東京一極集中
東京一極集中(とうきょういっきょくしゅうちゅう)とは、日本において、政治・経済・文化・人口など、社会における資本・資源・活動が東京都区部、或いは首都圏(東京圏)のなかでも1都3県(東京都を筆頭に神奈川県、埼玉県、千葉県)に集中している状況を言う。
概要[編集]
首都圏への人口流入を見ると、1955年から1970年頃までは毎年30-40万人の転入超過があった。しかし、1980年頃から再び首都圏への流入超過が始まり、バブル景気直前の1987年にピークに至り、この時の純流入は20万人に迫った。このように、急速に膨張する東京圏の一方、名古屋圏はわずかながら人口流入となった反面、その後は、バブル崩壊と共に東京圏への流入も再び沈静化に向かい、1993年にはほとんど均衡した。しかしながら、1990年代後半以降は都心での住宅開発などによる「都心回帰」により、1987年のピーク時に匹敵するほどの顕著な、東京圏への人口流入となった。2009年からの日本経済の低迷以降、そのペースは多少緩やかにはなっているものの、首都圏への人口流入は続いている。
その結果、国勢調査結果を長期的に見ると、全国の人口に対する1都3県の割合は、第二次大戦終結直後の1945年に13.0%であったが、調査の度にその割合を高め、2005年では26.9%となっている(2005年は概数速報による)[1]。
21世紀に入り首都圏1都3県、特に東京特別区への人口集中は一層進んでいる[2]。2000年の国勢調査結果と2005年の国勢調査結果を比較すると、東京都が約50万人、神奈川県が約30万、千葉県、埼玉県、が約10万人と、1都3県で約100万人増加した。同じ首都圏内においても、はっきりと明暗が分かれており、東京都心部への人口流入が続く反面、多摩地方や神奈川県、千葉県、埼玉県などの一部地域(主に80年代に人口が急増した東京都心から遠い郊外地域)の人口が減少に転じつつある。
一方、地方では、トヨタ自動車などの製造業の求人が好調だった愛知県が約20万人増加、滋賀県も東京と愛知に次ぐ人口増加率を記録するも[注 1]によると、ほとんどの道県で減少した。かつては人口の増加傾向が続いていた宮城県でさえ、2000年代以降は減少に転じている。2016年及び2017年の人口増加数は東京23区が全国1位、大阪市が全国2位、札幌市が全国3位である。
アメリカ最大の都市であるニューヨーク市と比較すると、ニューヨーク市への郊外からの流入人口は56万人であるが[4]、東京特別区部(23区)への流入人口は333万人と[5]、ニューヨーク市のほぼ6倍の流入規模がある。また、東京都市圏(1都6県)の人口が約4,200万人で、ニューヨーク都市圏の人口が2,136万人であり、首都圏の人口規模が世界的に見ても巨大である。
2014年10月18日、内閣府が公表した「人口、経済社会等の日本の将来像に関する世論調査」によると、東京一極集中を「望ましくない」と考えている人は48.3%となっており、全体の半数近くであった[6]。
世界都市東京・地方交付税の現実[編集]
日本のほとんどの地方自治体は地方交付税交付金を受けている、しかしその財源は東京で得られた税金であり、東京の富を地方に分配しているという状況がある。また、東京は世界都市としてニューヨークやロンドン、パリのみならず、アジアの主要都市とも激しい都市間競争を繰り広げている。東京一極集中の問題点は言うまでも無いが、東京の国際競争力の低下につながりかねない政策は、日本の国力を低下させる事につながる可能性があるため、この問題は慎重にあつかう必要が求められる。
東京圏への流入地域[編集]
