台風
台風(たいふう、英:Typhoon)とは、西太平洋で発生する中心付近の最大風力が17.2m/s以上の熱帯低気圧の事である[1]。
概要[編集]
台風は赤道付近の海上で多く発生するが、これは台風が発生するには海水の温度が27度から28度以上であることが必要なためである[1]。ただし海水温度だけではなく、周囲の大気の条件も関係する[1]。それは海水が熱せられて水蒸気となり、上空で雲になる時に放出する熱が台風のエネルギー源であり、海水温度が下がったり陸にあがったりしてエネルギーの供給が途絶えると、台風は2日から3日で力を失って消失してしまうのである[1]。地球が自転することにより、コリオリの力が働いて空気が渦を巻く[1]。北半球では台風は左巻きになるが、南半球では右巻きとなり、赤道では台風発生の海域よりもっと海水温度が高くなることがあるが、コリオリの力が働かないために台風は影響しない[1]。
太陽熱に海水が温められて27度以上になると[1]、多くの水蒸気を含んだ空気が上昇する[2]。温度の低い上空まで達すると水蒸気は冷やされて凝結し、雲となる。大量の空気が上昇した雲の下では空気が希薄となり、気圧が下がる[2]。そこへ周りの空気が吹き込んできて、吹き込んだ空気はどんどん上昇し、これが繰り返されることによって巨大な積乱雲ができる[2]。コリオリカが働いて渦を形成し、遠心力によって中心部分は雲がなくなり、台風の目となる[2]。海面からエネルギーが供給され続けると日本へ接近したり、上陸したりして大きな被害を及ぼすことになる[2]。
台風中心の低気圧に周りの空気が吸い上げられると、それに伴って海面も上昇し、沖からの強風で海水が海岸側に集められ、大きな波が発生しやすくなる[2]。
呼称について[編集]
国際名[編集]
台風は、日本では「台風10号」「台風15号」などと発生順に番号(台風番号)で呼ばれることが多い。しかし、国際的にはそれぞれ固有の名称で呼ばれている。1999年まではアメリカが英名をつけていたが、2000年からは台風委員会が提案した「アジア名」が使用されている。2013年にフィリピンを襲った台風30号のアジア名は「ハイエン」であった。
- アジア名のリスト
- ダムレイ
- ロンワン → ハイクイ
- キロギー
- カイタク → インニョン
- テンビン → コイヌ
- ボラヴェン
- チャンチー → サンバ
- ジェラワット
- イーウィニャ
- ビリス → マリクシ
- ケーミー
- プラピルーン
- マリア
- サオマイ → ソンティン
- ボーファ → アンピル
- ウーコン
- ソナムー → ジョンダリ
- サンサン
- ヤギ
- シャンセン → リーピ
- バビンカ
- ルンビア → プラサン
- ソーリック
- シマロン
- チェービー
- ドリアン → マンクット → クラトーン
- ウトア → バリジャット
- チャーミー
- コンレイ
- イートゥー → インシン
- トラジー
- マンニィ
- ウサギ
- パブーク
- ウーティップ
- セーパット
- フィートウ → ムーン
- ダナス
- ナーリー
- ウィパー
- フランシスコ
- レキマー → コメイ
- クローサ
- ハイエン → バイルー
- ポードル
- レンレン
- カジキ
- ファクサイ → ノンファ
- ヴァーメイ → ペイパー
- ターファー
- ミートク
- ハギビス → ラガサ
- ノグリー
- ラマスーン → ブアローイ
- ツァターン → マットゥモ
- ハーロン
- ナクリー
- フンシェン
- カルマエギ
- フォンウォン
- カンムリ → コト
- ファンフォン → ノケーン
- ヴォンフォン → ペンニャ
- ルーサー → ヌーリ
- シンラコウ
- ハグピート
- チャンミー
- メーカラー
- ヒーゴス
- バービー
- メイサーク
- ハイシェン
- ポンソナ → ノウル
- ヤンヤン → ドルフィン
- クジラ
- チャンホン
- リンファ → ペイロー
- ナンカー
- ソウデロア → ソウデル
- インブードー → モラヴェ → ナーラ
- コーニー → ケナリ
- モーラコット → アッサニー
- アータウ
- ヴァムコー → バンラン
- クロヴァン
- ドゥージェン
- マエミー → ムジゲ → スリゲ
- チョーイワン
