天ぷら

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年越し蕎麦の上の天ぷら

天ぷら(てんぷら,Tempura)とは、野菜などをと水で溶いた小麦粉に付けて食用油で揚げた料理である。
語源は不詳だが、たぶんオランダ語とかポルトガル語の「加熱する」だと思われる。「熱加工」「熱処理」と思って間違いはない。
本当のことをいうと、「天麩羅」と「天ぷら」は違う料理ではあるのだが、「フライ」「唐揚げ」「かき揚げ」と同じく揚げ物のサブジャンルである。

概要[編集]

おいしそうな天ぷら

「天ぷら」とは当初、海外から九州沖縄方面に入ってきた油料理の総称であったとされ、後には以前から日本にあった油料理も含めた名称となった。江戸では魚介類を原材料としたものを「天ぷら」と呼んでいたので、江戸時代に西日本から伝わった魚のすり身を揚げたものは 薩摩揚げと呼び、野菜類を揚げたものを精進揚げ(しょうじんあげ、しょうじあげ)として区別するようになる。

銀座の高級天ぷら店で40年揚げ続けている職人が「天ぷらは蒸し料理だ」と言うように、天ぷらの調理は熱い油で素材を加熱するのではなく、衣の中に素材を閉じ込めて蒸す状態で加熱するところが、他の料理とは異なる[1][2]
天ぷらを白飯にのせ、タレをかけた「天丼」、蕎麦うどんにのせた「天ぷら蕎麦」・「天ぷらうどん」、ざる蕎麦・蒸籠(せいろ)蕎麦に添えた「天ざる」・「天せいろ」も一般的な料理であり、多くの蕎麦屋では丼類、麺類それぞれの最高級メニューとして花形を飾っている。
この他、白飯にかき揚げをのせてワサビを添え、出汁や緑茶をかけた「天茶」(天ぷら茶漬け)という食べ方もある。ほか、「天むす」もある。

歴史[編集]

奈良時代には小麦粉ではなく米粉を使った天ぷらが伝来した。
江戸時代には現代と同じような天ぷらが食べられていた。「江戸の三味」の一つ[3]であり、江戸料理江戸東京)の郷土料理となっている[4][5][6]が、この調理法は各地に広がっている。
徳川家康は天ぷらが大好物で、晩年に[7]を丸ごと一匹揚げた超巨大天ぷらを食べていたという。それを食べ過ぎ(油の摂り過ぎ)で死んだという説がある[8]
チャールズ・チャップリンは天ぷらが好物1932年昭和7年)に来日した時は銀座の天ぷらの名店をいっぱい食べたと言う逸話があり、スイスに移り住んでからも妻に度々天ぷらの事を話してジェスチャーで天ぷらを食べている真似をしたという。
吉田茂は鎌倉の邸内で海外の要人に天麩羅をふるまったという。

「天麩羅」と「天ぷら」の違い[編集]

天麩羅は衣が薄く、軽く揚げる。紫蘇や海苔はこちらに属す。「熱々のものを、その場ですぐ食べる」のが「天麩羅」である。
対して「天ぷら」は、厚い衣を使い、粉ももっちゃりしている。蕎麦種の「海老天」が代表であり、菜種油に胡麻油をブレンドし、傾けたフライパンで揚げることもある。あらかじめ傾けてセットした鍋に衣をつけた海老を入れ、「割らない割り箸二膳」で衣を垂らして衣を徐々に厚くしてゆく。この手の「天ぷら」は冷めたものを麺つゆなどで煮返しておかずにするとウマい[9]。たとえばトンカツにしても、「揚げたての熱々を食ってこそトンカツ」という人もいれば、「肉屋で売ってるトンカツを買ってきて、カツ丼にして喰う」派もいる。「駅そばのカツ丼セット」は別格とするマニアもいる。

世界の「天ぷら」[編集]

台湾[編集]

台湾夜市などでは、魚肉のすり身を揚げたものを基隆名物の「甜不辣」(Tianbula、てんぷらの音訳)などとして売られているが、これは西日本で薩摩揚げのことを「テンプラ」と呼ぶことに由来している。それに対して、この項で述べられている「天ぷら」に関しては、日本での通常の当て字である「天婦羅(Ti?nfuluo)」が使われており、同語源であるが一般的には区別されている。

韓国[編集]

韓国では「トゥイギム(揚げ物)」と呼ばれ、屋台などで多く売られている。日本の天ぷらと外観が似てはいるものの、衣が厚い。

ベニエ[編集]

フランスの「ベニエ」は油で揚げたドーナツ風。

具材[編集]

お店によっては、バームクーヘンを野菜に含めていることもある

天ぷらの具材には、魚介類、野菜などが使われる。

魚介類[編集]

野菜[編集]

肉その他[編集]

疑問[編集]

どうして天ぷらは旨いのか?[編集]

油は沸点が高く高温で調理ができる上に、衣は食材の旨味を外に逃がさない働きをし、更に衣が天つゆや醤油などの調味料を程良く吸収するからである。

サツマイモの天ぷらは沢山あるのに、ジャガイモの天ぷらが少ないのは何故か?[編集]