住民基本台帳人口移動報告[7]の都道府県別人口転入超過数をみると、首都圏への一極集中の様相がうかがえる。首都圏1都3県への人口流入超過道府県は、東北地方と新潟県が大多数を占めている。これは、長期的には1980年代より、短期的には1990年代のバブル崩壊以降、顕著な傾向であり、東北の衰退の深刻化と東京一極集中・東京の発展が反比例しているとも見られる。1990年代後半から2000年代にかけての金融改革など一連の政府による構造改革により、また、東北地方及び新潟県は高度成長時代より、東京へ大量の労働力を提供している。その他の地域では東京への人口流入は収まりつつあったが、震災の影響が落ち着いたことと2020年東京五輪招致を契機に、再び東京への流入が急増しており、2015年(平成27年)の東京圏への転入超過は11万9357人となり、震災前の2010年(平成22年)の水準を大きく超えた[8]。
2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)以降、東北から首都圏への人口流入がより一層加速している。総人口が前年に比べて25万9千人も減少する中、依然として極端な東京とその周辺への一極集中傾向が続いている[9]。
問題点[編集]
東京一極集中がひき起こしている問題点としては以下の点が指摘されている。
過密[編集]
依然として劣悪な住宅環境、慢性的に渋滞する道路、殺人的な通勤ラッシュなど、過密問題を引きずっている。特に2020年に新型コロナの感染者が増加してから、過密問題がクローズアップされるようになっている。
リスクへの脆弱性[編集]
過剰に東京に一極集中した結果、地震や洪水などの自然災害や、テロや戦争などの大規模な争乱が発生すると、日本の首都機能が破壊されるという危険をはらんでいる。他の世界的な大都市であるニューヨークやロンドンなどと比較すると、東京は地震の危険に常時さらされており、また横浜から千葉に至る東京湾岸地域は、いずれも地盤条件の悪い所に都市が発達しているため、地震による地盤の液状化や各種のライフラインの損傷などの重大な被害が発生する可能性がある。ミュンヘン再保険会社によれば、ハザード(Hazard:その地域を襲う災害)×エクスポーズド・バリュー(Exposed Value:その地域の経済的価値)×バルネラビリティー(Vulnerability:その地域でとられている災害対策)により得られる災害リスク指数は東京・横浜において他都市に比べ格段に大きいとされている[10]。
2006年には、東京湾沿岸の送電線が一箇所切断されたことにより、半日間首都機能が麻痺する2006年8月14日首都圏停電が発生した。首都機能の麻痺は経済活動に打撃を与える危険性が高いが、過密な東京都区部を避けて、近隣の神奈川県、埼玉県、千葉県、多摩地域などに移転する政府機関や企業もある一方、大企業の本社の地方移転は進んでいない。
また東京は太平洋側南東の平野部に位置するために、雪が少ないという気候的特徴を持っている[注 2]。本来は災害に強いはずのインターネットも、ネットワークを相互接続するインターネットエクスチェンジが各地域には一応あるものの東京に一極集中しているため、脆弱であると指摘されている。
2011年3月に起きた東北地方太平洋沖地震とそれに付随した福島第一原子力発電所事故の影響(輪番停電など)により、東京圏は大混乱に陥った。
詳細は「東日本大震災」を参照
また、歴史的に見ても首都圏は大地震(南関東直下地震)が起きる可能性が非常に高く、今後30年以内に発生する確率が70%とされていたが[11]、東北地方太平洋沖地震によって誘発される危険性が高まったとされる。なお、首都圏がある南関東はプレートの境界線に位置するため房総沖や相模沖(関東地震)など巨大地震の巣窟となっている。
東京圏以外の各地の衰退[編集]
東京圏に人・モノ・資金・情報・サービス・機能・娯楽が集中することにより、東京圏以外は経済的に衰える地域が多い。大学の卒業生や各界の著名人が、地域に留まらず、東京へ多量に流入している。特に、平成以降は企業の東京への本社機能集約の結果として、就職先は東京というケースが激増している。国内において第2の規模の大都市圏であり昭和の頃にはほとんどが地元の企業に就職していた京阪神圏の大学の卒業生でさえ、就職は首都圏というケースが2000年以降は急増している。その結果、定住先が東京圏となり、人口流入も非常に多い。長期的には、地域の優秀層が空洞化すると次世代の優秀層が薄くなり地域の停滞が深刻化する恐れもある。東京圏にかろうじて対抗できるだけの経済力と人口がある京阪神圏・中京圏以外の地域ではなおさらこの事態が悪化することもあり得る。
