周波数

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周波数(しゅうはすう、英:frequency=フリケンシー、フリクェンシー)とは、1秒間あたりに繰り返される媒質の一点を通過する波の数である振動数のことで、f で表される。単位はヘルツ(Hertz、略してHz)。

概要[編集]

周期逆数である。周波数をf、周期をTで表すと、

となる。かつての単位は[c/s](サイクル毎秒)だった。

波動[編集]

波長と振幅[編集]

同位相の隣接2点間の距離λを波長という。振動の幅を波高、その半分Aを振幅という。

周期と振動数[編集]

媒質中の一点における振動が一回終了するごとに波形は1波長λだけ前進する。振動の周期Tは波動の周期でもある。振動数fは単位時間に媒質の1点を通過する波の数で、これを周波数、あるいは波動の振動数という。

波動の伝播速度(進行速度)[編集]

波の速度、または波の速さという。単位時間に波動の一部のある状態(波形上の1点)が進む距離で表す。

波動の基本式[編集]

波長λ[m]、周期T[s]の波動はT[s]間に1波長の距離を進むから、波の速さv[m/s]は次の式で表される。

…①

また、1振動の時間がT[s]であるから、1秒間の振動の数fは1/Tとなる。つまり、周期の逆数である。すなわち、

…②

となる。これを①に代入すると

…③

となり、波の速さvは波長λの振動倍数であることがわかる。

また③を変形して、

…④

これにより

  • 波長が長い-周波数は低い
  • 波長が短い-周波数は高い

交流[編集]

電流の向きが周期的に変わる電流を交流電流(交流)という。交流を表す式ではω[rad/s]を角周波数という。周波数は交流が1秒間に大きさと向きの変化を繰り返す数をいう。この1往復に要する時間を交流の周期という。

周波数をf[Hz]、周期をT[s]とすると、等速円運動の場合の式と同じように、次の式が成り立つ。


が成り立つ。

交流回路[編集]

直列回路[編集]

抵抗値R[Ω]の抵抗、自己インダクタンスL[H]のコイル、電気容量C[F]のコンデンサーの直列回路に、周波数f[Hz]の交流電源を入れると、回路を流れる電流の最大値Io[A]は

ただし、


となる。z[Ω]は交流回路で全体の抵抗の働きをする量となり、これをインピーダンスという。また、


  [Ω]

を回路全体のリアクタンスという。

並列回路[編集]

  • ①.抵抗とコイルの並列回路
  • 抵抗値R[Ω]の抵抗と自己インダクタンスL[H]のコイルを並列に接続し、電圧V[V]、周波数f[Hz]の交流電源につなぐ。回路全体を流れる電流をI[A](実効値)とし、抵抗及びコイルに流れる電流をそれぞれIR、IL[A](実効値)とする。

抵抗とコイルの両端に加わる電圧はいつでも等しく、電圧Vに対する抵抗を流れる電流ILはπ/2だけ遅れる。したがって、全電流IはIRとILのベクトル和になる。(このとき、IRは平面上x軸プラスに、ILはy軸マイナスとなり、Iはこの二つの合成するベクトルとなる。)

ここに、V=RIR=ωLIL ゆえに

ただし


  • ②.コイルとコンデンサーの並列回路
  • 自己インダクタンスL[H]のコイルと電気容量C[F]のコンデンサーを並列に接続し、電圧V[V]、周波数f[Hz]の交流電源につなぐ回路。電圧Vに対するコイルを流れる電流ILの位相はπ/2遅れるが、コンデンサーを流れる電流ICは位相はπ/2進む。したがって回路全体を流れる電流Iはベクトル和で表される。

共振[編集]

抵抗値R[Ω]の抵抗、自己インダクタンスL[H]のコイル、電気容量C[F]にコンデンサーの直列回路に、周波数f[Hz]の交流電源を入れると、回路を流れる電流I[A]は

ただし、

で与えられる。したがって、R=一定のときは回路のリアクタンス

が0のとき、Iは最大となる。このような現象を回路の共振という。すなわちR、L、Cの直列回路でL、Cの間に

またはω=2πfより


の関係があると、この回路は周波数fの交流電源に共振するといい、このような回路を共振回路という。LとCの値を調節してこのような状態にすることを「同調をとる」といい、そのための共振回路を同調回路ともいう。また、このときの周波数f=f0と周期T[s]は次の式になる。

