パワーエレクトロニクス

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パワーエレクトロニクス(ぱわーえれくとろにくす)とは、電力(パワー)の制御にエレクトロニクス技術を使うことである。

概要[編集]

電気工学電子工学が結びついた電気電子工学である。電力の変換、制御及び電力回路の開閉を半導体デバイスを用いて行う技術とその応用例である。

沿革[編集]

電子回路素子[編集]

  • 1.真空管

かつては電子回路素子として使われたが、小型化しにくいこと、破損しやすいこと、高価なことから、役割のほとんどが半導体デバイスに置き換えられ、特殊な用途にのみ使われている。2極真空管、3極真空管、多極真空管がある。以下、2極真空管について記述する。2極真空管は陰極と陽極があり、陽極を負電位とすると電子は陽極のために反発されて、そこには入り込まないから電流が流れない。陽極に交流電圧を加えた場合には、電流は陽極が正電位になっている半周期だけ管内を一方的に流れるから、いわゆる整流作用を表す。

  • 2.半導体デバイス

抵抗率が導体と不導体の中間の物質を半導体という。固体の導体は自由電子を多く持つため電気伝導性があるが、不導体(絶縁体)は自由電子をもたないため電気伝導性にとぼしい。

  • 真性半導体(純粋半導体)は、低温では伝導性がほとんどないが、温度が高くなると、自由電子に相当する電子が発生し、伝導性を持つようになる。これは一般の導体金属とは逆の性質を持っていることになる。[1]
  • 不純物半導体シリコンゲルマニウムにごく微量のある種の元素が不純物として入ったものは、そのために伝導性が与えられる。
  • 元素の周期表の14族のシリコンやゲルマニウムは原子価が4価の元素で、原子の最も外側の軌道をまわる電子の数は4個である。これらの電子を価電子という。以下、ゲルマニウムを例にとる。
  • ①純粋なゲルマニウムの結晶中のある原子が、第15族の元素、例えばヒ素の原子と置きかわったとすると、ヒ素の価電子は5個であるから電子が1個余り、これが自由電子と同じ働きをし、電気伝導性を生じる(電子伝導)この電子を過剰電子という。このように第14族のシリコンやゲルマニウムに、ごく微量の第15族の元素が混じったものをn型半導体という。
  • ②純粋なゲルマニウムの結晶中のある原子が第13族の元素、例えばインジウムの原子と置きかわったとすると、インジウムの価電子は3個で結晶を作るのに必要な電子数が不足し、電子のないところができる。これをホール(または正孔)という。このホールに近くの電子が移ると、その電子の位置が空席、すなわちホールとなる。電子が次々とホールに移動すると、結局ホールが電子の運動と逆向きに移動することになる。電子とホールの変位は逆向きであるから、ホールの運動は正の荷電粒子の運動と同じ働きとなり、電気伝導性の原因となる(ホール伝導)。このように、第14族のシリコンやゲルマニウムにごく微量の第13族の元素が混じったものをp型半導体という[2]

ダイオード[編集]

元来は2極真空管のことをいったが、現在は半導体ダイオードのことをいう。p型とn型の半導体結晶片を接合し、両端に電極をつけたものをいう。半導体ダイオードではp型部からn型部へは電流が流れるが、n型部からp型部へは流れにくい。このように、ダイオードは、順方向の電圧のときだけ電流が流れるので、交流直流に直す回路に使われる。この働きをダイオードの整流作用という。

トランジスタ[編集]

電気信号を増幅させる作用がある。3個の不純物半導体を組み合わせたもので、2つのp型半導体の結晶片の間に、薄いn型半導体の結晶片を挟んだ構造のpnp型トランジスタと、2つのn型結晶片の間に、薄いp型結晶片を挟んだ構造のnpn型トランジスタとがある。

サイリスタ[編集]

pn接合を三つ以上持つデバイスの総称である。これはnpn構造とpnp構造のトランジスタが接合したものとみなされる。真空管のほとんどはトランジスタに置き換えられたが、現在の構造のトランジスタでは大容量のものは作れない。しかし、pnpn構造をもったサイリスタでは、電圧で1500V、電流数百A程度のものが作られて数多く用いられ、パワーエレクトロニクスの分野が開拓された。

  • ①.逆阻止3端子サイリスタ
    • pnpn4層構造で3端子を持つデバイスである。単にサイリスタと呼ぶことが多い。これはオン機能可制御タイプのスイッチ、すなわちオフ状態からオン状態への移行は制御できるが、オン状態からオフ状態へはゲートでは制御できず、この移行は主回路状態によって支配されるデバイスである。
  • ②.GTOサイリスタ
    • ゲートターンオフサイリスタの略である。オンオフ機能可制御タイプのスイッチ、すなわちオフ状態からオン状態へ制御できるとともに、オン状態からオフ状態へも制御できるデバイスである。

使用例[編集]

電車の制御[編集]

抵抗制御直流電動機を駆動する電車は構造が簡単で、19世紀から1960年代まで採用されていた。しかし、抵抗器に流れる電流は熱として捨てられていたので、電力の節約のために抵抗器を使わない方式を採用することになった。サイリスタのようなパワー半導体デバイスが実用化されると抵抗器を機械的に切り替えず、半導体スイッチが入ったチョッパ回路による高周波でのオンオフ制御による電圧制御が出来るようになった。これにより制動時に電気エネルギーを架線を介して近くの電車に使ってもらうことができ、電力の節約になった。直流電動機はブラシなどの消耗品があり、保守に手間がかかるため、接触部分の少ない交流電動機を使うのが最良の方法だが、その中で三相交流電動機がもっとも直流電動機に特性が似ており、電車に使うのに適していた。そのためには直流交流に変換するインバーターが必要だが、これに適した半導体素子がなかなか現れなかった。最近まではGTOサイリスタで回路を高速でオンオフして三相交流を生み出していたが、さらに高性能な半導体素子にとって代わった。

自然エネルギー発電[編集]

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 堀孝正『パワーエレクトロニクス』オーム社出版局2002年2月25日第1版第7刷発行
  • 酒井善雄『電気電子工学概論』丸善株式会社
  • 力武常次、都築嘉弘『チャート式シリーズ新物理ⅠB・Ⅱ』数研出版株式会社新制第11刷1998年4月1日発行

脚注[編集]

  1. この半導体の例として単体ではケイ素(シリコンSi)、ゲルマニウム、セレンなど、化合物では酸化亜鉛、酸化銅、硫化鉛。
  2. 結晶内の電流に寄与するのが負の電荷をもつ電子のとき、n型半導体といい、正の電荷に相当するホールのとき、p型半導体という。