JR東海373系電車
373系は、1995年に登場したJR東海の直流特急形電車。
概要[編集]
身延線で運行されていた急行「富士川」には国鉄時代に製造された165系が充当されていたが、ほとんどの車輌が製造から30年以上経過しており、老朽化や内装の陳腐化が進んでいた。そのため、165系の老朽取替えを主目的として、中長距離普通列車から特急列車まで、幅広い運用に応える汎用性の高い車両として開発された。
1995年8月から1996年1月にかけて3両編成14本(42両)が製造され[注釈 1]、1995年10月ダイヤ改正から運用を開始。「ふじかわ」に続いて、165系使用の急行「東海」、「伊那路」も特急に格上げして運用。通称・大垣夜行も本系列による全車指定席快速に置き換えられた。
車体[編集]
- 先頭部分(白色)は鋼製である。
- 客用扉は両開き式で、車両端部の片側2か所に設ける。
- なお、この扉配置はJRグループの特急形車両では唯一のもので、出入台と客室を仕切るデッキ扉は省略され、車内保温対策として客用扉の開閉方式は半自動方式とされた。
- 客用扉の隣接部にドア開閉用の押ボタンを設ける。
- ドアカット機能は設けられていない。このため、ホーム長が5両以下の駅を持つ区間で6両編成運用ができない。
車内[編集]
- 座席は各車とも回転式リクライニングシートで、横2+2列で配置され、座席間隔は970 mmとなっている。
- 各座席にはインアームテーブル(肘掛け内蔵テーブル)・灰皿を装備したが、全車禁煙化に伴い灰皿は撤去された。なお、同様の改造はE257系や115系などこの当時の車両の多くに施工されている。
機器類[編集]
- 制御電動車であるクモハ373形にVVVFインバータや集電装置、補助電源装置など主要機器を集中搭載し、制御車であるクハ372形には空気圧縮機を搭載する。
- なお、1M2T車である。
- 運転台機器は383系を基本としており、前面計器盤に速度計・圧力計とモニタ装置を配している。マスコンはワンハンドル式である。
- 1996年3月ダイヤ改正用に製造したF6編成以降はJR東日本管内乗入れ運用(東海/ながら)のため当初からATS-Pを併設。
- ふじかわ用として製造した初期のF1-F5編成では準備工事のみ施工。その後、追設された。
- なお、2011年以降JR東海管内でのATS-PTの使用開始および、2012年3月ダイヤ改正でのJR東日本区間への乗り入れ終了に伴いATS-PからATS-PTへの換装が完了した。
編成/形式別[編集]
編成[編集]
- クモハ-373+サハ-373+クハ-372
クモハ373形[編集]
- 編成の富士/辰野方に連結される制御電動車で、室内の連結面側車端部にセミコンパートメント席をもつ。なお、編成中唯一の電動車である。
サハ373形[編集]
- 中間に連結される付随車で、室内の両車端部にセミコンパートメント席をもつ。
クハ372形[編集]
- 編成の甲府/豊橋/静岡に連結される制御車で、室内の連結面側車端部にトイレと洗面所を備える代わりにセミコンパートメント席はない。
所属/運用[編集]
- 3両編成14本42両全車両が静岡車両区に配置されている。
- 運用は2022年3月12日以降とする。
ふじかわ/身延線[編集]
詳細は「ふじかわ (列車)」を参照
- 余談だが本系列の運用に先立ち、211系5000番台との併結試運転を1995年9月に実施。なお、幌の接続は互換性がないため不可能な模様。
ホームライナー[編集]
伊那路/飯田線[編集]
詳細は「伊那路 (列車)」を参照
- 1996年3月ダイヤ改正で設定。
普通列車[編集]
間合い運用として熱海駅〜沼津駅間で普通列車1往復などが設定されている。
過去の実績[編集]
セントラルライナー[編集]
- 1999年の設定時は絶大な人気を誇り、2001年の313系増備までは本系列も充当されたことがある。現在でも幕は残っている。
東海/東海道本線[編集]
詳細は「東海 (列車)」を参照
- 1996年3月に特急格上げ。急行時代の安価ニーズに反して、A特急料金体制を頑なに維持したため、特急格上げ前より乗車実績が下降し、2007年3月に廃止。また、2012年まで東京駅〜静岡駅間の普通列車1往復に充当されていた。