- コップ → コグマ
- ケッツァーナ → チャンパー
- パーマァ → インファ
- メーロー → チャンパカ
- ニパルタック
- ルピート
- スーダエ → ミリネ
- ニーダ
- オーマイス
- コンソン → ルックビン
- チャンスー
- ディアンムー
- ミンドゥル
- テンテン → ライオンロック
- コンパス → トケイ
- ナムセーウン
- マーロウ
- ムーランティ → ニヤトー
- ラナニム → ファナピ → ライ → ソロブル
- マラカス → アムヤオ
- メーギー → コザリ
- チャバ
- アイレー
- ソングダー
- サリカー → トローセス
- ハイマー → ムーラン
- メアリー
- マーゴン → チンマー
- トカゲ
- ノックテン → ヒンナムノー → オーンマン
- ムイファー
- マールボック
- ナンマドル
- タラス
- ノルー → ホードゥー
- クラー
- ロウキー
- ソンカー
- ネサット
- ハイタン
- ナルガエ → ツァンザリー
- バンヤン
- ワシ → ハト → ヤマネコ
- マッツァ → パカー
- サンヴー
- マーワー
- グチョル
- タリム
- ナービー → トクスリ
- カーヌン
- ヴェセンティ → ラン
- サオラー
風力[編集]
風が吹いたときの陸上や海上の状態を表すもので、風の強さを表す。
- 風力階級
- 陸上での風の強さを表す表である。19世紀初頭にイギリスのビューフォート提督が航海のために帆船フリゲートが帆をいっぱいにあげたときどうなびくかを元に作成した。風力階級8以上、風速17.2m/s以上の熱帯低気圧を「台風」という。
風力階級 | 陸上における状態 | 風速の範囲 (m/s) |
---|---|---|
0 | 静穏。煙は真っ直ぐに昇る。 | 0~0.2 |
1 | 風向は煙がなびくのでわかるが、風見には感じない。 | 0.3~1.5 |
2 | 顔に風を感じる。木の葉が動く。風見も動き出す。 | 1.6~3.3 |
3 | 木の葉や細い小枝が動く出す。軽い旗が開く。 | 3.4~5.4 |
4 | 砂ぼこりが立ち、紙片が舞い上がる。小枝が動く。 | 5.5~7.9 |
5 | 葉のある灌木が揺れ始める。池や沼の水面に波頭が立つ。 | 8.0~10.7 |
6 | 大枝が動く。電線がなる。傘はさしにくい。 | 10.8~13.8 |
7 | 樹木全体が揺れる。風に向かって歩きにくい。 | 13.9~17.1 |
8 | 小枝が折れる。風に向かって歩けない。 | 17.2~20.7 |
9 | 人家にわずかの損害が起きる。煙突が倒れ、瓦が剥がれる。 | 20.8~24.4 |
10 | 内陸部では珍しい。樹木が根こそぎになる。人家に大損害が起きる。 | 24.5~28.4 |
11 | 滅多に起こらない。広い範囲の破壊を伴う。 | 28.5~32.6 |
12 | ほとんど起こらない。都市全体が破壊される。 | 32.7~36.9 |
予報[編集]
日本では気象庁の予報が一般的に用いられているが、アメリカ海軍でも独自に予報を出している事が知られている[3]。
通常、台風は低緯度では偏東風(貿易風)に乗って西に動き、太平洋高気圧の周縁の風に乗って北上し、中緯度高圧帯を過ぎた高緯度で偏西風に乗り、速度を上げながら北東へ進むことが多い。気象庁は台風の中心が日本国内のいずれかの気象台などから300キロ以内に入った場合を「接近」、中心が北海道・本州・四国・九州の海岸線に達した場合を「上陸」とそれぞれ定義している。小さい島や半島を横切って、短時間で再び海に出た場合は「通過」として扱っている。
地球に及ぼす影響[編集]
台風は地球の冷却ファンのような働きをしており、熱を宇宙空間に逃がす事で地球温暖化に対する対策として機能している模様。
文化[編集]
イギリスの小説家 J.コンラッドの海洋小説に「台風」という作品がある。1903年刊。
脚注[編集]
参考文献[編集]
- 『地球46億年の秘密がわかる本』 地球科学研究倶楽部編。
- 室田明『河川工学』技報堂出版2001年1月31日1版10刷発行
- 渡嘉敷哲ほか『新ひとりで学べる11地学ⅠB』清水書院2003年8月20日第16刷発行
- 椹木亨、柴田徹、中川博次『土木へのアプローチ』技報堂出版1999年1月25日3版1刷発行。