このときの周波数f0を共振周波数という。この共振回路でRが小さいとき共振すると流れる電流は非常に大きくなるから、これを利用してコイル、またはコンデンサーの両端に大きな電圧を作ることができる。(=ωLI=I/ωC)

2つの電力周波数[編集]

日本国内では電力会社から家庭へ供給される交流電圧は100Vであるが、商用電源周波数は、富士川、甲信・上信・信越国境、姫川を境に東日本が50Hz、西日本が60Hzである。これは電気事業開始の頃、東日本がドイツから、西日本がアメリカから資材を輸入し、統一しないまま現在に至ったためである[1]

家庭のコンセントは、普通2つの差し込みがあるが、1秒の間に50/60回左が+極・右が-極、50/60回右が+極・左が-極になり、頻繁に入れ替わっている。東日本では50回ずつ、西日本では60回ずつ。家電製品は全て、どちらが+極でも構わない様に設計されており、コンセントをどちらの向きで差しても問題無い。

両方の周波数の電圧が供給されている電線を直接接続することは出来ず、互いに電力を融通するときは一端、直流に変換しており、低電圧の場合はサイクロコンバータ電動発電機で変換する方法が取られている。
東海道新幹線では60Hzに変換する変電所が東日本に2ヶ所設けられ、かつては回転変流機が用いられた。
さらに、北陸新幹線では両方の周波数に対応できる車両を使用し、架線を接続するときはデッドセクションを設けている。日本国内で50Hzと60Hzが間接ながら架線が繋がれているのはここだけである。

海外の交流電化では、ユーラシア大陸が50Hz、アメリカ大陸が60Hzという大まかな傾向はあるが、国により異なる。
交流電化路線の多くは商用電源周波数をそのまま用いるが、交流電化の歴史が長いドイツなどでは16.7Hz(50Hzの1/3の周波数)の架線周波数が主流で、25Hz(50Hzの1/2の周波数)も稀に見られる。

電磁波[編集]

詳細は「電磁波」を参照

電磁波はその伝搬方向に直角な平面内で、電場および磁場の強さが振動的に変化する横波であり、直進・反射・屈折・干渉・回折・偏りなど、可視光線と同じ現象を示す。
電磁波においても、ある波の山から次の波の山までの長さのことを波長、1秒間当たりの波の数のことを周波数という。

電磁波は光速で伝わるため、周波数(ヘルツ)は1秒間に光が進む長さ、すなわち299792458mをメートルで表した波長λで割った値であらわされる。

種類[編集]

電磁波は波長の長いほうから電波赤外線可視光線紫外線X線γ線に大別され、X線とγ線はそれぞれ放射線の一種である。このうち、われわれ人間が光として目で感じ取ることができるのは可視光線だけである。

← 波長が短い(周波数が高い) 波長が長い(周波数が低い) →
γ線X線紫外線可視光線 ・  ・  ・ シアン ・  ・  ・  ・ )~ 赤外線電波
関連 周波数


音響[編集]

実音の音高を表す単位であり、振動数の用語が用いられることもある。
音の要素の一つ。実音の音高を1秒間あたりに繰り返される振動数の数値で表したもの。単位はHz(ヘルツ)で、実音の音高の記号を表す。実音の音高は周波数の高低により決まる。波形が異なるさまざまな楽器の音色の実音の音高を調べることができる。楽器の音色は、基音と倍音が複合したもので、基音といくつかの倍音で成り立っている。音色の違いにより、倍音成分が決まる。実音が同じ周波数の音高を持つ波形が異なるさまざまな音色は基音周波数という。単に「周波数」といえば、「基音周波数」の略を指す。実音の音高のオクターブ表記を厳密に区別するためのもので、実音の音高を明確に固定するものである。低い音は周波数が低く、高い音は周波数が高くなる。チューニングを測定するものでもある。周波数が低ければ、振動をもたらす効果がある。

周波数の波形のグラフ表示は、横軸に時間、縦軸に音の圧力をとっている。

チューニングする時の音高は440Hzで、このピッチは基本となるA音(ラの音)。楽譜上では、ト音記号の五線の第2間に当たる。440Hzに対するチューニングのセント単位の割合は、A音から見たら0セント。440Hzは標準ピッチで、絶対的な高さを決定する基準である。440Hzより1オクターブ上げると周波数2倍の880Hz、1オクターブ下げると周波数1/2倍(半分)の220Hzとなる。半音単位の周波数の比較は、2の1/12乗単位である。2の1/12乗=2の12乗根=1.05946309436=約1.06あり、これは無理数である。半音の周波数比率は、約1:1.06。何乗しても、決して純正音程の3/2や5/4などに一致しない。ある音から2の1/12乗倍されると、半音ずつ上がる。周波数が上昇するに連れて音が高くなり、周波数が2倍になったときに元の音名に戻る。半音は、オクターブを12等分したもので、平均律に当たる。各半音の周波数のHzの数値の略表記は、小数第2位で四捨五入して統一する。