資産格差の発生[編集]
東京への人や企業の集中、集積の経済による生産性の向上は地価や賃料の上昇をもたらし、東京の地価が地方の地価に比べて大きく上昇することで、既に東京で土地を持つ者とそうでない者との間に大きな資産格差を発生させる。
規模の不経済[編集]
巨大都市は集積の不経済を伴う可能性をはらんでいる。経済協力開発機構 (OECD) のレビュー[注 3]。
莫大な電力供給やインフラ整備の必要性[編集]
人口が増え、郊外に加速度的に都市圏が広がることにより、鉄道網、道路網など莫大なインフラストラクチャー(インフラ)整備が必要となるが、都心部の土地の価格は比較的高値であることから、インフラ網の整備には巨費を投ずることになる。また、大都市圏化による通勤時間の長時間化は労働生産性の低下をもたらす。
報道の視座[編集]
東京からのみの情報が全国に伝わること、その他の地域の情報はほとんど伝わらないことで、価値観が東京のみを基準にすることに対する問題が露呈している。
その実例[編集]
全国向けに流布されるテレビや雑誌の情報が、首都たる東京都区部(特にマスコミ関係者が多い港区や世田谷区、東急や小田急や京王の沿線)やその近辺の商店や施設に偏ってしまい、情報の東京一極集中や地方の軽視、さらには恣意的な偏向報道、言論統制、情報操作、地域差別を招いていると批判する声が上がっている。大部分、全国向けと関東ローカルの区別がつかないものが全国に放送もしくは頒布され、あたかも関東から見た世界がすべてのように思う視聴者や読者が増えた。
- 番組で紹介される店や街等の情報が、東京または東京近辺に偏り、地方の名店がほとんど紹介されない。『VivaVivaV6』『王様のブランチ』『出没!アド街ック天国』、朝の情報番組(特に『めざましテレビ』)での店の紹介など、多数におよぶ。『グッドモーニング』にいたっては、全国のANN系列(ABCテレビやメーテレやKBCテレビの一部時間を除く)で放送されているにも関わらず、交通情報は東京近辺(JR東日本や首都高速道路、羽田空港出発便など)の分しか伝えない。
- 上記と重複するが、東京に開設された最新スポット(六本木ヒルズ(特にテレビ朝日では報道する。ちなみに、フジテレビではお台場)、ヨドバシカメラマルチメディアAkiba、秋葉原クロスフィールド、表参道ヒルズ、東京ミッドタウン、新丸の内ビルディング等)の情報は全国ネットでも大々的に報道される。しかし、ほかの地方で同規模のスポット(名古屋のJRセントラルタワーズやミッドランドスクエア、京都のJR京都駅ビル、大阪の天保山ハーバービレッジやなんばパークス、神戸のHAT神戸、福岡のキャナルシティ博多、札幌のJRタワーなど)が開設されても、ほとんど報道されない。このためキー局は、ほかの地方の情報をほとんど放送しなかったり、関東以外の系列局からのネット番組が少ない「報道管制」ともいえる状況に置かれている。
- トークの内容が、東京ローカルの番組や東京の街の名前等のネタになる(石原良純の天気予報ネタや、西日本では販売されていないぺヤングソース焼きそばなど)。
- プロ野球の情報が、日本テレビやTBS(特に日本テレビ)では、関東地方の情報に偏ってしまう(フジテレビやテレビ朝日などは、全国ネットではあまりひいきしていない)。これらが全国ネット番組(『ズームイン!!SUPER』など)で流され、かつての「プロ野球ニュース」のような全球団を公平に扱うスポーツ番組が無くなったため、自分の地方のプロ野球チームの情報が少ないと不満を抱く人が多い。 (厳密な意味で全国を網羅するものではないが)全国放送で読売ジャイアンツのみを過剰に報道した結果、プロ野球のファンが読売またはセ・リーグのファンばかりになった時期もある。しかも、読売側にとっては増収に至ったため、結果として各球団のファン数のバランスがいびつになった。