「不思議である。」という意見はあるが、フライドポテトがあるんだから、わざわざ衣をつける必要性がないかと思われる。
ハッシュドポテトは、ぶっちゃけ「馬鈴薯繊切りかき揚げ」ではある。
それを踏まえると、「サツマイモのかき揚げって見たことねぇな」という話にはなる。“農林1号”が甘くて美味すぎたからであろう。甘い品種が増えて、澱粉用の「甘くない」品種がないため、かき揚げ方面がお留守になってんじゃねぇか?と思う。

牛肉や豚肉を天ぷらにすることが少ないのは何故か[編集]

常識に阻まれて、それらを天ぷらにすることはできないからである。とり天はおいしいのに、同じことを牛や豚でやろうとは誰も思わない。
実は「豚天」なる食べ物はある。

機械油で天ぷらは作れるか?[編集]

昔、大日本帝国海軍の戦闘機パイロットたちが、釣った魚を天ぷらにするとき、間違ってスピンドル油を使ってしまったという実例がある。少々機械油の臭いがしたが「鍋代わりに使った缶に少し油が付いていたのだ」と思って気にせず食べたという。味は旨かったという。その後、全員腹を壊して軍医の世話になったそうである。
じつは下剤として有名なヒマシ油(カストロール)は1サイクル2ストロークのエンジンには よく使われるため、「エンジン整備をすると下痢をする」というのはよく知られた事実である。そういう奴にはサツマイモをカストロールで揚げた天ぷらと食べさせると猛烈な下痢を起こすが、不思議なことにその後には下痢を起こさないという。これはバイク屋の都市伝説だろうか?

慣用表現[編集]

  • ゴルフのティーショットで意図せず高く上がってしまい、飛距離のでない失敗を「テンプラ」という[10]。球を打ち「あげる」と天ぷらを「あげる」をかけている。あるいは天ぷらを意味するfryと飛球を意味するflyをかけている。
  • 路盤を整備せずに表面だけ舗装することを、「天ぷら舗装」という。類似事例として、鉄道車両で古い木造車体の外板に鋼板を張っただけの鋼体化改造車(所謂簡易鋼改車)がかつて一部の大手私鉄・地方私鉄にあり、これを「天ぷら鋼体化」ということがある。
  • 天ぷら学生とは、うわべだけ作った偽物の学生を言う[11]。学籍がないにもかかわらず勝手に制服を着用して学生に成りすます者、あるいは無断で講義を聴講に来る者を、「天ぷら学生」という。
  • 過度に華を咲かせる事により、小さな海老をまるで大海老であるかのように見せかけた海老天が多々見られることから、「見かけ倒し」や「中身を伴わない」状態の比喩として天ぷらと言う。
  • 和菓子の製造工程で製品の表面を糖蜜羊羹等でコーティングすることを、当料理の衣をつける事になぞらえて「てんぷら」という。長崎県平戸地方の郷土菓子であるカスドースにおいては、一口大に切ったカステラに卵黄を衣のように付けて沸騰させた大量のシロップにくぐらせる工程があり、この工程を「てんぷら」と表現する菓子店もある(カスドースそのものはてんぷらとは無関係であり、鶏卵素麺などに類似した製法である)。
  • めっき製品に対する蔑称として「てんぷら」と呼ぶこともある。中身と衣が別というところから来ている。
  • はんだ付けで、はんだの中に空洞ができて接合不良になったものを「天ぷらはんだ」という。
  • 自動車やオートバイのスピードメーターを実際に出ているスピードよりも速く表示して、性能が良いように見せかけることを業界の隠語で「メーターをテンプラする」などと言う。
  • 自衛隊では、武器の手入れに潤滑剤を使い過ぎ、適正量以上の潤滑剤が付着した状態のことを「てんぷら」と呼ぶことがある。
  • 自動車のナンバープレートにおいて、登録情報と異なるナンバープレートを違法に取り付けることがあり、これを「天ぷらナンバー」と呼ぶ。
  • インターネット上の書き込みでは、「テンプレ(テンプレート)」のことをふざけて「天ぷら」と表記することがある。

脚注[編集]

  1. NHK『ためしてガッテン』 銀座・高級天ぷら技が我が家のものになる
  2. 「衣の水分がどんどん抜けていく。中の素材は衣でガードされているから、短い時間だと水分が抜けることなく、自分の持っている水分で蒸されるというかたちで加熱されます。」 衣をカプセルとした『蒸す』という手法を施す。これが揚げ料理である天ぷらの極意の一つなのである
  3. あとの二つは寿司蕎麦である。
  4. 江戸郷土料理探訪「代表料理」辻調
  5. かどや精油 かどや製油『天ぷらの歴史』「屋台の中でもそばすしと並んで人気が高く、『江戸の三味』と呼ばれたのが、天ぷらである」
  6. 東京油問屋市場 天ぷらの話「屋台の天ぷらは,天つゆと大根おろしで食べた。手が汚れないように,串に刺して出した。種には,江戸前のあなご,芝海老,こはだ,貝札するめなどが使われた。」
  7. じつはあやかり鯛であるアカアマダイではないかという推測もある。
  8. 胃癌だったとする説もある。
  9. 『暮しの手帖』の記事による。
  10. 大辞泉、小学館
  11. 新明解国語辞典(三省堂)、大辞林(三省堂)、大辞泉(小学館)。