本、豊科、信濃大町、信濃四ツ谷(現:白馬)、南小谷、平岩、糸魚川。信濃森上発着列車は信濃森上にも停車。
  • 気動車普通(松本発着)
    • 運行区間: 松本-信濃森上(←糸魚川)
    • 運行本数: 一日1往復。南行は糸魚川発、北行は信濃森上行。
    • 停車駅: 松本、北松本、豊科、穂高、信濃松川、信濃大町、神城、信濃四ツ谷(現:白馬)-糸魚川間の各駅。南行は簗場にも停車。
  • 気動車普通(主に信濃森上-糸魚川)
    • 運行区間: (信濃大町-)信濃森上-糸魚川
    • 運行本数: 概ね2時間に1本。うち一日2往復が信濃大町まで直通する。
    • 停車駅: 各駅停車。ただし、南行の大町行は飯森通過で、うち1本は糸魚川-平岩間ノンストップ、南神城、稲尾、北大町も通過する。
  • 電車普通(主に松本-信濃森上)
    • 運行区間: 松本-信濃森上
    • 運行本数: 概ね2時間に1本
    • 停車駅: 松本、北松本、梓橋、一日市場、豊科、穂高、有明、安曇追分、信濃松川、信濃常盤、信濃大町以北の各駅。ただし例外が多い。
  • 電車普通(主に松本-信濃大町)
    • 運行区間: 松本-信濃大町
    • 運行本数: 概ね2時間に1本
    • 停車駅: 各駅停車。ただし、途中駅通過の列車もある。

1968年10月1日ダイヤ改正[編集]

凡例[編集]

営業キロ 駅名 駅設備/列車番号 251M 1401D 137D
新宿駅 1310
0.0 松本駅 洗弁電 1740 1810
0.7 北松本駅 1743
2.6 島内駅 1747 急行
3.8 島高松駅 1749 アルプス
5.2 梓橋駅 1752 4号
6.8 一日市場駅 1757
8.4 中萱駅 1759
10.4 南豊科駅 1802
11.4 豊科駅 1805 1825
14.2 柏矢町駅 1809
16.2 穂高駅 1812
18.4 有明駅 1816
19.9 安曇追分駅 1820
22.8 細野駅 1823
23.8 北細野駅 1826
26.0 信濃松川駅 1829
28.6 安曇沓掛駅 1833
30.9 信濃常盤駅 1837
34.0 南大町駅 1841
35.1 信濃大町駅 1843 1900
信濃大町駅発 1901 1910
37.2 北大町駅 1914
39.4 信濃木崎駅 1918
41.6 稲尾駅 1922
42.6 海ノ口駅 1925
46.3 簗場駅 1931
52.8 南神城駅 1939
55.2 神城駅 1947
56.7 飯森駅 1950
59.7 白馬駅 1930 1955
61.6 信濃森上駅 1934 1959
65.4 白馬大池駅 2006
68.7 千国駅 2013
70.1 南小谷駅 1949 2018
74.1 中土駅 2026
78.5 北小谷駅 2032
85.0 平岩駅 2009 2055
91.8 小滝駅 2104
95.4 根知駅 2113
100.3 頸城大野駅 2121
105.4 糸魚川駅 洗弁電 2037 2128

関連項目[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]

やまさいがねが:旧国道148号外沢地区

脚注[編集]

  1. 金沢駅-糸魚川駅は急行「しらゆき」と併結していて、「白馬」の廃止で長野県中信と北陸を直通する定期列車も消滅した。