- 一方で読売と対戦しないパ・リーグは存在が忘れられ、存廃問題にまで発展した。その後、パ・リーグにも地域密着型球団が出現したり、セ・パ両リーグによる交流戦の導入によって多少は改善されたが、いまだに影響が残っている。これは読売新聞の拡販問題にも共通する。プロ野球の視聴率低下という問題が報道で現れているが、あくまで読売人気の低下であり(=巨人一極集中型から地域密着型への変化)、特に地元に球団を持つ中京広域圏[注 4]、広島県、福岡県、北海道、宮城県などでは、地元球団の報道で視聴率が見込まれても、キー局としては無視するため改善がない。
- 地元球団と巨人の試合ひとつ見ても、地元球団(阪神・中日を除く)のホームゲームであるにも関わらず、在京キー局のアナウンサーが派遣され、巨人よりの放送を行なうことに不満を持つファンもいる(顕著なのはテレビ朝日で、ABC以外で対巨人戦のホームゲームを全国中継される場合、地元局はベンチリポートアナ以外はテレ朝が担当している。日本シリーズも阪神・オリックス以外は必ずテレ朝が担当になる)。
- 社会問題を語る際に、首都であり、かつ最大の過密都市である東京からの視点のみとなり、地方(特に村落や離島といった過疎地)の視座を軽んじていたり、そうした視座で制作された番組が深夜帯といった視聴習慣の少ない時間帯に放送されている。
- 東京都区内で起こった事件や事故の名称から、「東京」を外して報道する(地下鉄サリン事件、世田谷一家殺害事件など)。
- 東京以外の地方(特に京阪神)の社会問題を、意図的に詳しく報道する(各局ワイドショー・ニュース番組の関東ローカル枠での特集コーナー、『交通バラエティ 日本の歩きかた』など)。
- 地域による文化や風習などの違いを紹介する際に、東京の文化・風習が普通または優っており、地方(特に大阪を初めとする近畿地方)のそれがおかしいまたは劣っているように表現することがある。
- 放送以外でも、週刊誌の大学関連の記事が、七帝大、医学部、首都圏の私立大学に偏るため、地方の大学や医学部以外の学部が軽視される傾向が起きている。
- 台風や豪雪などの自然災害の際、東京に被害が及びそうになると特番を組んだり定時ニュースの大半を割くなどの報道がされるが、台風が東京を過ぎたりすると割く時間が一気に減る。これは民放でもNHKでも顕著であり、非難する意見が多い。
- 東日本で不安定な天気が予想され、かつ北日本や西日本の天気が安定している場合でも、あたかも全国的に不安定な天気であるかのような伝え方をする場合がある。逆も同様で、東日本の天気がよければ、たとえ西日本や南西諸島などの天気が悪くても全国的に天気がいいという報道をする。 全国ネットの天気予報(特に民放)で、関東に限って雨が降る場合でも全国の視聴者に「傘を忘れないように。」という呼びかけがある。
例として、とあるキー局の場合、アテネオリンピック (2004年)開催中のある日、西日本に台風が上陸して死者まで出たにもかかわらず、台風のことには一切触れずオリンピックの速報に終始していた。 - 夏季の熱中症も、2017年8月のある日、東海以西で記録的な猛暑となり熱中症による搬送者まで出たにもかかわらず、キー局の気象情報は、そのことには一切触れず関東及び東北地方の太平洋側の日照不足・低温の情報に終始するなど、首都圏で被害があった際、全国的に今後の警戒が必要な伝え方をされ、北海道の道東、道北の一部のように真夏に避暑に適する冷涼な地域が存在しないかの如くされている。
- 降雪の少ない関東で晩冬に大雪が降ることが必至となった場合、キー局は全国ニュースでさえ(大雪が降らない地域に対しても)雪道の歩き方や防寒対策などを事細かに説明する。東京周辺以外の大雪の場合はほとんど説明されない。2005年に東京に積雪(大雪といえるほどの積雪でもなかった)があったときには、全国ニュースのトップに東京の雪の情報を欠かさず取り上げ、2018年に東京で大雪があったときには特別番組編成まで組んで東京の雪の情報を出した。