440Hzは、真ん中のド(周波数約261.63Hz)から数えると半音9つ上の音である。真ん中のド(約261.63Hz)は、楽譜上では、ト音記号の加線の下第1線、ヘ音記号の加線の上第1線に当たる。440Hzのラは、楽譜上で、ト音記号の第2間に位置する音である。周波数を測定する機械は「チューナー」と呼ぶ。

チューニングする時の音高が220Hzではなく440Hzなのは、サイン波リードという一番柔らかな音色(純音、余分な倍音を全く含まない音色、基音のみの最も単純な波形の音)でチューニングする時に、低音側になると暗く重厚で、絶対音感(音程感)がだんだんわかりにくくなり、同時に音量もだんだん聴こえにくくなり、高音側になると明るく華やかで、シャープネスが強く、光を放つように煌びやかな音色で、輝かしいクリアな響きになり、絶対音感(音程感)がはっきりしていてわかりやすくなり、フォルティッシモが出やすいからである。逆に、高すぎても絶対音感(音程感)がわかりにくくなることがある。よって、220Hzだとちょっとでもチューニングがしにくく、440Hzの方がチューニングがしやすいということがわかる。440Hzの理由は、もしくはオーケストラのチューニングでバイオリンの2番線に当たる音でもある。

絶対音感(音程感)として認識できる上限は、4kHz辺り(正確には約4186.01HzのC音)である。88鍵のピアノの最高音と一致する。この上限を超えると、絶対音感(音程感)があまり無い音となり、簡単にはどれを聴いてもほとんど同じような音名・音高に聴こえてしまう(unintelligible[incomprehensible] pitch)。低音側は普通、絶対音感(音程感)というのではなく、低音域の判別をするためのものであり、低音域の判別が出来る下限は周波数約20Hz。30Hz〜20Hz周辺の低音側は、低音域の判別は出来るが、絶対音感としてはわからない。

88鍵のピアノの音域の周波数は、最低音で27.5Hz、最高音で約4186.01Hzとなる。88個の鍵盤上に書ける周波数の値は、30-40-50-60-80-100-150-200-300-400-500-700-1000-1500-2000-3000-4000Hz。

ノートナンバーというMIDIの音域を周波数で表現すると、ノートナンバーの最低音0番は約8.18Hz、最高音127番で約12543.85Hzとなる。オルガンの音色は、ノートナンバー69の周波数は220Hzとなり、ノートナンバーの最低音0番で約4.09Hz、最高音127番で約6271.93Hzとなる。

SoundHound(midomi)で鼻歌検索するときのギリギリの音域は、最低音で約80Hz(場合によっては77Hzの場合も?)、最高音で約3322Hz。SoundHound(midomi)の鼻歌検索の音域の最高音は、88鍵のピアノの鍵盤の最高音より半音4つ下の音である。

音域の中央は、周波数約300Hz辺りである。音域の中央の計算は、一番低い音から中央までの周波数の比率、そして中央から一番高い音までの周波数の比率が両方とも同じである。つまり、実用的な音域は、最低音は30Hz、最高音は3000Hzとなる。

人間が聴き取れる周波数の音高の上限は、20,000Hzの周波数を聞き分けることができると言われている。20代後半で、27歳の場合は、上限は16000Hzで、難なく聴こえる最高音は、15804.27Hz(MIDIの範囲外で、ノートナンバーの最高音127=G8より半音4つ上のB8)までである。周波数の可聴領域の上限は、20000Hzまでであり、音名はE♭9(D#9)(約19912.13Hz、ノートナンバー135?)である。

その他[編集]

参考文献[編集]

力武常次、都築嘉弘『チャート式シリーズ新物理ⅠB・Ⅱ』数研出版株式会社新制第11刷1998年4月1日発行

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]

脚注[編集]

  1. 太平洋戦争直前に周波数の統一が計画されたが、莫大な資金が必要とされたので中止された。また、戦後間もなく、戦災復興の一環としても周波数統一が構想されたが、復興の進度が早く機を逸した。