ムーンライトながら[編集]
詳細は「ムーンライトながら」を参照
- 2009年3月14日の臨時化まで使用。
その他臨時列車[編集]
さわやかウォーキング[編集]
- 本形式を使用し身延線や飯田線に入線する臨時快速列車である。まれに豊橋以西でも運行される。
臨時特急ごてんば[編集]
- 浜松駅 - 御殿場駅間で運行された。
急行飯田線秘境駅号[編集]
- 特定の週末に豊橋駅 - 飯田駅間にて、線内の秘境駅に停車しながら運行。全線所要時間は5時間40分。
臨時特急身延[編集]
- 身延山開創750年慶讃大法要に合わせ静岡駅 - 身延駅間にて運行。
アニメコラボ列車[編集]
- いずれも臨時急行で、コンパートメント区画を展示スペースに使用、キャラクターによる車内放送、持ち帰り可能な専用ヘッドカバーなどの企画が行われている。
- ゆるキャン△梨っ子号
- 2020年2月に身延線沿線で行われたアニメ「ゆるキャン△」のイベントに合わせ、「ふじかわ」と同様、静岡駅 - 甲府駅間にて運行(停車駅は「ふじかわ」と一部異なる)。
- ラブライブ!サンシャイン!!号
- 2023年3月25日以降JR東海が企画する「ラブライブ!サンシャイン!!沼津ゲキ推しキャンペーン!」の一環で浜松駅 - 沼津駅間にて運行。
代走[編集]
新快速[編集]
- 2006年に踏切事故が起きて名古屋地区のダイヤが乱れた際に新快速に充当されたことがある。
快速[編集]
- 2021年5月24日、車両故障が起きた際に代走で浜松 - 静岡間で設定されたことがある。
- この他、ダイヤが乱れるとライナー列車を快速に格下げして運用されることもある。
今後[編集]
2020年代後半になると、本系列も車齢30年を経過し、代替時期に迫る。事実、同時期に製造された383系はすでに置き換えが発表されている。ここで、中部横断自動車道など道路交通の充実と一部区間が赤字であることから伊那路・ふじかわ共、廃止の噂が立っている。ふじかわについては新幹線との接続が良いことから、存続の上で減車された後継車両に置き換わるものと思われる。
だが、伊那路については、設定時に賑わった佐久間レールパークのような集客施設がなく、また平日は県境越えの流動が少ない事に加え三遠南信自動車道が2025年に佐久間川合IC以南が開業予定であり、浜松市街から浦川・佐久間へ市内連絡の高速バスが設定されると鉄道への打撃は大きく、ふじかわより存続は厳しいと考えられる。加えて、難工事と言われた青崩峠トンネルが2023年5月末に貫通して三遠南信道は県境部の全通に一歩近づき、これに加えて飯喬道路が全通すれば、現道活用区間を加えた国道152号経由での浜松市街との高速バス設定は確実と考えられ、ある意味存続が絶望的になったと言えよう。
しかし、両列車とも、主要駅にある程度停車することから貴重な運賃収入とみなし、また飯田、身延線ともリニア中央新幹線の接続線区になりえるため、接続列車で快速格下げという手法を用いても残る可能性があると考えられる。更には、2024年問題でバスドライバー不足が懸念されることを踏まえると、むしろ存続しないと都市間輸送が途絶えるという最悪のシナリオも否定できない。
なお、313系静岡S編成が特急運用に入るということは抑速ブレーキの関係上ほぼないと考えてよく、ついでに御殿場線における315系によるワンマン化が決まり313系L編成は間違いなく余剰となる為、快速格下げによるワンマン化を当該編成で行う可能性も無くはないと言えよう。
また、引退後も使い勝手の良い3両固定編成のVVVF車であることから、長野電鉄や富士急行、ひいては秩父鉄道や富山地方鉄道[注釈 3]あたりが一部を引き取るという未来も想像に難くない。
近い世代の車両[編集]
- JR西日本281系電車 - JR西日本の特急車
- JR東日本255系電車 - JR東日本の特急車
- JR東海383系電車 - 振り子車
- JR東海313系電車 - 近郊用車
脚注[編集]
- 注釈
- 出典
関連ページ[編集]
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