- 東日本で不安定な天気が予想され、かつ北日本や西日本の天気が安定している場合でも、あたかも全国的に不安定な天気であるかのような伝え方をする場合がある。逆も同様で、東日本の天気がよければ、たとえ西日本や南西諸島などの天気が悪くても全国的に天気がいいという報道をする。 全国ネットの天気予報(特に民放)で、関東に限って雨が降る場合でも全国の視聴者に「傘を忘れないように。」という呼びかけがある。
- 「東京は日本の首都である」という考えのもと、大事故や大災害の際には、東京近郊以外や被災地の問題より、「もし、東京で大災害や首都直下型地震が発生したらどうなるか」だけしか採り上げず、被災地の実状をまともに報道せず、ほかの地方での被害をまったく考慮していない。この件は、阪神・淡路大震災が起こったときに特に指摘された。
- 上記と同じく、「東京は日本の首都であり、テロに狙われやすい」という考えから、海外で重大なテロ事件が発生した際、しばしば「もし、東京でテロが発生したらどうなるか」ばかりを考慮し、その際には決まって国会議事堂、霞ヶ関、皇居、東京国際空港、原子力発電所など、国家的に重要な施設が狙われた場合の想定しか採り上げられないケースが多い。特に、原子力発電所がテロで破壊された際に発生する放射線の影響を採り上げる際に、首都圏内に飛散した場合の影響だけを強調して報道し、原子力発電所が立地する地域への影響をまったく考慮しないケースが多い。
在日米軍基地が狙われるような場合を想定する際、横田基地(多摩地方の羽村市や福生市)や厚木基地(神奈川県の綾瀬市や大和市)など、東京都区部に近い地域を優先する傾向が極めて大きく、嘉手納基地(沖縄県嘉手納町)や三沢基地(青森県三沢市)、岩国基地(山口県岩国市)のように、東京都区部から遠い基地や施設ほど軽視される傾向が大きい。これらの件は、アメリカ同時多発テロ事件が起こった際に、特に指摘された。
東京一極集中批判に対する反論[編集]
前述のようによく東京一極集中は批判されており、海外、東京都内部、地方民の一部から苦情やバッシングを浴びせられることが目立つようになってきている中でそれに対する反論も多い。都会としてふさわしくない前述のような偏向報道、過密を指摘されるケースが多いが、これには日本国に求められる地方分権が理由であり、日本国の成り立ちや伝統が背景にあるといった指摘や、「東京都は日本における大変な功労者と言って間違いない。記録については、働く場や商業施設、公共施設の総数も歴代1位に輝いている。この記録達成の途中では、関東大震災、東京大空襲に揺れた時期もあった。首都機能は麻痺状態となり、形式的な日本の首都となるという前代未聞の事態が発生してした。地方が廃れていく中、一大都市の時代も長く続いたこともあった。その中で奮闘し日本を統治してきた。都市部の外では日本で唯一のオセアニア区である小笠原諸島を構成し自然との共生に寄与している。東日本大震災の影響で、長く帰郷できなかった人達に対して積極的に帰郷を促すなど、人間性もしっかりした地域である。しっかりした人間性がなければここまでの記録を打ち立てることはできなかったかもしれない。もし東京都が都ではなく、府県に属していたら、どれだけ賞賛されたかわからない」といった意見もある。
一極集中是正の名の下に県庁所在地など一部の都市に一極集中してしまう危機[編集]
後述のように、東京一極集中是正を目的とした地方分権の試みはあちこちで行われているが、前提として非常に問題が多い。たとえば、純粋な地方分権ではなく、地方都市としては特権階級というべき県庁所在地や、地方でも権勢のある都市に地域内一極集中するリスクが高い。現時点においても県庁所在地を中心に、ごく一部の都市にヒト、モノ、カネなどが集まる現状がある。国立社会保障・人口問題研究所の将来人口予測にもとづけば、地方圏は人口減少傾向にあるものの、県庁所在地や例外的一部の都市は、各県における人口減少率が少ない傾向が顕著であり、今後これらの都市にさらなる一極集中をすることが予想されている。現状では地方分権を推進したとしても、その錦の御旗の下、県庁所在地という特権階級ともいえる都市を中心に、今後東京一極集中の地方版という状況が全国的に出現する可能性は現状以上に非常に高い状況にある。国立社会保障・人口問題研究所の研究者には、県庁所在地や一部の例外的都市を除いては、人口が大きく減少する社会状況を前提にまち作りをするよう提言する者もいる。地方分権と言っても各地方都市が公平に扱われる訳ではないという事は抑えておく必要がある。各種取り組みはある者の、地方中枢都市や県庁所在地以外の地域自治体が地方分権の果実を得ることは県庁所在地などと比べても、さらに非常に困難という現実がある。
