三相交流

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三相交流(さんそうこうりゅう)は3本の導線を電圧、周期は同じで、位相[1]が2π/3(120°)ずつ異なる交流を送る方式である。

位相が異なる交流[編集]

いま角速度ωが等しい二つの正弦波交流電流

があったとする(瞬時値)。i1、i2は位相が異なっており、θ1ーθ2の位相差(または相差)がある。θ12のとき、i1とi2は同相であるといい、θ12のときi1はi2より位相が進む、またはi2はi1より位相が遅れるという。位相角θは電流または電圧が一つしかないときはあまり重要ではないが、二つ以上の正弦波を扱うときは重要である。位相角θは単に位相ともいう。 位相は一般にー180°≦θ°<180°で表現され、正は進み、負は遅れを意味する。

概要[編集]

周波数はすべて同じであるが位相が互いに異なったいくつかの電圧・電流を用いる方式を多相交流という。電圧・電流の種類がn組あるときはn相交流という。n相交流でとくにすべての電圧・電流の大きさがそれぞれ等しく、その位相が順次2π/nだけずつずれているのは対称n相交流と呼ばれる。そうでないものは非対称n相交流とよばれる。その中でもっとも広く使われているのは対称三相交流である。一般の発電機電動機、変圧器などの電気機器で多くのものは三相式である。

特徴[編集]

三相交流が電力系統に用いられる理由。

  1. 同じ量の電力を送電するのに三相を使うのが単相よりも送電線の電気抵抗による電力損失がはるかに少ない。
  2. 三相交流を使うと回転磁界ができて動力源として堅牢で安価な誘導電動機が簡単に使える。

対称三相交流[編集]

三つの相の瞬時値の和[編集]

三相交流電動機のコイルに流れる電流は角速度ωで回転し、2π/3ずつ位相が異なるので、これを式にすると、

 (第一コイル)

 (第二コイル)

 (第三コイル)

これらの和は、


より、


整理して

このように、いかなる時間tにおいても電流の和は0である。


複素数を用いると簡単に計算できる。これは電圧でも同様の結果が出る。

交流発電機[編集]

静止した磁場内でコイルを回転させ、あるいはコイルを静止させて磁場を回転させることによってコイルの導線が磁束線を切るときの誘導起電力を利用して(フレミングの右手の法則)、力学的エネルギーを電気的エネルギーに変える装置である。前者を回転電機子形、後者を回転界磁形という。

  • ①.起電力を発生する導体(コイル)は円筒形の鉄心に収められ、これを電機子という。
  • ②.回転電機子形の発電機について、コイルが二個一組ならば単相交流、六個三組ならば三相交流が発生する。
  • ③.回転界磁形の発電機について、二個一組の磁極が一回転するとコイルには1サイクルの交流電圧が発生する。もし磁極を6個、つまり3対設けて円周上にN-S-N-S-N-Sとなるようにすれば、磁極の1回転に対して3サイクルの交流電圧が発生する。
  • ④.電流を取り出す部分の丸い輪をすべり環といい、これと接触する金属片をブラシという。2個のすべり環は、回転コイルの半回転ごとに電流の流れ出す部分と流れ入る部分との役割を交替し、交流を送り出す。

三相交流回路[編集]

三相交流では三つの電源(発電機のコイルと考えても、変圧器のコイルと考えてもよい)から3本の導線を使って負荷に電力を供給するものである。三相の接続は二つの方式がある。Yの形に接続したものをY接続または星形接続といい、Yの中心部である点Nを中性点という。この場合、それぞれ一つの電源が一つの負荷に電力を供給し、電流I1、I2、I3は3つの電源を出ていずれも中性点N同士を結ぶ導線を通って帰ると考える。

これに対して正三角形に接続したものをΔ接続または環状接続という。電力関係では、両方の接続方式ともよく用いられるが、、Y接続は主に送電線で用いられ、Δ接続は主に配電線で用いられる。

対称3相交流電圧のYーΔ変換[編集]

  1. Y接続の中性点からa相、b相、c相へ向かう電圧Va、Vb、Vcを相電圧または星形電圧という。
  2. Δ接続の正三角形の頂点a、b、cとの間の各相間(例えばa-b相間など)の電圧を線間電圧という。またY接続の各相間の電圧も線間電圧という。これをVab、Vbc、Vcaとする。
  3. 相電圧と線間電圧の関係は

とすると、三平方の定理より、

となる。つまり、相電圧√3VY=線間電圧VΔとなる。

また、対称3相交流電圧のフェーザ図からは、

=√3V∠30°=V1∠30°

=√3V∠-90°=V1∠-90°

=√3V∠150°=V1∠150°

対称3相交流電流のY-Δ変換[編集]

Δ接続の正三角形の頂点a、b、cから外部へ向かう電流




を線電流もしくは相電流という。また、Δ上を流れる電流




を環状電流という。

今、Iabを基準としてIab =Ir∠0°とすると両者間の関係を示すフェーザ図を作成する。

中点Nから0°、-120°、120°からのベクトルを

とすると、キルヒホッフの第1則から、




となるので、次の式が得られる。




その他[編集]

今日の日本では、家庭や事業所に送電される電気は単相交流100Vないし200Vである。しかし、電力会社は、最寄りの変電所まで三相交流6600Vで送電し、電気エネルギーの損失を抑えている。また発電所から伸びる幹線では更に高電圧で送電しているものもあり、高い送電効率を達成している。

また、三相交流電化の新交通システムのうちサイリスタ位相制御サイリスタレオナード制御では発進時に単相交流より高い音を聞くことがあるが、これは3つの波が互い違いに合わさっているため3倍音が同時に鳴っていると推定される。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 堀孝正『パワーエレクトロニクス』オーム社出版局2002年2月25日第1版第7刷発行
  • 酒井善雄『電気電子工学概論』丸善株式会社
  • 力武常次、都築嘉弘『チャート式シリーズ新物理ⅠB・Ⅱ』数研出版株式会社新制第11刷1998年4月1日発行
  • 矢野隆、大石隼人『発変電工学入門』森北出版株式会社2000年9月13日第1版第4刷発行
  • 西巻正郎・森武昭・荒井俊彦『電気回路の基礎』森北出版株式会社1998年3月18日第1版第12刷発行

脚注[編集]

  1. t=0のときのiの値を決めるもので、他の電流あるいは電圧との関係を考えるとき重要な値である。