首都一極集中回避への取り組み[編集]
日本国内[編集]
日本では第二次世界大戦後、池田内閣が1960年に所得倍増計画において太平洋ベルト地帯構想を打ち出したが地方の反発にあい、それを受けて1963年に策定された全国総合開発計画(一全総)では、「地域間の均衡ある発展」を掲げた。続く1969年の新全国総合開発計画(二全総、新全総)でも、新たに大規模工業開発地域を定め、工業生産の核となる地方地域開発を狙った。そして第三次全国総合開発計画(三全総)が策定された1970年代には、革新自治体の台頭もあり、地方の時代と呼ばれる中央集権から地方分権を志向した主張が盛り上がりを見せた。
1987年の第四次全国総合開発計画(四全総)では東京一極集中への対策として、明確に「多極分散型国土」を形成することを国土利用、開発の指針とした。これを受けて翌年の1988年には多極分散型国土形成促進法が成立し、国に対し東京からの国の行政機関等の移転の努力、ならびに民間に関しても過度の集中を避け、国土への適切な配置を図るために必要な措置を図ることが定められた。
1998年の21世紀の国土のグランドデザイン(五全総)では、これまでの拠点、極による日本国土全体の発展から、国土軸という地域的まとまりを重視し、またその趣旨に合致するように、中央による下達的な地方の開発から地方の自立、地方主体の国土利用を目指すこととした。高度経済成長期以降、国の国土に対する方針は太平洋ベルトへの工業の集中、後に東京一極集中という問題に対して、地方の意見や批判も踏まえ、目標としては、一全総から五全総まで一貫して集中の解決を目指していた。
1990年代には首都機能移転論争もあったが根強い反対論が沸き起こり、その後完全に立ち消えになった。他にも道州制や地域主権など地方分権論争も活発化した。東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)による混乱から、過剰な東京一極集中への危惧も出始めており、副首都構想なども提起されているものの、国としての具体的な対策はほとんどとられていない。また、震災以降は特に被災地である東北地方からの人口流入が急増しているため、依然として東京への一極集中は続いている。日本経済団体連合会(経団連)やマスメディアの反応も非常に鈍いものがあり、東京一極集中是正の必要性についてはほとんど取り上げられることはない。
それどころか、震災による影響が一段落し始めた、2013年以降は、積極的に地方の若者に首都圏での就職活動が行いやすいように、政府としての後押しも始まったり[12]、東京都の法人税を下げ、東京に企業の集積を図る国家戦略特区の構想[13][14]や小池百合子東京都知事による「国際金融都市」構想が出てきており、東京とその周辺への一極集中の是正は全く図られていないどころか、むしろ、東京一極集中をより積極的に促す政策や国策が議題の中心になっている。
人口転入超過数の統計[15]を見ると、関東地方の外側から東京への人口転入超過数が多い地域として、関西地方と東北地方全域や新潟県を中心とする地域が最も多く、これは東北地方の衰退や関西経済の地盤沈下と東京一極集中が反比例している証拠と考えられる。したがって、地域企業による自立的な経済活性化政策、バブル以降相次いで東京へ本社機能を事実上集約化した企業の創業地への出戻りによる経済の復活政策が東京一極集中問題解決のヒントとなると言えるが、東京に本社を移して売り上げやイメージが向上したとのデータもあり、企業側のメリットも考えると一筋縄ではいかないと言える[16]。
企業の取り組み[編集]
企業の取り組みとして、東京に置いていた本社機能を、東京以外の地域に移転させる動きが見られる。移転先は、創業地や工場・開発拠点がある地域などである。
- 中越パルプ工業は、2009年3月23日に営業部門と一部機能を除き本社機能を東京都中央区銀座から創業の地である富山県高岡市に移転し、高岡本社として業務を開始している[17]。
- 東洋ゴム工業は、2012年4月末に東京本社の拠点機能(一部を除く)を大阪本社に移設、統合した[18]。
- YKKグループは、北陸新幹線が金沢まで開業するのにあわせ、2015年春を目途に富山県黒部市に本社機能の一部を移転させる。これに伴い、黒部市内に節電型の住宅を約250戸建設する[19]。
- アクサ生命保険は、東日本大震災を契機に2014年度を目途に本社機能の一部を札幌市に移転し「札幌本社」を現在札幌市に建築中の「札幌三井JPビルディング」に置くことを明らかにした。[20]。
- 人材派遣のパソナグループは、2020年の新型コロナ流行によるリモートワーク普及を機に、本社機能を淡路島に移すことを発表した。
- 芸能プロダクションのアミューズは、前記と同じく新型コロナ流行を機に、本社機能を山梨県富士山麓に移転することを発表した。
教育面での取り組み[編集]
島根県の隠岐島前高校で2010年から始まった中山間離島地域の公立高校での県外生受け入れが島根県全体を経て、全国で「地域みらい留学」として拡がっている。
これは、単に中山間離島地域の高校の定員充足率を上げるだけに止まらず、多感な思春期世代に都会を離れた地方で暮らすことで、東京など都会中心の視点が是正される人々が増える効果が期待される。
一方で、都道府県毎に取り組みに差があり、例えば、山間部の奥三河を抱える愛知県では、山間部の高校普通科の広域受け入れを行っておらず、青森県でも過疎地域で大規模の高校統廃合が実施された。
政治・行政[編集]
東京一極集中の一つの要因として、日本における長期的で全国視野の都市計画の欠如も挙げられる。東京一極集中を緩和させる観点から、1970年代から2000年代前半にかけて、政府の一部機関が筑波研究学園都市・さいたま新都心などに移転し、近年では、1都3県以外へ中央省庁の文化庁等を含む政府機関の移転が検討された[21]。
小泉純一郎政権は「地方にできることは地方で」というスローガンの下に三位一体の改革を推進したものの、地方交付税を大幅に削減し、「市町村合併特例法」を始めとする時限立法を制定して市町村合併を促したため、多くの市町村が合併した。
財政再建のため、公共投資の費用対効果の検証が厳しく行われ、採算重視となっていくことが想定され、インフラ整備で地方はますます不利になってきている。具体的には、東京は需要が多いために採算も取れるが、東京や関西圏の都市部以外の地域は需要が見込み難く、採算が取れない場合が多いためである。
また、複数の地域に関わる幹線道路については、従来は国の答申にもとづいた第四次全国総合開発計画(四全総)により策定された路線が、日本道路公団により建設・運営され、通行料金の全国プール制により、採算区間から不採算区間への一種の内部補助がなされていたが、道路公団民営化の影響による新規建設の抑制や、予測通行量が少ない区間の建設については、全国プール制の除外(新直轄方式)にする事例もあり、事業の進捗に影響を生じている。
また、公共交通が採算性重視で評価されるようになった結果、ローカル線の鉄道や路線バスが廃止、または運営者を変更(鉄道のバス転換・廃止代替バス)する事例が増加している。
中央省庁の主導する政策にも、東京一極集中が指摘されている。関西国際空港開港直前の1992年に開かれた「関西財界セミナー」の第五分科会では、運輸省(当時)の職員が関空第二期工事以降の地元負担を求めておきながら、1991年に運輸省航空局に設置された「首都圏第三空港プロジェクトチーム」の職員は、地元負担に難色を示した。当時の幹部は東京都に対する地元負担を求める考えを持っていなかったとされている。建設省(当時)の幹部は「霞が関の中央官僚は東京の問題を自らの痛みとして受け止める。各方面の不満や要求も直接身に降りかかる。その代わり業績もすぐ評価してもらえる」と指摘している[22]。
国立施設の東京一極集中も指摘されている。新国立劇場建設に当たって、東京には既に国立劇場が運営されており、「地方につくると言う意見もあったが、ほとんど議論にならないまま、新宿に近く国有地があると言う理由で決まった」と文化庁の第二劇場準備室は述べている。地方の声は中央に届きづらく、「国は双眼鏡を逆さまにして地方を見ているのではないか」という声が年々強くなっている、と指摘されている[22]。
地形的要因[編集]
東京を中心に世界最大の都市圏を形成しえた根本要因は、必ずしも経済的な事項だけではない。広大かつ比較的平坦で居住に適する洪積台地が広く、開発余地が大きかった関東平野の存在も都市圏拡大に欠かせないものである。現に1960年代の高度経済成長期においても首都圏への一極集中が叫ばれていたが、その頃近隣の神奈川県でさえ人口は400万人、埼玉県、千葉県は200万人強に過ぎず、東京都多摩地区にも雑木林や荒れ地が至る所に見られるほど土地開発に余裕があった。一方、狭い平野を山地・丘陵に囲まれた京阪神圏はすでに土地の開発に余裕がなくなっていた。そのため、本来は居住に適さない丘陵地帯を無理に切り開いたり、市街地では地下にスペースを求めるなどの開発をせざるを得なかった。
但し、関東も多摩丘陵のように開発された丘陵が多く存在し、新宿のような地下街も存在するため、論理が破錠している。また、1960年当時の地図を見ると、関西も土地開発に余裕があるように見えるが、余裕が無かったという根拠は何か?残念ながら、日本語版ウィキペディアでは証明することが出来なかったようだ。
脚注[編集]
- 注釈
- 出典
- ↑ 国勢調査 - 総務省統計局
- ↑ 人口の都心回帰現象 - 社会実情データ図鑑
- ↑ 総務省の平成20年人口推計年報。
- ↑ ニューヨーク市への流入人口は約56万人 - CNN
- ↑ 2005年国勢調査 - 総務省統計局
- ↑ 東京集中「望まぬ」半数=内閣府が初の調査時事ドットコム 2014年10月18日
- ↑ 住民基本台帳人口移動報告 - 総務省統計局
- ↑ 東京圏への人口集中続く 大阪圏、名古屋圏は転出超過 朝日新聞 2016年1月30日
- ↑ 人口推計(平成23年10月1日現在)‐全国:年齢(各歳),男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級),男女別人口 - 総務省統計局
- ↑ 地域の安全・安心に関する懇話会 最終報告 - 総務省消防庁(2003年12月)
- ↑ 日本を襲う主な巨大地震の確率
- ↑ 地方の就活生支援、7月から試行 政府 2013年5月21日 日本経済新聞
- ↑ 特区で外国企業の法人税20%に下げ 東京都が構想 2013年5月22日 日本経済新聞
- ↑ 国家戦略特区創設へ9月に検討会議 投資減税など 「東京も有力候補の1つ」 2013年5月22日 日本経済新聞
- ↑ 住民基本台帳移動報告 - 総務省
- ↑ [1](PDF) - 大阪府(2012年10月18日時点のアーカイブ)
- ↑ 本社機能の移転に伴う組織改訂ならびに人事異動に関する件 - 中越パルプ工業株式会社プレスリリース(2009年2月10日)
- ↑ 大阪本社へ東京本社機能を統合 - 東洋ゴム工業株式会社プレスリリース(2011年8月10日)
- ↑ YKK、黒部に節電住宅250戸 本社機能一部移転で整備 - 北日本新聞(2013年3月6日)
- ↑ アクサ生命、「札幌本社」を2014年に設立--事業継続体制の強化を目指す -マイナビニュース(2013年11月5日)
- ↑ 徳田貴子「地方創生における政府関係機関移転の取組」、『立法と調査』第394号、参議院常任委員会調査室、2017年11月、 57-68頁。
- ↑ a b 日本経済新聞社『大阪の挑戦』P.28「第1部 ナンバー2都市の試練」